ネットミーム・デビルサマナー   作:生しょうゆ

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第二十話 騙して悪いが系チンシコーマン

 

 

 

『こちらワグナス。潜入に成功した。まだ陽動は必要ない。そのまま待機していてくれ』

『心臓がくるしいゾ……』

 

 耳に付けた通信機からそんな会話が聞こえている。俺は小高い公園から研究所を見つめつつ、ぬわああんと欠伸をした。こうなると暇である。作戦が成功するまでCOMPに保存してあるお気に入りの淫夢MADでも見てるか。

 

「ンアッーイク! ンアッーイク! ンアアアッイクイク! ンアッーイク! にゃお!いく にゃお!いく にゃにゃにゃお!いくいく にゃお!いく(sm27855804)」

「……ちょっと呑気すぎますね!」

「ファッ!?」

 

 何だお前人が淫夢MAD見ている時に!?(最悪)と思って振り返ればそこには青白の儀礼服を着た少女が佇んでいた。

 

 げっ、メシアン……ってかワグナスの妹じゃん。

 

「名前……えー……あー……あっ、エリーちゃん!」

「あはは! それ頭の中でやった方が良いですよ。口に出すことではありません!」

「いやあごめん! 人の名前って覚えるの苦手でさあ(陰キャ)」

「まあ良いですよ。そう言えばフルネームも名乗っていませんでしたね! これは失礼しました!」

「そういや俺もだ。お互い様だな!」

 

 あははうふふとエリーちゃんは笑っている。俺も何となく笑っている。何だか和やかな雰囲気だね。

 

 ……で、何でここに居るわけ?

 

 懐のCOMPは既に召喚の手筈を整えている。右手には引き金を握るが、突き付けないのは疑念が為。

 

 何のつもりだよ。お兄ちゃんが心配って訳じゃねえだろう? そんな悍ましいほどに聖なる気を発してよ。それがお前の本性って訳か?

 

「まあ、そんなに怖い顔をしないで! 銃も剣も、私は振るわないの。私はただ迎えに来ただけ」

「現世から天上にかあ? そんなのを使わなくてもお前らは殺せるだろうが。異能者のメスガキよお」

「酷い言いようね。余りに生活が殺伐としていたのね! でも迎えに来たのは本庄さんじゃないの。救われぬ者は……」

 

 そこで彼女はすうと研究所を指差した。「あそこに、数多に」その微笑みは慈愛のつもりか。それとも変態野郎の嗜虐の笑みか?

 

 分からないな。何もかも分からない。こいつが何者なのか、何をしに来たのか、そもそも本当に妹なのか。

 

 だが確かなことが一つある。こいつは碌な奴じゃない。溢れんばかりの聖なる気配ともう一つ。そしてもう一つの方が俺にとっては重要だ。

 

「……お前さあ」

「はい? 何かな?」

「どさくさに紛れてタメ口きいてんじゃねえぞボケ! 敬語使え敬語ォ!」

「……あ、はい。……あ、いえ、そこなの?」

 

 なめてんじゃねーぞクソガキ。お前ワグナスが言ってたけど19歳だろ。俺20な。俺のが年上な! 舐めてん程度のものではねーぞ!

 

 と、言う風に立場を決めつけるのが無理矢理距離を詰めてこようとする奴には効果的である。やっぱこいつメシアンだわ。するりと胸元にまで入り込まれそうな雰囲気でやはりヤバい(分析)

 

「と言うわけでお前が何者であろうと俺に絶対服従な。はいじゃあケツ……あ?」

 

 と、その時ワグナスから通信があった。呑気なもんだな。妹がヤベー奴感丸出しで現れたってのに。

 

『本庄、少し良いか』

「今お前の妹が目の前に居るんだけどよぉ、お兄ちゃんからちょっと説教してくれないか? 敬語はちゃんと使えってさあ」

『……何を言っている? エリーがここに居るはずがないだろう』

「居るんだよ。いいか? お前の妹……」

 

 と、その時通信に異音が入った。ガチャガチャと忙しない足音が響く。ワグナスが息を呑んだのが聞こえた。

 

『ワグナス兄貴、なんか知らん奴等が出てきたゾ……』

『分かっている。すまない本庄、どうやら嗅ぎつけられたらしい。しかし、侵入を気取られた様子はなかったのだがな……。相手も、どうにもメシアンらしくはない』

「……へえ。……死ぬなよ」

『この様な者共など、いくら倒したか知れないよ』

 

 そうして通信音は戦闘音へと移行した。施設内部を野獣に探らせてみたが、襲撃を察知した様子はない。つまりワグナスを襲撃した奴等はここの研究所の奴等ではない。別口の手の者。

 

 そして、俺達の周囲にもまた、囲うようにそいつらが現れていた。

 

「……召喚:マナツノヨルノインム、イーノック」

「ヌッ! で、なにこれ? どういう状況なんですかね?」

「殺意を向けられている事は確かだ。サマナー、一番良い判断を頼む」

 

 俺達を囲むのは黒装束の集団だ。成る程、確かにメシアンらしくはない。あいつらは何時如何なる時でも青と白の儀礼服を着ているからな。神に誓ってこの行為に恥じるところはないという証明らしいが、だからと言って、こいつらをガイアなり何なりと断ずるには早すぎる。ガイアの奴等ならもっとチンピラ感丸出しってのもあるが……。

 

 何せ、目の前の少女は、全てを承知しているように微笑んでいた。

 

「結局の所、全てお前の差し金か? 流石メシアンは狂ってやがるな。お兄ちゃんは神様の元に迎えられるの! ってか?」

「違いますよ! 彼らはメシア教の者ではありません。寧ろ敵対者ですね。切り捨てられた研究所を接収しようと企む輩です!」

「こいつらはガイアーズか何かだって? だとしてもどうしてそれを知っていやがる。知っていて見逃しやがったな」

「あら酷い。決めつけて結論を急いで、余程焦っているのですね!」

「チッ……」

 

 掴めない。数日前に会話した少女と同一人物かどうか疑わしくなる。しかし何も掴めずとも状況は無慈悲に進みつつある。

 

 真っ昼間だというのに辺りは閑散としている。工場が多いとは言え街の一角だってのに、先程から車が通らない。人が居ない。黒装束共は無言に懐から刀を抜き、じりじりとにじり寄ってくる。

 

「どうします?」

 

 エリーは明るく笑って言った。

 

「犯人捜しを続けますか? 戦闘になれば研究所側も察知するでしょう。ここは単純に行きましょうよ。私の言葉を信じて、お兄ちゃんを助けに行きましょう! さあ、私を信じて!」

 

 その聖女その物の笑みに俺は笑った。メシアンの癖して釈迦の掌の上ってか? 気持ちが悪い。行動を強制されていやがる。

 

「ここで『だが断る』と言えたら楽なんだがな。こいつぶん殴ってスッキリ出来るなら一つの道だぜ」

「しかし、現に彼らはこの少女も狙っているようだ。そして私の感覚でしかないが、彼らには神の言葉が届いていない。メシア教以外の者と見て大丈夫だろう」

「だがな……下手に手ぇ出してメシア教に有利な何かを……」

「ぬわああああん疲れたもおおおおおん!」

「痛ぁっ!? 何すんだうんこ!」

 

 人がマジメに思考している最中にいきなり蹴ってくるとか何だこいつ!? 思わず振り返れば野獣は呆れたように肩をすくめた。似合ってねえよそのジェスチャー(半ギレ)

 

「サマナー早くしろぉ~~。考えても分かんねえモンは分かんないダルルルォ!? やっぱお前の仕事柄(笑)は役に立たないってはっきりわかんだね」

「……あー……。そりゃあ、そうだな。何時もそうだわ。訳分かんねえ内に訳分かんねえ事してるのが常なンだわ」

「そろそろ腹ぁ括れぇ~~? そのいつも通りをやるんだよ、おう」

 

 野獣がバシッと背中を叩いたのを契機に、俺は思考をリセットさせた。

 

 よし、ぐだぐだは終わり、閉廷。考えるのは後にして、とりあえずぶっ殺すのが俺だったな。

 

 クソッタレ聖女候補様のせいで思考が掻き乱された。台詞の中に『私を信じて』とか入れてくるんじゃねえよ。お前を信じるか信じないかの二択だと思わされるだろうが。

 

「あら、良い仲魔を持っているのですね? 意図して思考を停止できる人など稀ですものね!」

 

 エリーはあくまで朗らかに笑っている。糞が。何がしたいのかさっぱり分からん。

 だからこそ、俺は彼女を睨み呟いた。

 

「あはは! 何でしょうか? そんなに怖い顔をして……」

「おまんこ」

「えっなんですかいきなり」

「ばーかばーかざまーみろ! お前の聖女面はおまんこ一発で崩れ去るんだよボケェ!」

「えぇ……子供ですか本庄さんは」

 

 よしこれで勝った!(小学生並みの感想) つーわけでイくぞオラァ! YO!

 

「ジュセ、<子守歌>! イーノック、<会心波>! 一手で崩した後はすぐに研究所にのりこめー^^」

「おかのした!」

「問題ない!」

 

 野獣とイーノックに囲いを切り開かせ、そこから俺は一気に駆け出した。黒装束共は呻き声一つ上げず追ってくるが、その前に研究所の門を越える。

 

「何だ貴様らは!?」

「おい、非常事態だ! テンプルナイトの増援を……!」

 

 青白の制服を着た警備員達の制止の声は必死なもので、黒装束共にも相対しながら、怒号混じりにこちらへと向かってくる。

 

「止まれ! 止まらんか! おい貴様何者だ!」

「聞いて驚け! ヤタガラスの本庄モトユキだ! この研究所をぶっ壊しに来た!」

「なっ……本庄だと……!? あのキチガイ本庄か……!?」

「その異名メシアンにまで届いてんのかよぉ!?」

 

 屈強なおじさんが絶望の目で足を止めた。知らない間に随分有名になってんな俺もな(半ギレ)。ともかくその隙に玄関口をぶち破り、銃弾一発、挨拶代わりに天井へぶち込む。

 

 これまた青白の研究服を着た奴等がぎゃあぎゃあ騒ぎ立て、ひいひい言って逃げだそうとするが、その前に俺とジュセは元気よく言った。

 

「やあ! メシアンの皆、元気? ヤタガラスの本庄です!」

「こんにちはー! メシアコピーさん居ますかー!」

 

 その瞬間、ピタリと声が止まった。へえ、と俺は目を細める。変わりやがったよ。

 

「どこで」若い男が目を見開いて呟く。

「どこでそれを」中年女が手を震わせながら言う。

「どこで誰が誰の差し金で何の用で!」禿げ上がった老人が必死に叫ぶ。

 

 異様だな。一種の洗脳か? キーワードを打ち込めばスイッチが切り替わる。メシアン共のお得意技は味方に掛ける方が多いって話、マジらしいね。

 

 人格を乗っ取られつつある研究員共に対し、俺は銃を構えつつ言った。

 

「言っただろうが。ヤタガラスの本庄モトユキ、メシア教幹部の依頼でここの所長をぶっ殺しに来た」

 

 その声に視線が飛ぶ。まだギリギリ意思が残っているのか、彼ら彼女らの目は一様に床の上に。或いはその下の地下室へと向けて、恐れるように怯えるように脂汗を流して彼らは叫んだ。

 

「主よ!」

「我らが主よ!」

「我らに罪を犯す者を我らが赦すごとく!」

「我らの罪をも赦したまえ!」

 

 その瞬間、真っ白な室内にMAGが溢れかえる。随分な警備システムじゃねえか。テンプルナイトのおじさん達も形無しだな? 守るべき場所に悪魔人間が巣くっているなんてよ。

 

「先輩コイツら天使になり始めましたよ。やっぱ好きなんすね~~」

 

 [悪魔人間:パワーが 13体 出た!]

 

 野獣が言った通り、研究員共の肉体を破るように内側から現れたのはクソ天使だ。流行ってるねえ悪魔人間。倫理観と危険性無視すりゃこれ程楽な力もねえからな。

 

 しかし話は単純になった。これだよこれ、こうでなくちゃ。

 

 こいつら殺して地下に行って、ここのボスをぶっ殺す。外の黒装束共も後でぶっ殺す。何か企んでそうなメスガキもぶっ殺す。

 

 さあ、いつも通りに下らなくなってきやがった。

 

「我らの罪! 神を生み出そうとする罪!」

 

 室内に羽を広げた天使共が喚く。その度にウザったく羽根が舞い散る。

 

「汝らの罪! 神を望まぬ罪!」

 

 中空に浮かぶ数多の目は侮蔑のそれ。憤怒のそれ。すっかり天使気取りで人を見下していやがる。

 

「両者のどちらが!」

「罪深いのはどちらか!」

 

 知るか。邪魔だから殺す。

 

「野獣、<マハムドダイン>」

「無慈悲スギィ! だけどお前のそういう所が好きだったんだよ!」

 

 その言葉と同時に悍ましい呪詛が天使共へ向けて放たれる。上位者気取りにバタバタ飛んでたのを一挙に地に落とす。

 

 俺は念入りにとどめとして杵……杵を……破魔属性で回復しそうだから止めとこ。代わりに呪殺弾で脳天ぶち抜いてFATALITY(ネイティブ)。物言わぬ亡骸を踏みしめて奥へと進む。

 

「……神は言っている。人が持つ唯一絶対の力とは、自らの意志で進むべき道を選択する事だ」

「馬の耳に念仏って所だろうよ。それこそメシアンの奴等には念仏扱いさ」

「法の下に安寧を……。恩寵は確かに人々を守るだろうが、しかし……」

 

 <暗夜剣>で悪魔人間共を切り倒しながら、イーノックは苦渋を滲ませて呟いた。まあこいつ元ネタはヘブライ神話だし、何らか思うところがあるんだろう。

 

「しかし、人はパンのみにて生くるものに非ず、ですか?」

「くたばれ」

「……っ、ふ、あはは!」

 

 声がした方向に銃弾を放つ。胸元を射貫き、鮮血が溢れ出す。それでもエリーはにこにこと笑っていた。

 

 黒装束の奴等を押し付けてきたつもりだったが、撒いてきたか。しかし不気味だ。銃弾受けて傷を負っている癖に、まるで笑みを絶やさない。

 

「まあ確かに! 物質的充足と精神的充足がイコール所か、精神的充足の方を過剰に思ってしまえば、神の言葉は最早パンなのかも知れませんね!」

「おまんこだよおまんこ!」

「……えへん。故にこそ、一時は信仰というパンを片隅に置き、意思と選択という『生』を思う。……素晴らしいです、イーノック様!」

「金玉まで!? 無理だよ、みんな下がれ!」

「……はぁーーーーっ(溜息)」

 

 また勝ったぜ。(小学生並みの価値観)

 

 

 

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