加速放電機能
加速放電機能は、測定対象に残留した電荷を外部の放電抵抗に流すことで、測定後の放電時間を短縮できる機能です。
加速放電に使用する出力チャネルを絶対に短絡しないでください。短絡した場合、残留電荷による電流が急激に流れ、測定対象、測定ケーブル、および本器の内部回路に損傷を与えたり、発火したりするおそれがあります。
放電機能の例
一般に、DC 耐圧試験器および絶縁抵抗計には、感電事故を避けるため、測定終了時に、印加した電荷を放電する機能が付いています。
抵抗放電方式の場合、この抵抗による放電に時間がかかり、総合的な測定時間が長くなることがあります。加速放電機能を使用することで、測定時間を短縮できます。
たとえば、測定電圧 1500 V、負荷容量 50 μF、放電抵抗 20 kΩ の場合、30 V まで放電するのに 3.9 秒ほどかかります。(抵抗放電方式の一例)
それに対して、放電抵抗(1500 Ω)を用意し、加速放電機能を使用すると、0.3 秒に短縮できます。
原理
放電モデルは、R・C 直列回路の過渡現象として扱われます。
V0 [V] に充電されたコンデンサを抵抗 R [Ω] で放電し、Vt [V] になるまでにかかる時間 t [s] は次の式で表されます。
加速放電機能
- 加速放電機能を使用するには、測定に必要なチャネル数の他に、2つの未使用チャネルが必要です。
- 本器で使用しているリレーに流すことができる電流は最大 3 A です。放電抵抗に流れる電流が 3 A を超えないようにしてください。
- リレー接点間の抵抗は、最大 0.15 Ω(リレー仕様)です。接点電力が 10 W を超えないようにしてください。
放電抵抗(加速放電用)の選定
想定される測定対象への残留電荷量に応じて、適切な放電抵抗を選定してください。
例:DC 1500 V 耐圧測定後の加速放電を行う場合の抵抗
測定対象が持つ容量を 50 μF と仮定します。
余裕を見て、放電電流を 1 A とします。
抵抗値:
必要電力:
1500 W の抵抗は非常に大きなものですが、放電電流は瞬間的なものであり、平均電力として計算することができる抵抗器を使用します。
平均電力の考え方
1500 V に充電された 50 μF の静電容量と、1500 Ω の抵抗を接続したときの状態を考えます。
原理で示した式に V0 = 1500 V, Vt = 30 V, C = 50 μF, R = 1500 Ω を代入すると、
t = 0.293 秒となります。
平均電力は次の式で表されます。
平均電力: または
2秒に1回放電(検査)すると、平均電力は次のとおりです。
750 Ω で定格電力 200 W の抵抗を2個直列に接続することで、1個当たりの平均電力は 110 W 程度に抑えることができます。
このとき、リレーの接点にかかる電力は、その接触抵抗を 0.15 Ω とすると、瞬間的には 1 A の電流が流れることになり、次のようになります。
実際には印加電流は破線のようになるため、厳密な平均電力は上記計算よりも小さくなります。
放電抵抗は上記の計算だけでなく、実際の使用条件で確認の測定をしたうえで選定してください。
放電抵抗の接続
上記で選定した放電抵抗を、未使用の2つのチャネルに接続します。
加速放電の設定例
放電抵抗を接続する出力チャネルの選択
例: CH7 と CH8 に放電抵抗を接続します。
| 項目 | 通信コマンド |
|---|---|
| 設定方法 | :DISCharge:CH <1~24>,{OFF|HIGH|LOW} |
| 設定例 | :DISCharge:CH 7,HIGH;CH 8,LOW 加速放電チャネルとして CH7 を HIGH に、CH8 を LOW に設定 |
加速放電時間の設定
| 項目 | 通信コマンド |
|---|---|
| 設定方法 | :DISCharge:SPEed <100~9999>(単位:ms) |
| 設定例 | :DISCharge:SPEed 1000 加速放電時間を 1000 ms に設定 |
加速放電の実行
| 項目 | 通信コマンド |
|---|---|
| 加速放電開始 | :DISCharge:STARt |
| 使用可能条件 | リレーがクローズ状態であること |
このコマンドを実行すると、設定したチャネルが設定した時間だけ ON になります。
加速放電チャネルと放電時間は一度設定すると、それ以後は再度設定するまで有効です。
:DISCharge:STARt コマンドを送信するたびに加速放電が実行されます。