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5話

 更に時が流れ、12歳になりました。

「カニカマボコ。お前も12歳になるから今年から学園に入って貰うぞ」

「あら、ついに家庭教師とにらめっこする毎日も終わるのですね。楽しみですわ」

「全寮制の学園だからしばらく会えなくなるが、手紙はいつだしてもいいからな」

「分かりましたわ」

「そうそう、その学園なんだがな。コミット王子も通うらしいぞ。婚約者として、サポートしてあげなさい」

「嫌だわお父様、コミット様は私なんかに興味ないから別の方と結婚する予定だっていつも言ってるでしょう?」

「いやいや、もしそんな人ができても私が全力で阻止するよ」

「で、その学園ってもしかして……」

「そう。有名なあの『聖かまぼこ学園』だよ」

 その学園名こそ、『蒲鉾で恋をして』の舞台となる3年制の学校の名前でした。



 ついにやってきた通学1日目。私はコミット様と同じ馬車に乗って、学園へと向かいました。

 本当は『別々の馬車でいい』と両者が言ったのですが、父と国王様に半ば無理やり一緒にさせられてしまいました。

「ついに学園ですね。コミット様は楽しみですか?」

「まぁな。学園名がふざけているのにツッコミたいが、それよりも同世代の人間の女性と付き合える可能性にワクワクするな」

「ま、おませさんですわね。でも私も、新しい友達が出来ると思うとワクワクしますわ」

「カニカマボコの友達なんて誰も欲しがらなさそうだな……。でもまぁお前も頑張れよ」

「コミット様も頑張ってくださいね。コミット様なら絶対女子からモテモテですよ!」

 コミット様はこの2年で背丈も高くなり、顔立ちも大人になりつつあります。私も捨てられる未来を見なければ、きっと夢中になっていたでしょう。

「当たり前だ。この日のために男を磨いたのだからな。さぁ、絶対人間の女性と仲良くなるぞっ!」

「ふふふ。同じクラスメートとして、サポートしますわ」

「……ところでずっと気になってたんだが、聞いていいか?」

「はい、なんでしょう」

「お前は、私と婚約破棄したら一体どうするつもりなんだ?」

「うーん……。特に何も考えてませんわね。そろそろ私も婚活でもするべきなんでしょうか」

「適当だな。そんな適当な考えで婚約破棄を申し出たのか?」

「……いけませんでしたか?」

「いや、いけなくはない。『カニカマボコと結婚しろ』と周囲が血迷っていたから、お前の申し出は心の底から嬉しかったぞ。お前も人間だったら結婚していたかもな」

「ふふふ。私と結婚したいだなんて、あの頃とは違うんですね」

「喋る食べ物に怖がってばかりでは女性から馬鹿にされるからな……。もう2度と、喋る食べ物ども如きで取り乱すようなことはないと決意している。来るなら来い、化け物ども!」

 そう言ってコミット様は、真剣な顔で決意を固めました。

「……それ、暗に私も化け物扱いしてるんじゃありませんか?」




「ようこそ、生徒たち。私はこのクラスの担任になる『魚肉ソーセージ』だ。よろしくな」

 背の高いその教師は元気そうに挨拶しました。

「では一人ずつ自己紹介をお願いしよう。右手前から順に自己紹介してくれ」

「はい! 僕は『ミートスパゲティ』と言います! よろしくお願いいたします」

「私は『フライドポテト』です! 夢はマッシュポテトになる事です!」

「……『竜田揚げ』。東の国出身」

「……」

「コミット様コミット様、次はコミット様の番ですよ!」

「人間いねーじゃねーかこの学園はあああああああああああああああああ!?」

 コミット王子の夢と決意は開始10分で砕かれました。

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