「ESGの美名」で甘くなった審査
「養殖DX」の要素と「途上国の貧困解消」という分かりやすい物語で、世界的な投資家から巨額の資金を集めながら、実態は二重帳簿と数字の偽装による虚飾だった――この事実は、インドネシア国内のみならず、海外投資家に「現地調査やガバナンス重視の重要性」を改めて知らしめるものとなった。
ある金融関係者は「ESGという美しい旗印を掲げると、細部の実態確認やリスク評価が疎かになりやすい」と指摘する。自動給餌機自体が本当に革新的かどうか、また農家の融資リスク管理をどう行っているのか――こうした核心部分を深く精査せず、大手ファンドの参画を「安心材料」として鵜呑みにした面は否定できない。
東南アジアのスタートアップには依然として大きな可能性がある一方、イーフィッシェリーの巨額粉飾疑惑は「海外投資こそ冷静な検証と綿密なデューデリジェンスを欠かせない」という厳しい教訓を突きつける。
かつては「養殖革命の旗手」と呼ばれた同社の急落ぶりと、その被害規模の大きさは、今後も投資家や金融機関の間で苦い思い出として記憶されていくことだろう。