「おい、坂上の小姓! お主は異界に突っ込ませても死なないんだよな!」
「ウッス!」
「ガイアーズの集会に突っ込ませても平気だよな!」
「ウッス! 頭乗っ取られた悪魔人間を何体もぶっ殺したことあります!」
「メシアンの聖歌にも耐えられるよな!」
「ウッス! 俺の属性は変動しないので、聖歌による洗脳は効きません!」
「であればメシアンの拠点に行き、テンプルナイト共を粗方殺してこい」
「ウッス!(半ギレ)」
糞が。やってられねえぜ。何時も何時も偉そうに命令しやがってよお。お前、俺をバキュームカーと間違えてんじゃねえのか?
しかし、俺は目の前のクソジジイに反対できる立場にない。どころか実力的にも反対できない。ゲイ(直球)とかいう名前の癖にクソ強いんじゃねーよ!
「キレチャイソース……」
「何か言ったか、坂上の小姓」
「ウッス! 何でもないです! じゃあ行ってきます!」
あ^~もう溜息が出るぅ~~。やってること完全に鉄砲玉じゃんアゼルバイジャン。これじゃ、俺……ヤタガラスを守りたくなくなっちまうよ……。
俺が無理矢理入らされたヤタガラスとは、超国家機関である。古来より悪魔の手から日本を守り続けるため、密かに組織された退魔機関、それがヤタガラスだ。
「昔の話っすけどね」
「そうなんですか?」
あの日、俺を襲撃した鎧武者こと坂上さんは、そう言った。
「今は日本にも退魔庁があるっす。自衛隊とも協調して、規模は明らかにあっちの方が上っすね。お上もそっちを主導にしたいようっす」
「じゃあ落ち目じゃん。あー使えね」
「GHQがね……」
「あっ、ふーん」
「人手不足は深刻っす。だから俺が、単にその場から近いからってだけの理由で『異界荒らし』なんて雑魚に構う必要があったんすよ」
「ざ、雑魚……まあ坂上さんに比べりゃ思いっきり雑魚だけどよぉ……」
まあ、超国家的とか言いながら、思い切り国の事情に振り回されている組織がヤタガラスである。世界大戦にも協力を拒否したとか。それで信頼を失ってこの様とか笑えますねえ!
「俺がその組織の一員じゃなかったら笑えたんだけどな」
「規模は小さくても、地力はこっちのが上っすよ。ライドウを頂点として名家はまだまだ残ってるっす。……たとえば、自分とか」
そう言って、坂上さんは握り拳を作った。鎧を脱ぎ、晒された素顔は美しい。
「へへ……坂上さん」
「なんすか」
この人から名を名乗られ、兜を脱がれ、俺は驚愕したものだ。
「あんた、やっぱ肉おじゃに似てるわ」
「えっ、なんすかそれ」
兜を脱いだその頭には、地位の高さを示す烏帽子があり、横に広がる散切り頭はおじゃる丸のようである。顔は似ても似つかない美男子だが、要素自体は似ているのだ。加えて……、
「坂上キミヒコ。坂上田村麻呂の子孫で、その転生者。……似てるよなあ?」
「……また『インム』に関係する何かっすか。人にそんなこと言うなんて失礼すぎて笑っちゃうんすよね」
クキキ……と笑う坂上さんは、実際、温和でいい人である。これがゲイリンのクソジジイだったら膾切りにされてるからな(九敗)
『俺はてっきり、鎧を脱いだら美少女展開かと思ったんだよなあ~~』
COMPの中からジュセがそんな事を言った。何だお前、急にノンケ臭いこと言いやがって。
「大体、『っす』とか言うヒロインなんてねえよ。タフ語録使いそうで嫌だわ」
『もしお前にヒロインが出来るのなら、絶対に淫夢語録使いそうだけどなぁ?』
「だったらタフ語ヒロインの方がマシじゃねえか」
今からでも得物をバスタードソードに持ち替えようかな……と、そんな事を考えている間に時間となった。
襲撃の時間である。
「メシアの過激派がぁ……人を攫って洗脳してぇ……テンプルナイト量産計画ゥ……。ガバが多すぎる(呆れ)」
「失脚しかけの幹部がやらかしたって話っすが、どこまで真実なのかは分からんっす。過激派じゃないメシアの主流派だって、信頼できるわけではないっすからね」
「それでもまだ話が出来る方ってのが悲しいなぁ……。ガイアのカス☆どもは上から下まで目がイっちゃってる」
俺達が歩を進める先には、まだまだ日本には珍しい立派な教会がある。品川にこんなん建てるとか随分儲かってんなお前な。
「教会後ろのビルが、奴らの使ってる施設っすね。洗脳、加工、出荷の工場っす」
「俺がそこに突っ込んで陽動してる内に、坂上さんが幹部の首取るんですよね」
「そうっす」
「戦闘員は俺達二人しか用意されていないんですよね」
「そうっす」
「実質二人で方を付けるんですよね」
「そうっす」
なるほどなるほどぉ……。流石は智将、葛葉ゲイリンが立てた作戦だけはある。
「ガバが多すぎる(半ギレ)」
「そうすか?」
「そうだよ(半ギレ)」
てめえ頭脳がマヌケか? 智将じゃなくて池沼じゃねーか!
この肉おじゃ野郎も安請け合いしやがって、これだからヤタガラスに人が居着かないんだぞ馬鹿野郎。少数精鋭である事に慣れきって、それが当然だと考えていやがる。その究極こそ我らがライドウ、20代目ポケモンマスターだ。
「でもやるしかないっすよ。メシアの内ゲバを横から解決することで影響力を得られますし、何よりメシアからの依頼人の面子を潰すことになるっす。権力関係から容易に動けないから、俺らに話が来たんすよ」
「その依頼人とやらの思惑がね……。ぜってえ犠牲者に心を痛めて、とかじゃねえだろ。金と人員の損耗が嫌なだけだろ。それでヤタガラスが多少影響力得たって、木っ端も木っ端、焼け石に水と軽んじてるんだルルルォ!?」
「多分そうっすね」
「じゃあ帰りませんか? 帰りましょうよ……」
「でも、これは護国っすよ?」
「アッハイ」
チクショー! まともなのは俺だけかよ。ヤタガラスに残ってる奴等はどいつもこいつもイかれてやがる。別に多少信心する奴らが増えたって構わんでしょ(無辜の人民を見捨てる人間の屑)
しかし任務を放棄したとなれば、ヤタガラスの剣先は俺に向くだろう。実質、選択肢などないのである。
「それに放っといたらヤバイのも事実ではあるしな……」
『行きますか? 行きます。イクイクコンプレックス』
「気が抜けるなぁ……」
なんもかんもメシア教が悪い。ヤタガラスとは違って思い切りアメリカの支援を受けていやがるから表の影響力も半端じゃないのだ。故にこうして、こそこそ首狙う羽目になる。
「俺達のこの怒りはメシアンにぶつけよう(キャプ翼)。てな訳でイくぞオラァ!」
『おかのした!』
「じゃ、そっちは頼むっすよ」
大太刀を抜き、先祖伝来の鎧に身を包み、坂上さんは教会にゆったりと進んでいく。端から見りゃ悪魔そのものって感じだなお前な。
まあ、英傑の血と魂を受け継ぎ、国宝級の武具で身を固めたデビルバスターなんて、もう殆ど悪魔みたいなもんでしょ(クソ失礼)
「坂上の大将軍なんて、名前だけで相手が逃げてくようなもんやし……あっちは心配要らねえな?」
COMPから召喚されたジュセが、坂上さんの背中を見送りながらそう言った。そうとも問題は何時だって俺達だ。あの人が強すぎるから弟子である俺まで無茶を振られるんだよ。
しかし、やることは変わらない。こんな状況になっちまった以上逃げることは出来ないし、なんだかんだ言って犠牲者を放っておくのは夢見が悪い(やむやむ^~)
「俺達はただやるべきことをやる。ただ進み続ける。それしかないって薄氷の巨人も言ってたしな」
「マリアのウォール(直球)ぶち抜いてやるか! しょうがねぇな~~(涜神先輩)」
「下品だなぁ。そうに決まっている」
状況には合っているがな、と一つ笑い、俺達はビルに向け駆け出した。
ブッチッパ! と自動ドアを蹴破り、有無を言わせず銃弾を放つ。エントランスの照明が砕け散り、受付の、宗教勧誘してきそうなババアが悲鳴をあげる。その他スーツ姿の、一見して善人っぽい奴等が目を白黒させている。
「なんですか貴方達は!?」
「ヤタガラスゥ……」
「ヤタガラス!? どうして! 私達は善き事をしているのに!」
「その善き事ってのは拉致洗脳の事でOK? OK牧場?」
「何を言っているの! 私達は信教の手助けをしてるだけよ!」
うーん、そう言いながら傍に居るテンプルナイト君が思いっ切り洗脳されている感凄いので、推定有罪! 故に死刑!
「ターヘル・アナトミアさん!」
「で、出ますよ……<マハムドオン>!」
「させるかッ!」
一般教徒を守るように立ち塞がったのは、西洋鎧姿の兵士である。メシアンのテンプルナイトだ。首から下げた十字架が、死をもたらす波動を完全ではないにせよ打ち消している。流石に弱点は対応しているか!
しかし、テンプルナイトの数が多いな! 一般教徒を地下に逃がす余裕さえある。常駐している無表情の奴等だけでなく、続々とエレベーターから降りてくる以上、本部は上にあると見るべきか?
「ご丁寧に呪殺耐性装備まで付けやがってよぉ……! お前らスーパーゴキブリか何か?」
「でも天使どもを出してこない所を見るに、見せ札だけでも十分だってはっきりわかんだね」
「そうだよ!」
対悪魔戦闘の肝は、いかにこちらの強みを押し付けられるかにある。大量に用意した呪殺弾をぶち込むだけって状況は、それ自体が戦闘において有利なのだ。
「何を……! ふざけるなよ、ヤタガラスごときが! 貴様らなど主の裁きがなかろうとも、必ずや同胞に……!」
「そうとも! 愚かしい真似を。国にすら見捨てられし鴉が功を焦って我らに手を掛けるとは!」
「なにいってだこいつ」
コイツら目がイっちゃってる。というのとは別に、どうやら自分達の置かれた立場をご存じではないようだ。
なら俺が教えてやるか! しょうがねぇなぁ~~(ゲス顔)
「ワグナス! メシアの主流派は、お前らの術を異端と決定したぞ!」
「……ワグナスって誰?」
「わかっていただろうにのう、ワグナス。拉致監禁からの洗脳なんて、失態を取り戻そうとする幹部のもがきにしか過ぎないと。だからヤタガラスが派遣された」
「だからワグナスって誰……」
しかし疑問を口にしながらも、彼らの内には困惑が広がっている。そうとも、俺はともかく、ヤタガラスに対する信頼は、裏の世界では一定のものがある。
国の支援をろくに受けずとも、中立を保つだけの信頼はあるのだ。力にも、その行動指針にもな。
「分かってんだルルルォ? ヤタガラスがメシアと事を構える筈が無いってよぉ。裏切った側はお前達なんだよ」
「で、では……その言葉は真実だというのか!? 彼らは自ら望んだのでは無く、拉致監禁などという悍ましき行為を……! 神の名の下に行われたものでなく、一個人の私欲のために……!」
「し、しかし! 悪魔に対する手立てを見付けることは正しい筈だ! 無辜の人民に戦う術を持たせることも! 主流派は、我々に何の手立てもないまま、人々を守って戦い、死ねと言うのか!」
「随分立派なことをほざくじゃねえか。だけど、その手立てこそ守るべき人々を害しているんですがそれは」
「……それは」
「それに、お前ら恵まれてる方だろ。俺なんか一人でお前ら殺せって言われてんだぞ(半ギレ)。お前らだって、流石に多くなぁい? って思ってんじゃねえの?」
どう? (不信感)出そう?
「出てますねえ!」
野獣がニヤニヤ笑いながらそう言った。当たり前だよなぁ?
だってさっきから会話してんの一部のテンプルナイトだけだもんな。他の大多数は目も虚ろで、ぶつぶつ聖句唱えてるだけだもんな。
一番前のテンプルナイト君が、言葉も紡げない彼らを見、苦悶に満ちて呟いた。
「……これが、主の思し召しか」
「違う。それは独善的な人間の言う『正しい人間』の一生だ」
「自らは剣もとらずに、我らに戦わせておいてか……!」
「そうだよ(扇動)」
「これもう(何が正義か)わかんねえな? お前どう?(扇動先輩)」
頭がまだマシな、恐らくは正規のテンプルナイト君達が苦悶に満ちた呻き声をあげる。ホラホラホラホラ、LawがLightじゃなくなった時、お前達のアライメントはどういった判断を下すんだよ!
……まあ、この時点で俺の仕事は殆ど終わってるんですけどね、初見さん。
そう思っていると、一番前の、一際立派な鎧を身につけたテンプルナイト君が重々しく言った。
「……分かっていたことだろう、お前達。この新人テンプルナイトたちが、どこからどうやって来ていたのか、薄々勘付いて、それでも悪魔の脅威を恐れ、見ない振りをしていたのが我々だ」
「隊長……」
「……終末の予言を前にして、俄然勢いを増した混沌の軍勢に、犠牲となった仲間のためにも、藁にも縋る思いでと……それが主の思し召しと……。しかし、やはり我々は、間違っていた」
サスガダァ……隊長に敵うテンプルナイトなどいるわけが……。
恐らくは正規のテンプルナイト君達の隊長の彼が、この場を見事に鎮めてくれた。戦意は既になさそうである。
しかし、俺はニヤリと笑って言った。
「だけど、今からでも正義は取り返せる。取り返せない?」
「……なに?」
上手く行きそうなので欲をかいちゃった。だって幹部本人は教会の方にいるとしても、製造拠点はこっちにあるんだもの。ぜってえ守るような何かがあるし、そんなの相手にするのは骨が折れる(物理) 言葉で味方に出来るのなら、これより安いもんはねえな?
「ワグナス、今ならまだやり直せるゾ(大嘘)」
「……ワグナスとは私のことか? いや、ともかく……主流派からの贖いの条件は、我らの手で片を付けることか」
「当たり前だよなぁ?(大嘘先輩)」
あたたかあじを醸し出してやることにより、戦意はみるみる内に薄れていき、代わりに敵を睨むように天井に目を向ける奴等が増えていく。やはり中枢部は上層か。
しかし、別にこいつらがどうなるとかは何も知らん。俺は許すよ。だがメシア教が許すかな!
『──システム・ケテルより、テンプルナイトの再定義を開始します』
え、なにこの声は(困惑)
『──許す。許す。許す。主の御名は法の下に全てを許す。肉の思いは死である。御霊による思いは命と平安である。汝ら御霊の声に従いて、神敵を尽く討ち滅ぼせ』
遥か上層より、脳に直接言葉が届けられている。その声と共に虚ろであった量産型テンプルナイト君達が抜剣し、正規のテンプルナイト君達は苦悶しながら地に伏した。
「ここに来て洗脳聖句かよお前よぉ!?」
くそったれメシアンのお得意技で、あーもうめちゃくちゃだよ(半ギレ)