日本を滅ぼす研究腐敗――不正が不正でなくなるとき(30) 5章 絶対にあきらめない精神 3
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調査報告書は突っ込みどころがいくらでもあった。O教授の『奨学金が日本を滅ぼす』をめぐる盗用疑惑(告発1)の結論もまた奇妙だった。
「被告発者は山本太郎の国会答弁における「奨学金に関する意書」の執筆を行っていたが、その際に三宅氏の著作物を参考にしたことを認める一方、自身の書籍の執筆にあたっては告発者の著作物ではなく自身が執筆に関わった質問主意書を参考にしたと説明している。ただし、被告発者は参照した内容は独立行政法人日本学生支援機構により公表されている数字のみと説明しており、今回のヒアリングで判明した孫引き行為を盗用とみなすのは難しいと判断した」
そう書かれている。これを読んで、私はまず「質問主意書」の話にあきれた。債権回収会社の回収額などに関する記述が類似している問題(回収データ)に関して、著作権裁判のなかでO教授が言っていた例の詭弁のことだろう。
「回収データ」とは具体的にいえば次の一節だ。
まず私の記述。「日本の奨学金はこれでいいのか」第2章(三宅執筆、2013年)
2010年度はエム・ユー・フロンティア債権回収会社と日立キャピタル債権回収会社が延滞債権回収業務を受託。エム社が8938万円、日立が1億5240万円(同13億6037万8452円)を売り上げています。2012年度の実績は、エム社の売り上げ1億3471万円(同20億3927万9475円)、日立が1億7826万円(同21億9545万3081円)です。
次にO教授の記述。「奨学金が日本を滅ぼす」(大内執筆2017年)。
たとえば2012年度の債権回収業務を担当した日立キャピタル債権回収株式会社は21億9545万3081円を回収し、1億7826万円を手数料として受け取っています。
日立キャピタル債権回収株式会社が、「2012年度」に、21億9545万3081円を回収し手数料として1億7826万円を受け取ったという部分(以下、回収データという)が共通している。これらのデータは公表されていない。私が日本学生支援機構に直接取材をして得た回答を、集計したうえで記載した。この私の調査結果を、O教授はまるで自分が調べたように書いている。
文章がよく似ている点を措いても、このデータ流用だけでれっきとした「盗用」だ。文科省ガイドラインは「データ」を了解ないし適切な表示なく流用すること、と明記している。
盗用――他の研究者のアイディア、分析・解析方法、データ、研究結果、論文又 は用語を当該研究者の了解又は適切な表示なく流用すること。
なお、私の記述中「2012年度」とあるのは「2011年度」のまちがいで、O教授も「2012年度」と同じまちがいをしている。誤りと知らずに丸写しにした動かぬ証拠だ。
この丸写しをごまかすべく著作権訴訟で開陳したのが質問主意書説だ。前段でも触れたが、もう一度紹介しておこう。
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