「10まんボルト出してくるとかやっぱピカチュウだろアイツ……」
『ただの<ジオ>なんだよなあ……。いい加減ポジモンは忘れてどうぞ』
「その言い方だとポケモンかデジモンか分かんねえだろ」
糞スイーツ女をぶち殺すのには中々に骨が折れた。考えてみれば道中まともに戦っていなかったわけで、突然の暴言にぶちギレながらの事だったが、これが俺の初、対悪魔戦闘だった訳だ。
結局、あの糞ピクシーをぶち殺した後は、悪魔を殺しながら来た道を帰った。疲れたから。あと10まんボルト掠っちゃって身体痛いし(半ギレ)。何でこんな目に遭わなきゃいけないんですかね?
「あーねんまつ。感触は嫌だし、身体は痺れるし、私いじけちゃうし(.exe)」
『収穫もあったじゃんアゼルバイジャン』
「血と汗と、なんか分かんねえ金貨だけどな」
これがマッカとかいう悪魔の金なんだって。ふーん(ハナホジ)。日本で使えねえじゃん。
しかし、先程から野獣は妙にテンションが高い。異界から出てCOMPに戻ったっていうのに饒舌だ。このままだと俺が路上でカメラ通話してる奴に見えるだろ。ああいう奴何考えてんだろうな?
『一番肝心な物を忘れてんなお前な! サマナーさん! レベルアップですよ、レベルアップ!(懐かしのネタという事実)』
「んなもんもあったな。100ぐらい上がった?」
『電霊:ヤジュウセンパイ、Lv7です……!』
「ざっこ(笑)」
『人間:本庄モトユキ、Lv5です。オッスオネガイシマース(笑)』
「お前より上がり幅が大きいからまま、ええわ」
というか結構殺したのにしけてんな。一夜でバットが使い物にならない程ボコボコになってんのに。
『まあボスも倒してないしこんなもんでしょ。雑魚狩りが主、しかも碌に戦闘もしてないからね、しょうがないね』
「ボスとか居るのかよ。ますますゲーム染みてんなお前な」
『分かり易く言ってるだけで昔からよく居る土地の主みたいなもんやし……。要となるような悪魔殺せば異界も消滅するっすよ。自然発生型は大体また発生するんすけどね』
「ふーん。……まあ、次は別のとこ行くか」
レベルが上がったからか、来る前よりも確かに視認できるようになった異界の入口を見つめながら俺は言った。
『おおっ? 随分やる気じゃんアゼルバイジャン! 遂に俺に協力してくれる気になってくれたってはっきり……』
「次こそ相棒になってくれる悪魔を見つけてやる! そしてうんこは便所に流してやる!」
『ああ、そう……』
そうとも! こんな糞うんちなんて絶対に捨ててやる。そしてなるべく可愛い悪魔を、そうでなくてもピカチュウ枠を……!
『……まあ、下手に血に酔ったり、使命感に燃えるよりはマシですねぇ』
「なんか言ったかうんこ」
そう言うと、何故かパイセンは難しい顔を浮かべた。画面上に腕を組んで思案するようにして、自分が言ったことだというのに悩み呟いた。
『そうですねぇ……お前はどう足掻いてもヒーローの器じゃねえなあ? メシアにもアンチメシアにも成れねえなお前な。だが、それがいい! ……ってコト!?』
「ネットミーム使いすぎて意味不明になってるじゃねえか」
自分で言っててよく分かってねえのかよ。何なんだこいつは。
『いやあ、俺にも分かんないんすよ。タマタマに電波が降ってくるって言うんすかぁ? 大いなる意思(淫夢)』
コイツの言っていることはよくわからんな。話全部を聞き流そう。
「お前もお前でよくわかんねえよな。野獣先輩なのに淫夢以外のネットミームも使うしよ」
『レベル上げてけばなんか分かるっしょ(適当)』
「ふーん(適当返し)」
そういうもんかね。じゃあ俺もレベル上げてお前クビにしてやるわ(豹変)
イベントがないので倍速。
「ねえのかよ! ここまで何もないのかよ!」
「この道は俺とお前だけの道だからね。どこでもいっしょ(ア ナ ル 地 獄 賞)」
地に流れるは新鮮なMAG。倒れ伏すは異形の蜘蛛である。六本の巨大な爪は粉々に砕け、鬼面染みた頭部からは止めどなく血が吹き出している。
そんな凄惨な、非現実的な怪物の死骸を作り出したのは、俺達だった。
「地霊:ツチグモ、Lv17。いやあボスだけあって中々強かったですねぇ!」
「死ぬかと思ったわぁ~~(白目)。氷結弾もっと用意すりゃ良かった……」
ぶつぶつと言いながら、俺は空になった弾倉に弾を詰めていく。特徴的な長い銃身はぶっちゃけ取り回し辛い。拳銃の癖にボルトアクション式とか、ンだよこのクソ銃(ピシャッ)
この銃? 拾った。異界になったビルの中で、面白オブジェの側に転がっていたのを貰ったのだ。一体あのオブジェは何だったんですかね?(目そらし)
しかし、念願の安全暴力装置である銃を手に入れたものの、なんか変なんだよな。たまに頭の中になんか聞こえるし。やっぱ呪われてんじゃねえかなこれ(オブジェの恐怖)
[ドミネーターを手に入れたドミネーター]
あ、また聞こえた。
「……犯罪係数でも測ってんのかな?」
「アニ豚きっしょ」
「なんでアニメって分かったんや?」
言い返した先、野獣は上機嫌に身体の調子を確かめていた。まーた全裸になって筋肉アピールしていやがる。
野獣はニヤリと力強く笑い、言った。
「外道:タドコロコウジ、Lv20です……(王者の風格)」
「格が下がってないか?(懸念)」
電霊とかいう種族の悪魔に遭遇したことはまだないが、外道に関しては数え切れない程にある。ゾンビとかスライムとかがそれだ。レア度に関して言えば明らかに下がってるぞ。
「悪魔も進化するんだもんな。やっぱポケモンじゃん。あーあ、俺もピクシーをハイピクシーに進化させたかったなあ」
「ジョグレス進化なら出来るんじゃないすかぁ?」
「悪魔人間とかなりたくねえ……」
噂(悪魔へのカツアゲ)で聞くに、悪魔を合体させる要領で人間と悪魔を合体させることも出来るらしい。あくまで『らしい』というのがミソである。成功例なんぞ見たことないのだ。
「失敗例っぽいのはたまに見るがね(蘇るオブジェの恐怖)」
「地道に強くなるのが一番だって、はっきりわかんだね」
「お前は外道になって火炎弱点が増えたけどな」
突かれたくない所だったのか、「クゥーン……」と子犬の真似をする野獣を尻目に、俺は崩れ行く異界から脱出していく。
スタスタ歩いていけば、いつの間にか外である。人気のない神社に茂る鎮守の森は、当初の澱んだ空気をいくらか霧散させていた。
「もう5時か。小腹すいたな(KSNG)」
「この辺にぃ!」
「おう、ラーメン屋行くか」
「お前の提案が好きだったんだよ!」
悪魔を殺した後はラーメンが食いたくなる。いや、単に俺も野獣もラーメンが好きなだけである。
種族:外道になってから異界の外でも実体化する頻度が増えやがったが、ラーメン食う時位しか出てこないので、別に良いかと思っていた。
俺が野獣と出会ってから、三ヶ月が経っていた。
その間に特筆すべき出来事は起こっていない。大学に行って悪魔殺して、寝て食ってまた悪魔を殺すの繰り返しだ。しいて言えば、金銭的余裕が大幅に出来たことくらいか。悪魔共から分捕ったマッカとかいう金貨は、これまた悪魔との交渉次第で様々なアイテムや日本円に換金できたのである。
現代日本では容易に手に入れる事の出来ない銃弾もマッカを払えば手に入る。高いけど。属性が付与された特殊弾はもっと高いけど(半ギレ)。安全を買うと考えれば仕方がないというものだ。
だから、そう。意外と生活は安定している。未だにジュッセンパイヤーしか悪魔はいないし、ポケモンゲットが成功したことは一度もないが、代わりに全てを薙ぎ倒すことで金は入る。レベルも上がる。更に安定する。金が入る。
良い生活サイクルを築けている。そう思っていた。
七月のある暑い日までは。
「なんか……このままじゃヤバい、ヤバくない?」
「なにがだよ」
その日もいつも通りに異界を探索し、廃ビルに居を構えたボス悪魔をぶっ殺した後のこと。野獣はレベルアップにも喜びを見せず、そんな事を言った。
「いや……なんか、めちゃくちゃ大事なことを忘れてるっていうか……。悪魔が存在するならサマナーが存在するように、MURはんがいるならKMRがいるように、当然に存在するものを見落としてるって感じでぇ……」
「まーた大いなる意志(淫夢)かよ。お前のそれが妄言を発する事以外で役に立った試しがあったか?」
「ないです(自信満々)」
「だよなぁ? じゃあ帰るぞ」
そう切って捨てて、俺はメイスから滴り落ちる悪魔の血を振り払った。
このメイスもまた、ドミネーターに同じく異界で拾った物である。何か神聖な雰囲気を発していて、悪魔に通りが良いから使っている。元の使い主はどこに行っちゃったんですかね?(羽の生えたオブジェの恐怖)
「……いや、やっぱマズい、マズくない?」
「ああ?だからなんだって……」
「いくら俺達が王道をいくからって、他の道が存在しないわけじゃない……ってコト!?」
「排泄物は口からじゃなく尻から出せよな~~」
「いくら何でも酷スギィ!」
まだ良く分からん事で悩んでるのかこのうんこはと、そう言おうとして。
「──っ!?」
斬りかかられた。
斬撃は暗闇から。狭い通路の遥か先、階段を背にして襲撃者の数は一体か!
潜り抜けた修羅場の経験から冷静に状況を判断していく。相手が出口を塞いでいる以上、異界から逃げることは不可能だ。
遠距離からの攻撃。しかし腕に受けた感触は紛れもなく斬撃。即ち、物理攻撃を広範囲にまで届かせることが出来る技量!
「つまりヤベー奴って事じゃねえか! おいジュセ前に出ろ!」
「おかのした!」
襲撃者は暗闇より進み出る。一見して人型に見えた影人形の姿が露わとなる。
「……こいつ、悪魔か?」
見えたのは偉丈夫の鎧姿。それも時代錯誤な、戦国武将のような……いやもっと古そうな鎧を身に纏っている。腰に下げるは大太刀と小太刀。背には大弓を。そして頭は兜で守り、剣呑な双眸をこちらに向けていた。
「まあいい、先手必勝だ!」
「じゃけん夜行きましょうね~~! ホラホラホラホラ!」
野獣が殴打を繰り返し、時には斬撃にも似た引っ掻きに噛み付きを加えていくも、相手はまるで動じた様子がない。抜刀の予兆さえなく、悠々と攻撃を受け流している。
しかし、不意に襲撃者に笑みが漏れた。
「……やりますね」
「えっ、お前も淫夢厨?」
「……いんむ? インキュバスは仲魔じゃないすけど。……まあ、ここまですね」
鎧武者は、ふと右腕を伸ばし、軽々と野獣の首根っこを捕まえた。そうしてコンクリートの壁に投げつけた。「オォン!」と呻き声を漏らし、野獣は動かなくなった。
「つ、つかえね~~……」
「クゥーン……(負け犬先輩)」
鎧武者は野獣を足蹴にし、そのまま俺に向かって来る。俺の対抗策として何がある? メイスにドミネーターに特殊弾に……碌にねえなお前な!
相手は間違いなく格上だってのに、安全を期して格下狩りに専念してきたのが災いしたか! せめて野獣以外の悪魔を従えることができていれば、取れる手段もあるってのに!
「で、お前が『異界荒らし』すか。噂じゃ元メシアンって話……何が狙いなんすかね?」
「……異界荒らしぃ? なんのこったよ(困惑)」
何か知らんが、鎧武者は俺を誰かと勘違いしているようだ。というかこの感じお前人間かよぉ! 異界で俺以外の人間とか初めて見たわ(オブジェ? 何それ?)
「とぼけても無駄すよ。何が狙いなのかは分からないすけど、お前、派手に動きすぎなんすよ。下手にメシアとガイアが動き出す前に、こうしてヤタガラスが片付けに来たんす。勘違いした新人……てセンも、そのレベルじゃねえ」
……俺、何かやっちゃいました?(笑)
いや、何となく分かっている。つまりあれだろ。シマ荒らしって事か。メシアだかガイアだかカラスだかが893みたいなもんで、俺は思い切り黒塗りの高級車に追突してしまったという訳か?
「メシア……ガイア……あっ、そっかぁ」
倒れ伏したまま、野獣が何かに気が付いたように声を上げた。
「は? お前何か知ってんのかよ! だから毎度説明しろって言ってんだろうがクソうんち!」
「いや俺も今まで忘れていたって言うかぁ……。そいつらはアレっすよ。LawとChaosの権化みたいな組織でぇ……ヤタガラスはNeutral的な? それぞれの属性の悪魔を使役したり、崇拝したりして、世界規模で影響力を持っているって感じでぇ」
「じゃあInternetは? 俺達のケツ持ちはどこにいんだよ」
「ないです(無慈悲)」
「死ね!!!」
いやこのままじゃ死ぬのは俺じゃねえか! 今だって鎧武者は大太刀に手を掛けて睨んでいやがるんだ。
今の俺は端から見るに、漁場を荒らした半グレ野郎だ。それもどの組織にも属していない完全フリー。このままじゃコンクリ詰められて東京湾に沈められるぞ!
「クソッ……後輩を庇い、全ての責任を負った本庄に対し、暴力団員、鎧武者に言い渡された示談の条件とは……?」
「示談? 示談するつもりがあるんすか?」
苦し紛れに言った一言に鎧武者が動きを止めた。え? もしかして話す余地がある感じ?
「示談ありますねえダイナモ感覚! まあ聞いて下さいよ。俺だって悪魔に脅されてんだ。そこの糞(直球)に、レベル上げねえと個人情報ばらまくぞってさあ!」
「酷くなぁい?」
「うるせえ黙ってろぱいぱいやじゅ美!」
こっちは今シリアスやってんだよ! ニコニコ動画からコメント付きで参加してくんじゃねーよ!
「……まさか素人すか? どこでCOMPを手に入れたんすか」
「拾ったんですよ。そこのうんこもこびり付いてたんですよ。そっから訳分かんねー内に異界行けだの言われるしよぉ。だから殺すならあいつだけにして下さい! 許してください、お願いします!(何でもするとは言ってない)」
これでなんとかなってくれよな~~頼むよ~~(懇願)。だって間近に見てはっきりわかんだよ、こいつマジでヤベーわ(確信)
身に纏う武具から感じる圧は、それだけで低レベルの悪魔を吹き飛ばせそうな程だ。その奥に隠される肉の厚みは、泰然自若としていながらも揺るぎなき大山じみて、格の違いを分からせてくる。
「ふうん……確かに、こうして相対してみて、噂よりも素人臭いと……。ですけど、そのメイスはどうしたんすか」
「これも拾いましたねえ! 俺の物は俺の物、異界の物も俺の物!(GIAN)」
「……まあそういう無頓着さも素人っぽいすけど。……しかし、ねえ」
な、なんか上手くいってねえなお前な(焦り)。どうにも、もう一押しが足りない感じだ。
これはまさか、あれを言うしかないのか……? ホモにとっての禁句……と言うよりは、AVにとっての常套句を……!
「ぐっ……仕方ない。許して下さい! 何でもしますから!(何でもすると言っちゃった)」
「……ん? 今、何でもするって」
「お前やっぱホモかよぉ!(絶望)」
「ホモとか人に言うの失礼っすよ」
糞が。鎧武者の癖にまともなこと言いやがって。
しかし相手は柄に手を掛けるのを止め、纏っていた鋭い空気を霧散させた。あーあ、これから俺は何でもすると言っちゃった男だよ。どうだよ(半ギレ)。おでんで飯食う拷問でも受けさせられるのかな?(楽観)
「ま、丁度良いっす。まだメシアもガイアも目を付けてないそれなりのフリーサマナー。ウチは万年人手不足すからね。何でもすると言ったからには苦労して貰うすよ」
わあい、就職だあ(白目)