ネットミーム・デビルサマナー   作:生しょうゆ

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前回が真の最終回だと約束したな
あれは嘘だ


大救世のあとしまつ 上

 

 

 

「そういやワグナスに聞いたんだけど、お前もしかして、俺のことが好きなのか?(唐突)」

「ぶっ!?」

「うわきったね(素)」

 

 エリーの口から噴き出した紅茶を俺は避けた。先程まではお清楚を気取ってカップを傾けていたのにこれである。元駐日アメリカ大使の娘だという話だが怪しいものだ。

 

 時は四月中旬、場所は三軒茶屋の喫茶店、つまりは雨宮くんと語らった場所である。世話しているんだから奴の事を報告しろと会合を申しつけてきたが、そんなの書類で事足りるだろ。

 

 しかし、そんな説明は置いておいて、エリーの慌てようは凄まじいものである。そして奴は何時も通り、そんな事などまるで無かったかのようにハンカチで口元を拭ってすまし顔を浮かべるのだ。

 

「……いや、え? 何ですか? 私が、本庄さんの事を好きですって? あはは! 冗談は存在だけにして下さいよ! そんな事は主が再び降臨するくらいあり得ないことです」

「じゃあワグナスの勘違いだな。そりゃあ良かった。俺もお前の事嫌いだし(無慈悲)」

「え゛っ」

「お、お前さあ……流石に言い過ぎ、言い過ぎじゃない?」

 

 何か知らんが野獣が出てきて取り成してきた。だけど当たり前だろこの野郎。こいつを好きになる要素なんて欠片もないってそれ一番言われてるから。

 

「いやだってこいつ俺に迷惑しか掛けてねえじゃん。初めて会ったときから裏切りだぞ。その後は面倒臭い事に巻き込むしチョーうぜーし!」

「まあ……多少はね? 多少は……まあその通りですねえ!(掌返し)」

「いや多少はねって言いますかえっ。えっ、えっ?」

 

 エリーは何故かショックを受けたような顔をしているが、その胸に手を当てて良く良く考えて欲しいものだ。お前の良いところは面の良さと裸見せてくれたことぐらいだからな(クズ)

 

「俺の好感度ランキングでも下から数えた方が早いくらいだぞ。つーかワグナスの方が高いぞ。そんなんでよく聖女なんてやれるよな!」

「いやお前ワグナスのことかなり好きじゃんアゼルバイジャン。ちなみに俺の順位は?」

「下から三番目じゃボケ。隙あらば俺の唇を狙うんじゃねえ!」

「ま、多少はね?(キス待ち顔先輩)」

「おう(ネットに)帰れ!」

 

 ちなみに最下位はクソッタレのゴミキョウジである。折角だし好きなやつ発表ドラゴンが全体順位を発表しよう。ランキングに入っていない奴はそれ程親しくない奴ということだ。

 

「じゃあ紙に書き出してやるから見とけよ見とけよ~~」

「大丈夫だエリーザベト。君が何位でもこれから挽回すれば問題ない」

「い、イーノック様……いや、何の話ですかねあはは……」

「これではインガオホーと言うしかないのでは? 私は訝しんだ」

 

 何か急に騒がしくなってきたな。つうかお前ら何で気軽にCOMPから出てこられんの? 俺のサマナー技量が低いせい?

 

「まま、ええわ。では、好きな知り合い発表ドラゴンが、好きな知り合いを発表します」

 

 俺は書き上げたランキングを四人に見せ付けた。

 

 イーノック>ワグナス>ニンスレ>諏訪さん≧坂上さん>器ちゃん(シャドウちゃん)>依智>ゲイリン>三浦はん>雨宮≧明智>ライドウ>>>野獣>エリー>>>>>キョウジ

 

「いや私がそこのうんちに負けているってどういうことですか!?」

 

 エリーは急にキレた。いや気持ちは分かるが。俺だって野獣より嫌いとか言われたら嫌だわ。だけどそれがお前なんだよ反省しなさい。

 

「ま、まあ大丈夫だ大丈夫」

「そりゃあ貴方は大丈夫でしょうね一番好かれているイーノック様? 何ちょっと嬉しそうにしているんですか。いやだいぶ嬉しそうですね!?」

「まあ……良い奴だよ(ドヤノック)」

「私としてはオヌシの仲魔にも関わらず、あの元ロウヒーローに負けているのが納得いかぬ。どういうことだサマナー」

 

 ニンスレが硫黄の息を吐きながらにじり寄ってくる。野獣とは別の意味でくさい(確信)

 

「だってお前トンチキが過ぎるし……。何だよ霊格とか存在とかをある程度自在に変えられるって……」

「それもサプライズだ! それが私だ!」

「というか本気で俺が下から三番目なんですがそれは……。お前それでも俺の相棒かよぉ!?(驚愕)」

 

 そう言いながら野獣がべたべたと引っ付いてきてクッソウザい。そう言うところだぞステハゲ。自分の身体(直球)狙ってくる悪魔とか好きになるわけがないだろ! というかBB劇場そのままの野獣が現実にいたら最悪なヤツ過ぎるってそれ一。

 

「言っておくが野獣はボーダーラインだからな。クソ怖いライドウだってこのクソッタレステハゲよりは高いんだからな。エリーは反省しなさい。キョウジは死んどけ」

「お前さぁ……本気で俺のことウンコ扱いかぁ?」

「いや本気で言ってたらお前と一緒に世界救ってねえよ」

 

 そう言って俺達は互いに「へへへへへ」と笑い合った。何だかんだ一番に信頼しているのが野獣である。普段の好感度を抜きにしてな。

 

「さて、なんだか気恥ずかしくなってきたし帰るか」

「いやちょっと待って下さいよ本庄さん! いや本気のランキングなんですかこれ!? 本気で私、そこのサタン以下なんですか!?」

「そうだよ(肯定)。ちなみにサタンは入れるとしたらキョウジ以下のぶっちぎり最下位だよ。あいつもあいつで良いところはある……あるか? あるかな……まま、サタンよかマシか」

 

 一切の美点が見つからないゴミを超えたゴミがサタンである。あいつに比べたらエリーもマシな人間だよ。

 

「まあランキングを上げたかったら俺をもうちっとリスペクトしてくれや。後はプレゼント機能で好感度が上昇して個別ストーリーが解放されるゾ。物によっては特別な反応を返す事も……? 要チェックだ!」

「じゃあ伝統と信頼のパイタッチで急上昇させてやるからなぁ~~♡♡♡」

「よかったなエリー! お前は下から三番目になったぞ!」

「思い出レベルがまだ足りなかったみたいですね……リセットしなきゃ(使命感)」

 

 ねちっこい手つきで胸を触ってくる野獣をぶん殴りつつ、しかしエリーの様子が変である。瞳に剣呑な色を見せ、「ふうん」と不機嫌そうだった。

 

「ええ、ええ。そうでしょうね。まあ確かに? 私は本庄さんに好かれるような行動をまるで取ってきていません。この順位も妥当と言えば妥当でしょうね」

「なんか急に早口になったなお前な」

「しかし、メシア教の聖女として、いいえ、一人の人間として、流石にサタン以下というのは我慢がならない評価ですよ。ええ。なので仕方なく、貴方からの評価を上げましょう」

「おっ、何かくれるの?(乞食)」

「ええ!」

 

 そう言ってエリーは鞄から書類を取り出した。随分と厳めしい、整った形式のものである。エリーはそれを俺に見せ付けた。

 

「本庄モトユキ。貴方をメシア教のアデプトに任じます。良かったですね?」

「ああああああああああ!? テメェェェェェェェェ!!! 何してんだァ!!!(全ギレ)」

 

 おま、お前さぁ……この書類マジの奴じゃん……元老院とかの許可も取っちゃってるじゃん……何してくれてんのマジで……(ドン引き)

 

「お前そう言うところだかんな!(全ギレ)」

「だって仕方がないでしょうが! 主に認められた人間にして、メタトロンを従えし召喚師! 組織として絶対に取り込む必要があるでしょうが、こんなの(直球)」

「もうサマナーはヤタガラスにいるんですがそれは……(鈴木不服)」

「協調路線をより深くするための物ですので大丈夫です、問題ありません。あはは! 凄いですね! 新生四天王と最終解脱者の二重ですよ、二重!」

「お前そんなんで俺が喜ぶと思ってんのか!? FUCK♂YOU!(罵倒)」

 

 そう言うとエリーはにっこりと笑って言った。

 

「Nulla id. Volo te in pace vivere. sed vos electos esse. Ideo ad convincendum circumstantes, positionem idoneam debes assumere. Sed dolor est.」

「いや『そんな事はない』とか言われても事実としてお前が巻き込んでいるんだから困るわ」

「うええっ!? なんで分かるんですか!?」

「アマでラテン語囓(かじ)ってる俺が来ましたよ(ドヤ顔)」

 

 まあエリーは椅子から転げ落ちる勢いで驚いているが、簡単な単語くらいしか分からねえけどな。英語とドイツ語はともかくとして。

 

 だから野獣も俺のドヤ顔に挑戦するように「Primum crustulum fabae rubrae in tecto habemus, cur ergo non coques?」とか言ってくるんじゃねえよ。あんだって?(アイデアロール失敗)

 

「えー……赤い豆の……クッキー☆? を、屋根で……? どういう意味だよ野獣」

「『まずうちさぁ、屋上あんだけど焼いてかない?』をグーグル翻訳にぶち込んでみたゾ」

「そんな日本語としても破綻している文章がまともに翻訳できるわけないだろ! いい加減にしろ!」

 

 大体何が『まず』なんだよ。何故『まず』なんだよ。『まず』ってどういう事だッ! ナメやがって! クソッ! クソッ!

 

「サマナー、話が脱線しかけているが大丈夫か?」

「い、やいやいやいやイーノック様戻さなくて大丈夫ですからイーノック様」

「やはりインガオホーでは? 私は訝しんだ」

 

「あーびっくりしました」と妙に紅潮した頬に手団扇で風をやりながらエリーは言った。

 

「つか何の真似だよ。時々ボソッとラテン語でデレるエリーさんか? ボソッとって言うには長すぎるだろ。半分も分からなかったわ」

「いやあ、それは……。まあ私なりに本庄さんに思うところがあるといいますか。ええ。折角、平穏を取り戻したのです。仲良くやっていきましょうよ、という事ですね! はい!」

「(胡散)くさい子。(手練手管が通じなくて)哀れ」

「あははははは言いますねえサタン!(半ギレ)」

 

 エリーは最早お清楚も投げ捨てて紅茶を飲み干した。そうして荒々しくカップを机に置いた。

 

「良いでしょう。そこまで言うのなら明日またここに来て下さい。私が本物のプレゼントを貴方に贈ってあげましょう」

「ん? え、何。お前美味しんぼ好きなの?」

「……何ですかそれ? これはお兄ちゃんがよく使う文句の引用で……あっ(察し)」

 

 エリーは頭を抱えた。「馬鹿お兄ちゃんの馬鹿……!」とか言っているが、引用先をよく調べもせず使ったのはお前の責任だろ。いややっぱワグナスが匿名掲示板にドハマりしているのが悪いわ。

 

 ……しかし元を辿っていくと、ドハマりさせたのは俺だから俺が一番悪いと言うことに……いやいや、俺じゃない! あいつがやった! 知らない! 済んだこと!

 

 

 

 で、その帰り。そんな会合をしましたよという事を報告し、ついでに勝手に人を昇進させるな(半ギレ)という文句をゲイリンに言った後、去ろうとして何故か「まあ待て」とゲイリンに呼び止められた。

 

「んあ? 何? 俺これから雨宮の様子でも見ようかと思ってんだけど。良い先輩を持ったなぁ(自画自賛)」

「その昇進に関して重要な話があるのだ。これを見ろ」

 

 そう言ってゲイリンが取り出したのは、重苦しい黒色の写真台紙である。表紙にはヤタガラスの刻印が入っており、実に立派なものだ。

 

「ハクバに特注でもかけたのかな?」

「そこで何故生産の方に興味を向けるのか、儂には分かっておるぞ。しかし誤魔化すことは許さぬ。察したとおり見合いの話だ」

「やっぱり?」

 

 俺の業績だけ上げると功績が凄まじいから、なんか知らないけど面倒臭い事になっているらしいよ(適当)。だからってこんな堆く積まなくても良いと思うんですがそれは……。

 

「まあ、お主に興味がないことは分かっている。しかし話だけでも聞け。そして面と向かって断りでもしろ。その方が話が早い」

「政治とかあー面倒くせマジで。じゃあ俺、ギャラ貰って帰るから……(そそくさ)」

「ではまず一人目(ガン無視)」

 

 ゲイリンは勝手に一番上のポートレートを開き、話し始めた。こうなると付き合わなきゃいけないじゃん(根はマジメ君)

 

「一人目とは言ったが、二人だ。名家、出雲家から若年の巫女二人、出雲裕子と出雲菊代。共に才気溢れ、家伝の悪魔たるスクナヒコナとオオクニヌシを十全に扱えておる。無論、諏訪には劣るがな」

裕子と菊代(言うこと聞くよ)!?」

「……何だその反応は。二人目は、建築、結界の主要職を代々取り仕切る綴木家から、綴木啓子。この異界が安定し、建築さえも行えるのは、かの家の手腕によるな」

啓子の綴木だ(稽古の続きだ)!?」

「……だから何なのだその反応は。三人目は、獲加多支鹵大王……雄略の世より続く獲加家の一人娘、獲加流子。かなりの腕前だ。あちらもお主に感心が高いそうだぞ」

獲加流子の罪の重さ(分かる?この罪の重さ)!?」

「……罪など犯しておらぬが。先程からなんなのだお主は」

 

 ゲイリンは呆れたように台紙を閉じた。いや、でも……凄ぇ(感嘆)。完璧に符合してるとか……。

 

「これもう世界が淫夢に犯されてるだろ……(恐怖)」

「いや、お主が勝手に共通点を見出しているだけであろうが。四人とも普通の名であろう。犯されているのはお主の頭だ(直球)」

「痛ってぇ! (心を)噛みやがったな老い!(誤字に非ず)」

「その言動が証左ではないか。見よ、この子女など……ん?」

 

 と、ゲイリンが次の一枚を手に取って変な顔を浮かべた。まじまじと台紙に刻まれた名を見、前の三枚と比べて余りに格式高い装飾を確かめ、「えぇ……(困惑)」と呟いた。お前ホモか!?(感染源)

 

「つっても淫夢にこじつけられそうにない名前だけどな、『大道寺竜胆』って。さくらちゃ~ん?」

「……いや、彼奴は全く関係ない。何らかの拍子で紛れ込んでしまったのだ……いやそれはそれで問題だな。ならば、あれだ。同姓同名の別人……居て良いはずがないが……」

 

 そう言って台紙を開いたゲイリンであったが、一秒目を通してすぐに閉じた。そして眉間を抑えて凄まじい溜息を吐いた。

 

「そ……そんなに良いお家柄だったのん? そういや、確かそんな名前の私立総合病院があったような……基幹病院に指定されているレベルのやつ……他にも手を広げてる資産家だっけ? はえ^~納得……」

「いや……家柄は問題ない。確かに大道寺家はヤタガラスにとって非常に重要な一族であるが、大道寺家()()とお主を比べれば、そんなものはどうでも良い話だ」

「へー、じゃあその竜胆……ライドウと似てて嫌だなこの名前……に、何か問題があるわけ? お嬢様のくせにひっでぇブッスゥ!(KWM)だったとか? どれどれ」

「おっ、そう言えば(唐突)。お主にもう一つ、聞きたいことがあったのだ(隠し隠し)」

「いやロイヤルブス見せろよ(ゴミ)」

「断じてブスではない(半ギレ)」

 

 じゃあ何だってそう隠すんだよ、と写真に手を伸ばしかけた俺に、「エヘンエヘン!」と咳を吐き、ちょっとばかし遠慮がちにしてゲイリンは言った。

 

「……何故、儂が下から八番目なのだ?」

「ファッ!?」

 

 驚きすぎて手を伸ばした姿勢から転んじゃった。いや、ちょ、ちょっと待って下さい! ナンデ!? 何でその話がゲイリンの耳に入ってんの!?

 

「まあ、上から八番目でもある。丁度真ん中だな。良いのか悪いのか、いやキョウジを含めている時点であまり良くはないのか?」

「おっヤベえ! 今日は空手の稽古だわ! じゃあな!(捲し立て)」

「儂の上に列する者共の方が明らかにお主と親しいので、特に文句はないが。いや儂は文句はないが、しかし、他の者共には配慮しろよ。儂は気にしないがな」

「あ、はい」

 

 ……今度一緒に酒でも飲もうか。とか言ってる場合じゃねえ! 今は!

 

「ち、ちなみにその話をどこで……まさかクソゲボエリーの奴……!」

「汚らしい悪魔が触れ回っておったぞ」

「あいつ今度こそネットに返したる!(全ギレ)」

 

 先程からうんともすんとも言わねえCOMPを叩きながら俺は駆け出した。器ちゃんに絶対順位について言われるだろうから逃げるのだ!

 

 とか思ってたら「本庄大先輩ってチョーSだよな!(CV:福○潤)」と木造の廊下に立ち塞がる二つの人影があった。こいつらは!

 

「このアダルティックでセクシーな低音ボイスは……雨宮蓮!」

「ウッス!(CV:福山○) ちなみに俺は本庄大先輩みたいにキチガイではないのでいきなり怪文書を朗読することは出来ません。まだまだ修行不足ですね」

「タキシードクイズだと分かる時点でもう終わりだよお前」

 

 廊下に立ち塞がったのはイケメンのもじゃ男くんこと雨宮である。単にホモガキと言った方が良いかもしれん。そして、その傍に立つ明智は殺意の籠もった目で雨宮を見つめていた。

 

「チッ……なんで僕がこんな奴とコンビを……。おい本庄! 理由を聞かせろよ。まさか加害者と被害者で仲良くさせようって魂胆か?」

「いや単になんとなく。あと何時も言っているが敬語使え敬語ォ! 雨宮は俺を尊敬して使ってるだろ!」

「なんとなくで組ませる奴に敬語なんて使うか!」

「俺が敬語を使っているのは、あんまり大先輩と仲良くしたくないだけです」

「え、ひど……」

 

 ショックを受けている間に「「ペルソナ」」と二人はそれぞれ<アルセーヌ>と<ロキ>を顕現させる。チィッ、なんだってヤタガラス本部で戦闘になるんだよ。

 

「よっしゃあ悪魔会話のレッスンをしてやる! まずお前達が仕掛けてきた理由を教えろ!」

「阿多先輩に『見つけ次第、足止めしておいて下さい』と言われたからです」

「会話失敗だ死ね!」

「はやっ」

 

 と言ってもこいつらと俺とではまだまだ戦闘にすらならん。召喚が出来なかろうが銃を抜くまでもない。明智に「自分のことを加害者だと思っているんだ。可愛いね♡」と囁きかけて動揺したところを突破した。

 

「明智ってチョーS(心配性)だよな! 気にするな。お前だって悪魔に操られていたというだけだ。たとえその破壊衝動が本心からの物だったとしても、それが全てじゃないことは知っているさ」

「……ハッ。そうだね雨宮。君も悪魔に操られて本庄に陰茎で殴られたんだもんね」

「ぺ、ペルソナ!(防衛機制)」

 

 心の仮面で精神を守ろうとする雨宮であった。しかし後ろに遠ざかっていく会話ではあるが、何だか仲良くやっていけそうで何より──。

 

 ──黒。

 

 ──底深い深淵の黒が、目の前にある。

 

 木造の、古めかしい廊下の一部。陰影が降りた一角だけが、まるで異界になったかのように別の領域となっている。別の何かが棲まう領域となっている。

 

 その暗黒から真白い腕が伸びた。ひたひたと、足袋に包まれた小さな足先が見えた。

 

 背丈は小さく、そして細い。黒地に赤を差し色とした結城紬に、滑らかな黒髪が降りている。

 

「あっ、阿多先輩だ。アタッチ! アタッチ!」

「うわ……うわでた……うわ……」

 

 背後に追い付いた二人が声を上げる。その声にまるで反応せず、真っ黒な二つの瞳が俺を見つめ、言った。

 

「ばあっ! "超危険生物"阿多あいでーす。……六位ってなんですか?」

「う あ あ あ あ あ あ(PC書き文字)」

 

 その異名が全く冗談になっていない器ちゃんが、影のように近付いてきた。

 

「いえ、文句を言いたいわけでも、無理矢理訂正しようというわけでもないのです。ただ、理由が知りたいだけなのですよ、本庄様。理由を知って、納得して、その上で改善したいのです」

 

 器ちゃんはするすると俺の腕を取り、動けないようにって足が動かないんですがそれは。床に絡み付いたように足が動かないのこれ君やってるよね!?

 

「イーノック様とニンジャさんは分かります。本庄様が命を預ける仲魔ですからね。ステハゲが下から三番目ですが、どうせ信頼の面では一位なのでしょう。それは仕方がありません。そこに割って入る意味はありません」

「おうそうだよ(肯定)! 俺のことをよく分かっているなサスガダァ……。じゃあ教えてやろう器ちゃんゥ! 何故君が俺の中で六位なのか! 何故変身後に頭が……」

「あっ、初めに私が納得と疑問点を話してから聞きますので黙っていて下さい。どうせネット・ミームで茶化すのは分かり切っていますので」

「アッハイ」

 

「それでこそ阿多先輩や! お前も見習わにゃいかんとちゃうんか?」「なんで関西弁なんだよ」と背後に馬鹿馬鹿しいホモガキの声を聞きながら、器ちゃんの成長を感慨深く思う。いやマジでこの子、俺の操縦に慣れつつあるな……。

 

「ワグナスさんは、年の近いご友人ですからね。加えて共に死線を越えた仲。そういった意味では坂上様もそうでしょう。名目上はかつての上司、師匠とは言え、非常に仲がよろしい」

「いやーそうそうそういう基準で……」

「黙って下さいって言ったのに黙らないのはルールで禁止ですよね」

「ッス……」

 

 か、変わったなあ本当に……子供の情緒から一気に大人に駆け上がってるみたいだぁ……(直喩)。いやそれは良いことなんだが。本当に。

 

「で、諏訪さん。……まあ、同じですよね? 同じ趣味の、仲の良い、ご友人ですね? それで、依智という方は存じ上げませんが、同じくご友人なのでしょう?」

「ハイ」

「ですね! はい! そこで疑問に思ったのですが!」

 

 器ちゃんは「こほん」と一つ咳をして、口ごもりつつ言った。

 

「その、ですね……。ご友人とご友人との間に、私が位置していますが、その基準は何でしょうか? 私が、えへへ、本庄様の基準である『命を預けられる人』>『親しい友人』>『付き合いが少ない人』>『嫌いな人』……あは。に、割り込むに至った理由とは? だって私は、友人と呼ぶには違うでしょう?」

 

「あっ、分かったゾ。これ惚気入ってるゾ」「なんで語尾にゾを付けるんだよ」雨宮と明智は仲良くやっていけそうである。喜ばしいことこの上ないが、今はどっかに行って欲しいのだが。

 

「え~~それ言わせる~~? え~~恥ずかしいじゃんそれ~~!」

「……! 恥ずかしいと思う理由だということだと考えられますね!? それは!?」

「んなモン器ちゃんがAPP19の美少女で俺の事好きだから嬉しいに決まってるじゃん(ド級のド直球、ドドチョッキュウ【牙獣種】)」

「しゃあっ!!!(クソデカ大声)」

 

 うるさっ。声デカっ。まー、俺があんまり言うと、俺がロリコンみたいだから嫌なんだけど……(本音)。ほら後輩達もドン引きしてるじゃん。「阿多先輩声でかいな……」「これに人間の情緒があったのか?」そうでもなかったわ。あと明智本当に失礼だなお前。

 

「ファファファ! 私の未来は三倍まで伸縮可能なんです!(意味不明) 阿多あいの殺し方を教えてあげます! いえ残念ですがもう荼毘に付しましたっ! 第三の名前"本庄あい"になりましたから!」

「いや、なってないから」

「本庄様ってやつは結構照れ隠しさんですね! 可愛いを超えた可愛いですね!」

「なってないから」

「……ああ、はい」

 

 と、そこで器ちゃんはテンションを落ち着けた。「ん?」と首を傾げる雨宮を他所に、「こほん」と一つ咳をして言った。

 

「まあ、理由に納得できましたから文句は言いませんけどねふへへへへ。その自信を元に中身を付けていけば良いだけです。どの世界でも、そうなのですから」

「勧めねえけどなー俺もなー」

「んー……。本庄様……一つだけ言いたいことがあるんです」

 

 器ちゃんは微笑んで言った。

 

「貴方はクソではありませんよ」

 

 その言葉に、へらへら笑って、器ちゃんと別れた。

 

 

 

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