日本郵便 異例の処分招いた組織の緩み

読売新聞 2025年6月8日 5時0分

 国民生活を支える郵便事業で安全軽視の法令違反が蔓延まんえんし、多くの車両が運送停止に追い込まれる事態となった。日本郵便は混乱を抑えながら再発を防止しなければならない。

 日本郵便で運転手への点呼が適切に行われていなかった問題で、国土交通省は、貨物自動車運送事業法に基づいて、事業許可を取り消す方針を決めた。

 全国の郵便局が保有するトラックなど約2500台の車両が運送に使用できなくなる。取り消し後5年は許可を再取得できない。この法律で最も重い処分となり、大手事業者には極めて異例だ。

 点呼は、運転手の健康状態や酒気帯びの有無を確認するものである。安全運行の前提として、事業者に義務づけられている。

 ところが日本郵便の調査では、集配業務を担う全国の郵便局のうち7割超の約2400か所で、点呼を適切に行っていなかった。

 国交省がその後、特別監査した結果、点呼の未実施だけでなく記録の改ざんまでが多数確認されたという。法令を軽んじ、安全確保を怠ることなど許されない。広範な違反が放置されていたことをみても組織の緩みは明らかだ。

 いつから始まっていたのか。監査を尽くしていく必要がある。

 懸念されるのは、郵便や宅配便の配送に対する影響だ。

 日本郵便は、比較的大きな拠点となる郵便局の間を、トラックで運んでいる。家庭への配達やポストの集荷などは約3万2000台の軽バンなどで行っている。

 参院選やお中元の時期を控え、配達物は増えるだろう。特に、手紙やはがきなどの信書は、国民が情報を伝える上での基礎的サービスだ。信書便の業務は一部の委託でも厳しい規制がある。

 日本郵便は、当面、他の運送業者に宅配便などの委託を進めることになろう。だが、トラック運転手の人手不足は深刻だ。委託先の開拓は容易ではない。

 国交省は今後、軽バンなどについての監査も進める。

 軽バンは届け出制で、事業許可の対象ではなく、取り消し処分の定めはない。ただし、悪質なら車両の使用停止処分を出す。悪弊を徹底して正してもらいたい。

 日本郵便は、手紙やはがきの取扱数が減少して郵便・物流事業は赤字が続き、経営は苦しい。

 国民生活への影響は広がる可能性もある。法令軽視は、経営への深刻な打撃となるだけでなく、市民にも大きな負担をかけることを改めて認識するべきである。

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