「いやいや、第五特異点は中々の魔境でしたわね、マスター?」
「そうだね、ピンキー(暴言)」
「殺生院キアラです(全ギレ)」
そうキレ気味に言ったのは尼僧の姿をしたアルターエゴのサーヴァント、殺生院キアラである。彼女は何の因果か第五特異点である1783年の北アメリカに召喚され、当初は面白おかしく過ごしていたものの、カルデアの様子が自分の知っているものとは余りに違うことに気が付き、その元凶にドン引きしたのであった。
何せ、殺生院キアラは現代の英霊である。インターネットもパソコンも知っているし、勿論野獣先輩も知っていた。元セラピストである経験から、現代の人型抗うつ剤である野獣先輩のことはよくよく知悉していたのである。
しかし、だからこそ彼女は野獣先輩を蛇蝎の如く嫌悪していた。昔もそうだが今もである。寧ろ魔性と化した今だからこそ、快楽におふざけを持ち込むクッソ汚い汚物を嫌悪していた。
「あの……何故、面白ホモビデオ男優がビーストになってしまっているのです? 流石にアレと同類扱いは止めて欲しいのですけれど……」
「いやアンタにも文句言いてえぞオレは! 人の名前を勝手に最低最悪の宝具に使ってんじゃねえ!」
「あら、これはこれは、この世全ての悪さんではないですか」
クスクスと嘲るようにキアラは笑い、食堂にて同席するアンリマユを見やった。彼は非常に嫌そうにキアラを睨んでいる。同類扱いされては堪ったものではないのはアンリマユだって同じである。
「アンタは望んで自分から成ったヘブンズ・オナ・ホール! 対してオレはそう成るように強制された可哀想な人身御供! この違いを分かって下さいよ? なあマスター!」
「それで至ったところが似たようなものというのは皮肉ではありますね? ソワカソワカ」
「けーっ! やな女! あいつ思い出……いやぜんぜん似てねえ! ぜんっぜん似てねえ! 流石に名誉のために断言しとくわ!」
「あらあら、嫌われてしまいましたわね」
「その割に残念そうじゃないね、ピンキー(暴言)」
「殺生院キアラです(全ギレ)」
「糞が混じってしまったら、天上の快楽も単なるスカトロプレイになってしまうではないですか……」と、キアラは自らを召喚した藤丸を溜息交じりに見つめた。
そうして、その腕に刻まれた三十画の令呪を見つめた。
何の因果で野獣先輩なんてサーヴァントが召喚されたのか。当初はそれだけの変化であり、それこそが原因だと思っていたが、カルデアに召喚され、キアラはその認識を打ち消した。
野獣先輩だけではない。全てが変わっている。自分が知るカルデアとはまるで違う今と、まるで楽しみ甲斐がなくなってしまった少年に、キアラは溜息を吐いた。
「地上に生きるただ一人の人間と。私と同じ境地に強制的にも至るとは、これでは何も楽しくないですわね。全てを救うに全ては遅く、塵と屑だけが散らばっていますか」
「何を真面目ぶって言ってんだこのラスボス。なあロン毛!」
「うわ私に振ってくるな!」
物凄く嫌そうな顔で言った二世は、しかし溜息を吐きながら藤丸を見、ぶつぶつと言った。
「……最後の人類か。このカルデアがまだ生きているのも抑止力のバックアップのお陰だろう。そうでなければ説明できないことが多すぎる。彼にはサーヴァントを数多従えるような魔力も素質もないのだからね」
「あのソロモンさんは違うのですか? 聖杯で受肉したと仰っておりましたが」
「宝具を身に備えた人類は人類判定されないらしいな。あくまで受肉した元サーヴァントだ。あまり言ってくれるなよ。本人も気にしているらしい」
「マスターに、全てを押し付けざるを得なくなったと」そう言って二世は藤丸を見つめた。
彼はぼうっとした顔で笑っていた。まるで器だと、二世は思った。
全てを受け止める為、壊れざるを得なかった器。壊れてしまい、穴が空いた器。
それ故に、無尽蔵に力を受け入れ、止め処なく力は流れ出る。
その有様にキアラは嘲笑を浮かべようとして、しかしやはり溜息を吐いた。これほどの奇縁もないだろう。自らを打ち倒したはずの少年は、この世界ではどうしようも無いほどに終わっている。それは面白いと言えば面白いが、楽しみ甲斐が無いのも事実である。
藤丸立香という少年はとうの昔に終わっていた。欲もなく、堕落もなく、最後の人類として、皮肉にも自らと同じ境地にあった。
「まあその最後の人類は淫夢厨なんだけどな! これって悲劇? それとも喜劇? 劇作家のオッサンはどう思うよ?」
「フームゥ、難しいところ……いや、やっぱりホモビ男優がサーヴァントとか正気の沙汰ではありませんな。喜劇ですぞ(断言)」
「あら、かのシェイクスピアはそう言うのですね。しかし何処かの誰かなら、それこそ悲劇も喜劇と言いそうなものですがねえ」
「誰だよ。アンタの彼か? 子供の姿をして髪の青い、声がスッゲェ渋い彼か?」
「な、何故知っているのです(困惑)」
そんな事を言っている内に「ぬわあああああああああああああああああああああああん疲れたもおおおおおおおおおおおおおおおん!!!」とクソデカ溜息が食堂に響いた。「うわでた(嫌悪)」とキアラは露骨に顔を顰め、シェイクスピアは「早く帰って記述を進めなければ(使命感)」と出て行った。
そうして現われたクッソ汚いステハゲは、何故か遠野を共にしていた。
「あっ、お前さ遠野さ、お前立たねぇな? いい加減依代として遠野をその身に宿してくれよな~頼むよ~」
「そんな胡乱なことを言ってシミュレーターで戦闘だよ! ほんとどうにかしてくれよマスター君! 俺はトカゲ人間なんかじゃないって!」
「恐竜にはなったんだよなぁ……。だから遠野! 良いよ! 来いよ!」
「恐竜にもなってないよ!」
ぎゃあぎゃあ喚きながら遠野はげっそりとした顔を浮かべた。第五特異点では直死の魔眼を活用し、無駄に硬い機械化歩兵相手に大活躍の彼であったが、カルデアに戻ればこれである。己の運命を本気で呪いつつある遠野であった。
しかし野獣先輩の執着も、藤丸の前では矛先は別に向く。即ち藤丸へチュパスクラッチを決めにかかるのである。「お前の事が好きだったんだよ!」と大胆な告白を毎度の如く発し、常のように飛びかかった。
「はは、令呪を以て命ず。キアラ、盾になれ(鬼畜)」
「え、選り好みは致しませんとは言いましたがね、流石に糞を取り込むのは止めさせて欲しいのですけれども!(必死)」
「ほら、さっさとあまだなんたらなんとか使ってよ(適当)」
「
しかし、ブチ切れながらも令呪の強制力により、仕方なくキアラは宝具を使用した。ランクEXの対人宝具は、自我を融解させ理性を蕩かす絶対的な精神攻撃であるが、そもそも野獣先輩に意思なんて存在しないので「ンアーッ!?」と射精するだけである。
それでも「んにゃぴ……やっぱり、自分……の方が一番いいですよね(余裕綽々)」と自分のオナニーの方が良いと宣うのであるから、キアラは溜息と共に呆れ果てた顔を浮かべた。
「割と自信を無くす光景なのですけれど、何なのですか? この獣は。この宝具、仮にも人類悪や真性悪魔が至ったものと同じ力なのですが……」
「つーかその宝具名も中々に失礼だよな。第三魔法の亜種をオナホ扱いとかどうなんだよ人として! どうにかしている人でしてー!(自己会話)」
「はあ、第三魔法……ですか?」
と、キアラは首を捻り、「孔明さん?」と、とりあえず二世に話を振った。
「げっ、ここに来て私か……」
「おっ、プロフェッサー・インムの解説が始まるぞ! 耳かっぽじって聞いとけよマスター!」
「そんな不名誉なあだ名で呼んでくれるな(全ギレ)」
「と言っても、私も詳しくは無いのだが……」と前置きし、二世は語り始めた。
「第三魔法とは、魂の物質化……所謂永久機関と不老不死を可能にする魔法だ。形而上の存在を汲み上げて、物質に転換する魔法とも聞く。そこの魔性が言うヘブンズホールとは、この第三魔法、天の杯が定義するところの天の孔……形而上的な、天上に空いた孔の筈、だったんだが……」
「ええ、私は私としてここに在りますとも。しかし、その説明を聞いて納得致しましたわ。私はまさしく、形而上の存在が物質化したものなのですね? 人の欲を受け止める為の孔ですか」
「それを応用して根源に辿り着く事も出来るだろうな。全く、思い出したくもない」
「言う割に詳しいじゃないか、魔術師さん?」
遠野がそう言うと、二世は「フン」と言って嫌そうに語った。
「かつて、これを応用して行われた聖杯戦争という魔術儀式があってね、私はそれに参戦したのさ。挙げ句にそれを解体までした。そこに在ったのが第三魔法の具現だよ。第三魔法が使用できる魔術回路を、聖杯の形に押し広げた至高の魔術礼装。それを用い、七騎の英霊の魂を以て、天上に孔を開け、根源に至るという……まあ、どこにでもある、魔術師的な発想さ」
下らなそうにそう語った二世に対し、「あれ?」と遠野が声を上げた。
「あれ、第三の魔法使いって生きているんじゃなかったっけ?」
「はあ? 何を言っているんだ殺人貴。アレは生きていると言えるものではなかったぞ。断じてな」
「あれー? おかしいな。先生はそう言っていたんだけどなー……。死んだのは第一の魔法使いだけだって」
そう言った遠野に、二世は少し考えるように眉間に皺を寄せた。
しかし、不意に何かに気が付いたように、二世は物凄く嫌そうな顔を浮かべた。
「……前から思っていたのだが、君の先生というのは、もしかしてあれか? 蒼崎青子だったりするのか?」
「おお(感心)。貴方は先生まで知っているのか。いやーそうなんだよ実は。この魔眼殺しの包帯も先生がお姉さんからかっぱらってきてくれたものでね」
「あの傷……エヘンエヘン。『橙』まで絡んでいるとは、君の人生も中々数奇なものだね」
「マスター君には劣るよ。まさか世界を救う旅路なんてね」
「フン……それはそうだな」
「まさかその旅路を野獣先輩と進むなんてね(白目)」
「それはそうだな(白目)」
改めて藤丸の不憫さを再認識した二人であったが、当の藤丸はぼうっとした顔でへらへら笑っている。相も変わらず「ファルシのルシがコクーンでパージ?」と、何も分からぬ顔で言っていた。
「と言うか、今更だけど魔法って何なの? ナーサリーライムが色々教えてくれはするんだけど、よく分からなくてさ」
そう言った藤丸に対し、「本当に今更だな……」と二世は言い、語り始めた。
「魔法とは、現代では実現不可能な事象を指すものだ。魂の物質化に、並行世界の運営など、現代技術では到底不可能なものだろう。それらは第一から第五まである」
「へー、どんな奴なの?」
「第一魔法、不明。第二魔法、並行世界の証明と運営。第三魔法、先程も言ったとおり魂の物質化。第四魔法、不明。第五魔法、不明だ」
「過半数が不明なんだけど……(呆れ)」
「仕方がないだろう。魔法とは、魔術世界においては神秘の中の神秘なのだから」
ぶつぶつと言った二世に対し、「ふーん(右耳から左耳に)」と興味なさげに藤丸は言った。
その態度にカチンと来たのか、二世はコツコツと机を叩きながら語り始めた。
「魔術の素人である君には分からないだろうがね、魔術師にとって魔法とは最終目的であり第一手段だ。魔術師の目的とは根源に到達することであり、よって魔法使いとは、そこに辿り着いた偉大なる先人なのだ。君はよく分かっていないようだが、魔法使いとはそう簡単に口にして良いものではない忌名のようなものであり……」
「そして『人類の敵そのもの』だね」
「いや、なんだその定義は!?」
二世が言ったのに対し、遠野はきょとんとした顔を浮かべた。その横では野獣先輩がホラホラステップを踊っている。邪魔である。
「いや、これも先生が言っていたんだよ。魔法使いってのは明確に人類の敵で、秩序を破壊するものだって……。あれ? そう言えばアルクェイドじゃないアルクェイドは、魔法使いを『秩序の飼い犬』とか言ってたって話だったな……。これって矛盾してない?」
「はあ、私にはよく分かりませんが……では、こう考えてみては如何でしょうか?」
触手で野獣先輩をぶん殴りつつ、キアラが言った。その傍ではアンリマユが、「ちなみにネカマも吸血鬼も犬もとっくに剪定済みだぜ!」と言っている。よく分からぬ事を言うのは常のことなので皆に無視された。
「そもそも、秩序とは何か? と言う話にはなりますが……仮に私達がそれに属していると仮定するのなら、それを破壊するのはまた別の秩序……と言うことになりません?」
「魔法とは、一つの秩序であると? だとすれば、私達は皆、第一魔法という秩序に属し、第二、第三といった秩序を受け入れていった……と言う事か」
「秩序を破壊して、秩序の守り手となるって訳かい? だから新しい魔法使いの下には守護者が派遣されて、やがて受容されるようになるって?」
「いや、その守護者云々の話も初めて聞いたのだが!」
「これも先生が言っていたんだよ」と遠野は自信ありげにそう言った。「蒼崎青子が情報源だと著しく信頼性に欠けるのだが……」と二世は返した。
「ともかく、魔法というモノを語るには、やはり第一魔法の存在が重要になってくるだろう。そもそも、第一魔法の成立は第三魔法の成立よりも後の事だと聞く。何故、時代的な順番ではなく、第一魔法が『第一』なのか? そして秩序というワード……これが魔術世界で用いられる事は殆どない。秩序とはなんだ?」
「秩序とは、その社会・集団などが、望ましい状態を保つための
「『はじめの一つは全てを変えた』……って言うらしいけど、時代に遡って『魔法』が影響を与えたとか? 時間操作なんてそれこそ魔法っぽいだろ?」
「それは第二魔法の領分だろう」
「ああ、そもそも先生の第五魔法の領分でもあったね」
「……心臓に悪いので、そういう非常に重要な情報を、いきなり出さないで欲しいのだが!」
そんな小難しい話をしている三者を他所に、アンリマユと野獣先輩が下らなさそうに言った。
「いや、原作で何も分かってねーんだから考察とか無意味だろ。どうせめちゃくちゃ後付けされるに決まってるだろ」
「第一魔法の使い手がキリスト説はどこ……? ここ……? ユミナって誰だよ(半ギレ)」
「はは、何言ってるのか全然分からないよ。ファルシのルシが第一魔法で第六魔法?」
「魔法とこいつらの妄言を同じ扱いしないでくれたまえ、マスター!」
そんな事を言っている内に、「あっ、ここに居たのね!」と食堂の扉を吹っ飛ばして一冊の本が現われた。ナーサリーライムである。
「ちょっとマスター! 私を放って淫夢動画を見続けないで! 私を読むのはマスターにとっての義務なんだから、ほら!」
「いや、何故カルデアの映像端末に汚らしい動画があるのです……? ソロモンさん以外にも淫夢厨が居たのですか……?」
「人の業を煮詰めたような事実ねそれ……」
「あっ、清姫とマルタまで」
ナーサリーライムの後から現われたのは清姫とマルタであった。その後から嫌そうな顔を浮かべてオベロンが現われる。
そんなオベロンへ向け、ナーサリーライムが怒って言った。
「何を嫌そうな顔をしているの! そろそろ終わりが近いんだから、マスターには全部知って貰わないといけないんだから! それがあたし達の義務でしょう?」
「そのために魔法について色々と講義しているわけだ。よくやるよ、全く」
「よくやるわよ! 全部を終わらせるためには始まりから話さなければならないのだから」
「俺は今更過ぎると思うけどな。どうせ知っている奴しか付いて来られないだろうし」
オベロンが皮肉っぽく言って「なあ?」とこちらを見た。
藤丸は首を傾げた。オベロンが話しかけた方には誰も居ない。しかしアンリマユは「おお(感激)」と言って、馴れ馴れしくオベロンの肩を叩いた。
「やっぱりアンタもオレ達と同じ側だったか! 流石は終末装置仲間だぜ! な、ヤジューセンパイ!」
「114! 514!(野獣のここ空いてますよ)」
「いやこんなの(直球)と仲間とかふざけんなよコノヤロウ!」
ブチ切れながらオベロンが野獣先輩に掴み掛かって殴り始めた。プリテンダーはビーストに対して相性が良いので結構頑張っていたが、そもそもの霊基の規格が違うので、敢えなく敗北しましたとさ。
そんな喧嘩は置いておいて、清姫はその会話を難しい顔をして聞いていた。よく分かってない様子である。
一方で、マルタは眉間に皺を寄せ、糺すように言った。
「……あまり、そういうことを言わないでくれるかしら。マスターは世界を救おうとしているのだから」
「言っても終わりは終わりだろ? この世界は終わり! 閉廷! だってヤジューセンパイがここに居るんだぜ?」
「このクッソ汚いビーストを見れば、確かにもう終わりねこの世界と言ってしまいそうになるけども!」
マルタが厳しく言った。しかしアンリマユはヘラヘラと笑って「そういう事じゃねえよ」と言った。
「マシュ・キリエライトの代わりにヤジューセンパイがここに居る時点で、物語は終わっているんだよ。最初からな」
「ちょっ」とマルタが声を上げた。清姫は藤丸を見た。その名前は、どうしてかは分からないが、彼にとって非常に大事なもののようだった。
しかし、藤丸は笑っていた。その笑みを清姫は、嫌だと思った。
だから「安珍様」と清姫は彼の腕に縋り付いた。たとえどこまで行こうとも自分はここに居ると伝えるように。
「安珍様、清姫は、どこまでも安珍様に付いていきますよ」
その言葉に、藤丸はぼうっと笑った。「はは、誰?」と、素直に言う。
「そう在るものが、それ故に泣くのは、嫌な話だよな」
アンリマユが清姫を見、そう言った。
そして、第六特異点。1273年のエルサレム改めキャメロットにて。
特異点修復のためにレイシフトしたカルデアの面々を待ち受けていたのは、円卓の騎士とエジプトのファラオ、そして山の民が対峙し合う異様な戦況だった。
まあそんな事は関係なしに、藤丸は何時も通り、野獣先輩で世界をクッソ汚く蹂躙していったのだが。
しかし、マシュ・キリエライトが存在しない以上、この特異点において、円卓の騎士が仲間になる事はあり得ない。
加えてビーストという霊基に由縁するのか、オジマンディアスと山の翁までもがカルデアに敵対し、聖地エルサレムは四つ巴の決戦の地と化す。
サーヴァントという規格を超越した四者、ビーストDCCCX、女神ロンゴミニアド、オジマンディアス、初代ハサン・サッバーハが、周囲に死を振りまきながら戦い合う中。
やがて、全てを終わらせるように、
「あ──」
藤丸は思わず目を見開いた。清姫は自然と頭を垂れて恐ろしく打ち震え、マルタは何処か懐かしいものを見るようにそれを見た。
獅子王が苦渋に満ちた顔を浮かべた。アグラヴェインがそれでも天に向かって吠えた。殺生院キアラは「ほう」と溜息にも似た息を吐いた。
それは宙に浮いていた。それは宇宙として在った。
光輪を背負い、半眼に全てを見定めた解脱者の顔。
オジマンディアスが下らなさそうに顔を顰め、山の翁が無言のままに剣を置いた。
それは藤丸を見つめ、言った。
「サーヴァント、セイヴァー。──貴方を見届けるため、ここに在る」
唯一、玄奘三蔵だけが、自らの本尊を前にして顔を青ざめさせた。