「依頼内容はメシア教第七研究所の襲撃。こちらの目的としては研究責任者の討伐、及び施設内のメシアコピーの救出、そして研究資料の確保だ。是非戦力として加わってくれ」
「やだよ(即答)」
クリスマスも間近に迫った寒い日、俺は下北沢にある喫茶店でワグナスと相対していた。こんなACみてえな物騒な会話を喫茶店で話してんじゃねえよ、とは思うが、ワグナスの立場を考えれば仕方がない。が、そもそも俺にそんな依頼をするな(半ギレ)
「まあ待ってくれ。勿論、報酬は出す。破魔と呪殺と状態異常を完全に防げる聖銀十字架に、私なりに調査したメシア教の情報だ。ヤタガラスでは知り得ないような物もある」
「金は?」
「……さ、三百万ほどならば」
「おう帰れ!」
依頼内容に対して報酬が安スギィ! (三百万でメシア教と敵対とか)ないです。
いや、流石に破魔、呪殺、状態異常無効装備はクソ貴重な代物だが、そんな物売ろうとしたらぜってえメシア教に目を付けられる(確信)。ヤタガラスの奴等は十字架なんて触れようとしねえだろうしよぉ……。
そして、俺には破魔呪殺無効の装備として、既にキョウジから分捕った『組紐』があるのだ。たった三百万と情報に命を賭ける気は無い。
「じゃあなワグナス。土産として梅酒の瓶は貰っていくぞ。……今更だけど本当に作ったのか(困惑)」
「待ってくれ! お願いだ、頼む! 金が足りないのであればローンで払う! この通りだ……!」
「土下座はヤメロォ! こんな人目につくところでヤメロォ!」
あのさぁ……金髪碧眼のクソデカ男が真っ昼間から土下座とか、異様な光景過ぎて目立つんだよね。それ一番言われてるから。
仕方なく、俺は再び腰掛けてコーヒーを喫する。うん、おいしい! 豆はバンホーテンの物を使っているのかな?(クソ適当)
「つーか何? メシア教の研究所襲撃? お前テロリストか何か? 不服にもヤタガラスの俺が協力するにはいかんでしょ」
「事情があるのだ。メシア・プロジェクトに、メシアコピー……今まさに、メシア教によって苦しめられている人々が居る。見過ごすわけには……」
「ほーん(生返事)」
「……いや、それともこう言えば良いのか? 『いかんのか?』と」
「ぶっ」
思わず飲んでたコーヒーを吹き出しちゃった。ワグナスはさっと避けて「汚いぞ」と言ったが、お、お前……(驚愕)
「お前……まさかなんJを……」
「ふむ、いかんのか? ワグナスと梅酒から調べた結果、色々と新しい文化を知ったのだが……」
「いかんでしょ(真顔)」
や、やっぱりワグナス、知っちゃった? 梅酒の瓶にも毛筆で『七英雄』って書いてあるし、こいつインターネットに染まりつつあるぞ。今更ながらに罪悪感が……。
「い、いやいや。それが理由で協力するわけにはいかないから。メシアと敵対するとか自殺行為だし、実際ライドウとかに殺されるだろうし、他を当たって、どうぞ」
「む……ライドウか……。だが、この研究所はまさしくメシア教の汚点だ。ここを暴く事は、ヤタガラスにとっても強力な外交カードになるのでは?」
「じゃあ正式な依頼として上層部に話通してくれよな~~」
「そんな伝手はないし、金もない。そして悠長に待っている時間もないのだ」
「んな事言われてもねぇ……」
じゃあ一人で行けよ(鬼畜)と言いたくなるが、それが自殺行為だと分かっているから俺に頼みに来たのだろうし、それこそが彼にとっての最善手だったのだろう。
力がないなら放っておけよ、と言われて止まるような奴なら、わざわざメシア辞めてまで正義の味方やってねえだろうしな。最近名が通るようになってんだよ、流れの悪魔人間ワグナスって。
しっかしどうすっかな~~。俺が断れば単騎突撃して死ぬだろうし、そうなったら夢見が悪い(やむやむ^~)。かといってヤタガラスに断りもなく協力すれば、俺の首が物理的に吹っ飛ぶ。
『私はサマナーの選択を尊重しよう。かつての私とは違い、君に全てを救う使命はないから大丈夫だ、問題ない』
『情報だけ貰ってヤタガラスに任せれば良いじゃんなぁ? ホモはせっかち。ノンケは呑気。故にコイツはホモ。Q.E.D.証明終了』
「私は同性愛者ではない。……しかし、イーノック様の言うとおりではある。全てを救うなど、それこそメシア気取りだ。ましてや人に頼むことでもないな」
「だが、それでも私は……」とワグナスは呟きに苦渋を滲ませて立ち上がり、伝票を取った。
「悪かったな。ここは私が支払おう。何、次は割り勘で頼む。私が生きていれば、だがな……」
「露骨なフラグ立てヤメロォ! 何すぅ!」
『メシア・プロジェクト……悪魔人間……研究所……あっ(察し)。これは餃子定食の完成だぁ……』
『神に捧げられし魂……しかし神はそれを受け取るだろうか』
「妄言やめろやクソうんち共」
しかしぎゃあぎゃあ言っても出来る事は何も……と思っていたところに電話が鳴った。ンだよこんな時に、と無視しようとしたら着信元がゲイリンだったので仕方なく出た。
「ウッス! 忙しい! じゃあな!」
『……一応は断りを入れるようになったことを褒めるべきか、それとも余りに失礼な文句を叱責すべきか……ともかく待て、お主に依頼が来ている』
「依頼ぃ? 今なら坂上さんもライドウも暇だろ。そっちに回しといてくれよな~~」
『お主を指名して依頼が来ているのだ。メシア教の大幹部からな。……お主は何をやらかしたのだ。メシア教第七研究所の襲撃を依頼されるなど……』
「……は?」
俺は思わず目の前のワグナスを見た。しかし彼は「支払いは任せろ」と言ってマジックテープ式の財布をバリバリ開いている途中で、何にも知らなそうである。
だとしたら、単なる偶然か? にしてはタイミングが良すぎないか?
……そんな時、不意にからんと音を立て、喫茶店に客が入ってきた。
彼女はかつかつと一直線に俺達に向かって来、朗らかに笑ってこう言った。
「……あはは。お兄ちゃん、もうマジックテープのお財布は止めてって、前に言ったよね?」
「おお、エリーか。しかし中々使い勝手が良くてな」
……あれ~~? おかしいね、メシア教徒が居るね?
げっ、と俺の口から一瞬声が出掛かった。何せ彼女は法衣を身に付けていた。青と白を基調としたその服は、紛れもなくメシア教のそれである。
「おおそうだ、紹介しよう。本庄、私の妹のエリーだ。エリー、彼がこの前言ったヤタガラスのサマナー、本庄だ」
「あら、こんにちは! 私、エリーです。よろしくね、本庄さん!」
「……ど、どうも。……お前、メシアとは決別したんじゃねえの?(震え声)」
「妹は別だ。本当はエリーも連れ出そうとしたんだがな……」
はあ、とワグナスは溜息を吐いた。それに対しエリーとか呼ばれた金髪碧眼の少女はにこにこ笑って元気よく言った。
「あはは! だってお兄ちゃんの話が本当なら、外からだけじゃどうしようもないでしょ! だから私が中から協力してあげるの。大丈夫! これでも私、聖女候補なんだから!」
「困った妹だよ。聖女候補などと言ってもそこまでの立場ではない。精々が異能者の手習いで、重要な情報など手に入らないだろうに」
「そんな事無いよ! 研究所の噂だって、私が聞いたからお兄ちゃんが調べる切っ掛けになったんじゃない!」
傍目には仲が良い兄妹って感じである。しかし、メシア教の聖女候補とか厄い臭いがくっせぇなお前……。
職業柄、そういう手合いにはまず疑ってかかってしまう。この娘本人はともかくとして、彼女を通じてメシア教の幹部がワグナスを利用しようとしている可能性もあるしな。
たとえば……邪魔になった研究所を秘密裏に処理する、とか。
……ん? じゃあ何で俺に依頼してくるの? もう秘密になんねえじゃん。じゃあワグナスを俺に処理させるため? いや、それなら一人で誘き出してやりゃ良いじゃん。わざわざ俺に依頼する意味がない。
「……この事件は迷宮入りだ! 明智なんとかを呼んで来い!」
『お前、何事も疑ってかかる割に、その疑いが役に立ったこと余りねえよな。職業柄(笑)』
「だあっとれ!」
ともかく! 正式に依頼が来たってんなら、俺はその言葉に応える(マジメ君)。と言うか不本意ながら応えざるを得ない(フマジメ君)
たとえ陰謀とか絡んでいようとも、ヤタガラスがバックアップに居るんならなんとかなるっしょ(楽観)
「……時に、本庄さん? 私、少し聞きたいことがあるんですが」
「ん? 何か用? というか日本語上手いね君」
「父の仕事の関係で、産まれたときから日本に居たのです!」
ワグナスがバリバリと会計している間、エリーちゃんがそう言った。にこにこ笑いが素敵である。
……良いなあ、こういう娘(クソノンケ)。仲魔は男と汚物だし、器ちゃんはタフちゃんになっちゃったし、諏訪さんは問題外だし、私いじけちゃうし。殺伐とした日々の中に、ちょっとした清涼剤を求めたい物である。
「……と、それとは別にですね、お兄ちゃんから本庄さんの話を聞いて、是非とも会ってみたいって思ったんです! そして、聞いてみたいなぁって」
「えっ、それマジ?」
『おお(適当)』
『いいんじゃないかな』
遂にヒロインの誕生か!? 金髪碧眼の美少女シスターとかオタク受けしそうな要素バッチリだなお前な! ヒロインルートを加え入れろ~~。
しかしエリーちゃんはにこにこ笑ったまま冷たく言った。
「だってお兄ちゃん、本庄さんと会ってから、変な言葉遣いをするようになったんですから!」
「……えっそれは(困惑)」
「あはは! 何ですか? ワグナスって。お兄ちゃんがワグナス? になっちゃったんですけど!」
「ん、んにゃぴ……(冷や汗)」
「おっと、んにゃぴ警察だぞ(ドヤ顔)」
「あはは! お兄ちゃんまた変なこと言ってる! それ止めてよね!」
お前、家族の前でネットスラング使うのやめろよ(ド級のブーメラン、ドーメランだ!)
「ワグナス兄貴、なんでヤタガラスのキチガイ本庄がいるんだゾ? ポはもうお家に帰りたいゾ……」
「何だこの癖が凄いキャラ!?(驚愕)」
数日後、足立区の端っこに存在する広大な研究所を望める公園にて、俺達は一堂に会していた。俺とワグナスともう一人、三浦と名乗った得体の知れぬ小男である。彼は自分をワグナスの協力者だと語った。
「その一人称……お前まさか、嫌儲淫夢スレの住人か?」
「嫌儲じゃなくてメンタルヘルス板だゾ……ポッチャマの魂のふるさとはあそこにしかないんだゾ……」
「彼は流れの異能者だ。色々と裏社会に不慣れな私の手伝いをしてくれてな、今回の作戦にも協力してくれたのだ」
「おっ、あっ、死にてぇなぁ」
「どう見ても戦えるようには見えないんですがそれは……」
「こんな所さんよりも今すぐ精神科に行った方が良いだろ(ドン引き)」と言ったら「異能者が普通の病院に行けるわけねえだろバア」と急にキレられたので>そっとしておこう。戦えるってんなら戦えるんだろうし……。
「で? ワグナス、作戦は? こっちの依頼内容には研究所所長をぶっ殺せ(要約)としかねえけど」
「私の目標の一つがそれだ。そしてもう一つがメシアコピーの救出……犠牲となっている実験体達を救い出すことだ」
「メシアコピーって何だよ(哲学)」
もう字面からして嫌な予感しかしねえんだけど、帰って良いか?
「まず、メシア・プロジェクトと言う物がメシア教の中には存在する。メシアを人工的に生み出そうという計画だ。その流れの一つがメシアコピー……キリストのクローンを生み出そうという計画だよ」
「涜神が過ぎるだろ(ドン引き)」
何でもメシア教に聖人と認定された人々の遺骨から採取した遺伝子情報を、掛け合わせては子を培養し、培養しては更に掛け合わせ、聖なる血を濃くしていけばいずれ神に至るとか何とか。お前らマジに頭おかしいなって感じの話をワグナスは義憤と共に語った。
まあ確かに、信仰心が篤いほどこんな奴等は許せないだろう。ワグナスが襲撃を決意したのも頷ける話である。
「だが、一番重要なことは、研究資料と関係者の名簿を見つけることだ。それがあれば公的にメシア教を糾弾できる。故に緊急用の脱出口から侵入し、速攻を掛けるぞ」
「あっ、これ(資料の確保)かあ!」
「ああ、メシア教が君に依頼した理由は恐らくそれだろう」
ワグナスが言ったとおり、わざわざメシア教が依頼した理由、それは研究資料と名簿の確保だろう。
ワグナスの襲撃を察知したのか、それとも別の組織か個人か、ともかく状況が危険であると判断し、管理者共々切り捨てにかかったか。俺が所長をぶっ殺した後、悠々と資料を回収するつもりなのだろう。
或いは襲撃された側が自主的に焚書することを目論んで? ヤタガラスが資料を確保したとしても、そこは退魔庁を通じて圧力を掛ければ良いと踏んだのか? 舐められてる……!(静かな怒り)
「……では、どうする? 本庄、君は私を切るか?」
「何でそんな事をしなくちゃいけねえんだよ。あいつら舐めやがって……! 資料丸ごとコピーしてお前に渡してやるよ(半ギレ)」
「ふむ……。ならば私達は別行動をするべきだな」
ワグナスは研究所の図面を開き、正門と隠し通路の位置を指差した。先にワグナスと三浦はんが侵入し、資料を確保した後、俺が正門から襲撃するという作戦だ。
彼らの状況次第では俺が陽動の形を取り、その隙に資料確保を行う事もあるだろう。勿論その逆、俺が手こずっていれば彼らが加勢することも。
「こういう時に限って頼れるのがお前なんだよな、野獣」
『ま、多少はね?(ドヤ顔)』
そう、野獣の電霊の力により、防犯・監視システムは無力化できる。侵入には持って来いの力である。肝心の資料に関しては野獣の網には掛からなかったようだが、それでも厳重な監視の目を逆手に取り、ワグナス達の侵入を容易にさせることは可能だ。
『ただ、地下に関しては入れませんでしたねぇ……。この神聖な気配は種族:マシンだってはっきりわかんだね。よっぽど大事な物(意味深)が入ってる入ってる!』
「資料はアナログで保管しているのか、そこから出さないようにしているのか、いずれにしろ我々の物理的侵入が不可欠ということか」
「そうだよ(肯定)。頼むぜワグナス、MUR」
「ああ、そうだな。なあ三浦。……三浦?」
と、そこでずっと黙っていた三浦が口を開いた。と言うよりもぼそぼそと呟いた。
「……こういう隠密作戦くるしい。ポの不手際一つで全部おじゃんになるとか責任感じるんでしたよね? 今までの失敗の記憶感じるんでしたよね? それでまた失敗する未来感じるんでしたよね? ああくるしいくるしい……」
「おいMURぁ! ……まあ、あれだ、MURぁ!(口下手)」
「三浦、そこまで気負う必要はない。私達が失敗しても本庄がリカバリーしてくれる。そして本庄の失敗もまた、私達がリカバリーするのだ。互いに頑張ろう」
「おっ、あっ……年下に気を遣われるとか死にてぇなぁ……」
「大丈夫かなこれ……」
ま、まあレベル40台って話だし、それなりの強者なんだからなんとかなるでしょ。なるよな? そもそも何で来たんだって話は置いといて……。