ネットミーム・デビルサマナー   作:生しょうゆ

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第二話 ポケモンマスター(意味深)

 

 

 

「で、レベルって……いや何となく分かるが。これ上げれば強くなんだろ?」

「そうだよ(肯定)」

「上げるには、あれだ、あのガキとかみたいな悪魔を殺せば良いんだろ? それで強くなるんだろ?」

「そうだよ(再肯定)」

「じゃあ嫌だわ」

「あぁん? なんで?(レ)」

 

 ジュセは不満げな顔をしてそう言ったが、いや当たり前だろいい加減にしろ。

 

「俺は悪魔なんか興味ねーんだよ! 二度と来んじゃねーよ」

「まあそんな連れないこと言わずにさ。俺に協力すればパパパッと金も稼げて人生バラ色っすよぉ?」

 

 金、という単語に一瞬心を揺さぶられたが、俺の本音は容易くそれを否定した。そうとも、ふざけて軽口を叩いているが、心はさっきから震えていやがるんだよ。

 

「あのさあ、人が死んでたんだぞ。俺、グロいのダメなんだよ! 殺す殺されるもマジ無理!」

「糞喰漢を見ながら酒を飲めんのに?」

「それはグロじゃなくてスカトロ……っておい、なんでそんな事知ってんだ」

 

 淫夢動画を見ていることから、糞喰漢も見ていることは察せられるだろうが……(そうか?)、だからといって、どうしてそれを見て酒を飲んでいることまでバレてんだ。

 

 その問いに、野獣はニヤリと笑い、「こ↑こ↓」と部屋にあるパソコンの画面を指差した。

 

 と、同時に電源が入り、タブが開かれる。そこにはTwitterもといXの画面が。というか俺のアカウントじゃねーか!

 

「フォロー514、フォロワー114! 寂しいっすねえ『ターミナル』さん? まあ酒飲んでスカトロホモビ見てるイキリツイートしてるようじゃ、誰もフォローしないのも多少はね?」

 

「それは若気の至りって奴で、酒の弾みって奴で! というか消した筈なんだよ呟いた三日後に。まるで反応無かったから!」

 

 そうとも、履歴にはないはずだ。消したツイートをどこから拾ってきやがった。もしかして、『イキリ淫夢厨の激痛ツイートwwww』みたいな糞スレタイでクソまとめサイトにまとめられたりしてるのか!?

 

「アナライズを忘れたのかぁ?」

「ああ? アナライズ?」

 

 野獣は何故かドヤ顔で、頻りに自分の顔を指差している。そこにあるのはイボとステハゲだけだぞ。と言おうとして、俺は気が付いた。

 

「……電霊:ヤジュウセンパイ」

「そうだよ(肯定)。俺はネットに強い悪魔なんだよなあ。お前の個人情報ぐらいどうってことないってはっきりわかんだね」

 

 そんな、唐揚げ沢蟹のコロッケみたいな……いや、あっちは別に強くないが。

 

 しかし、これはとんでもないことになった。こいつ、悪魔じゃねえか(今更)。俺の個人情報なんてどうにでも出来ると暗に言っていやがる。だからドヤ顔で「どうだよ(自信満々)」と笑っているんだ。

 

 ……糞が。これじゃあ協力するしかないじゃねえか。

 

「……チッ」

「何だその態度? 先輩に対する態度かそれよぉ?」

「チッ!!!!」

「えぇ……(困惑)。俺だって悪魔なんですがそれは……」

 

 ネットの個人情報をばらまくぞこの野郎! と脅す悪魔が何処に居るんだよ。ここに居たわ(溜息)

 

 

 

 翌日の夜、俺は街を歩いていた。

 

 向かう先は人気のない高架下。ずらりと長く街灯が連なるだけで人気のない、所謂『出そう』な場所である。こういう場所には悪魔がいる可能性が高いらしい。他ならぬ悪魔が言うのだから間違いがない。

 

 肩に提げたバッグの中には、今日買ったばかりの金属バットがある。野球部でもないのに持ち歩くには不釣り合いな代物だが、だからどうした。こんなんで悪魔を殺せるのか?

 

 でもすぐ手に入って怪しまれない凶器だと、これしか思い付かなかったんだから仕方ないじゃんアゼルバイジャン。

 

『武器は装備しないと意味がないぞ!』

「街中で装備してたらキチガイだよ、キチガイめ」

『悪魔なんだよなあ……』

 

 姿もないのに声が聞こえる。野獣先輩の声だ。ポルターガイスト説立証か? という訳ではない。懐にしまったスマホ、もといCOMPの中から声が出ている。

 

「デジモンみてえだな」

『旧も真もこっちのが先……ってか、随分落ち着いてますねぇ! それでこそ男や!』

 

 諦めただけだよ馬鹿野郎。てめえの住み着くCOMPには、『デビルソナー』なんて便利な物があるもんだから、これから向かう先に悪魔がいるって事が確実に分かっちまうんだ。

 

「あーあ。ほら、見ろよ見ろよ」

 

 俺が住む下北沢、その繁華街から僅かに離れ、ガード下の暗がりに目を凝らせば、それが見える。

 

 空間の歪み、と呼べば良いだろうか。チカチカと明滅する街灯の下に、靄のようなひずみがある。この世ならざる世界への入口がある。

 

『異界ありますねぇ! ダイナモ感覚!』

「異界って何だよ。どうしてお前はそう説明をしねえんだ」

『俺は実践主義者だからな。OJTだゾ』

「OJTは事案を丸投げする言い訳じゃねえっての!」

 

 言いながら俺は、するりとバットを抜き出して、肩に乗せ、渋々異界に乗り込んだ。

 

 殺す?

 悪魔を殺す?

 俺は殺せるのか?

 

 そんな内心の声に毅然として俺は答える。そうとも殺すとも。昨夜に見えたガキ共と同じ悪魔ならば、殺すのに何ら躊躇もない。あんな畜生共に慈悲などくれてやる物かよ。

 

 念仏は慈悲でなく破壊。破魔矢は吉兆でなく退魔。そういう意思で、俺は踏み入った異界に咲き誇った花畑を踏みにじった。

 

「随分綺麗な場所じゃねえか。ええ? 悪魔どころか天使が出そうだぜ」

「天使も悪魔の範疇なんだよなあ」

 

 いつの間にか、COMPから出てきた野獣がそう言った。

 

「天使も悪魔。神も悪魔。それが世の摂理。全てを悪魔と呼ぶんだゾ。お前が神を尊敬しないならな~~」

「俺は神様を尊敬してるぞ。たとえば電車の中で便意に襲われたときなんか」

「信仰が軽薄スギィ!」

 

 軽口の内に交わされる意味は無意味だ。即ち無意味に全てを殺す。

 だから俺は、花畑の内から飛び出してきた悪魔をフルスイングで吹っ飛ばした。

 

「シャアッ!(情けない男) どうだ悪魔ァ!」

「やりますねぇ!」

 

 悪魔を捉えた感覚が有るのはレベルが上がったからか? レベルの1と0とではまるで違うと野獣は言っていた。覚醒したとかどうだとか。

 何にせよ不愉快な感覚だ。肉の感触が伝わって気持ち悪い。

 

「というか、随分遅かったな? 的も小さいな。あのガキはもっと速かった……ん?」

 

 バットの先端に滴る血を振り払いながら、俺は地に落ちた悪魔を見つめた。

 

 それは人の形をしていた。小さな人だ。妖精だ。青色のレオタードに羽根を生やして、まるで童話に出てくる妖精その物の姿。

 

 何だこれは。まともに可愛いじゃねえか! 全身を血塗れにして、消滅しかけている事を除けば。

 

「……ジュセンパ。アナライズ」

「もう消えたゾ。でも、こいつは妖精:ピクシーだってはっきりわかんだね。人に友好的な悪魔っすよ。さっきも話しかけようとしてきたのに、有無を言わせず吹っ飛ばすとはやりますねえ!」

「ウッソだろお前!? 悪魔ってこんなまともなのもいるのかよぉ!」

「暗に俺がガキと同列扱いなんですがそれは……」

「そうだっつってんだろ」

 

 しかし、だとすると方針を変える必要がある。野獣が言うに、俺は悪魔を従えるサマナーだ。

 

 なら、この場でクソッタレのブッチッパ野郎とおさらばして、ピクシーちゃんと二人三脚、新人デビルサマナー生活を始めるってのはどうだ?(クソノンケ)

 

「……タイトルは、『本庄モトユキはピクシーと共に戦うようです』って所か……」

「やる夫スレ大好きかよお前よぉ!」

「てめえはダイスで言う所のファンブル三枚抜きなんだよ。スレ消してやり直してやるぜ」

 

 ともかく方針が決まったのなら、身の振り方という物がある。剣を収めてはいかがかな? もう同胞の血で汚れちゃってるけど、まあ、あれだ。拭けばいいから……。

 

 しかし、物欲センサーってのはどの世界にもあるのだろうか、異界を進んでもまるでピクシーが出てこない。たまにモグラみたいな悪魔や雪だるまみたいな悪魔が出てくるだけで、人形の可愛い悪魔が全然出てこない。

 

 そいつらは「ヒホ! ニンゲンじゃないかヒホ! それもサマナーホ? ならオイラがナカマになってやっても……ってクッサイホ! 鼻が曲がるヒホ!」とかクソ失礼なこと言いやがったから、えずいている間にぶち殺してやった。

 

「……いや、臭くないよな?」

「ねえちゃんと風呂入った?」

「姉さんなら三年前に死んだよ」

「あっ、ふーん……(意図せず地雷を踏んだ先輩)」

「う そ だ よ」

「は?」

 

 姉なんかねえよ。というかそんな小学生並みのぎなた言葉言ってくんじゃねえよ。逆に懐かしくなるくらいだわ。この返しも小学生時代に編み出した事を今思い出したわ。

 

「しっかし全然出てこないなピクシー。ピカチュウ枠はやっぱりレアなのか?」

「ピカチュウ枠なら俺がいるだルルルォ? 何なら御三家枠でもあるゾ」

「黙れメタモン」

「というか、お前じゃどうやってもピクシーを仲魔に出来ないんだよなあ」

「……は?」

 

 野獣は当たり前のようにそう言った。俺は思わず悪魔をぶん殴る手を止めた。

 

 ノッカーとか言う悪魔は血まみれのズタボロだってのに、まだ徳川様みたいにえずいていやがる。そいつを足蹴にしつつ、俺は努めて冷静に言った。

 

「ど、どういうこったよ(震え声)」

「今まで遭遇した奴等、全員属性がNeutralだったルルルォ? 俺とお前の属性はinternet。仲魔に出来ないってはっきりわかんだね」

「……RPGかなにか?」

「みたいなもんっすね。大体の悪魔はLaw-Neutral-Chaosの属性に属していてぇ……法の下を往くか、中道を往くか、混沌を往くか、に加えてLight-Neutral-Darkっすね。ヨシオ、フツオ、ワルオって感じでぇ……」

「一番肝心なInternetがどこにもないんですがそれは」

 

 というか、Internetって何だよ(哲学)。それ属性じゃなくて物じゃん。

 

 たとえばLaw-Lightな人ってのは分かるよ。高潔で立場のある人物って事だろ? だけどInternetな人ってどういうこったよ。目の前のこいつだわ(納得)

 

「ま、俺は特別だから、多少はね? やっぱり僕は王道を往く……」

「その後に続くのがソープ談義なら王道が浮かぶ瀬もねえな」

 

 しかし、野獣に関しては分かる。何せMr.ネットのおもちゃだからな。

 

「だけど俺は? なんで俺も?」

 

 少なくとも、俺は野獣先輩レベルにネットミームとして拡散された覚えなどない。Neutral-Neutralが関の山の男である。

 

 その問いに対し、野獣は何故か自慢げに胸を張って答えた。

 

「俺と契約したサマナーは、自動的に属性がInternetに固定されますねぇ!」

「それラスボス戦直前に仲間になるような奴の特性じゃねーか! そいつの加入でルート決定するような!」

「お前は俺と出会った時点でルートが決まったんだよ。嬉しいだルルルォ? 『本庄モトユキは野獣先輩と共に戦うようです』だゾ」

「つまんなそ~~」

 

 ぜってえホモガキが立てたスレだろそれ。野獣先輩使ってバトル書こうとか、発想の根本が寒すぎるわ(鎖付きブーメラン)

 

「……てか、え? マジに? 俺のピカチュウはお前なの? 今からでもチェンジできねえ? そこのお前とかさあ」

 

 俺は溜め息を吐きつつノッカーに話しかけた。ノッカーは「オエッ!」と呻き声を上げて死んだ。糞が。

 

「俺達は王道を往くからね。凡悪魔どもの理解を得られないのも、多少はね? 愛し合う二人はいつも一緒、そいつが何よりだ(田所バーニング)」

「お前の胸に抱かれる(物理)とかぜってえ嫌だかんな! 俺は信じねえぞ!」

 

 そう叫び、とにかく俺はピクシーを探した。ダンジョンに出会いを求めることは間違っている筈がない! 少なくともこんな生BB劇場男よりはまともな出会いがある筈だ。

 

「俺の相棒はピクシーなんだ……! 誰がなんと言おうとピクシーなんだ……!」

「だったら俺がなってやるか! 見とけよ見とけよ~~」

「レオタード着ても汚物は汚物だボケ」

 

 ピ ク シ ー 先 輩とばかりに一瞬で着替えたジュセを罵倒しながら、俺は溜息を吐いた。漫才やってんじゃねえんだぞ。こんなんじゃ誘蛾灯にもならないよ(呆れ)

 

「なになに~~? アタシのナカマ?」

 

 不意に鈴が鳴るような声が聞こえた。ハッとして振り向けば、そこには妖精、ピクシーちゃん! ウッソだろお前!

 

「ピ、ピクシーちゃんだ……本物だ……」

「な、なに? ……っていうか、よく見たら全然似てないし……なにこのあく……悪魔?」

「電霊:ヤジュウセンパイです。オッスオネガイシマース」

「……そ、そう」

 

 わあ、困惑してるよ! 野獣先輩に困惑してるよ! 随分感性がまともじゃねえか。仲間にしなきゃ(使命感)

 

「ピ、ピクシーちゃん! 俺は君を相棒にして冒険の旅に出たいんだ!」

「あ、もしかしてサマナー? うーん、どーしよっかな~。顔はフツーだし、な~んか変なニオイが……」

 

 よし、好感触だ!(強弁) この隙に畳み掛けるぞ!

 

「絶対に仲間にするからな! 行くぞ野獣! まずは『ひっかく』だ!」

「俺が覚えているのは<ひっかき>なんですがそれは……というかすげえなお前な(驚愕)。出会って五秒で昏睡レイプ(物理)するつもりなのか……」

 

 はあ? 訳わかんない事を言って呆れ顔を浮かべていやがって。素早さで負けていても攻撃はしろよ。ねこだましを食らった訳でもないのに。

 

 ……ん? いや、何故かピクシーちゃんまで驚いた顔をしている。というかドン引きしていた。俺に。

 

「えっ……なんなの? ナカマにしたいの? コロシたいの? 分かんない……どっちなの?」

「……これポケモンバトル形式じゃねえの? 弱らせてから捕獲するって感じでぇ……」

「令和の世に14代目の再来とはたまげたなあ……」

 

 誰だよ。お前の彼か?

 

「……こーゆー時はフツー、交渉とかするんじゃないの? ナカマになる代わりに、宝石とか、お金とか、マッカとかあげるってさ~~」

「へーそうなんだ(面倒くさい)。他にはどんな風にするのかな?」

「アタシも詳しい訳じゃないけど、友達のピクシーがサマナーと契約した時は、一緒に強くなることを条件にしたんだって~~」

「おい聞いたかブッチッパ。これこそピカチュウだろ」

「ピッピカチュウ!(裏声先輩)」

「死ねや」

「……聞いてる? あのね、そのコ悪魔合体してめちゃくちゃ強くなったんだよね! だからアタシもサマナーとの契約に憧れてるって言うか~~」

 

 え? マジ? それってお誘い?

 

「じゃ、じゃあさ、俺達も強くなろうぜ! バトルしようぜ! タイプ:ワイルドって感じでさあ!」

 

 もう決まりだろこれよお!(歓喜) 何にも知らない素人サマナーにここまで教えてくれる優しさ、誇らしくないの?

 

「……野獣、お前を恨んだ日もあったよ。だけど今は、『ありがとう』……それしか言う言葉が見つからない」

「あっ、ふーん(嘲笑)」

「なんだよ」

「属性の事忘れてんなお前な」

「運命の出会いの前にはどんな障害も無意味だってそれ一番言われてるから」

「おっ、そうだな(嘲笑)」

 

 確信したような顔で笑ってくるジュセだが、俺だって確信してるんだ上等だろ。

 

「な? ピクシーちゃん……いや、ピクシー!」

「うーん、やっぱ臭いから無理かな(笑)」

 

 ガッシ! ボカッ! ピクシーは死んだ。スイーツ(笑)

 

 

 

 

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