「何だこいつよく分からねえ満足死遂げよってからに」
「流石に口を慎んで下さいよ本庄さん。救われぬ魂は末期ながらも確かに救われたのです。なり損なった運命者を英雄に仕立て上げたのは私であり、彼もまた翻弄された者には変わらぬ」
「えっガチトーンじゃん怖……」
突如として発覚したニンジャ真実とヒーローだか何だか知らねえ概念よりも、エリーのその真面目な表情に俺は困惑した。何時もの笑みも潜めておっさん相手に十字を切り、聖句を唱える姿は堂に入っている。まるで聖女みたいだぁ……。
「……だから何よ。これで満足? これで、四文字の下に送られたって?」
リエとかいう姉ちゃんがおっさんの死体と手を繋ぎながら、エリーを睨み付けてそう言った。
「貴方、それが狙いだったの? 運命を無理矢理動かして、今更カテドラルでも建てるつもり? そんな事のためにこの人は……!」
「違いますよ、私の先達。終わらせるために始めたのです。故にこそ、貴女方の首魁をこの場で殺す必要がある」
「はあ……?」
「それで良いでしょう? 復讐者の魔人」
エリーはニンスレに笑って言った。対してニンスレは憮然としたまま彼女を睨み付けている。だが、その腕は動かない。どうすれば良いのか考え倦ねている、といった感じだ。
「……トールマンに子供など存在しない。この世界は実際狂っている。マッポーの世に至らず、されどマッポーのアトモスフィアが至る所に存在するなど」
「ああ、そこから運命は狂っていますのね。いえ、もっと前から? いずれにせよ、ゴトウを殺すのには賛成するでしょう? なにせ引き金は彼と私の父ですもの」
「……オヌシは何者だ」
「アンチメシア。狂わされた舞台の幕を引くために、神が定めたデウスエクスマキナです」
下らなそうにそう言って、エリーは未だ戦闘が続く、しかし終わりかけの室内を悠々と歩く。向かう先はロウヒーローだか呼ばれた白い法衣の、まるで餃子のような格好の男……あっ餃子定食ってこれかぁ!
「えっ、じゃあジュセとイーノックの妄言ってガチじゃねーか!?(戦慄)」
「あはは! だからそう言っているではないですか。そこの汚らしい悪魔はサタンで、本庄さんは打ち倒されるべき敵なのです! 神は言っている。故にここで終わらせなければならないと」
「おっそうだな(適当)。ジュセとイーノックはともかく俺は関係ねえだろ多分……」
んねえよな? と思いながら俺はCOMPを確認した。面倒なことに巻き込まれる前に加入したニンスレのステ確認しなきゃ(使命感)。そんで今の戦闘でレベルがめちゃ上がって、それで霊格も上がって……。
[覚醒者:本庄モトユキ Lv75]
[魔王:サタン Lv80]
[英傑:イーノック Lv75]
[魔人:ニンジャスレイヤー Lv90]
「いや、サタンじゃねえかよえーっ!?(驚愕) おい野獣お前サタンじゃねーか!?」
「それマジ!? 全然実感が湧かないんですがそれは……」
「えぇ……(困惑) お前も自覚ねえのかよ……」
遂に正体が判明した野獣だが、当の本人は呑気にしていやがった。どころか自分もCOMPを覗き込んで「ウッソだろお前!?」などとほざきやがる。大悪魔としての自覚がなさ過ぎるだろ(呆れ)
「大いなる意思(淫夢)の正体は、あっこれかぁ! 野獣先輩サタン説、無事立証ですねえ!」
「いや、あのさ、これネタバレとかそういう奴なんじゃねえの? なんで黒幕的な奴の正体がレベルアップで明らかになってんだよ。春先で解析された変身アイテムじゃねえんだぞ(半ギレ)」
「STNがマヌケなんじゃない? TDNホモビ男優を化身に選ぶとかお前バカかよぉ!(嘲笑)」
「うーん。サタン、マヌケのバカ説が早くもQ.E.D.に辿り着こうとしている……」
つかエリーは何してんだ。ロウヒーローの傍に近寄って「メシア・プロジェクトは全て潰しましたよ」とか語りかけているが、それお前達メシアンの切り札とかじゃねえの? 治したりしないのかよ。
「……僕は死ぬのか……僕は何者だったんだ……ハニエル様は、神に捧げられた魂と……しかし、僕はずっと、僕ではなく……」
「捧げられたとは言っても、それは天使共の一方的なもの。人造メシアなど神は認めない。貴方の安らぎは天の国にはないのです」
「僕はずっと、あの夢の中に……生きていなかった……生贄、ですらない……」
よく分かんねえ会話してんなこいつら。と思っていると何故かイーノックもやけに険しい顔をしてロウヒーローの下へと進み出た。
「貴方は……そうか……」
「……神は言っている。既に死ぬ定めだったと」
「は、は、は……! 皮肉、な……貴方が僕に、そう言うなんて……」
「……君は、自らの意思で選択を行えなかった。……君の未来は、天使が定めた未来でしかなかった」
「……終わりましょう。終わらせましょう。終末がもたらされる前に」
イーノックが浄化の光を放ち、エリーが十字を切り、聖句を唱えた。その声に導かれるようにして、息を引き取ったロウヒーローの身体から何か白い塊が出て、エリーの胎へと収まった。マジで何なんだよその能力(ドン引き)
そんな意味不明な儀式が行われている間に、文明、ではなく戦闘はどんどん推移していく……。ヒーロー共を倒したことにより戦局は単純化し、ライドウ、ゲイリン、坂上さんが貴族共を守る必要もなくなったため、状況は完全に有利になった。
というか終わっていた。丁度ライドウがゴトウの首筋にポン刀突き付けたところだったわ。
「つーわけで終わり! 閉廷! ぬわつか!」
「ビール! ビール! 冷えてるか~~?」
「……なあお前マジでサタンなの? マジで? 普通正体バレしたんなら本体出てきても良くない? くろまく~~(ホワイトロック)」
「そんな暇は与えませんよ。何せ始まる前に終わらせるのですから」
「は?」
エリーがゴトウの前に歩み寄り、見下ろしながらニコニコと笑う。対してゴトウは両膝を突き、苦渋の顔を浮かべていた。
「トールマン……! 今更、千年王国などと言う妄言を現実にしようとでも……! だが、私がいなくとも退魔庁は、日本は、決して米国の思い通りには……!」
「貴方も道化に過ぎませんよ。我々は皆、道化なのです」
「何を……」
「新たな舞台を敷くために、踏み潰された舞台の残滓が貴方達。なれど、その運命が残っているということは、終わらせられるということでもあるのです」
エリーはニコニコ笑いで懐から短剣を取り出し、遊ぶように自らの喉元に当てた。ちょ、おま。
「カオスヒーローが死に、ロウヒーローが死に、ゴトウが死んで、トールマンが死ねば、ほら、もう終わりです。だってそもそも、ザ・ヒーローが現われなかったんですもの。……今更始めたのはこのために。終わらせるために始めたのです」
「……狂人が!」
「神は言っている。サタンの奸計を阻み、全てを終わらせろと」
エリーは笑う。笑って呟く。
「……だって、ねえ? 終末を防ぎたいのも本心ですが……お兄ちゃんと戦いたくなんて、ないですしね」
そんな言葉と共に、エリーがゴトウを殺そうとして、それをライドウが止めようとして、メシアンの奴等がそのライドウを止めようとして、もう何もかも無茶苦茶じゃねえか死ぬ前にちゃんと説明してから死ね。説明次第では生きる道もあるかもしれねえだろと思ったところで。
「──ペルソナ:サタナエル」
エリーが吹き飛ばされた。
室内に突如として入ってきたのは虚ろな顔の若い男二人とジジイ一人。内一人、眼鏡をかけた天パ野郎が召喚したペルソナにエリーは吹き飛ばされた。
異様なペルソナだ。ロウとカオスが混じり合ったような、奇妙かつ凄まじいMAGを威圧的に発していやがる。どんな精神してたらこんなペルソナ召喚できるんだよ。
つか、そのペルソナはともかくとして、サタナエルに隠れているあのハゲジジイ見たことあるぞ。退魔庁と結びついてるとかいうクソッタレ議員の獅童じゃねえか。
「何しに来やがった? ぶっ殺されに来たか? ああ?」
「……ちと、収めよ」
麻呂が目を鋭くして片手を上げる。それで今にも斬りかからんばかりだったライドウは剣を収め、坂上さんとゲイリンは俺を抑えるように脇を固めて……ってあぁん? なんで?(レ)
「傍目にはお前が退魔庁の切り札ぶっ殺しやがった危険人物だからっすよ。マジになんで現われたか知らんっすけど、獅童正義は結構な大物政治家っす。大義名分もなく下手に敵対したら面倒なんすよ」
「安心しろ。この場で腹掻っ捌こうと、後で反魂香を使ってやる。あの強力なペルソナ使い相手に刀を納めるのは不安しかないがな……」
「なにそれ俺が死ぬ前提!? ……ああ、いや」
よく見りゃ全然身体押さえてねえし、二人ともすぐに刀抜ける姿勢だわ。様子窺っているだけだなこれ。脅し文句もポーズだけか。
一方でメシアン方は完全にブチ切れて「死ね!」の大合唱である。爺も婆もテンプルナイト君も一挙に駆け出して剣を振るう。それを収めたのは「やめんかぁ!(カンコーン)」という一声であった。
「先にゴトウを殺せ。それが聖女様の本意なればこそ、優先順位を見誤ってはならぬ」
「……御意に」
「三浦はん!?」
「そうだよ(肯定)。ヒーローを殺すとは流石だゾ。お前がメシアかは知らんがな」
吹っ飛ばされたエリーを抱えていたのは薄暗い小男、三浦はんであった。彼の腕の中にエリーは「あはは」と笑う。額から流れる血を三浦に拭われながら、彼女は虚ろな顔のもじゃ男を指差し言った。
「本庄さん、やはり間違ってなかったでしょう? サタン、サタナエル……トリックスター。あれこそが操り手ですよ」
「あれがマヌケのバカってコト!?」
「<メギドラオン>」
「おっぶえ!?」
室内で万能属性ぶっぱしてんじゃねえよクソメガネ! だけどこれで殺して良いって事だなお前な! さっきから意味不明だけど攻撃してきたって事はぶっ殺して良いって事だからな!(全ギレ)
「イクゾオオオオオオオ! オエッ!」
「待ちたまえよヤタガラスの諸君。君達が剣を振るうことは許されない。たった今、政府から解散命令が出されたのだからな」
「それマジ!? 遂に退職出来るとかありがとナス! お礼代わりにぶっ殺してやるよ!(全ギレ)」
「ええい、このキチガイが!」
獅童の口から放り出されたうんちにそう返し、硬直する坂上さんとゲイリンから抜き出て銃弾をサタナエルにぶちかます。だけどあんまり効いてないな。物理耐性か?
「おいジュセデバフ! イーノックガーレ! ニンスレカラテ!」
「何故そう簡単に戦闘へと移行できる……! おい坂上キミマロ! 仮にもヤタガラスの長であるのならば、このキチガイを即刻黙らせろ。政府の命令だ」
「……で、おじゃるか」
サタナエルは連続して<メギドラオン>を放ってくる。メシアンはそれにゴトウへの追撃を邪魔され、坂上さんとゲイリンは辛くもそれを避ける。ライドウはお偉方を守るために魔法を切断する。……切断!? この人頭おかしい……。
が、麻呂野郎はぺしぺしと扇子で顎を叩いて押し黙っている。んだよボケたか? まあ解散云々って話がマジならヤタガラス終了のお知らせって事で超ショックなんだろうが、だからって思考停止しないでクレヨン……。
……が、麻呂は不意に扇子をブチ折って叫んだ。
「だまりゃ! 麻呂は恐れ多くも帝より護国組織の長として任じられた身じゃ! 即ち帝の臣であって政府の家来ではおじゃらん! その麻呂の部下に狼藉を働くとは言語道断! この事直ちに帝に言上し、きっと公儀に掛け合うてくれる故、心しておじゃれ!」
「はああ!? 貴様、政府の命令を……!」
「皆の者、出合え! 出合え! 状況は不明だが、勝てば何とでもなる! どうせこやつには死んで貰うつもりでおじゃった! 切り捨てい!」
その声と共に、にやりと笑って坂上さんとゲイリンが剣を抜いた。
「さあっすがパパ上。本庄に先を越されるなんて恥ずかしすぎて笑っちゃうんすよね!」
「腸が煮えくりかえるかと思ったわ! あやつだけに任せてはおけぬ!」
「このキチガイ共が……! おい、お前も使え!」
その声に、もう一人の若い男、パンケーキ食ってそうな優男がブツブツと何か呟きながら進み出る。どっかで見た……あっ名探偵くんじゃねえか。最近話題の明智なんとかって奴!
「じゃあ死ねイケメン! お前を殺して俺の人生をランクアップさせてやる!」
「…………ペルソナ:ロキ……<メギドラオン>」
「ペルソナ:サマエル! <メギドラオン>!」
「万能魔法のバーゲンセールかよお前らよぉ!?」
「ドーモ、ニンジャスレイヤーです。イヤーッ!」とニンスレが不浄の炎で<メギドラオン>を掻き消す。そしてなるべく見ないようにジュセに<ファイナルヌード>を使わせ、イーノックに<至高の魔弾>を使わせる。その隙にアナライズ!
「ロキのアホは破魔弱点に呪殺吸収! サマエルのゴミは弱点も耐性も何もなし! サタナエルのボケマヌケは……えぇ……全属性耐性に破魔無効、呪殺吸収ってチートじゃねえか!」
「なら俺に任せろっす。……ゲイリン」
「心得た!」
そう言ってゲイリンがマダとサンダルフォンを召喚し、相手の動きを封じ込める。その間に坂上さんが深く腰を落とし、剣を構えた。あっ、そのためのゲイリンか。これマジでやばい奴だから下がっといた方が良いな(冷や汗)
数合の打ち合いの後、「退け!」と機を見てゲイリンが一瞬で悪魔共を管に返した。結果、前方には空間が生じ、ペルソナ共に刹那の隙が生まれた。そこへ坂上さんが素早く踏み込み、眼光鋭く呟いた。
「<タルカオート><会心の覇気><貫く闘気><チャージ><チャージ><チャージ><チャージ><チャージ>────<空間殺法>」
一瞬で振るわれた無数の斬撃が、三体のペルソナをボッコボコに切り裂いていく。うーんクソチート(震え声)。兵法だか何だか知らねえけど一息で何重にもバフかけるんじゃねえよ。ヒーロー二人ぶっ殺してレベル近くなったけど、俺一人じゃ全然勝てる気がしねえな。
「流石はキミヒコでおじゃ。麻呂もドン引き。……それ、獅童よ。どうした? お主の企みはその程度でおじゃったか?」
「……いや、私が乗る船に間違いはない」
そう呟いた先、ペルソナ三体は……いやロキとサマエルは死にかけてるけど、サタナエルのボケはまだ余力を残しているようだった。
だが程度は見えた。俺でも殺せらあ。ちょっとラスボスの自覚がなさ過ぎるんとちゃう?
「何が間違いはない(キリッ)じゃボケ。とっくに終わり! 閉廷! 君達もうあの世に帰って良いよ!」
「ええ、終わりです。こっちもゴトウを殺せました。これで私が死んでおしまいですよ」
「それマジ? ナレ死するとかボスとしての自覚がなさ過ぎるだろ……てかお前マジで言ってんの?」
メシアンにより首を切り落とされたゴトウの死体の前で、十字を切りながらエリーは笑っていた。首筋に短剣を突き付けて、それを周囲のメシアン共は止めもしない。三浦でさえ沈痛に瞳を閉じて顔を下げている。
「運命者はこれで全てです。故に運命はここで潰えるのです。故に世界は救われるのです! さようなら本庄さん。貴方もこれで、一般人に戻れるでしょう」
「だから誰か説明をしろって何度も言ってるよな!? 勝手に納得して勝手に事態を進めてんじゃねえよ! それで巻き込まれた側は堪ったもんじゃねえんだからな!」
「……オヌシの言うとおりだ。トールマンの娘よ、それでは終わらぬ」
坂上さんとゲイリンがロキとサマエルをぶっ殺した最中、ニンスレがそんな事を言った。エリーが眉根に皺を寄せた。
「まだ残っているではないか。悍ましき、悍ましき運命の中心! オバケめ! どうりで数が合わぬと思ったわ!」
「……なんですって?」
「チョーネムジム行き! なあ野獣、お前が説明してくれねえ? お前そこのバカマヌケと同じサタンなんだろ? だったらジュワジュワ説明してくれよ」
「おっそうだな(適当)。この辺にぃ!」
「美味いラーメン屋情報は聞いてねえよ」
まあ、どうだろうとどうでもいいわ。ここはニンスレに習い、最終的に全員殺せばいいのだ! と気楽にジュセの肩に手を置こうとして、
「──あっ、そっかぁ」
不意に、ぐるりと身体を翻して、野獣は俺に拳を放った。
「……は?」
「野獣、やはりか」
拳を止めたのはイーノックのアーチだ。青く輝く剣の前には、困ったような顔で野獣が拳を繰り出している。
ぎりぎりと鍔迫り合いの音が響く。互いに手を抜いている様子はない。
……本気で殺しに来た。……野獣が? 俺を? ……どうして。
「……冗談にもならねえぞ。なあ、おい」
「あー……マズいですね。これはマズい……」
「……サマナー。覚悟しておけ」
一合二合と剣戟を重ね合わせ、強くぶつかり合った後、野獣が飛び退いた。その向かう先はサタナエルだ。奴等に背を預け、野獣は困惑したような顔で言った。
「ごめん、俺”サタン”だったわ。なりふり構わず、信じるがままにって感じでぇ……」
「テメエにはシリアスってのはねえのかボケ! 尽く語録で返しやがってよお!」
「……故に、選んだのだがな」
「何だお前!?(驚愕)」
何かペルソナのサタナエルが急に喋り出したんですがそれは。本体のイケメンメガネはさっきから意識もあるのか分からねえ感じなのに、ペルソナが意識を持ってるってどういう意味?(レ)
「予定とは大幅に、本当に大幅に異なってしまったが、まあいい。始めてやる。そろそろお前達は見過ごせぬ。役には立ったがな。こうして我が顕界出来るまでに成熟した」
「うんちっち!(対抗) 意味不明だってさっきから言ってんだボケ! それとも何か? テメエは野獣先輩利用して終末なり何なり起こそうって? 随分な大悪魔じゃねえかよええ? BB劇場の見過ぎだホモガキ野郎が!」
「その通りだよ、恐るべき道化。大衆の願望は神をも殺す。我はそうなった我を観測した。『トリックスター』だ。……こいつは実に、化身として相応しいだろう?」
「とか何とかわけわかんねーこと叫びながらコイツ目がイッちゃってる(困惑)」
えっ、こいつマジで言ってんの? そりゃ俺も『中国全人口の一割が野獣を信仰するならもっと強くなる筈だよなあ』とか考えたこともあるけど、マジで終末か何かに利用するつもり? 野獣先輩を? ウッソだろお前(ドン引き)
だが、そんな冗談染みたサタナエルの考えを肯定するように、ニンジャスレイヤーが前に出る。その背中には怒気がある。恩讐がある。彼は硫黄の息を吐き出しながら叫んだ。
「あれはオバケだ、サマナー。本体はあくまでジョルリ人形めいて操られているに他ならぬ。……救世主気取りを遣わし、自らが神になったと思い上がったか? 愚かなサンシタめが!」
「……はは。あはは! あー……遅かったか。いや、これも功績ですね。始める前に始めさせることになったのですから。……ああうるさいなあもう神は言っているお前の奸計はとうに破綻したと!」
「おいライドウ、説明しろ(無茶ぶり)」
「あの悪魔、先程から思っていたのですがサタンですよね? 断じていんたーねっとの怪異ではありませんよ」
「ジム行きてぇなあ……(現実逃避)」
だが、こういう状況で俺が何をすべきか、決まってるよなあ? 何せ、野獣がこんな状態になっちまったとき、決まってオチを付ける魔法の言葉があるんだよ!
サタナエルのボケマヌケを守るように構える野獣に対し、俺はヘラヘラと笑う。笑って、俺を守るように立つイーノックを押しのけ、単身野獣に相対する。
「テメエに一番似合わないのがこんな場面だろうが。何を格好付けてんだよ」
「……サマナー。野獣は既に」
「黙ってろイーノック! これで終わるんだよ。……じゃあ、オナニーとかっていうのは!」
それは必殺の文句の筈だった。全ての展開を一挙に解決する魔法の言葉の筈だった。
だが、野獣は声を返さなかった。
ただ、困ったような顔をしていた。
「うん、まぁ……そう」
「……は? ……じゃあ、オナニーとかっていうのは?」
「サマナー、無駄だ」
「おい、おい! じゃあ、オナニーとかっていうのは!?」
野獣は拳を構えた。眉根を寄せた。苦しそうに呟いた。
「…………ごめんな」
「っ……なに、何を言いやがる。そんな、語録も、表情も! 野獣先輩はやらないだろ!?」
そんな、今更出てきたようなぽっと出の悪魔に、簡単に支配されるようなキャラしてねえだろ。そういう下らねえ展開をぶち壊してウンコ塗れにするのが、野獣先輩って奴だろう!?
「……役に立ちすぎたよ、このネットミームという奴は。大衆が望み、育み、信仰し、そして体制側が厭い憎む。まさしくトリックスターとして相応しい」
だが、とサタナエルが野獣の頭を掴み上げる。それに野獣は抵抗しない。まるで人形のように宙ぶらりんに揺れている。
「だが……たかがインターネットの産物が、本物の悪魔に勝てるわけがないだろう。木っ端の化身がここまで成長したことには驚いたが、そのおかげで計画を変更せざるを得なくなったが……僥倖と、言ってしまえばそれだけだ」
その内に坂上さんが刀を振るう。ゲイリンが管を抜く。三浦が炎を放つ。だがサタナエルは動じなかった。
「これでようやく、我は神を超えられる。遠いボルテクス界のルシファーのように、神霊すらも超えて、事象:トリックスターとして!」
そう言って、ただ、指を鳴らした。
カァンと、何処か聞き覚えのあるその音が、響いたと思った時には、奴らの姿は消えていた。
俺はCOMPを確認した。そこに野獣は居なかった。
……その時、不意に電話が鳴った。俺は導かれるように、それを耳に当てた。
『──話をしよう』
聞こえたのは、軽い調子の男の声。
『私にとっては何度も観測した出来事だが、君達にとっては多分、明日の出来事だ』
「てめえ……ルシフェル」
『おっと、やはりそっちの名か。こうして皮を被らなければ、存在も出来ないというのは不便だな』
「何の用だ」
『そう焦るなよ。君が望んでいた説明をしてやろうというんだ。私も勝手に力を利用されて不愉快なんだ。何より、「彼」は口下手だからね』
「……説明だって?」
電話口の向こう、奴は笑って言った。
『君の敵は、ザ・ヒーロー。その運命を与えられた、別世界のヒーローさ。……真・女神転生に、ペルソナ5を無理矢理重ねたんだよ。サタンの奴は』
君には分からないだろうがね、とルシフェルは笑った。