ネットミーム・デビルサマナー   作:生しょうゆ

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第七話 ヤタガラスとかいう糞ブラック企業

 

 

 

 しっちゃかめっちゃかになったメシア教品川支部襲撃から数日後、俺はヤタガラス本部にて、ゲイリンのジジイへ報告をしていた。

 

「システム・ケテル……セフィロトの樹……メシア・プロジェクト……やはりメシアはきな臭い。幹部一人を生贄に、追及を逃れようという魂胆だろうが、そうはいくか」

「でも結局、押収した機械も書類も全部取られちゃったじゃないっすかぁ」

「退魔庁の糞共の腰抜けが! 我らの力を削ぎ、メシア教に媚びを売るだけの国賊共!」

「政治は大変ですね~~。じゃあ、俺はこの辺で……」

 

 こんな所(直球)に長居していたら余計な仕事を押し付けられるからな。適当に外部のせいにして、さあ帰ろ帰ろ!

 

「まあまて、坂上の小姓……いや、本庄よ」

「げっ」

 

 名前で言われるって事はぁ……めちゃくちゃ嫌な予感がするぅ……。

 

「此度の任、大儀であった。儂も初めは流れの召喚師と、小童共と同列に扱っておったが、お主は中々見所がある。そろそろ坂上の名から離れ、ヤタガラスの本庄と名乗っても良かろう」

「俺は坂上さんの下に就いてても良いんですがね!」

「無論、未だ若輩者と否を示す者も上には居た。一代で家を名乗るとは言語道断ともな。しかし、種々の異界攻略の功績に加え、此度の大天使討伐はお主を一端の悪魔召喚師と呼ぶに相応しいと、儂がそう判断したのだ。……今まで悪かったな。これでようやく相応しい立場を用意してやれる」

「いいんですがね!(半ギレ)」

 

 なんか孝行してやった、みたいな顔してやがるが、そんなんありがた迷惑でしかねーよ!

 

 だってヤタガラスの『家格持ち』とかキチガイしかいねえんだもん。葛葉を筆頭に、代々ヤタガラスで悪魔ぶっ殺す事だけを考え続けた狂人共が、脈々と血を受け継ぎ続けて形成されたのが所謂『家』、即ちヤタガラスの幹部格である。

 

 大抵の新人はどっかの家の下について悪魔退治の技を習い、一人前と目されればその家の姓を名乗ることが認められるのである。そして、子々孫々に渡って功績を重ねれば、新たに幹部格として名を連ねることが出来るのだ。

 

 故に今まで俺は坂上の小姓、もとい坂上さんの弟子である本庄モトユキだったのだが……。

 

「数段飛ばしで昇進とか、ヤタガラスの人材不足が深刻スギィ!」

「まあ、それもあるが……。しかし、家を名乗るのなら、その礼節も改めよ」

「いやいやマジすか? マジで俺が? えぇ……(困惑)」

 

 一般から一代で家格持ちになった事例なんて、それこそ歴史書紐解かなきゃ分からん位だって坂上さんが言ってたぞ。それこそ毎日悪魔狩って、毎日敵組織にカチコミして、大悪魔を一人で討伐するくらいしなきゃ……。

 

「……それ、俺じゃん」

「その通りだ」

「俺の労働環境、ヤタガラスの中でも異常かよぉ!?」

「その通りだ(今明かされる真実)」

 

 平然と肯定してんじゃねーよクソジジイ! 道理で周囲の奴等と会話が噛み合わないと思ったわ! 肉おじゃ野郎の分家どもが俺を邪険に扱ってた理由もようやく分かったわ!

 

「まったくさー、後進の育成を置いといて、人を便利に使ってんじゃねーよ! 糞ドブラックの糞ヤタガラスがぁ!」

「だが、これは護国だぞ」

「アッハイ」

 

 いや、思わず居を正してしまったが、思えば俺は今日からこのクソジジイと名目上は同格扱いなのだ。何を臆する必要がある!

 

「王侯将相寧ぞ種あらんや! 何が22代目葛葉ゲイリンじゃ!」

「その心意気は買おう。だが、相手の力量も鑑みぬ特攻は、ガイアに似て短慮なり!」

「今ここで死ねーっ!」

 

 死にました^~(俺が)

 

 

 

「管使いってズルいよな。召喚と送還にラグがねえんだもん」

『熟練した技術の極みを見たって感じっすねぇ!』

 

 機械任せのデジタルデビルサマナーとは違い、古式ゆかしい管使いは、その習得にも長い年月を要し、仮に習得したとしても同時召喚は二体が限界と、クソみたいな技術でしかないが、それでも枯れた技術と呼ぶにはまだまだ恐ろしいところが多々ある。

 

 そんで結局ぶち殺されて、すぐに反魂香で首繋がされましたとさ!

 

『神は言っている、ここで死ぬ定めではないと』

「じゃあわざわざ一度殺さないでくれよ。四文字にそう伝えといてくれ」

『人が持つ唯一絶対の力。それは自らの意志で進むべき道を選択することだ』

『体の良い放任じゃんアゼルバイジャン』

 

 イーノックの物言いに対し、野獣が皮肉げに返す。やっぱDarkとLightじゃ仲が悪いのかね。そういう話は良く聞くが、俺の仲魔は一般的じゃなさ過ぎて、余り参考にはならんのだ。

 

「まあ、なんやかんやで手札一つ増えたことだし、イーノックのレベル上げてけば、少しは楽になるだろ。……しっかし、この俺が家格持ちとか、どんだけ情勢は悪いんだか」

『2000年までには終わるはずだったのが、色々な事情で20年くらい延びちゃったからね。運命がこんがらがるのもしょうがないね』

『神は言っている、全てを救えと』

「電波が二人に増えちまったよ」

 

 そういうのはライドウに任しといてくれよな~~。沖縄に出現した邪神共も一刀両断したって話だし、あいつに任せときゃなんとかなるだろ。

 

「ライドウー、こいつら引き取ってくれー」

「呼びましたか」

「うわあああああああ!? 出たああああああああ!!!」

 

 遙か彼方に対して呟いたつもりが、何でここに居るんだよライドウ!? お前今は長崎の自称メシア殺しにいってたんじゃねえの!? メシア教との合同作戦でよぉ!

 

「それはもう終わりましたよ。しかし、また阿呆なことをやりましたね」

「ナチュラルに心読むの止めない?」

「家の名乗りを許されて早々、ゲイリンに挑むとは、狂気の沙汰です。狂気的な阿呆ですね」

「お前にだけは言われたくねえよ極Neutral」

 

 うげえ、と吐きそうなのを何とか堪える。目の前にいる人の形をした何かこそ、ヤタガラスの最終兵器、20代目葛葉ライドウだ。最終兵器の割に濫用されすぎてない?

 

 しかしライドウは真面目くさって続ける。

 

「その理屈こそ貴方の狂気を証明しています。貴方がChaosなら無思慮に戦いに赴くことは狂気ではありません。しかし貴方は違う。属性とは異なる行為を嬉々として行う、それこそ狂気です」

「そりゃジュセが無理矢理後付けしたからな。……なあジュセ? おい?」

 

 COMPが沈黙してやがる……逃げやがったなあいつら……。

 

「そのジュセという悪魔を私は見たことがないのですが、まさかとは思いますが、その『悪魔』とは貴方の想像上の存在に過ぎないのではないでしょうか」

「だったら今すぐヤタガラス辞めて精神科に通院させてもらっていい?」

「ダメです」

 

 あああああああああああああああああああああああああああああ!!!(ブリブリブリブリュリュリュリュリュリュ!!!ブツチチブブブチチチチブリリイリブブブブゥゥゥゥッッッ!!!)

 

「……常々思っているのですが、何故貴方は私と会話する際に、度々頭の中で脱糞するのですか」

「わ、わかんないっピ……」

 

 そんな真正面から言われても……困る……。感情を表わすのに咄嗟に出てきてるだけやし……。

 と言うか、結局メシア教との合同作戦は決行されたのか。あんだけゲイリンが怪しい怪しい言ってた癖して。

 

「表向きには解決したことになっていますからね。幹部一人と支部一つを手打ちとして、後は今後とも宜しくと」

「都合の良い手駒扱いじゃねーか」

「政治に関してはとやかく言っても仕方ありません。我らの本意はあくまで護国。剣に過ぎぬ退魔師が、担い手に口を出すのは……」

「お前のそういう態度が政府の奴等を付け上がらせてんじゃねえの? 20代目葛葉ライドウよお」

「……私はあくまで剣に過ぎません」

 

 けっ、殊勝な顔しやがって。だからお前はライドウなんだろうよ。

 

「壊さず正さずただ維持する。まさしくNeutralの権化だな、隊長?」

「……その在り方は一種のLawでもありますがね。維持のために使われる剣は、結局の所、メシアの十字架に何ら変わらない」

 

 ライドウは珍しく皮肉げに笑った。そうとも色々言っちゃいるが、その全てが軽口、土台無理な話であると分かっている。

 

 担い手がいるからこそのライドウ。自ら剣先を選ばぬからこその立場。コイツが政治に関心を持ちやがったら、その日の内にヤタガラスは火に沈む。対抗できるかどうかの話じゃなく、立場として、大義名分として、護国を失っちまうのだ。

 

 そして、その在り方こそが、戦後から連綿と継承され続けてきた、ライドウをライドウ足らしめる強さの根源でもある。

 

 ……らしい。聞いてもないのに度々話してきやがるからなこいつ。

 

「まあ冗談だよ。流石に全てをお前に任そうなんて思っちゃいないさ。上の年寄り共だってそうだろうよ。だからこそお前を自由に動かせるんだから」

「口惜しい立場ではありますがね」

 

 ……ふうん? 本当に珍しく、本音らしいことを言うじゃないか。

 

「まさかライドウともあろう者が属性の鞍替えかあ? だったらInternetをオススメするゾ。いいよ! こいよ!」

「そんな属性は存在しませんよ」

「俺は存在しない人間だった……?」

 

 とまあ、軽口はそれまでにしておいて、どうせライドウがいるなら用事があったんだった。

 

「と言うか、そろそろメイスを返してくれよな~~頼むよ~~」

 

 そう、俺がヤタガラスに入った当初所持していたメイスは、何故か知らんがライドウに押収されちまったのである。

 

 別に新参者が元組織の装備を使い続けている事など珍しくもない。実際、俺も暫くは使い続けていたというのに、品川襲撃の少し前に突然『ダメです』と言われて回収されたのだ。

 

「ゲイリンも『お前が何か気に入らない事をしでかしたんじゃないか』とか言うし、これって別に命令じゃないよな? だったら返して下さい! お願いします!」

「ダメです」

 

 あああああああああああ「それ、止めてください」「アッハイ」

 

 思考盗聴されて、コピペの途中で止められちまったぜ。

 

 しかし、あれ使い勝手が良いから結構気に入ってたのにな。それにメシアに殴り込むのにメシア教由来の武器があった方が油断を突けるかもしれないだろ(人間の屑)

 

「じゃああれだ、代わりに売っぱらうからさ、それで良いだろ! いやあ流石に俺も出世したら体面を繕う必要があると……」

 

 ライドウが突然取り上げたのは、まあそんな理由だろう。作戦以前から出世を見越してたのなら、俺とメシア教との間に関係を噂されるかもしれんしな。

 

「だから返して下さい! 売り払いますから! お願いします」

「ダメです」

「ああああああああ!」

「思考を止めろというのは、実際に声に出して良いという意味ではありませんよ」

「まあ俺も脱糞コピペ全文叫ぶのは嫌だったからいいが」

「……では、代わりにこれを」

「おっ、何かくれんの?」

「ええ」

 

 そう言って、ライドウは突然虚空に召喚陣を編んだ。緑色の輝きの中から、坂上さんの装備には及ばずとも、歴史ある風格を備えた武具が、俺の目の前に差し出され……。

 

「……何これ?」

「杵です」

「杵じゃねーか! 臼もあるじゃねーか!」

 

 餅つけってのかよこれでよお! 確かに霊格はかなり高い、いや本当に高くない? って位だが、何で杵? おかしくない?

 

「葛葉に伝わる臼と杵です。代々神事の際に持ち出され、力ある餅を作るために使われてきました。……代わりとなる鈍器として、これ位しか思い付かなかったので」

「別に鈍器を好んでいるわけじゃねーよ!」

「そうなんですか? 貴方、刀の心得がありますか?」

「……んまぁ、そう」

 

 ま、まあ鈍器って使いやすいよね……。刀と違って、自分で自分を切りつける心配もないし(一敗)

 

「ってか、これだったらメイスを返してくれよ。あっちのがどう考えても使いやすいじゃねえか」

「……それはもう、壊してしまいました」

「ナンデ!?」

 

 と、ライドウは不意にふっと笑って、いや本当に珍しいなこいつが笑うの。

 

「……何で、でしょうね?」

 

 その笑みは本当に人らしく、剣と呼ぶには余りに迷いがあって……。

 

 ……いや、人の物壊しといて何だその態度(半ギレ)

 

 

 

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