「コピー商品」と揶揄された中国製に惨敗…ロボット掃除機の代名詞「ルンバ」が“存続の危機”に陥ったワケ
業界のリーダーとのイメージがあったが、ライバル勢の追い上げは激しい。いつしかそのブランドイメージの高さとは裏腹に、機能性や価格面でルンバの利点は失われていった。 米ライフハッカーは「他のロボットブランドと共に革新を行うことがなく、iRobotは適応が遅かった。他のブランドが(拭き掃除機能を追加した)コンボマシンを開発する中、iRobotが掃除と拭き取り機能を備えた最初のロボット『J7+』を導入したのは、2022年後半のことだ」と指摘している。 LiDARへの対応も遅い。部屋を効率的かつ取り残しなく掃除するうえで、部屋の構造を高精度でスキャンするLiDAR技術を各社がこぞって採用している。2023年後半頃までには業界標準になっていたが、ルンバシリーズは伝統的にカメラによる画像認識に依存。LiDAR技術を初めて搭載したのは、2025年モデルになってからだった。 満を持して搭載したLiDARも、他社製品と同等の水準とは言い難い。ライフハッカーは、他社製品のように360°を認識せず、機体前方のみを監視する「準LiDAR」であると指摘。結果、壁際ギリギリに寄って清掃することができず、後方にあるゴミも取り残してしまうなどの問題があるとしている。側方や後方は振り返ってLiDARを向ける必要があるため、「しばしば、酔っ払いのようにただ回転し続ける」といった妙な挙動を見せるという。 メンテナンスの手間も問題だ。ニューヨーク・タイムズ紙の製品レビュー部門ワイヤーカッターは、競合他社の最先端モデルについて、「最も高度なモデルには、回転するモップパッドが2つあり、清掃の途中でドックに戻って汚れた水を捨て、ブラシを掃除し、自動的に洗浄液を補充する。一部には、こぼれや汚れを検出するセンサーがあり、床の種類も区別できる(吸引強度や回転数を調整する)」と説明している。 ■吸引力は他社製の3分の1程度、価格は中国製に惨敗 iRobotの新製品は、基本的な性能面でも問題を抱えている。すなわち、吸引力だ。 イギリスのダイソン社は、「吸引力の変わらないただ一つの掃除機」のフレーズでスティック型掃除機市場を席巻した。基本性能である吸引力の高さは、それほどに大切だ。強力であるほど花粉や塵などの大きな粒子を吸い込みやすくなり、フローリングを裸足で歩けば、その快適さは肌で実感できる。 ところが米ライフハッカーによれば、Roomba 205 Comboの吸引力は7000Paに留まる。これは他者の最新のロボット掃除機が2万Pa以上を発揮するのに対し、3分の1程度という低い水準だ。 現状、iRobotの市場シェアを猛烈な勢いで侵食しているのが、十分な吸引力と優れた価格競争力を両立する中国メーカーだ。米CNBCは「最も急成長しているロボット掃除機事業のいくつかは中国に本社を構えており、Anker、Ecovacs、Roborockなどがある。これらすべてがiRobotの市場シェアを侵食している」と報じている。