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7話

 コミット様は成績優秀な方です。

 国語、数学、社会、化学。どの教科もそつなくこなす、完璧な方です。

 その代わり、定期的に引き籠る時期があると言う問題点もありますが……教師からは『成績が高いから問題はない』と言う評価を受けています。

 ちなみに一度生徒会の役員にスカウトされたことがあったそうですが、「何故私が食べ物の取り纏めをせにゃならない!?」と言って引き籠ったので、断念されたそうです。

 そんなコミット様にも苦手な教科があります。それは……

 

 ◆

 

「私が家庭科担当のニンニクサプリメントだ。よろしくな」

「食べ物ってか薬だろお前!? てか貴族の学園に何故家庭科の授業が!?」

「さて、今日は皆が思い思いに料理になってくれたまえ。そして私が全て完食しよう」

「え、料理作るんじゃなくて料理にされるの!? 流石にそれはやば過ぎるだろ!?」

「大丈夫です、コミット様。前にも先生が言ってましたが、私達は完食されても工場を経て復活するから別に問題はありません。R15にもR18にも安心です」

「いや、私は違うよ!? と言うか復活するから問題ないってその思想自体何かおかしいぞ!?」

『せんせーい! A班、料理出来上がりましたー!』

「早いなっ!?」

「む、A班は確かハンバーグとバターライスとポテトサラダとオニオンスープだったな。出来たのはハンバーグセットか、おいしそうだ……いただきます」

 そう言ってニンニクサプリメントは、ハンバーグにナイフを入れた。

『ぐわああああああああっ!』

「悲鳴聞こえてるぞ!?」

「ふむ、なかなかの出来栄えだ。こちらのサラダはどうかな……?」

『く、来るな、来るな! ぎゃあああああああっ!!』

「完全にやばい悲鳴が上がってるんですけど!? 大丈夫かこの学園!」

「大丈夫です、コミット様。前にも先生が言ってましたが、私達は完食されても工場を経て復活するから別に問題はありません。R15にもR18にも安心です」

「同じ台詞2回言うな!? こんな衝撃映像、Rで規制できるレベルじゃねーっての!?」

「とにかく大丈夫です。別に死ぬような事もありませんし大量出血シーンでもないので、このまま経過を見続けましょう」

『わ、我が死しても第二第三のハンバーグがこの学園を支配しようぞ……』

「今完全に死してもって言ったよね!? あと台詞が完全に魔王だぞ!?」

「ふぅ、美味かった。では次の犠牲者はどこかな?」

「犠牲者って言ったぞ、この教師!? 完全に生徒をいけにえ扱いにしてるぞ!」

『B班、料理出来上がりましたー!』

「B班はチャーシューメンともんじゃ焼きと北京ダックとパエリアか。出来上がったのは

前菜『燻製サーモンとジャガイモのバジルソース添え』

サラダ『千切りキャロットとアボカドのサラダ』

スープ『かぼちゃの冷たいスープ』

魚料理『旬の魚のバターソテー』

肉料理『子羊のグリエ ニンニク風味のソース』

デザート『洋ナシのシャーベット』だな」

「なんでその食べ物の組み合わせが本格的なフレンチ料理になってんの!?」

「さて、それではまず肉料理から食べよう」

「そこは前菜から食べろよ!?」

「むっ、肉がウェルダンだと! この料理を作ったのは誰だあ!」

「目の前のテーブルに並んでる料理自体が作った奴だと思うんですけど!?」

「まったく、こんなひどい料理を食べさせるなんて……。コミット、お前残ったこれを食べておけ」

「え、私王子なのにゴミ処理係!? てか食いたくない食いたくない、こんな悲鳴あげそうな料理!」

『C班できましたー!』

「C班はとんかつとハンバーガーとミートスパゲティとポテトチップスか。できたのはミートスパゲティか」

「え、他3体どこに消えたの!? ミートスパゲティ生贄にして逃げたの!?」

「さて、ミートスパか。果たして美味しいのかどうか……」

 ビチビチビチッ!

「む、活きが良いな。これはおいしそうだ」

「活きが良いスパゲティって何!? いや、喋るスパゲティがあるなら活きが良いスパゲティもありそうだけど!」

「む、美味い!ミートソーススパの香りがするし、ミートソーススパの味もする! 更にミートソーススパの食感がして美味いぞ!」

「ミートソーススパしか言ってないから美味しさが伝わらないっ……! 語彙力低すぎだろあんた!?」

「素晴らしい! これほど手間暇かかった料理は生まれて初めてだ! 合格!」

「いや、フレンチ料理の方が手間暇かかってるんじゃないの普通!?」

「……む? コミットとカニカマボコのいるE班はまだ調理に取り掛かっていないようだな。早く料理を作りたまえ」

「申し訳ありません、先生。すぐに『コミット王子の盛り合わせ』の制作に取り掛かりますわ」

「!? いやいやいや、私を食材にするつもりか!? というか盛り合わせって、私盛り合わせ出来るほど沢山いないからっ!?」

「コミット王子の盛り合わせか、懐かしいな。私の子供の頃、食べて以来食べてない思い出の料理だ」

「嘘つけ、あんたが子供の頃には私生まれてないだろ!?」

「それじゃあ調理を始めますわ。さ、コミット様、調理台の上で横になってくださいな」

「頑張れコミット。先生も応援しているぞ」

「いやだ! 死にたくない! ここで死んでたまるかっ! うわあああああああああああああああっ!!」


 それから1か月ほど、コミット様はまた自室に引きこもりました。

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