悪役令嬢TRPG ~脳筋リプレイ~
TRPGってよく知らないんで、とりあえず今回はダイスの目が大きいほどダメってルールが定められた何かだと思って書きました。
巨大なカーペットが敷かれた王城のとある広間。国のパーティで事件は起こった。
「ティナ。貴様リッタをいじめていたらしいな。貴様の侍女から聞いたぞ」
この国の王子であるジーク王子がティナ公爵令嬢に対してそう切り出したのだ。
「私のリッタに2度と近づくな! 婚約を取り消させてもらう!」
その場にいたのは公爵令嬢のティナ、ジーク王子、王子のそばに佇むリッタ男爵令嬢、ティナの弟のパージ、ティナの侍女、そして数多の観衆。
この状況に、彼らはどう対応するのだろうか……。
「侍女を殴ります」
「は?」
「侍女を殴ります」
それでは体力判定を行ってください。
「……1。クリティカルですね」
それではティナは侍女を殴りました。すると侍女は倒れて動かなくなりました。
「これで証拠は隠滅ですね!」
「いやいやいや、別の犯罪の証拠が出来上がったぞ!? と言うか私の目の前で証拠隠滅したら意味ないだろ!?」
「じゃあ私は王子の身体を探ります」
「は? 何言ってるんだリッタ……」
知力判定を行ってください。
「……3。私の知力は5ですから、成功ですね」
「い、いや、知力って何……ってこら! 勝手に弄るな!?」
リッタが王子の体を弄ると、ポケットからぜんまいが出てきました。
「やった、アイテムゲットです!」
「何故私のポケットからぜんまいが!? そんなの持った覚えないぞ!?」
「僕は衆人を殴ります」
「パージも何しようとしてんの!? さっさとティナの断罪しようよ!?」
体力判定を行ってください。
「……9。あー、残念ながら失敗ですね。避けられてしまいました」
「なんで失敗で残念そうなの!?」
「次は王子の番ですよ。何をします?」
「え、だからティナの断罪を……」
「じゃあ知力判定行ってください」
「い、いや。判定って何……?」
「分かりませんか? じゃあ代わりに私が振りますね。……10。あー、大失敗ですね」
「え、いやまだ何も言っていない……」
『……証拠もないのに断罪するなんて酷い王子だ!』
『あんなのが王子だなんて、信じられないわ』
断罪に失敗した王子は、衆人から非難を浴びます。
「え、なんで!? 侍女殴ったティナとか衆人殴ろうとしたパージより私の評価が低いの!? と言うか証拠ならあるよ!?」
「王子の正気度、マイナス1ですね」
「正気度って何!?」
「じゃあこれで一巡で、また私の番ですわね。私は侍女の体を調べます」
「こらこら、殴った本人が何してんだ!? 大人しくしろ!」
侍女の体を見ると、背中に穴が開いていました。
「え、なんで穴!?」
知力判定を行ってください。
「……8。失敗ですね」
「と言うかさっきから成功とか失敗とか何なの!?」
「私はカーペットの裏を調べます」
「リッタさっきから何探してるの!? 私の体弄ったりカーペット調べたり!」
カーペットを調べると、カーペットの下から大きな穴が見つかりました。
「え、そこにも穴!?」
知力判定を行ってください。
「……2。どうやらこれは王宮の外に通じる脱出口のようですね」
「なんでそんな推理が出来んの!? と言うかそんなもんこんな所にあっちゃダメだろう!?」
「僕は姉さんと同じく、侍女の背中の穴を調べます」
知力判定を行ってください。
「……2。どうやらこれは王子の持っていたぜんまいと同じ大きさのようですね」
「だからなんでそんな推理が出来んの!? と言うかその穴からぜんまい連想するとか発想がおかしい!」
「王子、次は王子の番ですよ。侍女にこのぜんまいをはめてみてはいかがです?」
「いやいやいや、侍女にぜんまいはめてどうするの!? 侍女はからくりじゃないよ!?」
「そうとは限らないじゃないですか。さ、侍女にぜんまいを」
「いやいや、そんなのどうでもいいから! さっさとティナの断罪を……」
「じゃあ知力判定ですね」
「だから知力判定ってなんだよ!?」
「……10。大失敗ですね」
「またかよ!? 大失敗って何!?」
すると国王がやってきました。
『……ジーク。貴様、なんという醜態をさらしているのだ』
「え、父上!? どうしてここに……」
『貴様なぞ王になる資格はない! 王位継承権は貴様の弟に移させてもらう、いいな!?』
「えーっ!?」
そう言って国王は立ち去っていきました。
「な、なぜだ。証拠もきちんと用意しているのに……」
「さ、気を取り直してこの部屋を調べましょう」
「気を取り直せるかっての!? こんな衝撃的な事件の後じゃ何もできんわっ! と言うかいつの間にか私たちの目的すり替わってない!?」
「あ、あと王子の正気度、またマイナス1ですね」
「だから正気度って何!?」
「また一巡ですわね。じゃあぜんまいを受け取って、穴にはめてみますわ」
ティナは侍女にぜんまいをはめてみました。するとキリキリキリと音がします。
少し回した後、がちっと回転が硬くなりました。力強く回す必要がありそうです。
体力判定を行ってください。
「……3。ぎりぎり成功ですわね」
ティナがぜんまいをがりっと回した瞬間、侍女の口から黒い霧が吹きでてきました。
「え!? 何!?」
侍女の口から吹き出てきた霧は、こうつぶやきました。
『グガガ……我は邪神なり。侍女の体内に隠れていた』
「なんでそんなところに邪神が!? もっと隠れる場所あったでしょ!?」
『この姿を見られてしまったからには、貴様らを生かせてはおけない。悪いが死んでもらおう!』
霧は少しずつ、禍々しい姿の邪神へと姿を変貌させていきました。
正気度判定を行ってください。
「2。成功ですね」
「3。成功です」
「……2。よかった、成功だ」
「何落ち着いてんのお前ら!? 邪神だぞ!? やばいぞ!? 早く逃げよう!」
「あ、王子は正気度マイナス2ですね。あと正気度1減少で発狂するので気を付けてください」
「発狂って何!?」
「それじゃあ王子の提案通り、このカーペットの下の穴から逃げよう。皆の行動もそれでいいね?」
「はい」
「えぇ」
「あ、当たり前だ!」
体力判定を行ってください。
「2。成功ですね」
「3。成功です」
「7。僕もギリギリ成功だね」
「な、何言ってんだかわからんがさっさと穴に入ろう!」
「王子は……10ですね。じゃあ大失敗です」
「だから大失敗って何!? いいから早く穴に……へぶっ!?」
王子は穴に入ろうとしますが、直前ですっ転びます。
「な、なぜこんな所に石が……! 早く逃げないと……!」
「あー、これだめですね」
「王子……あなたの事は忘れません……」
「王子、もし生きれたら結婚しましょうね?」
「ま、待て! お前ら何故お別れムードなのだっ! あ、こら、先に逃げるな! ……ひっ!? き、霧が纏わりつく! しゅ、衆人! 誰でもいいから助けてっ! うぎゃあああああああああああっ!!」
こうして3人は邪神の魔の手から逃れる事が出来ました。しかし安心はできません。彼ら邪神研究者にはいつでも邪神の魔の手が迫ります。いったい彼らが生き残ることができるのはいつまでなのでしょうか。今後が楽しみですね。