空間がうねりを上げる。
神霊と事象が顕現し、相反して互いを殺し合う。唯一絶対の神は唯一が故に、望む望まぬとに関わらず食らい合う。
だが、事象は神霊が至ったその先。まともにかち合えば勝てる道理はない。
「そうか……だからこそかよ、イーノック!」
「その通りです。神霊の顕現もまた、貴方のための一手に他ならない」
その声は耳元から聞こえた。風にはためく黒マントが視界を覆う。抜剣の衝撃が髪を揺らす。
だからこそ、だからこそだ、もう一人! 猿空間から駆け出た時代錯誤の黒マント!
「……は?」
シャダイを睨んでいた事象が、間抜けな声を響かせた。見つめるのは自らの吹き飛ばされた左腕。一刀にて切断せしめた剣は、蓄光の緑を引いて静かに構えていた。
時代錯誤の黒マントが、蛍光を散らしながら棚引く。"それ"の横顔に表情は無かった。"それ"は人の物とは思えぬ声で確かに言った。
「必殺の霊的国防兵器、その零──"葛葉ライドウ"ここに見参」
そう呟き、ライドウは空を駆けた。葛葉ライドウ。見覚えがある。あれは葛葉ライドウだ。黒マントを翻した彼女ではなく、その身に纏われ身に沈む十九の思念は、確かに見覚えがある力の発露。
歴代の思念を歴史を重みをその全てを身に宿し、葛葉ライドウはただ進む。悪魔が来たりて剣を振るう。その技は絶技を通り越している。人の域を途方もなく外れている。
だが笑った。飛びに飛んで事象の腹に風穴を開け、抜剣に界を劈く人外の絶技をもたらした横顔は、確かに微笑みを見せ呟いた。
「……任務完了。頼みましたよ、ゲイリン」
「おうさ見えたぞライドウ! 界の方式も生贄も、根こそぎ返して貰う!」
事象の足下近く、不意に現れたゲイリンが、ライドウの刮ぎ落とした肉に接続し、その内側から何かを取り戻していく。何かを切り離し、彼方へと送る!
「猿空間だか何だか知らんがな、この場にあるということはヤタガラスの影響下よ! なれば儂の術中に在るも同じ! 接続からの切断! 乖離からの安息よ! 貴様の腹底に蓄えた物全て、世界の盲点へと送ってくれるわ!」
「な……っ!? なにを、そんな! 馬鹿なッ!」
事象は動揺し、崩れ落ちた左腕を信じがたいように見つめた。いや奴が信じがたいように見つめているのはライドウだ。まるでそれが存在するはずが無いとでも言わんばかりに目を見開いて、しかし不意に俺を睨んだ。耐え難いように悪罵を乗せて叫んだ。
「ふざっ……ふざけるなよ! 今更、今更! 何なんだこれは! あと一歩の所で、尽く邪魔を! その流れ、その根源! 全て貴様のせいだ塵芥ッ! 貴様のせいで何もかもが!」
「いや、そりゃ一人だけ先に運命を敷いちゃったら、流れはそこに向かうでしょ。元々、運命がぐっちゃぐちゃに堰き止められて、向かう先がなかった世界だったんだから」
「……は?」
威圧的に放たれた声に、煙のような男が返した。
「必殺の霊的国防兵器なんて、本来は産まれるはずがなかったんだよ。だろ? あんな馬鹿げたもの」
「まあな。元々、偶然産まれたような物っす。……終戦末期の狂気の理論が、廃棄の直前に産声を上げやがった。それが断末魔でもあったがな」
「その理論が生まれたこと自体が狂っているんだ。歴史の歪みが、あり得ざる物を生み出しやがった。葛葉ライドウを神として祀り、それを身に下ろす神がかりなんて物をね」
「だからお目付役の業斗童子が居なかったわけだ」そう口にして、男は……葛葉キョウジは、慣れた様子で俺の肩を叩いた。
「やっ、元気? 葛葉キョウジここにぶげえあっ!?」
「死んだんじゃなかったのかよお前よぉ!? えっ何? お前も猿空間に行ってたの? えっ、何が起こってんの?」
「何で聞くのに殴るんだよ……ルールで禁止だよね」
そう言ってキョウジは呆れたように俺を見つめてくる。だけど聞きたいのはこっちだよ!!! 何がどうなってんのこれ!? イーノックは四文字だしライドウはライドウだしキョウジは生き返ってるし何これ!?
「あーもう滅茶苦茶だよ(半ギレ)。おいキョウジ、何度も出てきて恥ずかしくないの?」
「いやー僕も死ぬつもりだったんだけど、というか戻ってきちゃって正直恥ずかしいんだけど、アカラナ回廊から出てきたあいつらに魂ごと押し流されちゃってさあ……」
「……あいつら?(嫌な予感)」
片腕を失った事象は、相対する神霊の威圧に負け、その存在格を落としていく。事象が事象としての存在を保てなくなり、霊格は瞬く間に零落していく。
故に、COMPの表示が切り替わる。[神霊:トリックスターが 一体 出た!]だが、それだけには留まらなかった。奇妙な音を立て、次々とこの場に何かが召喚されてくる!
「ふざけるなよ! ふざけるなよ! どうしてこうなる! 我は事象の筈! 唯一神を超え、真なる神としてこの地に! なのに何だこの流れはッ! 何故世界はあの塵芥の味方を! こうなれば直ちに奴を殺し……っ!?」
半ば地団駄を踏むように伸ばされたサタンの腕を、飛来した何かが跳ね飛ばした。一体ではない。無数に来たる。その全ては赤黒の装束を身に纏っている!
硫黄の息を吐き、鋼鉄のメンポに刻まれた文字は、禍々しき「復」「讐」の文字。彼は腕を跳ね飛ばした姿勢のまま、軽やかにオジギをして言った。
「ドーモ、トリックスター=サン。アヴェンジャーです。……オヌシを殺すため、三千世界の果てより駆けつけたぞ!」
[魔人:アヴェンジャーが 一体 出た!]
同時にその腕は四方八方からの拳戟により砕かれる。それを成したのは二体の悪魔。そのメンポには……おお、禍々しき文字で「犠」「牲」と「反」「主」と刻まれているではないか!
「ドーモ、トリックスター=サン。ヴィクティムです。この身は怨嗟の結晶なれば、オヌシを殺すため、メンポだろうが何だろうが被ってやろう!」
「ドーモ、トリックスター=サン。アンチヒーローです。サタン、ルシファー、ヤハウェ、シヴァ、アスラおう、皆尽く殺すべし! 慈悲はない!」
[魔人:ヴィクティムと 魔人:アンチヒーローが 出た!]
三体の魔人がサタンに向かい、「「「イヤーッ!」」」と地獄の怨嗟めいたシャウトを放ち、殺人的カラテを連続的に繰り出していく。そのワザマエの尽くがゴジュッポ・ヒャッポ! まさしくブンシン・ジツを開眼したが如くに、同時多発的波状攻撃をサタンへ向け放つ!
……いや、なにこれ? 何が起こってんの?(素)
「何を惚けた顔をッ! 全て貴様のせいだろうがあッ! 由来を一つとする魔人共を呼び寄せたのは貴様ッ! 貴様のせいで!」
「えぇ……んなこと言われても……」
サタンのボケが勝手に怒ってくるが、この展開に一番困惑しているのは俺なんだよね。しかし混乱している最中にもCOMPに表示される文字はどんどん増える。増えに増えて追い付かない。
「ドーモ、トリックスター=サン。ノーマッドです」
「ドーモ、トリックスター=サン。デッドエンドです」
「ドーモ、トリックスター=サン。ディザスターです」
「地獄からの使者、スパイダーマン!」
「ドーモ、トリックスター=サン。アポカリプスです」
「おい今変なの混じったぞ!」
いや変なのしか居ねえけど! 変なのしか居なさすぎて頭痛くなってくるわボケ! だが次々増えた魔人共は揃ってサタンへと蹴りを突きをカラテを浴びせ、その肉を刮ぎ落としていく。
そして、その光景に目を丸くして、安心したように微笑み地に落ちたライドウを受け止め、一人の魔人が俺の傍に飛び来て言った。
「ドーモ、ホンジョウ=サン。……何を驚いている。オヌシにサヨナラは、言わなかったはずだがな?」
「驚いているんじゃなくていや驚いているのかそれ以上に呆気に取られているんだよ何だお前ら!?(驚愕) それとなんだその得意気な顔!」
「実際、愉快だ。我らが一堂に会し悪を滅する。復讐者にまるで似合わぬ、トンチキめいた光景よ」
「だが」と彼は笑う。そのメンポには何も刻まれず、ただ鋼鉄の面だけがある。その奥に笑みを見せて彼は言った。
「オヌシの下では、それも悪くはない。アラタメマシテ、魔人:サプライズニンジャです。……コンゴトモヨロシク」
「何だその魔人!?(驚愕)」
思わず発した声に、ライドウが「ふふっ」と笑って腕から降りた。その足下はふらりと揺れて常通りではない。「心配など要りませんよ」都合四十の瞳が思考を射貫き語りかける。「"目"は貴方に向きました。流れは確かに貴方の方へ」そう言って彼女は倒れ込んできた。
「見なさい。神霊に魔人の連合は、全て貴方が引き寄せたもの。無様極まりないですね、トリックスター」
「ふざけるなこんな物など知るか! 何故、どうして、どうなってこうなる!」
「そうだよ(便乗)。あーもう滅茶苦茶だよ(半ギレ)。おい野獣、お前も早くしろ(適当)」
その言葉にサタンは急にキレた。しかしキレながらも動けない。青い光を身に受けて、魔人共の攻勢に身を苛まれ、碌に動けぬ様子で尚もブチ切れる。
「そ、の、放言……! 貴様がッ! 貴様のせいで何もかもが滅茶苦茶だ! 訳の分からぬ概念を勝手に作り上げて! 何が属性:Internetだクソがッ! 淫夢と偶然合致しただけの人間が、何故この様な流れを引き寄せられる!」
「
「タフは言っています! 己の悪因悪果を呪えと!」
「そらワシと主がクソボケに味方しとるんやから流れの一つや二つ変わるに決まっとるやんけ。人類の集合的無意識めっちゃタフやし」
「黙れ黙れ黙れ! 貴様らなど知らん! 我の考慮の外! 元より関係ない埒外のネットミーム風情共が! 淫夢などを使ったのが全ての間違いの原因だった!」
「草」
「草を生やすなァッ!!!」
俺は思わず笑っちゃった。そりゃそうだろ。淫夢を使った時点でお笑いになるのは決まっているんだよなぁ。お前、最初っから間違えているんだよ。
だから、そうだ。この流れは偶然ではなく必然。各人が努力を成して手繰り寄せた流れではあるが、勝ちは最初から決まっているんだ。
だから後は、ほんの一押し。それが全て。そのために俺はここに居る。だから最後まで踏ん張れ両の足!
……俺は、"目"を集めるように人差し指を立てた。
「さて……」
ぐるりと周囲を眺める。一瞬の静寂。全ての目が俺を向く。感じている。分かっている。タフ君がにやりと笑い「クソボケがっ」と呟いたのが聞こえた。
目が集まっている。この場を超え、集合的無意識を仲介した全ての人類が、今この瞬間を見つめている。世界の中心に俺は居る。
流れは産まれた。流れが来た。だから後は、それに便乗するだけだ。
乾いた喉に唾を呑む。震える舌を、馬鹿馬鹿しい考えに勇気づける!
「さて、さて、さて……トリックスター。恐るべき存在だ。秩序立てられた神話、物語の中に、一種特権者として君臨するかき回し役。その存在はエンターテイメントであるが故に、大衆の人気を大いに得るだろう」
「何を言うッ! 今更我に降伏でもするつもりか! その頭踏みにじって塵にしてくれるわ路傍の石ッ!」
サタンが罵り声を上げ、輝きを天中に煌めかせる。しかしシャダイがその動きを掣肘する。何より"目"が、この場に億として集いつつある目が、邪魔をするなと文句を言う。
そうとも。それじゃあつまらんだろう。相手が何かを企んでいるのに、それを成す前に邪魔するなんてな。
だから動けよ舌っ。腹ぁ括れ! 怯えなんて微塵も見せるな! 余裕ぶって不敵で堂々として、くっだらねえ事をぶちかませ!
「だが、だが……! 神話とは古いもの。今では『トリックスター的な』という使われ方はするものの、それその物を話題に挙げ、信仰するものは数少ない。ましてやトリックスターそのものに向ける意識など、殆ど無いだろう」
「愚弄を重ねて何のつもりだ! 貴様の魂胆など分かっているわ! 人類の集合的無意識に働きかけ、我の力を削ぐつもりだろう! だが概念を消すなど、たかが弁舌で出来る物か!」
「勿論、キャラクターの文脈としては生きている。『トリックスター』は存在する。散々ふざけて、馬鹿馬鹿しくて、下らなくて下品な……と。だが、それを『トリックスター』と呼称するのは、少々古臭くはないだろうか?」
「なに、何を……」
そう呟いたサタンの身体がぐらりと揺れた。「がっ」と苦しげに声を上げて、信じられないように俺を見つめた。
「き、貴様、まさかっ……!」
「あっ、この流れって……えっ、マジすかお前。全部このためっすか」
「……人の子よ。まさか君、流れを作れというのはこのためか?」
外野がなんやかんや言ってくるが、無視して俺は言葉を紡ぐ。アドリブで考えてるから集中しなきゃ(迫真)
「そう! 今まさに、概念の再定義が必要なのである! 古い意味合いでの『トリックスター』から、現代における正しい意味での『トリックスター』へと! その概念を端的に言い表す名称は、キャラクターは、この男しかいないだろう!」
「いや本庄、それ滅茶苦茶言っているぞ。ガバガバにも程があるってそれ一番言われているからな」
「お兄ちゃんそのきったない言葉遣い直してよね!」
うるせえエリーお前がさっきやったのもガバにガバを重ねた無理矢理だったじゃねえか。それにこれを語るにはこの程度のガバガバで良いんだ上等だろ!
何せこれから語るのは特級のガバだ。ガバガバどころかスカスカの理論だ。
だからこそ勝つんだよ。だからこそあいつが来るんだよ! だってそれこそが、奴の生存を確定させる、唯一の存在証明なのだから!
「故に、私はここに一つの学説を提示する! 神も悪魔も耳の穴かっぽじって聞け! 否定できるのならしてみせろ!」
「止めろ! ふざけるな! 馬鹿野郎がああああッ!」
「──野獣先輩、トリックスター説!」
サタンが苦しみながらその腕を伸ばし来る。しかしシャダイがやや引いたように半目になりながら、その拘束を緩ませない。だから好きなようにくっちゃべってやる!
「根拠1! トリックスターとは、物語の中で往々にしていたずら者として描かれる。野獣先輩も後輩をレイプしたりするいたずら者である」
「悪戯どころか犯罪だろうが! やめろ! 目を覚ませ人類の集合無意識!」
「根拠2! トリックスターは善と悪、破壊と再生、賢者と愚者など、二つの側面を持った存在として描かれる。野獣先輩も人間の屑と人間の鑑、二つの性質を併せ持つ」
「えっ、こっから全部こんな調子で続くんすか?」
「儂はもう疲れた。後で起こしてくれ」
「ちょ、ゲイリン」
「根拠3! トリックスターは多くの神話で文化をもたらす。野獣先輩もインターネットに淫夢という文化をもたらした」
「そんな低俗なものと我を同一視するなボケ間抜けェ!」
「根拠4! トリックスターは秩序や法を無視して振る舞う。野獣先輩も法を無視して後輩を昏睡レイプする」
「ねえこれ終わったらどうなるの? 百科事典の項にあの汚らしい悪魔が大真面目に書かれるようになるのかな?」
「うおー! 本庄様がんばえー!」
「だめだこりゃ。目ぇキラッキラで見上げてるよ」
「根拠5! トリックスターは神話の中で失敗することが多い。野獣先輩も昏睡レイプの途中で遠野を起こしてしまうという失敗をした」
「概念レイプ! 神話と化した先輩かゾ」
「三浦?」
「あっ……ゾ」
「根拠6! トリックスターは、その失敗の結果、法や概念が産まれる説話が多い。野獣先輩も昏睡レイプには失敗したが、純愛という成功を生み出した」
「性交に成功、ですか……ふふ」
「
「根拠7! トリックスターと野獣先輩をそれぞれローマ字にするとTRICKSTERとYAJUSENPAI。そこから共通する文字を抜き出すとSIE。更に重なり合う文字を抜き出すとTRA。SIAETR……死合えTR……これは一体、どういう意味なのか……?」
「意味などあるわけがないだろうが! そんなガバガバアナグラムにッ!」
「それではT=タドコロとR=ルシフェルに死合っていただこう」
「は?」
その瞬間、サタンの間抜けが何もせずともボコボコに殴られていく。そして「ごはあッ!?」と倒れ伏した。それを見て俺は笑う。上から目線で嘲笑してやる!
「何と言うことだ。タドコロがルシフェルに勝ってしまったではないか! これは野獣先輩が古い神話に引導を渡した形になりましたね……」
「ふざけるなボケェッ! ルシフェルの頭文字はLだろうがッ! 何もかも間違っているッ!」
「ばぁか。正しい方が勝つんじゃねえ。面白い方が勝つんだよ。この状況ならな!」
だからお前は殴り負けたのさ。お前を殴ったのはこれを見ている億の大衆だ。
見ろ。聞け。感じてみろよ。お前が利用したと思い込んだ大衆の意思をよ。
「根拠8……無様な神気取りと、クッソ下品なネットのおもちゃ。どっちがトリックスターに相応しいか、決まってるよなあ?」
その言葉にサタンは虚空を呆然と見つめた。呆れ憤慨し歯軋りを鳴らし、信じがたいように叫んだ。
「ば……馬鹿げているッ! こんなにも大衆は愚かなのかッ! 法による救い所か、混沌による進化さえ求めず、剰え中道の調和ですらなくッ! ただ単に、『面白そうな方』に流れるというのか!?」
「当たり前だよなあ! 歴史は勝者が作るだと? それでも正しい物は残るだと? 下らないね! 馬鹿げていやがる! たかが神話、たかが歴史! "今"に勝てるわけがないだろうが!」
そうとも、そうとも! だって大衆は馬鹿で愚かで浅ましくてどうしようも無いからな。だから勝つんだ。だからお前は負けるんだ!
「根拠9! 風説の流布! 風評被害! ミームの汚染! 人類というカス共の中では、たとえ全く事実に即していなかろうが、面白い方が流行るんだよ!」
「クソッタレのボケ人類があああああッ!!!」
──見えた。
叫び声を上げるサタンの奥底。奴が居る。奴がこの場に飛び出したがっている。この場の主役は俺だと叫んでいる。
だから俺は、笑いながら叫ぶんだ。歓迎するように叫ぶんだ!
「根拠10! そして、何よりも! テメエみたいなクソつまらねえボケ悪魔が、野獣先輩に勝てるわけがないだろうが! Q.E.D.証明終了! 後は学会追放でも何とでもしやがれ!」
サタンが藻掻く。胸内から飛び出そうとする何かを押し留めるように苦悶の声を上げる。だがそれは"振り"だ。そうだろう?
だから、そう。こんな時に言う台詞は何か、語録は何か! 全てを解決する魔法の言葉! それはとっくに決まっているよなあ!
「じゃあ、オナニーとかっていうのはああああああああ!!!」
「──やりますねえ!」
クッソ汚い声が響く。クッソ汚いシルエットが浮かぶ。
下には何故か水着だけ。上には半袖のシャツ一枚。そこには特徴的な『ISLANDERS』の文字。
そして、そして。余りにも見慣れた、余りにも待ちわびた、小憎たらしいステハゲ顔は!
[威霊:ヤジュウセンパイが 出た!]