ネットミーム・デビルサマナー   作:生しょうゆ

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第三十六話 サヨナラ、サヨナラ

 

 

 

 ──声が聞こえた。

 

 今、確かにあの声が。軽薄でふざけた、何度も聞いた声が聞こえたんだ。

 

「……そこに、居るのか?」

 

 呟いた先、光が満ち、満ち足りて弾け、顕現した姿は目視すら叶わない。何か大きく恐ろしきもの。それが目の前に存在している。

 

「──我は事象。事象:トリックスター。なれば世界は我が手の内に在り」

 

 視界が弾け、砕ける。光が満ちる。だが正気を保てる。俺は確かにここに居る。

 

 それと同じように、お前もそこに居るのか。そのために、お前はそこに居るのか。

 

「行くのか、サマナー」

 

 イーノックが呟いた。倒れ伏した俺を支えながら、瞳は戦況を睨んでいる。

 

「サマナー、君には権利がない。義務もない。世界を救えなど、神は言っていない。それでも行くのか」

「お前だって諦めてねえだろ。そんな顔浮かべやがって」

「まあな」

 

 状況は端的に言って最悪だ。事象は器ちゃんを何らか利用しやがったのか、大母の影は消え、ただ一体のみが中空にある。その足下に苦しみ倒れ伏すのは器ちゃん。こいつ何時も苦しんでんな。

 

 だが、その接続により完成した事象は何人をも寄せ付けない。坂上さんの剣は止まり、ニンスレのカラテは腕がへし折れ、ワグナスの魔法は中途に消える。ライドウの斬撃が弾かれるところとか初めて見たわ。

 

「本来ならば、七つの悪魔を運命に置き、我が置いた運命者を軸とし、大衆の信仰を糧として至るはずだったが」

 

 事象は静かに口を動かし、眼下、自らの力の根源であろう器ちゃんを嘲笑う。

 

「想定外、想定以上。じきに全てを取り込もう。星すらもその身に宿す異才は、万界の神をも平伏させるだろう」

 

 へえ、もう勝ったような口振りじゃねえか。運命者どころか、野獣先輩を軸として至ったくせによ。今更ながらに字面の最悪さに笑いが出てくるぜ。

 

 ……だからこそ、乾坤一擲の一手が打てる。

 

 神どころか、その先を相手にした大勝負。そこにふざけた顔で割り込むのが、お前らしいよな。

 

「隙……綻び……いや、流れか。流れが一つ、出来るか? イーノック」

「あの少女を救い出せ。後は私が何とかする」

「何とかする為に何とかしなきゃいけねえか。こりゃつれえな」

 

 へらへら笑って銃弾に弾を込め、さあ下らなくやっちまおうかと、そう思った矢先、「僕が行こう」とキョウジが言った。

 

 その顔に常の薄笑いは浮かんでいない。勝手に動く身体を押し留めるように、べきべきと変な方向に腕を折り曲げながら、真剣な顔で奴は言う。

 

「認められないね。ああ認めるものかよ。僕は僕の思うままに悪を成した。今更責任は誰かの手に? 僕は良い子ちゃんだって? なわけが」

 

 ルシフェルの言が正しければ、奴もまた器ちゃんと同じ立場にあるだろうに、意思の一つに無理矢理身体を動かす。

 

「不死の根源はアカラナ回廊の応用だ。僕は現在と過去に自分の魂魄を分割している。その二方向から同時に責め立てれば、本体はともかく、一瞬だけ繋がりを絶つくらいは出来るだろう。僕は死ぬだろうけどね」

「よっしゃあ言ってる意味分からねえからさっさと死んでこい!」

「……君さあ、最後に掛ける言葉がそれかい? もっとこう……」

「何言ってんだボケ! テメエ相手に甘っちょろい言葉掛けるわけねえだろ。大体、何味方面して紛れ込んでんだオラァン!? お前の事情なんてこれっぽっちも知らねえんだよこっちはよ!」

「まあ……そうだけど……理解して貰いたくもないけどさあ……」

 

 ぐちぐちと、それと少し引いたようにキョウジは呟きやがる。下らねえ。さっさと死ねよ。お前はそう決めたんだろうが。俺が何か言葉を挟む必要なんてねえだろ。

 

「知らねえよ。テメエに何があったかなんて。……だから、テメエの理念も決心も思想も、全部ひっくるめて有効活用してやるからよ、さっさと安心して死んでこい」

 

 そう肩を叩き、背中を押した。すると奴は虚を突かれたような顔を浮かべ、次いで嬉しそうに笑った。

 

「……はは。流石だ。流石は三代目……いや、君は君か。初代、本庄モトユキ」

「当たり前だよなあ? そんな呪われた名前継ぎたくねえから!」

「ガイアの連中に困ったら方便でも良いから名乗ってみてよ。そう名乗れること自体が君の力となるはずさ」

 

 そう言ってキョウジは駆け出した。歩行は瞬間に音速へ。来たる光輝をものともせず、死に生を、生に死を繰り返し、我が身を省みず器ちゃんの元へと迫る。

 

 その特攻に歩調を合わせるのはどっから湧いて出てきたシャドウちゃん!? キョウジもまた虚を突かれた様子で横目に姿を認めた。

 

「なに、許すつもりも、情けを掛けるつもりもありません。死ぬなら役に立ってから死になさい。お兄様と私の役に!」

「……君、シャドウって言うには、随分本体思いの……あっ、そうか君が本来のペルソナげえっ!?」

「あっはははははははは!!! さあどうですか少しは楽になりましたか? 己殺しの呪いは貴方自身の運命にも効くでしょう?」

「いきなり前髪を切るのはルールで禁止だよね!?」

 

 ぎゃあぎゃあ騒ぎながら二人は最高速度でサタンの足下へと突撃していく。あっ、消し飛んだ。と思ったらすぐに復活した。はえ^~不死身ってすっごい……(小並感)

 

「俺達も行くぞ、イーノック。おいニンスレ! 足止めくらい出来るよな!」

「当然! あれは運命者を采配し、終末を演じ上げた操り手に他ならぬ。なれば私の怨敵そのものだ!」

 

 全身を焼け爛らせ、赤黒の悪鬼めいた様相でニンジャスレイヤーは事象に挑む。その傍らに共するはライドウに坂上さん。そしてワグナスだが、どうにも渋面を作っている。諦めたわけではなさそうだが、苦渋交じりに呟いた。

 

「……事象。神霊の、更に上か。あれは最早、一つの概念そのものだ。生半可な力では殺すどころか傷付けることすら出来ない」

「だから魔人は戦えているんすかね? あれは死とかの概念の一側面っすから」

「概念には概念を以て対処するか、それすらも上回る何かを用意しなければならないと。……であるのならば」

「おう日本語でOK!」

「端的に言えば、ヤドリギがこの世に存在しないバルドルだ。我々では何をやってもどうにも出来ん。奴が繰り出す光はともかく……いや、それすらも純粋な力で在るが故、対処も難しいだろう」

「に、日本語でOK!?」

 

 えぇ……なにそれチートじゃんおかしいじゃん……。そんな意味不明な理屈押し付けて無敵誇ってくるとかクソゲー過ぎるだろ……。

 

「でも坂上さんにはあれがあるじゃないっすかぁ! 渾身の一手! 最後の切り札! ビシャモンテンともう一体!」

「大嶽丸っすか? あれも通じないと思うっすよ。坂家宝剣が通らないんすから」

「じゃ、じゃあ、あれ! すっげえ強い三つの剣!」

「三明の剣も無理っぽいっすね。あれは概念的な法力っすけど、事象という概念その物には単純に力負けするっす」

「なぁ何が出来るんだよお前はぁ!(半ギレ)」

「後は……転生の魂魄を昇華させて毘沙門天の化身と化すとか……同じ要領で鈴鹿御前を召喚するとか……何があったっけな……どれも通じなさそうっすけど」

「この人手数が多すぎるだろ……(尊敬) の割に役に立たなすぎるだろ……(軽蔑)」

「言うなっすよ……」

 

 ガシガシと髪を掻き乱しながら坂上さんは溜息を吐いた。クソッタレのキョウジが頑張って器ちゃんに手を伸ばしているんだからよ、お前らも頑張んだよ!(他人任せ)

 

 と、そこで「では」とライドウが呟いた。抜き身の剣を収め、全ての管を懐に戻した。

 

「葛葉ライドウがやりましょう。身が持って数撃であるが故、必殺の機を待っていましたが、貴方には何らかの策がある。そうですね?」

「えっ、マジ!? サスガダァ……坂上さんとは違ってこのライドウ超助かる! 坂上さんとは違って!」

「その減らず口、マジに尊敬するっすよ。……つか、マジすか? あれ、使えるモンなんすか?」

「使います。使ってみせましょう。それが葛葉ライドウなれば」

 

 その返答に、坂上さんが妙な顔を浮かべた。らしくもなく心配するような表情で、再び深く溜息を吐いた。

 

「そのためのお前。そのための……っすからね。二十代目が産まれた時からの」

「えっ何? もしかして、ライドウの心のヤバいやつ?」

「はい」

「……いや、はいってお前」

 

 しかし、ライドウは俺が声を掛ける前に瞳を閉じた。柄に手を当て、抜刀の直前の姿勢を保ったまま、深く精神を落とし始めた。

 

「……情けない事を言います。時間を下さい。復讐者の魔人一体では苦しいでしょう。たとえ通じぬと分かっていても、どうにか頼みます」

「おう。……行くぞ、本庄、ワグナス」

「……そう言われてしまえば、行くしかないな。通る通らぬ以前の問題、やるかやらないかだ」

「チッ……はぁ……まーた自己犠牲か。くっだらねえの」

 

 どいつもこいつも……と、そう呟いて「違いますよ」とライドウが言った。瞳を閉じ、額に汗を滲ませながら、彼女は普段通りに言う。

 

「この剣は必殺でなくとも良い。この剣に世界を賭けずとも良い。……生意気なんですよ、貴方。守るべき大衆の癖に、葛葉ライドウの気を楽にするなど」

「……生きて帰る気、満々か?」

「貴方と同じく、貴方と共に」

 

 ひゅう、と坂上さんが下手くそな口笛を吹いて笑った。うへえ小っ恥ずかしいこと言いやがるなこいつ。らしくもなくテンションが上がってんのか? 後で笑ってやろ。生きて帰った後でな。

 

「さて、さて……」

 

 俺は戦況を眺めた。キョウジの様子は芳しくない。サタンの元に近付こうとし、消し飛んでは復活している。その復活までの間断を埋めるように立ち向かうのはニンジャスレイヤー。ゲイリンは汗を流しながら空間を探り、エリーは三浦の回復に手一杯。

 

 ライドウは待機中。シャドウちゃんは、キョウジと同じく器ちゃんに突っ込んでいる。空いた札は坂上さんとワグナスとイーノック。

 

 手札は揃った。後はどのように切っていくか。

 

 どのように、勝ちに繋げるか。

 

「一、囲んで棒で叩く」

「お前それ好きっすね。囲めるほど数も居ないし、肝心の棒が存在しないっすよ」

「二、総員騎乗、抜剣突撃」

「馬など居ない。ドン・キホーテはあの娘のペルソナと同じく消えてしまったぞ」

「三、……めんどくせえどうせ時間稼ぎだ突っ込むぞオラァ!!!」

「「二と同じじゃねえか!!!」」

 

 その声と同時に揃って駆け出す。うるせえ思いつかねえんだからしょうがねえだろ! 道筋は既に出来上がっているんだから俺に出来るのはここまでだよ!

 

 坂上さんの一歩は地平を飛ばし、二歩に音を超え、三歩に剣を振り翳す。ワグナスはそれに追随して羽広げ、天より雷を落とす。だがまるで効いた様子がねえあのデクノボウ。余裕たっぷりにゆっくり動いて羽虫のように見つめてきやがる。

 

「付いてこいニンスレ! イーノック、お前の言うとおりにしてやる。最優先でキョウジの支援!」

「承知した。あれは最早、運命者どころか歌唱器なれば、慈悲をくれてやるも吝かではない!」

「すまないな、復讐者の魔人!」

 

 すうと右腕を宙に翳し、イーノックはガーレを何十も突撃させる。それに合わせニンスレは地を這い駆け巡り腕振い、赤黒の炎と共に「イヤーッ!」とカラテを叩き込む。

 

「無駄なことを……。だが、イーノックは不気味だな。貴様も我と同じく四文字の力の現れなれば、その考えも存在も、後顧の憂いはここで立つのが得策か」

 

 サタンは余裕げにそう言った。当然、揺るがすには及ばない。寧ろ削ろうとしたニンスレの腕が削れる始末。

 

 だが、注意を引き寄せることは出来る。羽虫だろうが、寧ろ羽虫こそ耳元で飛び回られるとうざってえからな!

 

「おいバカマヌケボケアホのサタン! 折角本懐を果たしたところで悪いけどよ、お前今から死ぬから! それだけ! じゃあな!」

「は……! 何を。立つことも出来ぬ塵芥風情が。イーノック共々、今度こそ塵となれ!」

 

 そう言って事象は光を振り下ろす。青く白く輝きに満ちた光は光は光はしかし!「イーノック!」「問題ない!」抱えられてくるりと飛び跳ね、ギリッギリで避ける! 避けられる! 目が焼け付きそうで脳が爛れそうでそれでも見える!

 

 事象は「……何?」と怪訝そうな声を出して、それを振り払うように幾多もの光を光「ニンジャスレイヤァーッ!」「イイイイヤァーッ!」俺とイーノックがいる部分だけをカラテが切り裂き防御する。指先が千切れぐちゃぐちゃに砕けながらも、その瞳は恩讐に明々と燃えている。硫黄の息がメンポの上から吐き出される!

 

「何故だ……何故砕けぬ。何故、立っていられる!」

 

 クソッタレサタンが困惑の声を上げて、僅かにたじろぐ。そいつを俺は笑ってやった。げらげらと見下して笑ってやるよ!

 

「知らねえよ! 今のだって死にそうだったよ! だけどなあ、お前の中のジュセが手助けしてくれるみたいでな。お前の敵はお前自身だ。今から瞑想でもしてみるか?」

「オヌシの顔、たとえメンポを付けていようとも分かっただろう。困惑している。混乱している。実際コワイ。アイエエエと、モータルめいて叫ぶか? ブザマなブッダ気取りめが!」

「言ってやるなよニンスレ。どうせガバチャー繰り返してウンチー理論振り翳してるだけの低脳だぜこいつは!」

「きさっ、貴様らァッ!」

 

 ざぁ~こ♡ ざぁ~こ♡ とバトウ・ジツに便乗してメスガキ煽りを繰り返してやると、サタンの視線が食い込んで気持ちいい! いや気持ち良くはない! だが目的は達した!

 

「キョウジィ! 三度目だぞ! 三度目は間違えるなよ! 自分で要求したフォーク上から被せてんじゃねえぞコバヤシィ!」

「誰だよ!? だけど確かに十分だこれで届く!」

 

 キョウジは確かに今度こそ届いた。シャドウちゃんが倒れ伏す器ちゃんの喉元を切り裂き、無理矢理に覚醒させる。血潮吹き上げる首筋はしかし、一瞬の間に元に戻るが、その衝撃は彼女の瞳を開かせた。

 

「……ぅ、あ。私は……」

「生憎、説明してる暇はない。恨み言結構! ただし感謝はしてくれるなよ。僕は中指を立てたくてここまで来たのさ。下らないサタンも、ロウに迎合しやがったルシファーも、こんな下らない世界全てにね!」

「そうですよ私。言っておきますが私にも幾らかの責任はありますからね。さっさと私を受け入れていれば操られることもなかったというのにふざけるなこの女!!!」

「うーん、未練はないけど、ちょっと彼が心配になってきたね……」

 

「まあいいや。精々苦労すれば良い」そう言ってキョウジは文言を唱えた。指先に術式を操った。その腕先に紡がれて結晶するのは恐らく決定的なもの。存在全てを賭けた大術式。

 

「……即ち、自爆だね!」

 

 呟きと共に異界が揺れる。目に見えぬ何かが轟音を立てて崩れ去る。それと同時にキョウジが膝を突く。ごぼごぼと口から吐血して尚も笑っている。

 

 狼狽えやがったのはボケのサタンだ。自分が頼りにしていたものを見下していた奴に砕かれた気分はどうだ? 感想を述べよ!

 

「何をやっている……! お前は、違うだろう! お前はカオスの理念に従い、ガイアの一員として世に混沌を撒き散らすため、まさしくトリックスターとしてかき回すのが宿命だろうが!」

「ばぁか。宿命だって? 定められた道に何があると言うんだ。僕はそういうのが一番大嫌いなんだよ!」

 

 血塗られた口から悪罵を吐き、キョウジはサタンに向け中指を立てた。

 

「死ねよ、まがいもの。ロウでもカオスでもない、中途半端な神もどき」

 

 へらへらと笑って笑って、キョウジは倒れ伏した。その死体は指先から消えていく。跡形も残らない。歴史に存在しなかったように、その死体は消え果てていく。

 

 だが、サタンは激昂そのままに器ちゃんへ向け光を放つ光が満ちる。「イヤァーッ!」しかし中空を劈く極光を、ニンスレが両腕をへし折られながらも切り裂く。「スゥーッ! ハァーッ!」チャドー呼吸が追い付かぬほどの重篤なダメージ。オタッシャ重点。爆発四散まであと僅か。

 

 だが届いた。そのためだろうニンジャスレイヤー。ニンジャ装束とメンポの隙間に見えた瞳。それは笑うように細められ、彼は俺とイーノックを蹴り飛ばした。

 

「オタッシャデ! ホンジョウ=サン!」

「……ああ! オタッシャデ! ニンジャスレイヤー=サン!」

 

 蹴り飛ばされ、イーノックに抱えて貰いながら俺は地面をごろごろ転がった。ニンスレは最早限界だった。だからこれが最善手。それで良い。それで良かった。

 

 ……だろう? だから笑って飛び出したんだ。復讐者に似合わぬ、後を託したと言わんばかりの笑みで。

 

 蹴り飛ばした姿勢のまま、ニンスレは光に呑まれ、地に叩き付けられる。「スゥーッ、ハァーッ! スゥーッ、ハァーッ!」虫のように蠢き、中空に鷹の如く佇む事象を睨み付ける。「たかが怨嗟の塊如きが!」嘲笑に言い返さず、彼はぐうっと身体を屈めた。残り僅かな命の灯火を、その瞳に結集させた。

 

「イヤーッ!」来たる極光を足先に押し留め反転し、ニンジャスレイヤーは地を這い駆けずり回るようにしてサタンに近付く。「イヤーッ!」使い物にならぬ両腕を置き去りにして足は動く。「イイイヤアアアアーッ!」瞳の赤を光芒として引きながら、ニンジャスレイヤーは飛び上がった。

 

 ニンジャスレイヤーはサタンの眼前にカラテを構えた。「インガオホー、これこそ定め、オヌシのな」決断的に放たれたハイクは、落ち来たる極光に飲まれんとして、しかし彼は呪いを込めて叫んだ。

 

「サ! ヨ! ナ! ラ!」

 

 爆発四散。極光に飲まれながらも、ニンジャスレイヤーの断末魔は全てを吹き飛ばした。

 

 事象が揺れる。不可思議な爆発は確かに奴の身を焼いた。彼の犠牲は決して無駄ではなかった。無駄と言わせるものかよ。

 

「……コトダマに包まれてあれ」

 

 彼にこの言葉を手向けるのは正しいのか。何せ彼はニンジャスレイヤーではなく、異界より現われた魔人である。

 

 だが、それでも。その姿を選び、最後までそれを貫いたのならば、こちらもその流儀に倣うべきだろう。

 

「ニンジャスレイヤー=サン! コトダマに包まれてあれ!」

 

 叫び、背を向ける。届いた。

 

 器ちゃんが、呆然と空を眺めていた。

 

 

 

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