ネットミーム・デビルサマナー   作:生しょうゆ

27 / 56
第二十六話 ロウ・アンド・カオス・ウィズ・ニンジャ

 

 

 

「テメッザッケンナコラー! セツメイシロッコラー!」漆黒のスーツに身を包んだデビルサマナー、ホンジョウ・モトユキが口角泡を飛ばして叫ぶ。「セツメイをしろ! 何がどうなってんだこの状況は!」

 

 それに対し、ニンジャスレイヤーは答えを返さない。「イヤーッ!」ただひたすらに目の前のイクサへと拳を重ねる。「ヌウーッ!」何せ相手取るは二人。一方は地獄の悪鬼めいた男。もう一方は法衣に身を包むボンズめいた男。双方ともに並々ならぬ使い手である!

 

「魔人だと? どこから現れた!」カオスヒーローが苛立ち混じりに剣を振るう。「そうだ。お前は関係ない! 僕達の間に入ってくるな!」ロウヒーローが<マハンマダイン>を放つ!「「死ね! ニンジャスレイヤー! 死ね!」」

 

「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは上体を反らし、カオスヒーローの剣を避ける。「イヤーッ!」「なんだと!?」そして破魔属性の魔法は耐性的に完全反射だ! 思わず驚愕の表情を浮かべるロウヒーローへ、ニンジャスレイヤーは無数にスリケン投擲!「東方のスペカみてえだな」ホンジョウが呑気な声を上げた。

 

「小賢しい!」ロウヒーローが放った<マハザンダイン>により、風の刃がスリケンを撃ち落とす。だがその内にニンジャスレイヤーが距離を詰める!「イヤーッ!」炎を纏ったチョップを突き出す!「ふんっ!」だが、ロウヒーローの傷は浅い!

 

 その内にカオスヒーローがカタナを振るい、二撃目を与えんとするニンジャスレイヤーの背へと袈裟斬りを仕掛ける。「イヤーッ!」「そう来なくては!」首筋に迫ったカタナをニンジャスレイヤーの右足が止めた。太古の暗殺術『チャドー』の技、タツマキケンを応用したカウンターだ!

 

 迎え撃ったニンジャスレイヤーの右足が、そのまま攻撃へと移る!「イヤーッ!」「面白い!」それは先程ロウヒーローが放った風の刃めいて、息もつかせぬ連撃がカオスヒーローに襲いかかる! だが、防御! 防御! 防御! そして攻撃!「食らいな!」カオスヒーローが獣めいた笑みを浮かべ、鋭い突きを放つ!

 

「イヤーッ!」それをニンジャスレイヤーはブリッジ回避!「ぐああっ!」代わってロウヒーローがその剣先の餌食となる。心臓を突き刺され、哀れ爆発四散か……否!「神の御心を知りなさい!」おお、ゴウランガ! ロウヒーローに付けられた傷が直ちに治っていくではないか! ヒーリング・ジツ<ディアラハン>である!

 

「不心得者共め!」回復したロウヒーローが<マハザンダイン>を放つ。「神も魔人も知ったことか!」同時にカオスヒーローがカタナを振るい<アカシャアーツ>を放つ。その中心に狙い撃たれるのはニンジャスレイヤーだ!「グワーッ!?」風と刃の渦に飲まれ、全身が切り刻まれる!

 

「ヌウーッ!」ニンジャスレイヤーはジャンプ回避で逃れようとする!「戯れるな!」「グワーッ!」だが、カオスヒーローのカタナがロウヒーローごとニンジャスレイヤーを切り刻む!「神の下へ!」「グワーッ!」ロウヒーローのジツがカオスヒーローごとニンジャスレイヤーを切り刻む! 両者のジツはアリジゴクめいてニンジャスレイヤーを捕え続ける!

 

 ゴウランガ! 何たる壮絶なイクサか! それはマッポーならぬこの世にマッポーを顕現させたかが如く混沌としている。両者はニンジャスレイヤーなど羽虫に過ぎぬとばかりに意思を突き付け合い、拳を握り合う! その中ではニンジャスレイヤーも藻掻くばかりだ。風と刃の渦はさながらフートンめいて、永久の眠りへとニンジャスレイヤーを誘う!

 

 BLAM!BLAM!「ヌウーッ!?」しかし、突如として放たれた銃弾がニンジャスレイヤーのニューロンを覚醒させた。火炎属性弾だ!「これは……」弾丸はニンジャスレイヤーを傷付けず、赤黒に燃え尽き糧とする!「やっぱ火炎吸収か」ホンジョウは笑い、銃弾を装填した。

 

「あんなバケモン二体に対抗できるとかナカナカヤルジャナイ」ホンジョウは感嘆したように言った。「だが、こりゃ味方した方が良さそうだな。つーわけで出番だ野獣、イーノック!」ホンジョウが携帯電子端末を操作し、召喚の陣を編んだ。

 

 現れたのは二体の悪魔だ。「大丈夫だ、問題ない」そう呟いた男は、上半身に純白の鎧を、下半身にはジーンズを履いている。「あっ、なんかもう良いって私のゴーストが囁きましたねえ」もう一方、薄汚い男が軽い調子でそう言った。こちらは装束など身につけていない、シャツ一枚に水着姿の軽装である。

 

「よっしゃ死んでこい野獣、イーノック!」ホンジョウはタイマ・クランの一人を銃撃しながら言う。「もう少し言い方ってモンはないんですかね……?」「実際、レベルが全然足りねえだろ。肉盾になりゃ御の字だ」その言葉に、ヤジュウとイーノックが嘆息しつつも構える。「しょうがねえなあ」「問題ない!」壮絶なるイクサに、二体の悪魔が突入する!

 

「ンアーッ!」ヤジュウがロウヒーローにパンチを放つ!「汚らしい悪魔め!」咄嗟にロウヒーローは魔法を止め、両腕をクロスさせ防御する。「神は言っている」一方イーノックもまた、カオスヒーローへ斬撃を放つ!「神など殺してやる!」カオスヒーローが魔法を止め、斬撃で迎え撃つ!

 

「調子はどうだ? ニンジャスレイヤー」拘束が解けたニンジャスレイヤーへ、ホンジョウが言った。「テメエがどうして現れたのかは知らんが、そいつらを殺すってんなら手伝ってやるよ……おっと」にやりと笑い、ホンジョウはオジギした。「ドーモ。ニンジャスレイヤー=サン。ホンジョウ・モトユキです。……失礼、アイサツが遅れたな」

 

「いや、シツレイではない」ニンジャスレイヤーが答えた。「オヌシはニンジャではない。故に、シツレイには当たらぬ」ふらつく身体で、スリケンを構える。「故に、私を上手く使え! サマナー!」決断的シャウトと共に、ニンジャスレイヤーが双方へスリケンを投擲する!

 

「イヤーッ!」「があっ!?」「クソッ!」ニンジャ動体視力により、重なり合う戦闘の中、スリケンは的確に急所を狙い撃つ!「ンアーッ!」ヤジュウが体勢の崩れたロウヒーローへパンチを重ねる。「イヤーッ!」そこへニンジャスレイヤーが素早く踏み込みハイキックを繰り出す!「ぐああっ!」双方から攻めたてられ、ロウヒーローは悲痛に叫んだ。

 

「神は言っている。最早、定めなどないと!」イーノックがカオスヒーローにアーチを振るい、浄化の輝きを浴びせる。「死ね! 全員死ね!」カオスヒーローが<マハラギダイン>を定めることなく暴れさせる!「イヤーッ!」その中をニンジャスレイヤーは汗一つかかずに踏み込み、ヤリめいたサイドキックを放つ! 耐性により火炎魔法は完全吸収だ!

 

「ちょっとマズいな。一見して有利に見えるが、傷が深い」ホンジョウが冷静に呟いた。「ジュセとイーノックは足止めがギリギリだ。正面切って戦えるレベルじゃない。だから、如何にしてニンジャスレイヤーに有利な状況を作れるかって所だが」そう言って、ホンジョウはタイマ・クランの一人を撃ち抜いた。「こいつらとは違い、銃じゃ足止めにもならん。まずは回復が必要だ。スシでもありゃいいんだが」

 

「ありますよ」「ナンデ!?」ホンジョウは驚愕の表情を浮かべた。振り向いた先、クズノハ・ライドウはゴトウを相手にカタナを振るっている。「丁度持っています。どうぞ」ライドウが投げて寄越したのはパック・スシだ。「だからナンデ!?」ホンジョウは慌てて受け止めた。

 

 しかし、それは単なるパック・スシではなかった。「アイエッ!?」中身を見たホンジョウが目を輝かせる。バンブー製の折箱の中には、最高級オーガニック・トロマグロスシや、最高級オーガニック・ウニスシなど、輝かんばかりの最高級スシが整然と揃っている。あからさまに高級品なのだ!

 

「食事を楽しみにしていたようなので、着替えてくる際に頼んでおきました」「お前聖人かなにか?」ホンジョウの言葉にライドウは笑みを浮かべる。その胸は平坦であった。

 

「とにかく、これで俄然、有利になる」ホンジョウは冷静に戦況を見定めた。ヤタガラス・クランとメシア・クランが、即席の連携においてもタイマ・クランを追い詰めようという中、ロウヒーローとカオスヒーローの激突は巨大な障害となっている。竜巻めいた暴力の渦が、双方に甚大な被害を巻き起こしているのだ。

 

「だから、複数の意味でも、これで有利になるんだが……」ホンジョウは呟く。ニンジャスレイヤーを支援することは、障害となっている暴力の渦を収め、安定をもたらすことだろう。「なるんだが……」呟きながら、ホンジョウは手元のスシを見つめ、涎を流した。「一つくらい、食べてもバレへんか……」

 

「Wasshoi!」「アイエッ!?」ホンジョウが口元に運びかけたオーガニック・トロマグロスシが、赤黒の風に運び去られた。殺戮者のエントリーだ!「おちおちよそ見も出来んな、このサマナーは」そう言ってニンジャスレイヤーは次々とスシを口に運んでいく。「一つは残してやる」ホンジョウは投げ渡された折箱の中を覗き、叫んだ。「カンピョウしか残ってねえ!」

 

「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは再び戦乱の中へと踏み込み、ロウヒーローへとチョップを繰り出す!「ジュセ! ニンスレが相手してる間にデバフかけろ! つか美味いなこれ」ホンジョウがカンピョウ巻きを口にしながら指示を飛ばす。「おかのした! チンポもシコシコしてやるからなあ~~♡♡♡」「あーそうだったわクソがッ!」

 

 ヤジュウの<ファイナルヌード>にロウヒーローとカオスヒーローが取り乱す。「きったね!」「神への冒涜ですよこれ!」動きが鈍り、攻防共に隙が生じる!「ママーッ!」タイマ・クランの戦闘員がしめやかに射精!「ふざけるなよお主!」「素直に死ねっす」「俺だってやりたくねえよ!」ホンジョウもまた、味方に責められ汗を流す!

 

「イヤーッ!」その隙にニンジャスレイヤーがスリケン投擲!「大丈夫だ!」同時にイーノックもアーチをガーレに変化させ、遠隔射撃!「「グワーッ!?」」二倍の投擲物がロウヒーローとカオスヒーローに襲いかかり、ヤマアラシめいて全身に刺さる!

 

「スゥーッ! ハァーッ!」ニンジャスレイヤーが、チャドー呼吸により意気を高める。「スゥーッ! ハァーッ!」最高級オーガニック・スシが全身に活力を与え、沸き立たせる!

 

「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーが素早く踏み込んだ!「イヤーッ!」「グワーッ!」ロウヒーローに右拳を振り下ろす!「イヤーッ!」「グワーッ!」カオスヒーローに右足を繰り出す!「イヤーッ!」「グワーッ!」ロウヒーローに左拳!「イヤーッ!」「グワーッ!」カオスヒーローに左足!

 

「イヤーッ!」「グワーッ!」ニンジャスレイヤーは振り子めいて間断入れずに連撃を加える!「イヤーッ!」「グワーッ!」ロウヒーローとカオスヒーローの動きは鈍い。ヤジュウのデバフ・ジツの効果だ!「イヤーッ!」「グワーッ!」更に後方からイーノックがガーレで責め立てる!「イヤーッ!」「グワーッ!」赤黒の炎が燃え上がる!

 

「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」

 

 KRAAASH! 全くの同時に叩き込まれた一撃が、ロウヒーローを左の壁に、カオスヒーローを右の壁に吹き飛ばし、亀裂を生んだ。すかさずカオスヒーローへ、リエが駆け寄る。「大丈夫!?」「リ……エ……」口から血を流し、カオスヒーローはニンジャスレイヤーを睨み付けた。

 

「何だ、お前は……。お前は違う……お前は俺達の……」「それがオヌシのハイクか?」「なに?」ニンジャスレイヤーは赤黒の炎を纏い、カオスヒーローへにじり寄る。「ハイクを詠め。カイシャクしてやる」カオスヒーローは笑った。「……っは! 意味が分からねえ」

 

「やめて……どうして!」リエが庇い立てるようにカオスヒーローの前に腕を広げた。そのバストは豊満であった。「もう関わるはずがないことでしょう!? もう始まるはずがないことでしょう! なんで今更、私達が!」「故にオヌシ達は死ぬのだ」「何でよ!」

 

「ニンジャスレイヤーなどというアクマは存在しない」ニンジャスレイヤーは決断的に答えた。「アイエッ!? 何そのニンジャ真実!?」ホンジョウが驚愕の表情を浮かべる。それを他所にニンジャスレイヤーは言う。「だが、私の妻子はオヌシ達に殺された。私の夫と子はオヌシ達に殺された。私の両親はオヌシ達に殺された!」

 

「ああ。あはは! そういうこと……」エリーが笑った。「魔人:デイビットなる悪魔は伝承に存在しない。魔人:だいそうじょうなる悪魔は伝承に存在しない。魔人とは死の概念が皮を被ったもの。故に……」エリーは高く笑い、言った。「復讐者という死の魔人……起こるはずだった東京大破壊が、お前の根源か」

 

「無数に起こったのだ。故に殺す」ニンジャスレイヤーは静かに言った。「あらゆる世界で、あらゆる時代で、私はオヌシ達を殺す! 救世主気取りの邪悪なアクマ共め! 今更、再び、始めようなどと!」その声にホンジョウのCOMPに表示される文字が揺れる。[魔人:アヴェンジャー][魔人:ヴィクティム][魔人:アンチヒーロー]そして……[魔人:ニンジャスレイヤー]

 

「オヌシ達の為に定められた運命ならば、オヌシ達を殺す! 神も殺す。アクマも殺す。災禍の引き金となる者を全て殺す!」ニンジャスレイヤーが踵を振り上げた。「やめろ!」「良いんだ……リエ」カオスヒーローが、リエの腕を引き留めた。「イヤーッ!」

 

 振り下ろされた踵が、カオスヒーローの心臓を砕いた。「夢を見ていた……白い夢を……」カオスヒーローは笑っていた。「リエ……お前は、俺じゃなかった。誰か、別の奴を……」カオスヒーローが譫言に呟く。

 

「俺もお前も、そしてあいつも、ずっと夢の中に……」カオスヒーローがリエに手を伸ばす。リエはその手に躊躇して、しかし強く握った。「ああ、そうだ……」カオスヒーローは笑った。「だが……それでもお前は……ああ、良い夢だった……」

 

 カオスヒーローは爆発四散しない。ただ、死体が横たわっていた。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。