クソ忙しかった正月も過ぎて、浮かれ気分の街も落ち着いた一月中旬。俺達は文京区のとある立派な高校の前に居た。
丁度下校の時間ということもあり、若々しい高校生達がぞろぞろと校門から出ていく。が、その目線は俺達を怯えるように避けていく。女子校の、それも校門の真ん前に黒塗りの高級車が駐まってんだから当たり前だよなあ?
「だけど流石に露骨スギィ! オジキぃ、あんクソガキ共に一つ"分からせ"行っときやしょうかい?」
「何時の時代のチンピラなのだお主は……」
「それと誰がオジキだ」と運転席でぶつくさ言うのはクソジジイこと葛葉ゲイリンである。悪いな運転してもらって。俺も坂上さんも免許持ってねえんだよ。
「ヤタガラスが親分だとしたら、ゲイリンがオジキってのも立場的に間違ってはないっすけどね」
「坂上まで何を言うか。ヤタガラスは極道ではない! 超国家機関である退魔組織だ!」
「なら社用車にこんな黒塗りの高級車使うんじゃねえよ」
「烏の濡れ羽色こそ、ヤタガラスの象徴である!」
頭硬いね~~と思いながら、俺は車のドアに背を預けた。そんな理由で俺も黒スーツに黒ネクタイだよ。どうだよ(呆れ)。車も相まってこれじゃあ893にしか見えないんだよなぁ……。
隣で佇む肉おじゃなんか思いっ切り組の若頭って感じだ。何時もの烏帽子も着けてねえしな。だから高校生共に目を向けただけでビビりまくられるんだよ。
「……で? なんでライドウがこんなところ(直球)に居んの? ここクソ有名な女子校じゃねえか。あいつ潜入捜査でもやってんの?」
「何を言っておるのだお主は。ライドウがこの高校に居るのは当たり前の話であろう。そのために迎えに来たのだからな」
「は? 意☆味☆不☆明」
そう、態々俺達が雁首構えて高校の前に屯している理由とは、ライドウを迎えに来た、それだけの理由である。随分な立場だなお前な? まあ本当に随分な立場ではあるのだが。
しかし、何故ライドウがこんな名門女子校に居るのかは不明である。ひょっとしたら何か重大な儀式の場にでもなってんでしかね? そんな気配はまるでしないけど。
……と、その時、俄に校門口が騒がしくなった。ざわざわと生徒達の声が響き、誰かを押し留めようとしているようだった。
「こっちは今ダメです! ヤクザが三人も……きっと抗争が……」
「筋肉モリモリマッチョマンの若頭に、もう一人はあからさまに狂犬の鉄砲玉……! それと運転席のは親分ですよあれ!」
「誰が鉄砲玉だボケ(半ギレ)」
「ヒッ……!」
女子生徒が俺の呟きに顔を真っ青にした。糞が。ゲイリンが親分で坂上さんが若頭で、なのに俺が鉄砲玉ってのはどういう了見だよ(半ギレ)
しかし、女子生徒達が必死に押し留めたのにもかかわらず、件の人物は剛毅にも歩み出た。
周囲の生徒達はおろおろとしているのに、彼女は一人、涼やかにこちらを見つめていた。当たり前だが女子生徒である。それも随分な美人である。肩口で切り揃えた黒髪に切れ長の瞳は、そこに佇むだけで存在感がある。
喩えて言えば日本刀のような美人が、すらりとそこに立っていた。
「ヒューッ! 随分マブいスケじゃねえか。オジキ、攫って来ましょうかい?」
「だから何時の時代の何者なのだお主は」
ヘラヘラと笑いながら俺は軽口を飛ばした。だって……何だろうな。あれ? 頭が痛いな。目の前の女子高生に見覚えなんてまるでねえのに、何だか背筋が寒くなってきたぞ?
「……と言うか、お主まさか」
「あん? 何ですかいオジキ? 何かちょっと寒くなってきたんで車内に入って良いですかね?(震え声)」
「えっ、マジすか? そんな事あるんすか?」
そんな事ってどういうこったよ。と言う間にも女子生徒は周囲の声も意に介さずこちらに歩み寄ってきた。ンだこいつ!?(驚愕) メンチ切るつもりか? おう勘弁!(弱音)
しかし、何故かその女子生徒は当たり前のように話しかけてきた。
「出迎えご苦労です。ゲイリン、坂上。そして……ふふ、貴方もですね、本庄」
「え?」
「うむ。さあ乗れ、ライドウよ」
「は?」
「クキキキ……マジで面白いっす。そんな事あるんすね、ライドウ?」
「いや、おい……」
あの、高校生達がポカンとした顔でこっち見ているんですがそれは。そりゃそうだよ(便乗)。俺だって驚いてるよ。だって知らねえ女子高生がいきなり黒塗りの高級車に乗ってきたんだもの。
「……おや、乗らないのですか?」
「え? あ、おう」
何か急かされたので乗っちゃった。助手席が坂上さんなので後部座席に隣り合う形である。気まずっ。誰だよコイツ(困惑)。というか出発して良いのかよ。ライドウがまだ来てねえ……ん?
「……ん? ライドウ?」
「はい。そうですよ?」
「お主、お主な……」
「わぁらっちゃうんすよね!」
ゲラゲラと坂上さんが笑っている。ゲイリンが呆れたように溜息を吐く。いや、言っている意味が分からん。何で女子高生がライドウなんだ?
確かに、良く良く見れば容姿は全く同じだし、雰囲気も全く同じだし、僅かな微笑みを湛えた表情はどっかのバケモンに瓜二つ……あれ?
……あれ~~? おかしいね、ライドウが女子高生だね?(混乱)
「ふふ。……はい。ライドウです。美人とは、ふふ、ありがとうございますね?」
そうライドウは上機嫌に笑った。その瞬間に俺は青ざめ、全身が震えだし、思わず呟いていた。
「……お前、何時から女装が趣味になったの?」
「……はい?」
「もう止めて欲しいっす! 笑いすぎて死ぬっす!」
「この馬鹿者がぁ! 二十代目葛葉ライドウは歴とした女であり高校生だ!」
「はあああああ!? ライドウが!? ライドウに!?(意味不明)」
お前……女だったのか!?(王道)「……王道も何も、ずっと女でしたが」うわ思考盗聴ヤメロってか本物じゃねーか! 本物のライドウじゃねーか!?
「お前、マジで普段からライドウのこと人外のバケモンと思ってたんすね。口先だけじゃなくマジで。トラウマが根深すぎて笑っちゃうんすよね!」
「お主な、お主な! いくら何でも今回ばかりはあんまりだぞ! ハンドルを握ってなければ素首断っとるわ!」
囃し立てる坂上さんも、怒り出すゲイリンの声も、俺の耳には微かに聞こえるばかりだった。何せ目の前にはライドウが居た。見目麗しい女子高生から突然バリバリバリントンと『我が名はライドウ』って感じで変貌したのである。
「アイエエエエエ……おまんこ壊れれちゃう(白目)」
「……ふふ、本庄? 貴方はまさか私を……本庄?」
急性ライドウリアリティショックに襲われた俺はしめやかに失「戻らないと怒りますよ」アイエッ!? こ、コワイ……ライドウが真っ直ぐにこちらを見つめている……。怖すぎて正気に戻っちゃった。どころかそのショックでああああああああああああ!!! 思い出した思い出しちまったわ!!!
「あ、あれは確か、俺がヤタガラスに入らされた初めの日の事だ……」
「急になんすか自分語り始めて」
「そう、その時の俺は、正直言って最悪だった。無理矢理入らされた鬱憤で態度も口も悪く、はっきり言って人間の屑……」
「それは今もだろうが。疾く直せ」
「うるせえちょっと黙ってろ!(理不尽)」
ともかく! その時の俺は嫌々ヤタガラスとか言う訳わかんねー組織に入らされたこともあり、滅茶苦茶ムカついていた。そこでライドウと出会ったんだよね。
「この組織で一番強いヤツ、って紹介されたのが女子高生だったから爆笑したんだよな。同時にここカルトじゃねえの? って震えたっけ。女子高生が一番強いとかぜってえ(意味深)って意味だろうって……」
「それでゲイリンに首飛ばされたんすっけ(記念すべき一敗目)。いや俺も焦ったっすよ。連れてきたガキが死ぬほど失礼なこと宣ったんすから」
「その時は救えぬゴミと思い、坂上に責任を負わせるつもりだったが、存外に骨があったな。いや単なる阿呆かもしれんが」
そう、正直俺は急に殺されたこともあり、マジでびびっていた。小便漏らして組織の犬になる覚悟満々だったが……。
「……その時ライドウが、言っちゃいけないことを言ったんだ。絶対に、人に向けて言ってはいけないことを。俺にとっての禁句を……!」
「そんな事言いましたか? 私の何が貴方を怒らせたのでしょうか? 教えていただけませんか?」
「うわっ近寄るなオエッ!(反射)」
「やめろ馬鹿者! 儂が掃除するのだぞ!」
「えっそうなの? その年になってもそんな事しなくちゃいけないとかヤタガラスって……(悲哀)」
「借りた物を綺麗にして返すのは人として当たり前の事だろうが!」
「ゲイリンはマジメ君過ぎるっすね……。で、なんすか? その禁句って」
坂上さんがゲイリンを呆れ顔で見つつ言った。この話だけはしたくなかったが、仕方がない。これこそが、俺がライドウを嫌う根本的な理由とも呼べる物だからな……。
正直、思い出すことも嫌な過去だ。俺は渇いた喉を無理矢理動かすように、声を震わせながら呟いた。
「こいつは……こいつは……! 俺が下北沢在住の大学生だと自己紹介したら……『ふうん』と一つ言って……『地理的に東京大学でしょうか? 立派な物ですね』と言いやがったんだ……!」
「あー、そんな事言ったような気がするっす」
「……それで? ライドウが言った禁句とは何だ?」
「はあああああ!?!? これが禁句だよボケジジイ!!! コイツ俺が東大に通っているとか言いやがったんだぞ!!! 俺が受験に失敗した東大を!!!」
「何を言っているのだお主は(困惑)」
ライドウは思案するように眉を顰めているが、まさか忘れたとか言わねえよなテメエ! 人様の学歴コンプレックス突いて『私も選択肢の一つとして視野に入れています。ともすれば先輩ですね』とか言いやがった事、結構な頻度で夢に見るんだぞ!?(トラウマ)
と、そこでライドウがぱち、と手を叩き、「そういえば言いました」とか言った。今の今まで忘れてたのかよお前よぉ!?
「社交辞令のつもりだったのですが、その後に何故か決闘を挑まれたので、その衝撃ですっかり忘れていました。そちらの方が重要な記憶だったので。ええ、本当に」
「それでボッコボコにされてトラウマ確定だよ! だから俺の可愛い脳味噌ちゃんは心を傷付けまいと忘れてくれてたんだ!」
ああそうだわ暫くは女子高生見るだけで小便漏らしそうになってたんだ思い出したわ! 刀握るだけで手が震えて上手く使えないのもこれが原因だったわ!
まともな生活を送るために、ライドウが東大も余裕な名門校のJKであるという事実を記憶の奥底に仕舞ってくれたとか、脳味噌ちゃん……! ちくしょうアンタはなんて可愛い子なの!
「脳味噌ちゃん……大好きだよ……!」
「しょーもな」
「なんすか坂上さんその纏め方ァ!」
脳味噌ちゃん! もう一度忘れさせてくれねえと俺アニメも漫画も見れねえよ! と真ヒロイン脳味噌ちゃんに懇願していると、急にゲイリンが車のスピードを落とした。今までぴったり60キロだったのがぴったり50キロである。
「……ゲイリンさあ、もう少しスピード出してくんね?」
「そうっすよ。護国寺からここまで60キロって時点でマジすか? って思ってたんすけど。後ろに渋滞ができかけてるっすよ」
「何を言うか。ヤタガラスが法定速度を守らずしてどうする!」
「まあ、確かに褒めこそすれ、非難することではありませんが」
ライドウはそう言うが、これじゃ霞ヶ関に着く頃には時間ギリギリじゃねえか。これから会うメシアン共にも勧誘されちまうぞ。貴方は実に法を守っていますねってな。
……そう、俺達が向かっているのは霞ヶ関の帝国ホテルである。別に正月明けの宴会をしようってわけじゃない。宴会なら三が日に散々やったしな。すっげえ楽しかった(小並感)。杵と臼持ってるからって『葛葉ライドウ』の正月祭事に無理矢理参加させられたのはクソだったが……。
ともかく、帝国ホテルで開かれるのは、ヤタガラスと退魔庁とメシア教の会談であった。字面だけでクソみたいな面倒臭さを覚えるが、実際にはもっと面倒臭い。何せメシア教第七研究所での一件を報告して以降、退魔庁との関係が明らかに悪くなったからな。
ヤタガラスの貴族共も追及を続ける腹積もりではあったが、時期が悪かった。正月シーズンは祭事が重なっちゃって動くに動けねえ。そんで文面だけの説明要求を重ねている間に、メシア教側からヤタガラスと退魔庁に会談が提案されたのである。退魔庁がメシアンの異端共と繋がっているのなら、あちら側としても糾弾するに決まっているからな。
そして、何故かそこに俺も出席するよう指名されたのだ。おかしくない? ゲイリンと坂上さんとライドウは分かるよ。ゲイリンは実働部隊の纏め役だし、坂上さんは出自からして貴族の一員だし、ライドウはヤタガラスの象徴だ。だけどなんで俺も?
……いや、分かっている。多分クソ聖女の差し金だろう。アレがメシアンの頭に座っているのなら、意味不明な厨二的理由で俺を呼びつけそうだしな。
まま、ええわ。だって俺が発言するわけじゃないし。精々ゲイリンに胃薬を投げつける事と、美味い飯にありつけることを楽しみにしておこう。さっきからライドウがガン見してくるせいで吐き気が凄いけど(顔面蒼白)
「黒飴あるっす。食うすか?」
「これから美味いもん食うからそんなのいらない……」
「クソ失礼っすねお前……」
と、そんな事を言っている間に黒塗りの高級車は目的地に辿り着いた。既に貴族のジジイ共は到着していたようで、恐る恐るといった様子でヤタガラスの一般隊員君が俺達を案内した。
そんで到着した控え室である菊だか牡丹だか何とかの間には、死ぬほど珍しく、というか初めて見たわ貴族のジジイ共が和服じゃなくスーツ着てるの。こいつらまともな格好も出来たんだな。
「葛葉ゲイリン以下四名、参上致しました」
「ん……ちと遅かったの。さてはゲイリン、また法定速度を遵守しおったな」
「はっ! ヤタガラスの一員として、たとえ些細な事柄であろうとも、常に国家に恥じることのなきよう……」
「あーもうよいもうよい。ライドウも着替えよ。学校の制服では舐められる。舐められたら殺すのが麻呂達ヤタガラスの本懐でおじゃる」
「かしこまりました」
「……うへ~」
何時の時代の精神だよ。そりゃヤタガラスその物がキチガイ集団なんだから、その上層部がキチガイなのは当然の話だが、しかしちょっとナメコロ精神が強すぎねえか?
杖から仕込み刀覗かせてんじゃねえよ。思いっ切り殺気振りまいてんじゃねえよ。退魔庁に滅茶苦茶ブチ切れてんじゃねえか(ドン引き)
と、そこで急に一番偉そうなジジイに「ちと麻呂の方に近う寄れ」と俺が指名された。えぇ……面倒臭ぁ……俺が話す事なんて何もねえだろ。こういう場の敬語とか何も分からんし、適当に答えよっと(ザ・適当)
「……それで、本庄でおじゃるか。またそちは何かやらかしたのかのう?」
「あー……ウッス!」
「尽く厄介事を持ってくるなあ、お前は。しかし今回に関しては功績でもある。功績でもあるが……そういう星の下に生まれついているのか?」
「おー……ウッス!」
「いずれにせよ、メシア教がお主を指名したという事実、重く捉えよ。儂らよりもお主を重要視しているという証左なのだからな」
「へー、ウッス!」
「……お主なぁ」
あのさぁ……皆して睨むの止めてくれない? そりゃ間接的に舐められてる……! って事なんだろうけど、俺に怒るのは筋違いだってはっきり……って痛ったぁ!?
「お主の態度が余りに無礼だから呆れられているのだ馬鹿者が!」
「だからといって殴るんじゃねえよ! お偉方の真ん前で暴力沙汰とかどうする? 赤穂四十七士の誕生か?」
「誰が浅野内匠頭だ。チッ……申し訳ありませぬ。つい頭に血が上ってしまいました(全ギレ)」
「まあまあ、良いじゃないっすか。こいつに礼節とか期待する方が間違ってるっすよ」
そう言って坂上さんがガシガシと俺の頭を掻き乱した。ゲラゲラ笑って楽しそうだなお前な。そうして坂上さんは、この場でも一番偉そうな麻呂野郎に軽く言った。
「そうっすよね、パパ上」
「パパ上!?!?!?」
そう言われた麻呂ジジイは、深く溜息を吐いて頭を抱えた。えぇ……坂上さん、偉い偉いって聞いてたけど、マジモンのボンボンかよぉ!?
「坂上田村麻呂の直系がボンボンじゃなきゃ誰がボンボンって話っすけどね、パパ上?」
「キミヒコ……パパ上は止めろと何時も言ってるでおじゃろう。それと、言葉遣いも改めるでおじゃる。坂上の次期当主として……」
「令和の時代におじゃる使ってる方がおかしいっすよ。パパ上、裏でなんて言われてるか知ってるっすか? おじゃる丸っすよ」
「お……おじゃる丸でおじゃるか……? 麻呂がその様なあにめのきゃらくたーに……?」
麻呂野郎はショックを受けたように扇子で顔を隠した。アニメは知ってるのか(困惑)
「いや坂上の、儂も実際、おじゃるは古すぎると思うておるのよ。これを機に止めれば良いのではないか?」
「私も古いと思うのである。いくらヤタガラスでも生粋の名家とは言え、言葉遣いまで古くする必要はないであろう」
「諏訪の……それに壬生までもか……」
お爺ちゃん達が言葉遣いを直そうとしているが、正直言って今更な話である。ヤタガラスの古臭さは並大抵の苦労で晴れるような物ではない。仕草や言葉遣いその物が、素人目でも伝統に満ち満ちているからな。
……まあ内一名は、娘さんが関係して最近アニメとか漫画とか勉強し始めたらしいけどな。共通の話題を作って理解をしてあげるとか何とか。涙ぐましい努力だが、何があったんでしょうかね?(すっとぼけ)
なるべく諏訪さん(父)と目を合わせないように過ごしながらライドウを待っていると、ようやく現れた。あからさまに高級なスーツ姿は珍しい。だって普段は時代錯誤な黒マントか、たまに真っ黒な学生服……あががが記憶が蘇る!? 日常の記憶にトラウマが入ってくる!?
「……どうでしょうか? こういった格好は初めてなのですが」
「汚された……俺の心が。どうしよう、汚されちゃったよう……」
「はあ」
「何をアホ言ってるんすか。さっさと行くっすよ」
せめて、人間らしく(迫真)と、坂上さんをライドウへの盾にしながら部屋の外へ出る。クソデカ会議室のクソデカ扉の前には既に胡散臭いジジババが屯しており、ゴミゴミクソクソと言いたくなる雰囲気を振りまいていた。
その中に奴は居た。青白の法衣に身を包み、静かに笑みを浮かべるガンギマリの目は見覚えがありすぎて忘れたくなるほどである。
「……オエッ」
「やっぱり黒飴舐めるっすか?」
「寿司とか用意してんでしょ? そんなモンいらないですよ……」
「何勘違いしてんのか知らんすけど、食事なんて出ないっすよ」
「えっ、じゃあなんでここまで来たの俺」
「静かにしろ馬鹿者がっ!(小声)」
騙しやがったな……(身勝手の極意)と背中を小突いてくるゲイリンを睨みつつ、時間となり、いの一番にクソッタレ聖女様がにこにこ笑いながら入室していった。やっぱお前が一番偉いんじゃねえか(半ギレ)
んで、次がゴトウってジジイで、その次が我らが麻呂である。……うわっ、キレてる、キレてるよー! 組織的に一番下だって暗黙に告げられてて麻呂キレてるよー! お前ら人のこと言えねえほど態度に表われてんな(呆れ)
そんな風にがちゃがちゃグダグダ入ってって、俺の順になったのは最後の方である。『本庄って誰だよ』と言いたげな視線が俺に纏わり付くが、無視して円卓状の席の左側、ヤタガラスの末席に落ち着いた。同時にエリーのバタバタ振ってくる手と笑みもガン無視する。厄介事に巻き込みやがって、死ね(直球)
こうしてぐるりと眺めてみれば、何ともまあ、どいつもこいつも胡散臭い奴等ばかりである。クソッタレの狸ジジイ共に、脂ぎったゴミババア共、そして剣呑な雰囲気を隠そうともしない戦闘者共だ。
これが純粋に政治家とかの会議なら、そういう奴等が席に着く事なんてありえねえんだろうが、生憎我らはオカルト組織であり、武力は立場に直結する事が多い。
故にメシアン方にもテンプルナイト感バリバリの兄ちゃんが居るし、退魔庁側にもこれガイアーズじゃねえのっておっさんと姉ちゃんが居る。いやおっさん腕組みして机に脚載せるなよ。行儀悪っ。ぜってぇDark-Chaosだわコイツ。
「ねねね、ゲイリン。ナメコロ! ナメコロ!」
「嬉しそうに言うな馬鹿者……。今ここで刀を抜く訳にはいかぬ。腹は立つがな……」
「えーあっちだってクソ下らなそうに溜息まで吐いてんのに?」
「チッ……だが無視しろ。立場も状況もだが、アレには勝てぬよ。儂でも、坂上でもな」
「へー」
傍目にゃババ臭い髪型の姉ちゃんと管巻いてるおっさんにしか見えんがね。眼鏡かけて悪げな感じ出して「下らないな、リエ」とか姉ちゃんにカッコつけてやがる。ちょい悪親父とか死語だぞ死語!
まあ実際、ちょっと観察したらマジにヤバい雰囲気バラマキしてたので間違っても喧嘩売らないけどな(震え声)