BMSG×ちゃんみなのガールズグループオーディション「No No Girls」。1月11日にKアリーナ横浜で開催された最終審査「No No Girls THE FINAL」から7人組ガールズグループ「HANA」が誕生し、1月31日には『Drop』でプレデビューを果たした。『Drop』のMV(ミュージックビデオ)は公開以来、YouTubeの急上昇ランキングの上位を続け、順調なスタートを切っている。その1月の最終審査から3日後、SKY-HIにオーディションを振り返ってもらった。
本当に過去に類のないオーディションになったと思います。BMSGのここまでの利点として、オーディション「THE FIRST」やそのオーディションの「卒業式」と銘打ったライブ「THE FIRST FINAL」、「BMSG FES」などで、社長とプロデューサーが同じ人物(SKY-HI)だからこそ、思い切ったことができるということが挙げられたと思います。
一方で、もしも自分がプロデューサーとしてフルでリソースを割けて、そのうえで自分が社長としてそれをビジネスとして整えてくれたら…つまり自分が2人いたらもっとやりやすいだろうなと感じることがあったんです。でも、プロデューサーがちゃんみなだったら、近い形で実現可能になる。
ソロアーティストとしてのちゃんみなに対しては以前から強いリスペクトを持っていましたが、今回「No No Girls」を通して改めて感じたのは、ちゃんみなは「セルフィッシュじゃない人」ということ。プロジェクトについて僕が社長として「ここに予算を掛けてしまうと」「ここでこれをやってしまうと」などのインプットをしても、すぐに理解してくれる。もちろんそのうえで「やっぱりここだけはどうしてもやりたい」ということもあるんですが、すごくプロジェクト全体を真摯に考えてくれるので、任せやすかったです。
「THE FIRST」の時も思いましたが、「No No Girls」でも「時代に必要なことを形にできた」という手応えを感じています。
大きな挑戦だった「No No Girls」
オーディションそのものも回を追うごとに熱量が高まっていった。1月11日にKアリーナ横浜で行った最終審査「No No Girls THE FINAL」は、翌日にYouTubeで1回限りの配信を実施。同時接続は56万人を超えた。最終審査の模様を伝えたYouTubeでの「Ep.15」は513万回超え、「Ep.16」は384万回超えの再生回数だ(25年2月26日時点)。
いい名刺ができたなと思います。その後、YouTubeで「Ep.15」「Ep.16」が上がりますし、HANAは1月31日は最終審査課題曲の『Drop』でプレデビューします。
『Drop』はめちゃくちゃかっこいいので話題にもなると思うし、HANAのプレデビューまでに、「No No Girls」を見てくれる方、知ってくれる方がもっとたくさん増えていくと期待しています。その勢いのままデビューして、社会に影響を及ぼせるアーティストになってほしいですね。
「No No Girls」は、僕にとっても大きな挑戦でした。1つは初めて女性アーティストを自分の会社で抱えるということ、もう1つは大切な友人をビジネス上のパートナーにすることのリスクです。すごく楽しかった半面、適切でない立ち居振る舞いや発言をしないよう、めちゃくちゃ気を遣い続けた期間でもありました。
後者においては、みな(ちゃんみな)だから大丈夫とは思っていたけれども、友人関係が壊れるリスクも可能性としては低くない。彼女が「本当にやってよかった」と思えるものにしなくちゃいけない。それを必死で考えた期間でした。とはいえ、最終審査のパフォーマンスは純粋に楽しませてもらったし、僕自身もやってよかったと思えました。
最終審査が全て終わったあと、みなに「本当にありがとう」と言ってもらえたのが純粋にうれしかったです。「No No Girls」を始める前は、みなが次のフェーズに進む機会になるといいと考えていたのですが、終わって見れば自分も人間として1つ上のフェーズに進めたかなという気がしています。
ちゃんみなからの「ありがとう」は、どんなことに対してだったのか。
曲やインタビューから分かると思いますが、ちゃんみなってパブリックイメージよりもはるかに繊細だし、「自信がない」ってよく口にする人なんです。だから「No No Girls」のプロジェクトが始動する前も、「みっくん(SKY-HI)がずっと言っていることは分かるけど、本当に私でいいのかな」とか「今でいいのかな」という不安が続きました。
もちろん彼女自身の中にどんなガールズグループを作りたいかというビジョンや、最強のグループを作れるという確信はある。けれども、彼女もアーティスト歴は7、8年あるとはいえ、プロジェクト始動時は25歳になったかならないかくらい。当たり前ですが、本当にオーディション参加者を自分がリードできるのかという不安もあったんです。
ちゃんみなを改めて世の中に提示できた
最終審査で言われたのは、「みっくんがあそこまで『絶対やったほうがいい』って言うならと思ってやってみたけど、(参加者の)彼女たちに出会えたことが本当に良かったし、私自身にとっても本当に良かった」みたいなことだったかな。
『命日』(2023年)とかを聴いて、すごく思ったんですよ。ちゃんみなって生物として1つ先のフェーズに進化しているのに、『Never Grow Up』(19年)の大ヒットもあるから、世間はどこかでちゃんみなに少女の面影を求めたり、期待したりしている。「若い世代に圧倒的な人気」というフレーズでなく、彼女自身が年齢や経験を超越したバケモノであることは、彼女のことを強く応援している人はみんな理解しているでしょうが。
僕も彼女なら「No No Girls」ができると思っていたし、「No No Girls」を通して、ちゃんみなの「人」としての器をもっと世に出したほうが今後の作品にとってもいいだろうと思っていたけれども、偶然にもこの期間に結婚や出産も重なり、神がかってますよね。だから今後、彼女が書く曲は必然的に『Never Grow Up』的なものとは離れていくんじゃないかな。「No No Girls」が彼女にとって、大きな転機になったのは間違いないでしょう。
ずっとちゃんみなのことをアーティストとしても人間としても、セルフプロデューシングの能力も尊敬してきましたし、シンパシーも感じてきました。正直、みながやりたいことにベットしてくれる事務所に対してうらやましく思ったこともありました。
でも、みなのいいところを世間に出せるのは、今回のプロジェクトだと思ったし、たまに一緒にご飯を食べているときに「自信がない」と口にしてきたけど、これからはHANAのメンバーがみなにたくさんの自信をくれるし、みながやってきたことが間違いないことを証明してくれる。それをみなが1番強く感じるんじゃないかと思います。これまでみなが頑張ってきたことのボーナスをそろそろもらってもいいんじゃないかと思っていたけれども、今回は僕がちゃんみなを改めて世の中に提示できたことがうれしいですね。
気を遣ったとは言いましたが、最後のほうは割と僕もオーディション参加者のパフォーマンスを純粋に楽しんでいたかな。4次審査くらいからはもう普通にファンになっちゃっていたので、一個人として「みんなメンバーに入ってくれ」と思いながらも、社長としては「滅私」ですよね(笑)。みなにも、社長としてでなく「MAHINAのファンの感覚として、これはどう思う?」なんて聞かれたりして。でもそれこそ彼女は、みなの下でこそ伸びていける方だったなと思うので、本当に(HANAのメンバーに選ばれて)良かったですね。
それぞれに対して話したいことはたくさんあります。「FINAL」では3次審査に進出した30人がステージに立ちましたが、オーディション時に比べて驚くほど実力を伸ばしている方もいて。HANAには選ばれなかった方たちの今後の相談事はみながメインでやっていきますが、「FINAL」の当日は他のレーベルや事務所の方々、音楽プロデューサーなど関係者も招待しました。Fukaseくん(SEKAI NO OWARI)も来てくれたし、実は小室哲哉さんも来てくださったんです。そういう意味では、まだ「No No Girls」は終わってないんですよ。
“経営者”としての大きな出会いも
今後のHANAの活動に関しては、国内はもちろんですが、国外でファンを獲得できるガールズグループだと思うので、早くリーチしたい気持ちがあります。どこでどう火がつくか分からないので、多角的に頑張りたいです。4月からBE:FIRSTのワールドツアーが始まりますが、ワールドツアーを回りながら、HANAのチャンスも複合的に探っていきたいです。
実はこうしたタイミングで自分のリリースも続くのですが、それもいい方向に転がるかもなと思っていて。というのは、特にアジアですが、僕自身のキャリアが興味を集めるようなんですよ。アイドル兼ラッパーとして活動し、会社を立ち上げて「THE FIRST」でボーイズグループを誕生させ、BMSGとして音楽業界で新しいことを次々に展開している経歴を見て、「会ってみたい」と思っていただけるようで。そんなありがたい話はないですし、できることはできるだけやりたい。本当に今が頑張りどころなので疲れている暇はないですよね。BE:FIRSTがもう2つくらい抜けるまでは、休まることはなさそうですね。
また、「No No Girls」をきっかけに、経営者SKY-HIにとって大きな出会いもあったと明かす。
ちゃんみなの所属事務所であるレインボーエンタテインメントの栗田(秀一)社長との出会いも、自分にとっては大きなものでした。僕はこれまで尊敬する経営者はいたけれども、経営者としてのロールモデルっていなかったんです。僕がBMSGでやろうとしていることは、今までの芸能・音楽のシステムに対してのカウンターだから、ロールモデル的な事務所社長って本来いないはずなんですが、ひょっとしたら栗田さんがそうなのかもと思うくらい。重鎮の方なのにとてもリベラルで、人柄も尊敬しています。
経営上の悩みを打ち明けたらいくつもアイデアをいただけるし、お話がすごく刺激的でした。恐らくちゃんみなも当初事務所を決める際に深い考えはなかったと思いますが、改めて栗田社長と今回お会いして、レインボーエンタテインメントだからこそちゃんみなは今のような活動ができていると感じたし、彼女の引きの強さも感じました。とにかく、栗田社長からは(まだご飯には1回しか行ったくらいですが)様々なことを学ばせていただき、僕にとっては大きな出会いになりました。
この記事は連載「SKY-HI「Be myself, for ourselves」」に収容されています。フォローすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。
『日本の音楽は世界への壁を越えられるのか マネジメントのはなし。2』 SKY-HI・著
社長・SKY-HIの挑戦をたどる“ドキュメント本”第2弾
急速に拡大するBMSGの歩みをリアルに記録
2020年9月、わずか数人でスタートしたBMSG。創業から4年でBE:FIRSTはドームアーティストに成長、2つ目のグループMAZZELもアリーナに進出し、各ソロアーティストも存在感を高めている。今やスタッフは約80人となり自社ビルを購入するなど、設立以来のビジョンを次々にかなえてきた。
本書は業容を拡大してきた2023~2024年のBMSGの歩みをリアルに記録した1冊だ。次の世代のアーティストとそれを支えるスタッフをいかに育成したのか。そして、会社が急速に大きくなるなか、組織をどうやって運営してきたのか。SKY-HIの経営者/リーダーとしての足跡には、ビジネスのヒントも数多く見つかるはずだ。
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