ユーミンが「象」を出演させ、山下達郎が「好き勝手やった」…中野サンプラザ再開発騒動に募るモヤモヤ

スージー鈴木の『Now And Then』第11回

なんと言っても駅近

ちょうどいいハコ、最高の立地(後述)である中野サンプラザは、結局どうなってしまったのか。

いろいろ報道され過ぎて、結局のところがよく分からない。1973年に開館し、そのちょうど半世紀後の2023年に営業を終えた中野サンプラザ。今、一体どういう状態なの?

――東京都中野区は4月、複合施設「中野サンプラザ」で再開発事業を担ってきた野村不動産などとの協定を解除する協議を始めた。建設コストの上昇をきっかけに計画は迷走し、事実上の白紙撤回に追い込まれた(日本経済新聞/2025年5月5日)

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答えは「白紙」である。しかし建物内部は経年劣化が進み、設備の機能回復も難しいという報道もあり、そんな中では「白紙」というよりも「問題先送り」「宙ぶらりん」という感じもする。

そこで今回の「スージー鈴木の『Now and Then』」は、まず音楽ホールとしての中野サンプラザを振り返ってみることとする。

「2,222席」――この縁起がいいのか悪いのかよく分からない「2並び」こそが、中野サンプラザのキャパシティだった(出典:チケジャム、以下同様)。今から考えると、この絶妙なキャパこそが、音楽ホールとしての中野サンプラザの魅力だったと思う。

NHKホールの3,601席、東京国際フォーラム(ホールA)の5,012席などは、中野サンプラザより少々大きく、その分、いち観客としての感覚では、一体感のようなものに欠ける気がする。

もちろん演奏される音楽の質にもよるとは思うが、個々の楽器の音をしっかりと聴き取りたいとなると、2,000席前後が、音楽ホールとして、1つの適切な水準だと感じる。

かつての東京における、この規模の音楽ホール御三家といえば、中野サンプラザに加えて、渋谷公会堂(現:LINE CUBE SHIBUYA)、そして、2010年に閉館した東京厚生年金会館だった。

LINE CUBE SHIBUYAのキャパは2,084席、そして東京厚生年金会館(大ホール)は2,062席(出典:LiveFans)と、きれいに2,000席前後で並ぶ。

もちろん、今と比べて、コンサート/ライブ市場が小さかったこともあろうが、昭和の時代、音楽ファンは「2,000人の中の1人」として、コンサートを楽しんだのである。

しかしこの「御三家」の中で、中野サンプラザが優れていたのは、まずは立地だ。何といっても「駅近」。ご存じの通り、JR(東京メトロ・東西線も乗り入れる)中野駅のほぼ真ん前にそびえ立っている。

一方、渋谷公会堂は渋谷駅と原宿駅の中間点。渋谷駅から向かった場合、人混み溢れる公園通りをウネウネと登っていかなければならない。東京厚生年金会館も、新宿御苑前駅と新宿三丁目駅と曙橋駅の中間点で、こちらも駅からウネウネ歩くことを強いられた(もちろん、それが好きな人もいただろうが)。

あと中野サンプラザで良かったのは、近くに中野駅北口の飲食店街、それも気取らない大衆的な飲み屋が立ち並ぶ一角があることだ。

コンサートの楽しみは、終わった後、一緒に行った人と感想を語り合うこともセットだと思う。もちろん渋谷公会堂も東京厚生年金会館も、少し歩けば、東京有数の繁華街があるのだが、中野サンプラザに隣接する、頃合いのいい飲み屋街に繰り出して、今さっき終わったコンサートの感想を語り合うのは、まさに私の好みにぴったりだった。

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