2025-06-08

「お元気ですか」って書かれた封筒を開けられない

大学時代友達から手紙が届いた。

封筒の表に、丁寧な字で「お元気ですか」と書いてあった。

宛名も、差出人の名前も、当時のままだった。

開けられなかった。

SNSではとっくに繋がっていないし、

連絡先ももスマホには残っていない。

たぶん、卒業してから一度も会ってない。

なのに、10年以上経って突然届いた手紙

何かあったのかもしれない。

ただの近況報告かもしれない。

でも、開けたら何かが壊れてしまう気がした。

私はあの頃と、まったく違う場所で、まったく違う人間として、

なんとか今日まで生き延びてきた。

かに成功したわけじゃないけど、

誰にも迷惑かけずに静かに暮らすことで精一杯だった。

それなのに、過去けが、こうやって勝手に呼びかけてくる。

「お元気ですか」なんて、いちばんしづらい言葉だ。

元気じゃないわけでもない。

でも、胸を張って「はい」と言えるほどの毎日でもない。

そのあいだの、どこにも位置づけられない10年だった。

封筒はまだ机の引き出しにある。

たまに取り出して眺めるけど、まだ開けられない。

開けられなかった理由が、言葉にできないまま溜まっていって、

こうしてはてなに書いている自分がいる。

今、あなたが誰かに「お元気ですか」と書こうとしているなら、

どうか、その言葉相手にとって優しさでありますように。

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