ネットミーム・デビルサマナー   作:生しょうゆ

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第十三話 職場での語録使用には気を付けよう!

 

 

 

「良くないぞ(半ギレ)」

「あ、そうすか?」

 

 クソ田舎のすったもんだから数日後、俺は何時ものようにゲイリンに呼び出されていた。随分ストレスが溜まっているみたいで煙管をふかしている。禁煙してたんじゃなかった?

 

「阿多ソウイチロウに関する一件は、見事の一言だ。まさか二代目葛葉キョウジが関わっていたとは、こちらの調査不足だ。謝罪しよう。だがその上で全てを打ち倒し解決するとは、お主の手腕は素晴らしいな」

「キョウジのクソを倒したのは奴が召喚したヴィシュヌだし、戦ってたのも器ちゃんなんですがね」

「だが、それを導いたのはお主だろう。これで否定的であった一部の上層部も考えを改めたらしい。本庄モトユキは、紛れもなくヤタガラスの一門だ」

「俺は退職したいんですがね!(半ギレ)」

 

 辞表叩き付けたら『お主を野に下らせるのは馬鹿のやることだ』って目の前でビリビリに裂かれたからな。もう退職代行に頼もっかな~~俺もな~~。

 

「それはそれとして」とゲイリンは煙を吐きながら顔を顰めた。

 

「阿多の巫女が結果として混沌を身に宿し、悪魔人間……いや、魔人と化したことは良いだろう。その処遇を儂に押し付けようとしたことも……まあお主には色々と迷惑を掛けているからな、良いだろう。本人の気持ちはともかくな」

「じゃあなんで怒ってんの?(すっとぼけ)」

「神具を『面倒だから』という理由で呑み込ませるな!」

「やっぱり?」

 

 器ちゃんそこは誤魔化しといてよ適当にさぁ~~。何かピンチに陥ったんで飲んじゃいましたとか言っときゃいいじゃん。田舎少女は正直なことしか話せないのか(偏見)

 

 まぁ狙い通り丁重な扱いを受けているみたいだし文句は言わんけどなブヘヘヘヘ。

 

「お主は軽く考えているようだが、これは重大な事案なのだぞ。海幸彦は皇祖の系譜であり瓊瓊杵尊の子が一柱だ。尊き血に連なる人間が神代の力と伝統を持って生きていることになったのだぞ! それも本来は敵対者であり、調伏したはずの土豪の末裔!」

「すっげえ面倒臭そう(小並感)」

「そうとも面倒臭いわ! 上層部も死ぬほど困った顔をしていたわ!」

 

 ぜえぜえと息を吐き、ゲイリンはようやく落ち着いた。あの貴族共を困らせるとか器ちゃん凄えな~~って思うわけ。

 

「せめて呑み込んでいなければ、権能は回収されたとして事を収めることも出来たというのに……権能を得てしまったら、それはもう神ではないか。日本神話を軸とする我らヤタガラスへの影響は必須……。何故、何故呑み込ませたのだ……」

「書類仕事が面倒だったので……」

「神妙な顔でふざけたことを抜かすな馬鹿者がぁ!」

「うおっ危ねっ!」

 

 怒声と共に振り抜かれた刀を白刃取りする。へへっ、結構レベル上がったからな。まあ多少はね?(ドヤ顔)

 しかし、ゲイリンは明後日の方を向きながらこう言い放った。

 

「……と、言うわけでな。お主には上層部への説明の任を与える」

「は? い、いやいや……俺じゃ格が軽すぎるってそれ一。そういうのはお前の仕事だろ!?」

 

 何ふざけたこと言ってんだコイツ!? いくら名目上は同格とは言え、その中にも純然たる家格の差があるだろうが! そういうのを勘案したからこそ器ちゃんを押し付けたんだろうが!(人間の屑)

 

「安心しろ。この一件でお主の格は儂に並ぶほどとなった。上層部も面倒事を引き起こした張本人にご関心のようでな。精々苦労しろ」

「それマジ? ヤタガラスの人材不足が深刻すぎるだろ……って本気で斬るなよ!」

「黙れ! 儂と同格と言うことは全力を出しても良いと言うことだ!」

 

 フザケンナ! ヤメロバカ! どんな滅茶苦茶な理屈だよお前よお! レベル上がってもゲイリン相手にゃ足りねえし、技術差も埋めれねえんだぞ!

 

「ジュセ! イーノック!」

 

 俺は慌ててCOMPを起動し、召喚する。その間にも刀は肉を狙い骨を断とうとするが、召喚が間に合った野獣が刀を受け止め、余裕綽々の顔で名乗りを上げた。

 

「やりますねえ! 怪異:マナツノヨルノインム、Lv50です。オッスオネガイシマース」

「英傑:イーノック、Lv45だ。……こんなレベルで大丈夫か?」

「覚醒者:本庄モトユキ、Lv48ィ! キョウジ戦の経験値おいしいです」

「……儂もか? ……超人:葛葉ゲイリン、Lv64だ。……思うのだが、何故、お主はいつまで経っても霊格が上がらんのだ」

「知るか! 黙れ! 死ねーっ!」

 

 死にました^~(十敗)

 

 

 

「おい野獣、お前進化したんだから種族値も変わってくれよ。コイキングだって進化すれば合計200から合計540になるんだぞ」

『火炎弱点は消えたんだからいいじゃん(いいじゃん)。呪殺も無効から吸収になったんだからさぁ~~』

「お前と同レベルの悪魔ならもっと優秀な耐性持つ奴が何体もいるんだよ。イーノックを見習えや」

 

 今の野獣が[弱点:破魔 吸収:呪殺]なのに対し、イーノックは[弱点:なし 耐性:物理 吸収:破魔 呪殺]と、耐性面では完全に上位互換である。スキルも新たに<物理耐性>と<メギドラ>、<マハンマオン>を覚えて、今までの鬱憤を晴らすかのようだ。

 

「やっぱ遂に一番良い装備を着るようになったのがデカいのかな? 今までアーチだけだったのがベイルとガーレも使えるようになったし、遠距離、中距離、近距離に隙がないと思うよ」

『今後ともよろしく頼む』

「英傑になって少しはまともに喋れるようになったし、どっかのうんことはえらい違いだぁ……」

『あいつも良くやってくれている(フォローする人間の鑑)』

『ま、多少はね?(悠長な人間の屑)』

「こいつホンマ……(呆れ)」

 

 お前の意味不明な属性さえなけりゃもっと手札も増やせるってのによお。と言うかマジで属性:Internetって何? いい加減怖くなってきたんだけど。

 

「そろそろ坂上さんにでも成敗して貰うか……。今までありがとうなジュセ。なんだかんだ戦力になってきたから使ってたけど、お前もう船降りろ」

『何言ってんだお前ェっ!!! と言うか一度変わった属性がそうそう変えられるはずが無いダルルォ!? もっとレベル上げて真実の姿(意味深)を取り戻させてくれよな~~』

「レベル50になっても真価を発揮できないとか600族か何か? まさかサザンドラみてえにレベル64まで待てとか言わねえよな」

『……んにゃぴ』

「んにゃぴ警察だ!」

 

 しかし、なんだかんだ言っても野獣の言うとおり、属性が元に戻る保証もねえし、第一、俺ってまともに悪魔と付き合ったことねえからな。神話とか伝説とかに地雷があるとか面倒臭そう(適当)。あからさまに人を見下してくる奴等が殆どだしよぉ……。

 

「……まあ、あれだ。今後ともよろしくな」

『オッスオネガイシマー……げっ』

 

 そういう風に腐れ縁を確認し合おうとして、不意にプツリとCOMPが切れた。こ、このパターンは……こいつホンマ……!(二度目)

 

「おや、お久しぶりですね。活躍は耳にしましたよ。素晴らしい手腕でしたね」

「ら、ライドウ……久しぶりって程じゃねえだろうがよぉ……」

「まぁた無茶をやったって話すか。お前の解決方法は何時も無茶苦茶で笑っちゃうんすよね」

「あっ、坂上さん! ご無沙汰じゃないっすかぁ!」

 

 振り向けばそこにはバケモン二匹が突っ立っていた。一人はキチガイのバケモンで、もう一人はまともな方のバケモンである。勿論坂上さんが後者だ。

 

「……随分態度が違いますね? 坂上にはご無沙汰で、私には久しぶりではないと」

「会いたい人と会いたくない奴との違いだな、それは」

「お前マジにヤバいっすね。ライドウ相手にそんな口叩けるのお前くらいっすよ」

「思考盗聴されるんだから言いつくろっても仕方ないじゃんアゼルバイジャン」

 

 坂上さんがクキキ……と笑うが、こちらとしては顔見るだけで嫌なんだよ。一度公衆の面前でボコボコにされたこと忘れてねえからな(トラウマ)

 

「で、お二人はあれっすか。東北レコンキスタの事後報告? あれ移動時間含めて三日で終わったんでしょ? 怖いな~~とずまりすとこ」

「二代目葛葉キョウジを仕留めたお前には負けるっすよ。東北に出現した『鬼』に、坂上田村麻呂が負けるはずがないっす」

「葛葉キョウスケ……ああ、()の方が、良くやった、とのことです。彼は元々それに連なる系譜でしたからね。今度お礼がしたいと」

「それ先祖の仇を横取りしやがったお礼参りとかじゃねえよな……」

 

 言いながら、立ち話も何なんで、俺達は屯所に併設された食堂に入った。福利厚生キッチリしてるよなぁ。その分カスみたいな激務だけど。

 

「ひえっ……」

「うわでた……」

 

 俺達が入った瞬間、それまで仲良さそうに談笑してた一般隊員君達が口を噤み、忙しなく物を口に運び始めた。態度が露骨すぎない?

 

「言われてんぞライドウ」

「言われてますよ坂上」

「多分本庄のことだと思うんすけど」

 

「いやあそれは無いでしょ」と俺はどっかと椅子に腰掛けた。二人は俺とは対照的にそろそろと椅子を引き、静々と腰掛ける。そういう所だよな。

 

「だって俺、軽んじられこそすれ、怖がられる要素がねえもん。まだヤタガラスに入って……えー、入ったのが七月で今が十二月だから、五ヶ月だけじゃん。……えっ、俺四月から八ヶ月でレベル48になってんの? コワ……」

 

 身体に染みついた作法と伝統から、家格の差が露骨に見えるとして二人の方が怖がられていると指摘するつもりが、自分の異常性を再確認してしまった。いくら何でも激務過ぎない?

 

「歴史を見てもぶっちぎりの速度すね。お前、RTAでもやってるつもりすか? だとしたらガバガバな悪魔の揃え方にも納得っす。魔法が破魔と呪殺しかないとか……」

「ならタイマーストップはいつなんだって話ですがね」

「……あーるてぃーえー?」

 

 ライドウが不思議そうに口にしたのに対し、坂上さんがあっヤベッって感じの表情を浮かべた。この人、俺の影響でRTA動画見始めたんだよなぁ。坂上田村麻呂(淫夢)

 

「さっ、折角だし注文するっすよ。ああ何にしようか……」

「坂上、あーるてぃーえーとは何ですか。この人と共通の話題のようですが」

「ライドウは知らなくても良いことなんじゃないすかね……」

「坂上」

「……っす」

「職場で淫夢厨バレとか草」

 

 しどろもどろになっている坂上さんを笑いつつ、ふと、俺は入口に人影を認めた。見慣れた、と言うにはまだ短い付き合いだが、良く良く見知った相手である。

 

「あっ、器ちゃん! ご無沙汰じゃないっすかぁ!」

「あっ……! ヤタ……本庄様っ」

 

「Speedrunって文化が海外にもあるんすけどぉ……」「あーるてぃーえーではないのですか」と誤魔化しにかかっている坂上さんとライドウも気が付いたようで、ぱたぱたと寄ってくる器ちゃんをじっと見つめた。

 

「ああ……これが例の巫女っすか。中々に悍いけど本体が未熟っす。ペルソナ加味して十五分って所っすか」

「私は五分です。修練が足りませんね」

「あんたら人を見て何分で殺せるか考えるのマジで止めた方が良いと思うよ(ドン引き)」

 

 これがヤタガラスの最上位層なのぉ……? なんかキチガイだよぉ……!

 

 これが推奨されてるってのが終わってるわな。常日頃から彼我の戦力差を計算する訓練って話だが、傍目にゃガイアのチンピラみてえだぞ。

 

 ほら器ちゃん困ってんじゃん「な……何ですかこの人達は」とか言っちゃってさあ、「何か変な人達が出てきたですゥ……!」おい、悪化してねえかマネモブ化が。

 

「まま、ええわ。最近どうなん?(レ)」

「あ……はいっ。皆様に、良く気を遣っていただいております。本庄様の口振りではもっと厳しい扱いを受けるかと思っていたのですが、思いの外丁重に扱っていただきまして……」

「そりゃあこの馬鹿がしでかしやがったからっすね。つか、見れば見るほどヤバいっすねお前。久方ぶりの大型新人っす。歓迎するっすよ」

「あ、どうも……です」

 

 器ちゃんは差し出された手に怯えるように俺の背に隠れた。坂上さんは不思議そうにしているが、当たり前だよなぁ? 自分を殺せる言うてる奴に懐くのがどこに居んだよ。

 

 とか思ってたらバシッと背中から手が払われてドガッと背中を殴られた。痛ってぇ!?

 

「こんなばっちいの(直球)に触ってはなりませんよ阿多様! ああ汚い汚い!」

「あら諏訪さん随分な挨拶じゃないっすかぁ!(半ギレ)」

「ああライドウ様! 坂上様も! お見苦しいところを……」

「っすっす」

「諏訪ではないですか。……で、ふうん。成る程……」

「俺に対する挨拶って本気でそれなの?」

 

 俺をぶん殴ったのはヤタガラスの女サマナーの諏訪さんである。器ちゃんの護衛兼監視役ってお前かよぉ! この人何か知らねえけど最初っから俺のこと嫌ってんだよな。多分変態だと思うんですけど(適当)

 

「……で、器ちゃん何してんの? 散歩か?」

「いえ、丁度今、諏訪様にヤタガラスの施設を案内頂いておりまして……私の実家はもう地鎮の準備に取りかかってしまいましたし、それにあんな事も起こってしまったので、暫くはここで、と……」

「まあ良くある話すね。ダークサマナーの被害者なんかを保護して療養し、素養と意思があれば修練して戦力になって貰うのも仕事の内っす」

「ありがとうございました! 退魔庁の方がゆっくり仕事が出来そうなのでそっちに行きますね! こんなクソブラック職場に就職できるかぁ!」

「それ、マジに謎っすよね? 護国を志すならこっちの方が良いと思うんすけど」

「皮肉が通じない悲しみよ……」

 

 ここまで露骨には言ってないとしても、基礎の基礎だけ教えて貰い、実際の労働環境にドン引きして、一旦野に下ってそのままどっかに就職ってのはたまにある話だ。だって別に強制力とかねえし。本格的に教える場合は色々と審査の手筈があるらしいが。

 

 だからこそ、大半の奴は本部では無く支部やらなんやらで保護されるんだが、流石に器ちゃんは本部直行の身であった。

 

「……と、言いますか、何ですか貴方(半ギレ)。阿多様に器ちゃんとか何とか、何ですかその呼び方は!」

 

 諏訪さんはいきなりキレた。更年期か? 冗談だけど。まだ二十七なのにカリカリしてんなお前な。

 

「ああ、そういや名前知らないんだった。教えてくれよ」

「お前マジすか。名前も知らずに器ちゃん呼ばわりとかいくら何でも直球すぎるっすよ」

「このお排泄物が……」

 

 しゃあないやん資料読み飛ばしたし、名前聞く暇も無かったし、終わった後もクソ忙しかったし、私いじけちゃうし。

 

 しかし、器ちゃんは、諏訪さんの「いいですか、このお方は……」という声を遮って言った。

 

「いえっ……私、本庄様が付けてくれた器ちゃんが良いですっ。戸籍だけの名前なんて……呼ばれることもなかったので……器で、いえっ、器が良いです……!」

「お前重いんだよ!」

「巫女様に向かって重いとは何を言いますかこのホモガキがぁ!」

 

 ……ん?

 

 今、器ちゃんが中々悲愴で感動的なことを言ったが、ちょっと待って欲しい。逆再生して……そこ! 拡大鮮明化!

 

「……諏訪さん、あんたまさか」

「あれ、マジすか。なんすかそれ。笑っちゃうんすよね」

「……え、いや、何のことですか? だってこのゴミが連れている悪魔ってホモではないですか。それを連れているこのガキはホモガキでしょう。……何ですか? 何ですかその沈黙は」

「……クキキキキ」

 

 ……職場の先輩が淫夢を見ているかもしれない時、君ならどうする!?

 

「成る程、分かりました」

 

 と、今までずっと黙っていたライドウが急に言った。何だお前!?

 

「貴方が連れている悪魔とは、野獣先輩という悪魔なのですね。いんたーねっとが由来で、びでお……? ……よく分かりませんね。諏訪は存じているのですか?」

「え゛っ!? ら、ライドウ様……?」

「……ああ、これですね。『あくしろよ』、です」

「ライドウ様ぁっ!?」

 

 ……葛葉ライドウが淫夢を知ってしまった時、君ならどうする!?

 

 

 

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