marantz SD-930
上段がSD-930、下段はNakamichi DRAGON
marantzというメーカー、ボクは嫌いじゃない。だけどなかなか縁が無かった。名前を聞いてすぐに思い浮かぶのは、CD登場初期の85年に登場したCD-34という戦略商品。今でもファンが多いようだ。ボクも当時雑誌広告を見ながら「欲しいなぁ。CDプレーヤー買うならコレかなぁ…」と思い巡らせていたものだ。結局その時点ではCDプレーヤーを購入するなんてこともなく、相変わらずショボいラジカセ(当時のやつは、もちろんCDなんて付いてない)しかなかった。
そのCD-34の外観は、80年代に青春を送った者はくすぐったさを感じてしまうような「マイコン風味(?)」が漂っていて、それがまた当時のボクの心を掴んで離さなかった。遡る事2年前の83年、カセットデッキの世界でもmarantzは仕掛けていた。当時ほぼ最高峰のカセットデッキNakamichi DRAGONに対して。定価は10万円ほども違うのだけど、その内容は充実している。外観に関してはCD-34よりも「マイコン風味」だと思いませんか?
まず、DRAGONの最大の特長となる自動アジマス調整機構NAAC(Nakamichi Auto Azimuth Correction)、これに対しmarantzはMAAC(Marantz Auto Azimuth Control)という自動アジマス調整機構を搭載していた。名前だけなら笑ってしまうところだけど、機能はしっかりしている。実際にテープを再生してみると、DRAGONの方はしばらく調整モーターが動いていて走行方向ランプが点滅しているけれども、SD-930の方は「ジッ」という音が一瞬するかしないかくらいで調整終了。しかもMAACはオフにすることも出来て、その場合にはアジマスエラー(ズレ)がインジケーターに表示されるようになっている、当たり前だけど、調整なんて長々とやってられても困るのだ。この点においてはSD-930の方が優れているように思う。
次に、録音時にテープごとの特性に合わせるキャリブレーション機構。DRAGONはマニュアル調整で、好みに調整できるかわりに面倒な所も。SD-930は「Compu-Biasシステム」というオートキャリブレーション機構を採用していて、バイアス・レベル・イコライザを約10秒という短い時間で調整してしまう。その短時間の間にレベルとイコライザは3回も調整されているという念の入れよう。同じ85年に登場したNakamichi CR-70もオートキャリブレーションを15秒ほどで行うけれど、レベル・バイアスを2回合わせるようになっていて、DRAGONもCR-70も共通してイコライザは固定。ここでもSD-930の能力の高さが光っている。言い忘れたけど、テープセレクターは手動。ここはCR-70に譲る点。
ノイズリダクションシステムはDolbyB・Cだけでなくdbx(ボクは使っていないけど)も搭載し、前後30曲の飛び越し選曲も出来るなど、「DIGITAL MONITOR CASETTE DECK」の名前に恥じない機能を実現していた。そしてナカミチではオプション設定のマイク入力端子も前面に備えている。
だけど、どんなに機能があっても走行系がしっかりしていなければダメだ。その点でもSD-930は頑張っていた。シングルキャプスタンながらワウ・フラッターは0.025%と、DRAGONの0.019%、CR-70の0.024%と比べても遜色ない高いレベル。見れば見るほどトンデモナイ機種だ。
敢えて苦言を言うとすれば、操作感がチープなところ。そしてクリーニングのし易さかな。イジェクトボタンを押すとスーッとカセットリッドが傾いて出てくるDRAGONに対して、SD-930はカチャッという感じで素っ気ない。ボタン類はどっちもどっちだけど、「内部に信号を送るだけ」のプチっという感触。カセットリッドカバーはプラスドライバーで外すようになっていて、外してしまえばクリーニングはやり易いものの、ドライバーなどのいらないNakamichi機の方がやはり簡単だ。
とはいえ、これでオートテープセレクターが付いていればもう何も言う事は無いのです。え?機能だけを語ってきたみたいけど、肝心の音は?悪いハズがないじゃないですか。