ネットミーム・デビルサマナー   作:生しょうゆ

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ニコニコ復活祈願


閑話 阿多■■、魔界へ行く(上)

 

 

「御神託だあッ! このままだと六月辺りにニコニコとハーメルンが死ぬから、今すぐ魔界行ってサタンぶちのめすぞ!」

「やはり魔界か……いつ出発する? 私も同行する」

「ロマサガ2フルリメイク発売決て院(ダイマ)」

「何!? それは本当か!?」

「この力に一番戸惑っているのは俺なんだよね」

 

 突然の発言に呆れる間もなくズアッとワグナスさんが立ち上がった物ですから、どういう意味なのかを聞く暇もなく本庄様はイーノック様を召喚しました。

 

 嫌そうな顔をして現れたのは大天使:メタトロン、もといイーノック様です。或いはシャダイ、或いはヤハウェの分霊そのものであるのでしょうが、こうして本庄様に無茶を言われて呼び出される様は、とても人間臭く親しみがあります。

 

「ともかく門を開けイーノック! 四文字の世界から乗り込むぞオラァ!」

「神は言っている。神はそんな事を言っていないと」

「本庄さんはともかく、お兄ちゃんは仕事から逃げ出したいだけでしょうが!」

 

 長剣と鎧を虚空から召喚し、準備を整えたワグナスさんの背にエリーが組み付きました。「主による救世主の否定を全世界のメシア教徒に伝える役目があるの! 当事者の一人としてお兄ちゃんには!」「ええい、ドン・キホーテが私を呼んでいるんだ!」緊張した会議場の雰囲気が一瞬にして緩みます。漫才をやっているんじゃないですよ。

 

 時は二月五日。終末を乗り越え、帝の守護と陰謀の暴露に成功し、お取り潰しの危機を乗り越えた私達ヤタガラスに待っていたのは、地獄のような後処理でした。曲がりなりにも悪魔が全世界で召喚された影響から、彼岸と此岸、或いは現世と魔界との距離が近付き、境界その物が緩んでしまっていたのです。

 

 その状況を利用し、活発化したのはガイア教やらダークサマナーやら碌でもない連中ばかりで、私も事態の引き金を引いた張本人として、その責任を取る……という訳ではありませんが、方々に駆り出されました。もっとも、大した相手は居ませんでしたが。しかし数の多さには辟易するばかりです。

 

 加えてヤタガラス上層部の悩みの種となったのは、メシア教瓦解への懸念でした。『主のお言葉をねじ曲げるわけにはいきません』とエリーは言いましたが、苦虫を噛み潰したような顔で直ちにヤタガラスと連携を図りました。ヤタガラス側もメシア教が潰れてしまえば碌でもないことになる事は分かり切っていたので、強制的に巻き込まれた形となったわけですね。

 

「だからお兄ちゃんが居なくなったら困るのよ! 政治的な問題を解決するのにも物理的な力は必要なんだからね!? 喧しいハニエル派の残党を黙らせるには、真なるロウヒーローとして……」

「私はロウヒーローではない。ワグナスだ。アナライズでもそう出てくるだろう」

「何でその名前が本当になっているの!? 何!? ハリー・ワグナス・トールマンって! お兄ちゃんにミドルネームなんてなかったでしょ!?」

「ミスタポッターァ……君の名前を今更知ったので、メシア教五十点減点ゥ……」

「おお、似てるな。だがワグナスで良いぞ。ハリー・W・トールマンと改名するつもりだからな」

 

「わっはっは」と笑うワグナスさんに、エリーは額に青筋を浮かべて長々と溜息を吐きました。ウェーブがかった金髪を荒々しく掻き乱し、「本当に、申し訳ありません。ヤタガラスの皆様方」くるりと振り向き頭を下げました。

 

 壊滅的被害を受けた……というか私が破壊してしまったヤタガラスの異界において、復興は着々と進みましたが、その多くは未だ倒壊したままです。修練場や召喚の間など、重要施設は最優先で再稼働しましたが、たとえば今、私達が揃っている会議の間などは、豪華さの割に大して重要でもないので青空教室の状態です。

 

 砕け散った天井の破片をそこかしこに置いて、畳敷きの上に首を揃えるのは上層部のお爺様方。加えてライドウ様にゲイリン様、そして坂上様と諏訪さんです。メシア教側としてもお爺様お婆様が現れることもありますが、本日はエリーとワグナスさん、そして三浦さんの三人でした。

 

 エリーの言葉におじゃる様が京扇子をぱちりと閉じ、「いや、そこの阿呆が何を言っているという話でおじゃる」と呆れた目で本庄様を見つめます。「庭園の池の鯉達をワイン漬けにしおって。鯉にリカームを使うなど初めての経験だったわ」お父様の方の諏訪様が殺意の籠もった目で睨み付けました。

 

「儂の可愛い鯉達を……!」

「そこですの? 娘の安否を気にもせず、いの一番に庭の様子を確かめるとは、流石はお父様ですこと」

「ふん、お前は殺しても死なん」

「であれば、私も本庄に同行しますわ」

 

 そう言って諏訪さんはすっくと立ち上がりました。「えっ!?」諏訪様が娘の突然の言葉に目を白黒させています。それはそうでしょう。本庄様も驚いていました。

 

「さ、流石は諏訪さんですこと。このニコニコ大好きっ娘が……」

「違いますわよ。ミシャグジさまを迎えに行かなくてはならないのです。あのお方は本体からは遠く離れていますので、術式として引き裂かれた断片が、今も魔界を彷徨っていますわ」

 

 う、と喉元に声が蟠りました。引き裂いたのは私でした。多様な側面を一つ所に纏め、矛盾のままに昇華させる。サタンが望んだその術式は、私の手によって行使され、引き裂いた後は何処へとでも放流したのでした。

 

「霊格も酷く落ちてしまって、膝を抱えて震えておりますのよ。お可哀想に……」

「可哀想……? どっちかって言うとその光景は萎びたチン……」

「死ね!」

「あっ痛ぁ!?」

 

 諏訪さんに殴られ、本庄様はイーノック様が渋々開けた門の中へと落ちていきました。「全力で殴ったのに、痛いと来ましたか」チッ、と舌打ちして掌を開き、閉じます。「霊格が足りないため、基礎スペックは低いがな。それでもレベル99とは極致も極致だ」ワグナスさんが呟き、不敵に笑いました。

 

「ではな、エリー! 帰ってくる時には私もレベル90台だ! 三浦と一緒に待っていろ!」

「88だってもう十分過ぎるでしょうが! 世の中30台で一流なのよ! この馬鹿お兄ちゃん!」

「兄妹どっちもまともじゃないとか、トールマンさんが草葉の陰で悲しむゾ……」

「……で、付いてきます?」

 

 ワグナスさんがエリーを振り切って飛び込んだ門の前で、諏訪さんが振り向いて言いました。エリーは顰め面でこめかみを押さえ、苦々しげに言いました。

 

「……私が居なくなるとメシア教の統制が取れなくなるので、行きません。三浦も私の護衛の任があるので、行かせません」

「四六時中首狙われているからスリリングで良いゾ~~これ(サイコパス)」

「というか父の時代から親衛隊をやっていた三浦の名は、現場の人員に強い影響力を持っているので、とことん政治的に使い潰さなければなりませんしね」

「俺も行きてぇなぁ……(白目)」

「では、筋肉の方の坂上様に、ライドウ様にゲイリン様は?」

「筋肉の方とは言い得て妙っすね。残念っすけど、俺が居ないとマサカド様との交渉が詰むので無理っす」

「儂もこの異界の修繕に方々への交渉に人員の配置にと、やることが多すぎるので無理だ。と言うか、たとえ暇であっても付いて行きたくなどないわ」

「私も忙しいので無理です。彼も忙しいはずなのですがね。ですが、彼は彼なので仕方ありません。葛葉ライドウは寂しく待っています」

 

「左様ですか」そう言って諏訪さんは門に進み出て、ってちょっと待って下さいよ!

 

「あの、私も行きますよ! 他の方々とは違って暇ですし、何より心配ですし!」

「えぇ……阿多様ですか……?」

「な、何ですかその困ったような顔は!」

「えぇ……だって魔界ですよ、魔界。命の危険なんてものじゃないですわよ。あの馬鹿と、あからさまに同類のアレは嬉々として向かいましたが」

 

 諏訪さんは悩むように私を見つめました。その目がじろりと私を捉え、人柄が分かっていても少し怖いです。私の身長が低いのもそうですが、諏訪さんの身長が高いため、威圧感を覚えるのです。

 

 身長178センチの長身に加え、すらりと長い蛇のような足。切れ長の瞳は鋭く尖り、右耳にはミシャグジさまに関連したピアスのような……いえ、装身具としての無骨な鉄輪を三つ、軟骨に開けています。耳朶には恐ろしく古めかしい鈴を吊り下げ、以前、本庄様が『いくら巨乳美女でも男が逃げるわ』と仰って殴られていたのを思い起こします。

 

 しかし、巫女服である今とは違い、普段は真っ赤な革のジャンパーを着込み、後ろに結った長髪を靡かせているので、それに比べればマシな方です。本庄様の『両儀式大好きか?』という謎の言葉にばつが悪そうにしていたのも思い起こし、尻込みする自分を奮い立てました。

 

「私だって……生きているのなら神様だって殺してみせます!」

「あの馬鹿を殴る理由が増えましたわね……」

「いや諏訪の娘よ、阿多の娘は確かに神を殺せるぞ。既にお主より強い」

 

 ゲイリン様は既に書類に目を落とし、老眼鏡をかけ直しています。「あの阿呆が先導するのならば心配いらんだろう。寧ろ、阿多が居れば多少はブレーキが利く。さっさと阿呆の目的を果たしてこい」どうでも良さそうに言って、お茶を飲みました。

 

「……確かに、今の私よりも、余程頼れますわね」

「はいっ! 私は母子合体魔人灘神影流活殺術正統後継者器ちゃん十段です!」

「頼れますけど深刻になりましたわね……」

 

「何があって、タフ君が力を司る者なんてものに……」とぶつぶつ呟きながら、諏訪さんは私の手を取って屈み、目線を合わせて言いました。

 

「ですが、いくら強いとは言っても、阿多様は中学生ですし、訓練を積んだわけでもありません。危なくなったら、すぐに帰りますわよ」

「心配要らないと思うっすけどねえ。お前も阿多に倣って合体魔人した方が良いんじゃないっすかぁ? って呪詛投げるの止めろっすよ諏訪パパ」

「淑女を愚弄するとは息子の育て方を間違えたようだな坂上ェ!」

「淑女……でおじゃるか?」

「あ゛?」

 

 乱闘が始まりました。流石に召喚や魔法は使いませんが、お爺様達が取っ組み合いの喧嘩をしているというのも妙な光景ですね。それに全然なっていません。確かに徒手空拳でも大抵の悪魔は縊り殺せるでしょうが、全くもってなっていません。ちょっと教えてあげましょう。

 

「私も遂に、弟子を取る時が来ましたか……」

「来てませんわ。馬鹿共は放っておいて、さっさと行きましょう」

「あ、そうでしたね!」

 

 本来の目的を思い出し、諏訪さんに手を引かれて門を潜ります。その左手が硬く握られたのが分かりました。見れば唇が引き締まっています。

 

 確かに、魔界とは、どんな恐ろしい場所でしょうか。アリスと戦ったときのことを思い起こします。人の世とは遠く離れた、悪魔の本拠地。悪魔の本体が跋扈する魔境。知らず知らずの内に、身体が緊張に強ばります。

 

 輝く青色の光を抜け、目の前に開かれた景色は──。

 

「うわあ野獣先輩!? 近くに寄らないで! 堕天してしまいます! 寄らないで、嫌ああああっ!」

「サタンとルシファーをレイプした人間ではないか!? おい逃げるぞ! みんな犯される!」

「何故、この様な邪悪で穢れた人間にメタトロン様は味方なされるのですか! それが主の御意志だと言うのですかあああ!」

 

 ──地獄絵図でした。

 

 いや、神聖な気配に満ち溢れ、雲海が地としてある、まさしく天国と言った風景にその様な感想を抱くのもそぐわないのですが、悲鳴を上げ、四方に逃げる天使達を見ると、そんな言葉が浮かんできます。

 

 対して本庄様とワグナスさんは呑気その物で、きょろきょろとお上りさんのように景色を眺めては、物珍しそうに建物を指差したりしています。と言うか何故に汚らしい悪魔を召喚しているのですか。

 

「俺も生きて天国に到達とか、イーノックのリスペクトだな! 迎えのルシフェルか四文字は何処かな?」

「七十二人の処女はどこに居るんですかね……? つか処女膜再生するとかグロくない?」

「野獣先輩、それはイスラームの天国だぞ。それに真実の伝承かどうかも疑わしい物だ」

「神は言っている。さっさとどっかに行ってくれと」

 

 馬鹿みたいな会話でした。逃げていく天使達を指差してゲラゲラ笑っています。この汚らしい薄らハゲの悪魔は存在その物が下品なので嫌いです。ワグナスさんは天然が入っています。まともなのは溜息を吐くイーノック様だけです。

 

「……来ぃましたわよ、本庄」

「おっ、諏訪さん……なんで器ちゃん居るの?」

 

 物凄く嫌そうな顔で諏訪さんが話しかけると、本庄様はちょっと驚いたように私を見つめました。そうして引いたように諏訪さんを見つめました。

 

「未成年を危険地帯に連れてくるとか、この人頭おかしい……」

「その危険地帯に意味不明な理由で突っ込んだお前を心配して、健気にも付いてきて下さったのですわ!」

「それマジ? 帰って良いよ!」

「か、帰りませんよ! どうしてそんな事を言うんですか!」

「当たり前だよなあ? メンヘラヤンデレホラーメスガキよりも、俺の方がヒロインに相応しいってはっきりわかんだね!」

「あざーす!(全ギレ)」

 

 私はステハゲの腕をガシッと掴み、「なにっ」という声も無視して「しゃあっ」とぶん殴りました。ネットミーム野獣先輩屈辱、私に失神KOです。村中右ヒジ深刻です!

 

「良くやった! それは俺の仲魔じゃない。殺して正解だった」

「し、死んでないんだよなぁ……死ぬかと思ったけど……」

 

 ゴミみたいな悪魔がよろよろと立ち上がりますが、どうでも良いです。本庄様に褒められているので。この悪魔は汚くて下品で、そして本庄様の相棒気取りだから気に入りません。

 

 そして、何だかんだ言いながらも、本庄様が一番に信を置いている悪魔だと言うことも、私は気に入りません。

 

 ですので、ちょっと考えました。私も役に立つと言うことを、証明しなければ。

 

「……第一ですね、諏訪さんがミシャグジさまを連れ戻すと言っても、断片はバラバラに流れてしまっているではないですか。それを纏めて元の形に出来るのは私だけですよ!」

「あ、阿多様……そこまでお考えだとは……!」

「ぜってぇ今適当に思い付いただけでしょ」

「失礼な事を言うな阿呆!」

 

 ばごん、と諏訪さんは本庄様を殴りましたが、どうして分かるのでしょうか。ライドウ様のように直接覗けるわけでもないのに、謎ですね。

 

 その様に致しまして、始まりました道中は、奇妙奇怪の連続でした。

 

 天国を追い出されるようにして出発した私達は、そのまま鬱蒼とした森へと至りました。何故、天国の次に森が? ギャアギャアと怪鳥が騒ぐのが不気味です。「あの人間だ!? レイプされるぞ逃げろ!」やっぱり不気味じゃありませんでした。しかし、その悪魔の存在は不思議です。

 

「妖魔:コッパテングですわね。さしずめここは、妖怪の山ですか」

「風神録は名曲揃いですよね……」

「分かりますわ!」

「私はまだ永夜抄をやっている最中なので、ネタバレは控えて貰おうか」

「いやなんで天国の次が日本の魔界なのか教えて下さいよ!」

 

 話に入れないのが悔しく、少し強めに言いました。私も先日の諏訪さんのように、『アスラン専用のズゴック格好良いですね!』『私も大好きですわ!』と会話してみたいのです。

 

 ……と言うか、何故二人で映画を見に行っているのですか。有耶無耶になってしまいましたが、結婚の話はどうなっているのですか。

 

「おっと、ご存じなかったかな」ワグナスさんが通ってきた門を指差します。「魔界というのはシャボン玉のような物と喩えられるのだよ。地続きである現世とは違い、そもそも神話や概念と言った位相が異なるからな。物理的に続いているわけではない」

「そうだよ(便乗)」

「無数のシャボン玉と言う名のボルテクス界が、アマラ宇宙の中に泡沫として湧き上がり、互いに接しては離れていく。それが魔界だ」

「当たり前だよなあ?(便乗)」

「その魔界も、幾多もの平行世界毎に存在するとかしないとか言われてたり言われなかったりするらしいから、何かもう凄い大きさなんだろうな」

「急に曖昧になったなお前……」

「うるさいな。自分は知らなかった癖に便乗するな」

 

 ワグナスさんが語った話は、途轍もなく膨大な規模で、どうにも要領を得ませんでした。しかし、それではどこをどう行けば目的地に辿り着くのでしょうか? 今の話が本当であるのならば、私達はその接したシャボン玉の中を延々と彷徨い続ける事になるのでは。

 

「なあに、そのためにジュセが居る」

「オッスお願いしまーす!」

 

 本庄様に肩を叩かれ、ゴミが得意げな顔を浮かべました。……嫌な予感がしたので、ちょっと遠くの方を見ます。

 

「オラ! お前のチンコ突っ込むんだよ! この神聖にして深遠なる妖怪の山によぉ!」

「やりますねえ! サタン君の方を向いてビンビンに勃ってるから、待っててくれよな~~頼むよ~~」

「……まあ、世界を掘り進み、より近い魔界を進むというのは、名案ではありますが……よりにもよって、ステハゲの粗チンが羅針盤代わりとは……」

「ヨシツネ見参! 何をやっていやがるくたばれ死ね!!!」

「ほう、強敵登場だな! 行くぞ!」

 

「デッデッデデデデ、カーン(応援)」「カーンが入っている!」馬鹿みたいな会話の癖に剣戟の音が耳に追い付きません。きっと私の背後では見事な打ち合いが起きているのでしょうが、それが守っているものを見たくもないし聞きたくもないので、暫く景色でも眺めていましょう。

 

 数分後、「おっ、開いてんじゃ~~ん!」「お前が開けたんだよなぁ」という声と共に剣戟が止みました。「阿多様、もうよろしいですわよ」諏訪さんが言って下さったので振り向きます。

 

 確かに、大木犇めく古来の森に、イーノック様が開けたような門が開いています。その傍で一仕事を終えたように尻を突いている塵屑はどうでも良いとして、今更ながらにワグナスさんが戦っていた悪魔を見つめました。

 

 英傑:ヨシツネです。確かに、鴉天狗が跋扈する山に相応しい悪魔でしょう。ワグナスさんと相対する朱塗りの鎧には少なくはない刀傷が刻まれています。

 

 対してワグナスさんの方には傷を見受けられません。ウェーブがかった金髪と、ぞっとするほど整った顔立ちながら、その体躯は酷く大きく、坂上様に勝るとも劣りません。常の如く銀の鎧を輝かせる様に、何時だか本庄様が言った、『ワグナスってワグナスにチョーS(そっくり)だよな!』という言葉を思い出しました。

 

 ……そう言えば、そのワグナスとやらが出るゲームのリメイクが発売するというのも、予言の一種なのでしょうか? だとすれば無駄遣いが過ぎませんか?

 

「……これ程の強者と戦えたのは楽しかったぜ。だからもうどっかに行け。二度と来んな」

「残念だ。しかし私達も急ぐのでな。さらばだ!」

「イケメン同士の戦闘とか、眼福でしたわね。……このステハゲが視界に入らなければ」

 

 その様にして、次々と私達は塵の開けた穴を通っていきました。文章にすると最悪としか言いようがありませんね。本庄様がそれを頼りにしているのが最悪です。

 

 

 

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