オリンピック代表を輩出してきた日本大学重量挙げ部。
この部を20年以上率いていた前監督が10日、部員から入学金などをだまし取ったとする詐欺の疑いで、警視庁捜査2課に逮捕された。
前監督は難波謙二容疑者(63)=東京都狛江市。「重量挙げ界の重鎮」として知られていた。名門の重量挙げ部で何が起きていたのか。(昆野夏子)
◆「お金はいらないからね」が一変
「正直、知りたくなかった。自分にとってかけがえのない、青春の思い出を汚された」
難波容疑者の「不正」の被害に遭った30代の男性は肩を落とした。2000年代半ばに入学した1人だ。
男性は高校時代に全国2位の好成績を収め、難波容疑者から「良い成績だったね。大学でも続ける気ある?」と直接声をかけられた。
その際、はっきりとこう告げられたという。
「お金の心配はいらないからね」
「お金の心配はいらないからね」
ところが、いざ日大入学を決めると、金を請求された。
難波容疑者は男性の両親に、電話で「お金が必要です。希望の学部に入るには、枠を買う必要がある」と説得してきたという。
◆「真実を話してほしい」教え子の思い
男性の両親は「話が違う」と戸惑ったものの「息子のため」と、2回に分けて重量挙げ部名義の口座に計約250万円を振り込んだ。
男性の被害額は約230万円で、問題が発覚した昨夏以降、損害遅延金と合わせて約400万円が大学から返還された。
男性は複雑な思いを拭えないでいる。
「難波さんは偉くなるために金が必要だったのか。残念だ」
「難波さんがいなかったら日大に入れていなかったし、重量挙げも続けられていなかった。人生を変えるきっかけをくれた人だった」
「難波さんは偉くなるために金が必要だったのか。残念だ」
「難波さんがいなかったら日大に入れていなかったし、重量挙げも続けられていなかった。人生を変えるきっかけをくれた人だった」
そして、かつての恩師にこう訴えた。「指導者になったときには、選手を強くしたいという情熱があったはず。とにかく、真実を話してほしい」
◆差し替えられた「うそ」の入学書類
そもそも不正は、昨年7月に大学の調査で発覚した。それが理由となり、難波容疑者は懲戒解雇となった。昨年12月に大学が公表した最終報告によると、被害者は部員58人、被害金額は計約5300万円に上る。
大学関係者によると、新入部員の入学金や授業料を、各部が一括して預かってから大学側に振り込む「代理受領制度」が悪用されていた。不正徴収は2000年代前半から繰り返されていたようだ。
具体的にはどんな手口だったのか。関係者の話を総合すると、...
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