キャリア・教育

2021.03.20 17:00

ナイキCM賛否にモヤモヤ 広告に「ソーシャルグッド」は必要か?|#U30と考える

連載「U30と考えるソーシャルグッド」 ゲストは、大妻女子大学の田中東子教授

連載「U30と考えるソーシャルグッド」 ゲストは、大妻女子大学の田中東子教授

昨年11月末、ナイキ ジャパンが公開したCMを覚えているだろうか。

在日コリアン、アフリカ系にルーツを持つとみられる生徒や学校でいじめられている3人の少女たちが、差別やいじめを受けながらも、サッカーを通じて乗り越えていく姿が描かれた。SNSでは、感動や共感の声も上がった一方、日本人が人種差別をしているような構図であると捉える人もあり、ネット上では炎上の様相を呈した。

若者が社会に対して感じるモヤモヤについて、第一線で活躍する人や専門家にぶつけて、より良いヒントを探る連載「U30と考えるソーシャルグッド」。今回は、メディア文化論に詳しい大妻女子大学文学部の田中東子教授に、大学生を中心に活動するNO YOUTH NO JAPANのメンバーが、昨年11月に公開された米スポーツ用品メーカー・ナイキのCMを巡る賛否に対する疑問から、広告の未来と受け取る側のあり方を聞く。

(前回の記事:BBCレポーター大井さんに聞きたい!キャリアと子育てのこと

U30世代の私たちは、このCMの炎上現象にモヤモヤを感じた。なぜナイキはあえてメッセージ性の強い広告を打ち出したのか。情報過多の時代となったいま、受け手である私たちに求められていることは何だろうか──。田中教授と一緒に考えたい。

当たり障りない広告に一石を投じた、ナイキのCM


NO YOUTH NO JAPAN 続木明佳(以下、NYNJ続木):さっそくですが、ナイキのCMはなぜこれだけ反響があったのでしょうか。田中先生は「日本の他の広告と一線を画していた」という点についてどのように分析されていますか。

田中東子(以下、田中):注目された理由のひとつは間違いなく、オンライン時代だから。SNSがなければここまで一気に盛り上がらなかったと思います。メディアのコンテンツについてただちにコミュニケーションをとることができるオンライン・テクノロジーの進歩は、広告を巡る大きな環境の変化ですね。

もうひとつは、横並び意識の強い日本の広告業界で、前衛的でメッセージ性がとても高い広告であったことです。日本には、より広く、より多くの人に共感してもらえるような、言葉は悪いけれど、当たり障りのない広告が多いです。



NYN続木:では、そのような日本で、どうしてナイキはあえて強いメッセージ性を持った広告を出したのでしょうか。どんな意味や狙いがあるのでしょうか。

田中:ナイキは日本国内のドメスティックなブランドではないのが一番大きいですね。アメリカではすでにジェンダー不平等、人種差別のような社会問題が広告に取り入れられています。そういったメッセージ性をCMに込めることで、社会問題に取り組んでいる企業であるというブランドをつくりあげているのです。ナイキはその姿勢を日本に導入したのだと思います。

きっかけのひとつには、やはり大坂なおみ選手の活躍が大きいですね。彼女の人種差別に対する活動が日本で好意的に捉えられていることを踏まえ、今ならああいった広告を日本で出せると踏み切ったのではないかと、メディアを分析する立場から考えています。
次ページ > 主人公3人は皆女の子。人種の問題以外のメッセージも

文=続木明佳(NO YOUTH NO JAPAN)

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大坂なおみの抗議行動に見る、新しい「広告塔」のあり方

企業の「広告塔」として引っ張りだこの大坂なおみ選手(写真=シチズン)

企業の「広告塔」として引っ張りだこの大坂なおみ選手(写真=シチズン)

女子テニスの4大大会・全米オープンで2年ぶり2回目の優勝を果たし、米国のニュース誌「タイム」が選出する「世界で最も影響力のある100人」にも2年連続で名を連ねた大坂なおみ選手。グローバルな規模で人気を得ている彼女はスポンサーからも引っ張りだこの状況で、現在は15社のスポンサー企業と契約している。

今年6月からアメリカで盛んにおこなわれているBLM運動では、すでに多くのアメリカのアスリートたちが賛同の姿勢を表明しているが、大坂なおみ選手も人種差別に抗議するマスクを身につけてコートに立った姿が注目された。

企業のイメージキャラクターが担う社会的な「価値観」もCMの要素として重要視される今日、企業が感じている大坂なおみ選手の「広告塔」としての魅力とはなにか。


米フォーブスが発表した「世界で最も稼ぐ女子スポーツ選手ランキング」の2020年版で、大坂なおみ選手は過去4年間にわたりトップに君臨してきたセリーナ・ウィリアムズを抜き首位に輝いた。大坂選手の年収額は女子スポーツ史上最高となる3740万ドル(約40億円)とされており、そのうちの3400万ドルはスポンサー収入であった。

2018年全米オープンと2019年全豪オープンで2度の4大大会優勝を果たした後、大坂選手の元には多数のスポンサー契約が舞い込んだ。現在では日清食品や日産自動車などに加えて、ナイキやマスターカードなどのグローバルブランドを含む15社と契約している。

シチズン時計は2014年から「Better Starts Now=どんな時であろうと『今』をスタートだと考えて行動する限り、私たちは絶えず何かをより良くしていけるのだ」をブランドステートメントとして掲げ、2018年からこれを体現する「象徴的な存在」として大坂なおみ選手をブランドアンバサダーに起用している。世界の舞台でトップアスリートとして活躍していても慢心することなく、「今」をスタートとして新たな挑戦に向かってゆく姿勢が、1918年の創業から100年以上経過しても挑戦をやめないシチズンの姿に重ねられる。

プロテニスプレイヤーとしてシチズンの腕時計を試合で着用するだけでなく、アンバサダーとして広告にも登場する大坂選手は「シチズンブランドの顔」を担っている。全米オープン2020大会では、ブルーとイエローの爽やかなコントラストが映える「大坂なおみモデル」を着用して参戦し、グランドスラム3勝目を達成した。⼀流のアスリートとしての実⼒を知らしめ、世界からの注目度はうなぎのぼりだ。

一方、今回の大会では大坂選手が黒人抗議運動「BLM」の姿勢を打ち出すため、警官や人種差別の暴力の犠牲となった被害者の名前をマスクに記して臨むパフォーマンスを行い、賛否両論を巻き起こした。
次ページ > 国内のスポンサー企業の反応は?

文=渡邊雄介

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経済・社会

2021.03.17 06:30

ピーター・ティール、Netflixで注目の保守系作家の政界進出を支援

ピーター・ティール(Photo by John Lamparski/Getty Images)

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ピーター・ティールとヘッジファンドの富豪らが、米国の繁栄から取り残された白人家庭を描いた自伝で注目された作家、J.D.ヴァンスの共和党からの出馬を支援しようとしている。ヴァンスの「ヒルビリー・エレジー」は、白人労働者階層の姿を描いた作品として全米のメディアから注目を集め、昨年はネットフリックスで映画化されていた。

決済企業ペイパルと、CIAが支援するビッグデータ企業のパランティア(Palantir)の共同創業者として知られるティールは、ヴァンスの上院選出馬に向けて設立されたPAC(政治活動団体)の「プロジェクト・オハイオ・バリュー」に、1000万ドルを寄付した。

また、かつてスティーブ・バノンと連携していた共和党のメガドナーとして知られるヘッジファンドの大物、ロバート・マーサーの家族もこのPACにかなりの額を寄付したが、その額は開示されていない。

ヴァンスはまだ正式に出馬を宣言していないが、出馬すれば引退する共和党上院議員のロブ・ポートマンの議席を争うことになる。

ヴァンスが2016年に出版したベストセラーの「ヒルビリー・エレジー」は、ラストベルトと呼ばれる米国中西部での幼少期を描いたもので、白人が大多数を占める米国の地方の暮らしを克明に描き、トランプ支持の高まりを説明する著作として注目を浴びた。

この作品は、エイミー・アダムスとグレン・クローズ主演でネットフリックスで映画化され、クローズはアカデミー賞の助演賞にノミネートされた。

現在36歳のヴァンスは、イェール大学のロースクールを卒業後に、ティールのベンチャーキャピタルのMithril Capitalに勤務した過去を持ち、最近でもティールの支援を受けて、自身の会社を立ち上げていた。

リバタリアンを自称するティールは、民主党支持者が大多数を占めるシリコンバレーにおいて、共和党支持を公言する数少ない人物であり、2016年の大統領選挙においても、トランプを支持していた

彼は昨年、カンザス州の上院選挙で敗れた移民強硬派のクリス・コバックを支援したが、トランプの2020年の再選キャンペーンからは距離を置いたと報じられている。マーサー家は、2016年のトランプの選挙キャンペーンに大口の寄付を行い、右派メディアのBreitbartや、今は亡きデータ会社ケンブリッジ・アナリティカにも資金を提供していた。

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編集=上田裕資

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