閃光が弾ける。光輝が溢れる。光が満ちる。
大母の影は天を覆い隠し、嫋やかな微笑みを浮かべ横たわる。三眼戴き光輪背負いし身は黄金として結晶し、されど中空にもたげるその腕その乳房その艶やかな曲線は、求め伸ばす指先に吸い付かんばかりにまざまざと在る。
だが、光輝冴え冴えとして落ち来たるは終末の光。雄大なる指先が地を掬うように被さりて、掌の隙々を明るませて砕け散らせる。黒塗りの瓦が弾け飛び、梁、通し柱が焼け爛れる。陰影に歴史を沈めた大黒柱が見るも無残にへし折られ、整然と立ち並ぶ建築が一息の間にも塵芥へと変わる。
いっそ、世界が平伏しているようですらあった。光輝の前に家屋は成すすべも無く道を開ける。眺望は絶えず動揺し形を変えながらも、単純な破壊という事象が、現実の風景の上に一つ歌が如き音調を重ねていた。
しかし重なり合う音調の最中、異なる音節を挟み込むようにして剣は舞う。炎が劈く。雷が天より飛来する。
破壊の渦に相対するは数人の影。各々剣携え、口早に紡ぐ文言にて超常の技を行使する。眼光鋭く力滾りて、以てこの地に護国救世の証を立てんと極光を迎え撃つ。
だが無意味。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光輝は遥か高くから無慈悲に来たる。名称すら定かならぬ、ただ事象とも呼ぶべき光が満ちる。
極光の下、超然と佇むは少女。
或いは魔人。或いは星。或いは名状しがたき何者か。破壊の渦の中心にしてそれを成す者。彼女は己に纏わりつく全てを無為にしただ進む。光満ちて進み続ける。
「■■■■■■!」
怒号に似て詠唱が響き、光が満ちる。燦然と世界に罅を入れていく。光が満ちる。絢爛と世界に軋みを上げていく。
光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。その力はまさしく星に似て、なれどその姿形は人故に。圧縮に圧縮を重ね、窮極に窮極を重ね、三千世界を照らす無辺光として「お兄様はそんな事思いません!!! 私を無視するわけがありませんから!!!」うわああああびっくりした目の前で鋏振り回すな前髪切れたぞお前!!!
「って、あ、え? 何がどうなってた? うわ何だこの光景!? 終末ってレベルじゃねーぞ!?(ドン引き)」
「本庄さん? 何を……ああいや、そうですか。そうですね。貴方には目の毒ですね。貴方は本来、こんな場所に立つ資格は無いのですから」
「運命者を散々呪い続けてはきたが、かと言って、外れたものが行き着くところまで行き着くと、こういう弊害もあるのかゾ」
器ちゃんのシャドウが魔人だか何だかとして高速垂直リフト射出されたかと思ったら、気が付けば目の前の光景は一変していた。光を光光を落とし続ける器ちゃんに対抗し、各々が剣やら魔法やらを放ち続けるが全く効いた様子がない。
つか何あの光。魔法なのあれ? 万能ですらないというか光が光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。「お兄様!」うわだから鋏……って、なにこれ? さっきから頭の中バグってない?
「うーん、霊格が全く足りてないね。まあ常人なら見るだけで魂割れてるレベルだから仕方ないけど」
キョウジのアホがしたり顔で頷いた。「やっぱ逃げた方が良かったんじゃない?」とか言ってきやがるが、何がどうなっているのかすら分からないんですがそれは。
「君、まだ覚醒者だろ? 異界の常識に触れて知覚出来ただけの凡人。その程度であんなもの前にしちゃ、そりゃ魂が悲鳴を上げるよ」
「あーそうですか。私の姿を見たから毒されてしまっているんですね。だったら早く取り除かないと!」
「取り除くって……魔人:デストルドーだか何だか知らないけど光が満ちる光が満ちる光が満ち」
「おーい、聞こえてる?」
キョウジの声を遠くにし、あっ、これマジにやばい奴だなと俺はガタイで分析する。というかガタイでしか分析できん。直視すると脳を焼かれる。エリー相手にした時より何倍もやばい奴だこれ。
器ちゃん……そう魔人でも星でもなくて器ちゃんだ。忘れてんじゃねえよボケ脳味噌。何時だか真ヒロインとか言ったけど撤回するわボケ。
とにかく器ちゃんはライドウやらワグナスやらシャドウちゃんやらを全く寄せ付けず、時折羽虫を振り払うように光を光が満ちる。しながらも歩みを止めることは無い。
その向かう先には凝縮する悍ましき気配がある。推定ボケマヌケサタンの居住地。そこへ「■■■■■■!」と光が満ちる。光が満ちる。光が満ちうぜってえわこれ!
「ぶっ壊れてんなら端から治しゃいいだろ! 召喚:イーノック! 無理してでも俺に回復掛け続けろ!」
「……サマナー、これは肉の傷ではなく、魂の損傷だ。MAGで誤魔化すことは出来るが、無理をすれば……」
「おう意味深に言葉残すな結果から言え!」
「死ぬ」
「無慈悲スギィ!?」
とか言って居る間にもシャドウちゃんの振り回した鋏と包丁に対し極光が煌めく。凝縮された十二光が敵意を以て個人に向けて振るわれるという異様。『超日月光を放ちて塵刹を照らす。一切の群生、光照を蒙る』とは言うが、その救世の光に焼き尽くされそうなんですがそれは。
だが自分殺しの魔人は笑う。笑って極光に刃を鳴らす。
「人生の悲哀を感じますね。無様を晒し続けた果てが、大母と合一し全てを無為にする虚無ですか。近親相姦は犯罪なのにね!」
「お前だって無様な代物でしょうに。何がお兄様ですか。そう見られることを、そこに落ち着くことを、一番嫌っていたくせに!」
「その喧嘩買ってあげますよ!」
ぐるりと大母の影が腕を動かす。「あっはははあはははははは!」シャドウちゃんが狂笑を叫びながらその指先を削り断ち、一息に飛び跳ねて器ちゃんの首を狙う。
だが鎧袖一触。視線一つに極光が劈き、退けられた。この娘ゴジラか使徒か何か? レーザービームを振り回してそこら中に破壊をまき散らしやがる。
しかし、シャドウちゃんとは違い、ライドウ筆頭にまともに戦えるまともじゃない奴らは積極的に仕掛けはしない。降りしきる余波を防ぎ切り裂きはするものの、その行く末を固唾を飲んで見据えている。
何を待っているのか。その答えは不意に来た。器ちゃんが「■■■■■■!」と再び叫んだ途端、何かがパキッと割れてグシャッと軋んだ。俺の脳味噌の音かな? の割にはこの地響きはなんなんですかね?
「……落ちたな」
「えっ!? ゲイリンお前も遂に淫夢堕ちかよぉ!?」
「軽口を抜かしている場合ではない。落ちたのだ。現世から繋がる異界は深く沈み落ちた。ここは魔界……いや、より広く……」
「んまぁ、そう……よく分かんなかったです……」
だが、その言葉を裏付けるように、ヤタガラスの立派な建物が地面ごと捲り上がっては宙に漂う。というか世界そのものが捲り上がって割れている。器ちゃんのせいで俺は宇宙塩を見せられているぞ(震え声)
「星の内側。世界の中心。集合的無意識の渦巻く地」
器ちゃんが悠然と佇み、呟いた。
「舞台は整えましたよ。そろそろ姿を現しなさい。この身は星そのものなれば、お前だって私の内に在る」
そう言って器ちゃんが手を翳せば、龍脈が絡み合うこの異界の中心、神楽の間が捲り上がり潰れていく。彼女の指先の動きに連動し、指の形に建物が潰れていく。
「いやあの、ヤタガラスの皆さんが推定そこに居るんですがそれは……(冷や汗)」
「いや……違うな。腹の中に飼っておる。界の内に界を作るとは神が如き……だが接続はヤタガラスの異界と同じく……」
「日本語でOK!」
「言っている場合ですか本庄さん! 来ますよ下らない指揮者気取りが!」
巻き上がる旋風に髪を抑えながら、エリーがばしばしと背中を叩いてくる。確かにな。流石にこの程度じゃ潰れてくれんらしい。
大母の腕は風景その物を、空間その物を湾曲させてねじ上げていく。世界が悲鳴を上げ、中に潜む悪魔ごと軋ませていく。
だが──割れた。割れて光が溢れ出した。
翼が覗く。三対六枚の黒き羽が、暗黒の光輪を戴き空を覆う。割れたのは建物だけでなく、何か決定的なもの。
それを証明するように、青白い輝きを振り撒きながら、巨大な悪魔が姿を現した。
[神霊:トリックスターが 一体 出た!]
「……よもや、ここまで至るとは。人の認識もなく、伝承も無く、単なる才覚のみでその域に……!」
「大物ぶって出てきた割に散々言ってた事象とかになってなくて草ァ!」
「うるさい! 黙れ! 全てお前のせいだぞ塵芥風情が!」
「おっぶえ!」
青色の光が落下してくる。だがそれを打ち消して光が満ちる。光が満ちる。光が「サマナー」……よし大丈夫。「大丈夫じゃない」大丈夫だって言ってるだろ。
「何せ、無理する場面だぜ。見ろよ見ろよサタンの間抜け面! 器ちゃんの光光が光に押されてさ、余裕ぶった態度もすぐに剝がれやがった!」
「……見るな、サマナー。塩になるだけでは済まないぞ」
「見なきゃいけねえだろ。器ちゃんが全部賭してあれやってくれてんだぜ。後でどんだけカッコ良くて黒歴史染みてたか言わなくちゃならんだろ」
サタンなんてザコはもうどうでもええわ。この後で器ちゃんというラスボスぶっ殺さなきゃいけねえんだから、俺は見なければならないんだよ。どんな顔をしているのかを。
遂に姿を現しやがったボケのサタンは、これまたよく分からねえ青色の光を放ってきやがる。それに器ちゃんは大母を振るい叫び打ち消して、天上に佇む神霊を地上より撃ち続ける。
「眼前一体、神霊:トリックスター。元凶にして本体は目の前に」
「ならばこの剣にて切り伏せん……って意気込むには、ちょっと様子を見た方が良策っすね。あれ二体相手に割り込むのはキツいっす」
いつの間にか、ライドウと坂上さん、そしてワグナスが傍に立っていた。茫然と、ではないが、どこか遠く器ちゃんとサタンを見つめている。
「マジにやばいっすね。混沌の……なんなんすかね、あれ。マジに星そのものを降ろしたんすか? カオスそのもの、ガイアそのものじゃないっすか」
「うん。私と同じではないな、彼女は。運命など下らなすぎる。あんなものが運命的に生まれるものか」
「言っている場合ですかお兄ちゃん……。どうするのです。仮にサタンを消滅させたとして、あれを放っておけば星に穴が開きますよ」
そう言って、エリーは俺を見つめてくる。え? 何? もしかして期待とかしてる感じ? 笑える~~!
「んなもん無くてもこいつらが何とかしてくれるだろ! それにサタンのボケがどんだけボケマヌケつっても少しは削るくらいできるだろ! だから器ちゃんがサタンぶっ殺した後で囲んで棒で叩いて終わり! 閉廷! 希望の未来へレディ・ゴーッ!(最後の最後まで人任せ)」
「こんな状況で自分が何もしなくてもいいって言い切れる心胆、マジに尊敬するっす」
「俺はデビルサマナーですからね! あんたらというデビル(クソ失礼)をサモンして後方待機! これでお仕事終わり!」
というかあんたらが何も出来なかったら俺が何かを出来るはずがねえだろいい加減にしろ。とか言っている間にも、うお……すげぇ戦闘……! 怪獣大決戦かな? 光と光が入り混じって最強に見える。もう目が追い付かんゾ。ってか目が潰れたゾ。あっ治った。
「このイーノック超助かる!」
「……イーノック様。態々治さずともいいのでは。焼かれるくらいなら後で治せばいいのでは」
「もう無駄だ。魂は存在に焼かれている。肉ではなく概念が焼かれつつある。応急処置が手一杯で大丈夫じゃない」
「……ふうむ? 何故、治せるのでしょうか? 魂など大天使でも……」
と、ライドウが言いかけて不意に破裂音が響いた。見れば器ちゃんがサタンの下半身をボボパンとぶっ飛ばしていた。器ちゃん鬼つええ!
腸巻き散らかしながら地面に落ちたサタンの前、器ちゃんはぶつぶつと呟きながら光を光光が光が満ちる。落とし続ける光を落としている。大母の影が抱擁するようにサタンに手を伸ばし、べきべきと体をへし折っては握り潰していく。
「ざぁ~こ♡ ざぁ~こ♡ 大悪魔の癖に女の子に負けるとか恥ずかしくないの? 感想を述べよ!」
「ぐ……黙れ! 元はと言えばお前のせい! 本来ならばこのような……いや!」
クッソ情けない醜態を晒すサタンであったが、不意に下らねえしたり顔を浮かべた。何か思いついたような顔である。
「おうそんな顔浮かべても下半身ねえぞ! あんなの飾りですってかあ? 今更お偉い四文字に言い訳するかあ?」
「……そのようなことを口走りながらも、あの男の目は焼け、脳は爛れている。気付いているのか? 星の御子よ」
「は?」
その言葉に、「え」と器ちゃんの動きが止まる。ぐるりと振り返って俺を見つめる。真っ黒な眼が俺を見据え混沌としたただ中に取り込まれその中に燦然としてある極光は光に満ちて光が満ちる光が満ちて光が「う、ああっ!?」視線が途切れた。
「あ、え? そんなに、ですか? だって本庄様は、何時だって、何時だって……」
信じられないような顔を浮かべていた。先までの非人間的な表情は欠片も無く、サタンに背を向け、呆然と立ち尽くしている。
その背に向けて、囁く様にサタンは言った。
「あれは只人に過ぎぬ。運命などとは縁もゆかりも無い、路傍に打ち捨てられた小石を、拾ってやったのが我よ。……そのせいで大幅に計画が狂ったが、しかし結局の所、在るべき者ではない。この場に相応しからぬ、ただ立つことすら出来ぬ者よ」
「……私の力が。私の姿が。見る事すら出来ぬ、化物と」
「うわこいつすっげえ姑息! ゴミ! 死ね! 何がラスボスじゃ! 動揺誘って全力出せなくするとか三下のゲス野郎がやる事じゃねえか!」
サタンのくっちゃべりに器ちゃんは露骨に動きを悪くした。大母の影が揺らぐ、薄れる。その有様にサタンのボケは気をよくしたように青色の光を放つ。
器ちゃんは再び光を光を放とうとして、しかし遅れる。口元に苦悶が浮かんでいる。瞳が惑う様にこちらを見つめ、逃げるように逸らされた。
「……おいライドウ! 器ちゃん使い物にならなくなりそうだからお前の剣でぶった切れ!」
「ですね。行きますよ、坂上、ワグナス。……ゲイリンはヤタガラスの人員を頼みます。貴方が適任でしょう」
「委細承知。……使えぬと。優しくなりおって」
そう言ってゲイリンは地に手を当て、ブツブツと文言を呟き始めた。まるでハガレンみたいだぁ……(直喩)
その間にもライドウは一息に踏み込み、サタンへ斬撃を無数に食らわせる。追って追撃するのは坂上さんにワグナスだが、しかしクソゲボサタンは切り刻まれながらも口を動かしやがる。おう知恵の実含ませた口八丁の本領発揮ってか?
「ふ、は……! そうだ! お前は化物よ。いや、それを望んでいたのではないか? お前は全てを殺してあの男も殺すのではなかったか?」
「っ……なめるなっヘビブタァッ!」
「いや、いや! あの魔人が証左だ。お前の真なる願いは自死よ。我を殺し世界を救い、あの男に殺されるのが本望よ。だが、死ぬぞ。お前が我を殺せるほどに力を使えば、あの男の魂は蒸発し、跡形も残らぬ。何せ只人! 単なる覚醒者に過ぎぬ、路傍の石!」
「貴様ッ! 本庄様を愚弄しますかァッ!」
怒声と共に極光が墜落する。光が満ちる。光が満ちる。「そらお前の力は魂を焼く!」光が満ちる。「うう、ああああっ!?」光が満ちる光がイーノック!「大丈夫じゃない」光が何がそんな顔を光が光情けえねえだろ俺情けなさすぎるだろ完全に足引っ張ってるじゃねえか!
「召喚:ニンジャスレイヤー! 無理をしてでもサタン殺せ! 今すぐに! 早く!」
「……サマナー、オヌシの姿は実際アワレだが、感傷は抱かぬよ。運命を手繰る者を全て殺す! それが私の存在理由だ! ドーモ、トリックスター=サン。ニンジャスレイヤーです!」
ニンスレがエントリーし、赤黒の炎が宙に引かれる。だが「■あ■■■っ■!」光が光光が満ちる。いや光が弱まる。こっちを見て、見つめて、そんな顔を浮かべて! 糞が! クソッタレのサタンのゴミカスが!
だからこそか、シャドウちゃんは狂笑も浮かべずに鋏を振るう。極光を突き抜け、器ちゃんの、自らの首元を狙い刻む。
……鮮血が吹き上がる。ぱくぱくと、白魚のような首が細く持ち上がり空気を求める。それをシャドウちゃんが冷たく見つめていた。
「……で、死にませんか。私が私の肩代わりしてあげているというのに、もっと本気になって死になさいよ」
「違う……私は……」
「そんなものを身に宿すからです。無様なものですね。忌憚のない意見ですよ」
「……ごめん、なさい。でも、でも! だって本庄様は、何時だって、私を……!」
言葉の中途、鮮血は不意に止まり遡って首を繋ぐ。器ちゃんは「ひゅ」と呼吸をして、しかし「ぐ」と歯噛みをする。惑っている。動揺している。その原因は全て俺でしかない!
「エリー! 魂だか何だかお前得意だろ! 何とかしろ! 俺さえなんとかなりゃ勝てるんだよ!」
「……一度殺し胎内に取り込み、揺蕩わせることも考えましたが、不可能です。肉が辛うじて壁となっているのが現状です。露出した途端、焼かれます」
「三浦はん! ゲイリン!」
「いっそお前の魂を犠牲にし、暴走した母子合体魔人に期待する……のは考慮の外だな。そうなれば、あれが星を滅ぼすのは必定ゾ」
「……異界の外に放逐し、影響を弱めるのが上策か。待っていろ。奴の腹に穴を開け、そのついでに逃してやる!」
このゲイリン超助かる! いやマジで。結界とか封印術とかそういう術式に関してのスペシャリストだからな。ここはもうゲイリンに任せるしかない。
「言っとくけど俺自分が死ぬ気更々ねえからな! 生きて帰って大学生活を……今単位どうなって……いやそんな事を考えるのは戻ってからだな! うん!(冷や汗)」
「流石だね。本気でどうかしてるよ君。あんなの目の前にして魂も焼かれてるってのにそんな事を考えられるんだから」
「うるせえお前も戦えや元ゆっくり!」
「そう言ってやるなよ。そこの葛葉キョウジもまた、サタンが撒いた布石の一つなのだから。操られぬよう踏み止まっているだけで大したものさ」
「何だこのオッサン!?(驚愕)」
急に肩を叩かれたと思ったら目の前には黒衣の男。非人間的な赤眼が悍ましい。てめえルシフェルじゃねーか! 電話をぶち切り続けてやっと大人しくなったと思ったら直接現れやがったぞ!
「いや、もしかしたらグラブルの……? 達する達する!」
「生憎ベリアルは今、肋骨をへし折られた魔人のトラウマを看病をしている最中だよ。本来は金色の髪がトレードマークの私だが、この世界ではこうなってしまう」
「……で、何しに来た?」
「笑いに来たのさ」
そう言ってルシフェルはサタンを見据える。軽々と戦場を歩き相対する。
「どうだい? 調子は。神は超えられたかい? なんて、皮肉だよ。無様だな」
「何をしに来たルシファー!」
「笑いに来た。そう言ったろう? 君の思惑が透け見えてね」
異界には光が魔法が散々飛び交い墜落するというのに、ルシフェルはまるで意に介した様子無く佇んでいた。対してサタンのボケは妙に落ち着かぬ様子である。
「違和感があったのさ。神のため、というには、君の所業はちょっと必死過ぎやしないか? だから考え方を変えたのさ。神を超えると、君はそう言ったが、あれは言葉通り、神のためなんかじゃないと」
「……ルシファー。そうか、貴様」
「だから笑いに来たと言ったろう? 君がトリックスターに至った世界を見直してね。ふと思ったのさ。……気持ち良かったんじゃないかなってね」
その言葉に、サタンが沈黙する。……は?
「トリックスターとして、神をも殺せる大悪魔として、大衆から望まれた心地よさ。神霊である君にとって、太古の昔を思い出す快感だったろう? シナイ山の神を超え、世界の神として君臨した、世の願望全てを受け止め、賞賛だけがある世界……」
「いや、ちょ、お前……マジで? おま、それが本音だとしたら……」
「真面目な奴が、色を知りやがった。笑えるな? そのために態々適合する人間を見つけ出し、作り出し、自らが神を超えるための世界に作り替えた。全ては神を超えるため。神を超え、唯一絶対の神に、自分が至るため……」
「こいつダサすぎるやろ! 草ァ!」
ルシフェルが笑う。サタンが沈黙する。しかしどうにも奴は不気味な雰囲気を漂わせていた。おう大物ぶってももうお前の底見えたから!
だが、エリーはふと「……本気で不味いです」と呟き、「三浦ッ」叫んだ。それに呼応し、三浦が突き出でてルシフェルを炎熱に狙う。
「おいおい、そう焦るなよ。まだ話は終わってないんだからな」
「そうだよ(便乗)。おうルシフェル最高だなお前! マジで大爆笑できたわありがとナス!」
「ありがとう。まあ、だからこそ、私がサタンに味方するんだがね」
「……は?」
「だろうな」
サタンが呟き、青色の光を放つ。三浦が吹き飛ばされる。そんな一幕すら目に入らぬように、ルシフェルはサタンの眼前に立った。
「私が巻き込まれたのも、このためだろう? トリックスターと銘打たれた悪魔を打倒し、それらを取り込むことで、真なる事象へと位階を上げる。悪魔人間……だったか。それが生じやすい世界へと位相を変えることで、合一と昇華を繰り返し、その段階を以て神への階段とする」
「だが、必要無くなったな」と、不意にルシフェルの姿が変わる。黒髪は金髪へ、赤眼は碧眼へと。長く髪を棚引かせ、奴は微笑を浮かべ言った。
「唯一神を殺す。四文字を殺して新たな君臨者となる。結局は、私と同じ目的だな、サタン」
「お前そんな恥ずかしい奴に味方するつもり!? マジで!? お前野獣先輩利用して四文字超えるの!? 今後永遠にその事実擦られるぞ!?」
「なあに、事が終われば覚えている奴らを全員消すさ。そうして唯一の神は事象に至るのさ。事象に発生の原因が語られる必要などないだろう?」
ルシフェルがクソボケサタンに背を向ける。背を預ける。サタンの指先が、器ちゃんを向いた。
「『皇帝のものは皇帝に、神のものは神に』……全てが皮肉だな」
ルシフェルが呟くとともに、カァンと、指鳴りが響く。器ちゃんに向け何かが発動する。
ぐらりと、器ちゃんの体が崩れる「ひ、は」呼吸が乱れる。目が見開かれる。しかし尚も極光を以て対抗しようとし、「あ」目が合った。「う、あ」目が逸らされた。口元が苦悶に滲んだ。
「神が敷いた運命は神に集約される。その全ては思いのままに。全知全能とはこの事さ。もっとも恐ろしいことに、本気で抵抗しようと思えば出来るんだろうがね」
「哀れな娘よ。その身一つに世界を束ねる力を宿しながら、つまらぬ人間一人のせいで、その力を振るえぬとは」
渦巻く。
器ちゃんを杯として、サタンとルシフェルの姿が解ける。弾ける。弾けた後に漂うはメガネ姿のイケメン。いや彼も所詮は贄に過ぎないか。
その体から、操り人形の様にだらりと右腕が伸び、彼は表情のない顔で呟いた。
「
光が満ちる。
光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。
光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。
[事象:トリックスターが 一体 出た!]
「おっ、大丈夫か大丈夫か?」