令和3年(ワ)第23653号損害賠償請求事件

原告 福永活也

被告 高橋雄一郎

被告準備書面(1)

令和31116

東京地方裁判所民事第16部乙3A係 御中

 

被告     高 橋  雄 一 郎

 

 

上記事件について,被告は以下のとおり主張する。

 

第1 本件訴訟に至る経緯(関連事件の審理状況等の説明)

1 一連の損害賠償請求事件

原告(福永活也)は被告(高橋雄一郎)に対して,被告のツイートが原告の名誉権侵害又は名誉感情侵害になると主張して,以下の複数の損害賠償請求訴訟を提起した。

 

御庁令和3年(ワ)第6059号損害賠償請求事件

福永第1訴訟

御庁令和3年(ワ)第13983号損害賠償請求事件

福永第2訴訟

御庁令和3年(ワ)第18455号損害賠償請求事件

福永第3訴訟

御庁令和3年(ワ)第23653号損害賠償請求事件

本件訴訟

 

御庁令和3年(ワ)第6059号損害賠償請求事件(以下,「福永第1訴訟」という。)は,原告が被告に対して提起した一連の損害賠償請求事件の最初のものである。令和3年3月11日付の訴状(乙1)では1つの被告ツイート(「キチガイ」という表現を含む。)が原告に対する名誉感情侵害だと主張した。被告は原告の勘違いを指摘し,対象の被告ツイートは原告に言及したものではないと同定可能性を争った。原告は被告にこのように反論されるやいなや,同年4月22日付の訴えの変更申立書(乙2)で対象ツイートを3つに増やした。被告がいずれの追加ツイートにも違法性がない旨反論すると,原告はさらに,同年5月14日付の訴えの変更申立書(乙3)で対象ツイート・リツイートを79(乙3の別紙には80ツイートあるように見えるが1つが重複である。)に増やした。同年5月17日の第一回口頭弁論期日において,原告は,裁判長より「明らかに違法性が無いものは外してほしい」(請求に理由がないことが明らかな訴訟はすべきではない,という意味である。)と言われた。原告は,同年5月24日付の訴えの変更申立書(乙4)で対象を少し減らして32ツイート・リツイートについて名誉侵害又は名誉感情侵害を主張するに至った。被告のツイート・リツイートに違法なものは何一つ存在せず,令和3年10月25日の判決(乙5)で原告の請求は全部棄却された。

一連の損害賠償請求事件の2つ目は御庁令和3年(ワ)第13983号損害賠償請求事件(以下,「福永第2訴訟」という。)である。原告は令和3年6月1日に被告の1つのツイートが原告の名誉権を侵害すると主張して訴えを提起した(乙6)。令和3年10月1日の判決(乙7)で原告の請求は全部棄却された。

一連の損害賠償請求事件の3つ目は御庁令和3年(ワ)第18455号損害賠償請求事件(以下,「福永第3訴訟」という。)である。原告は令和3年7月15日に被告の8つのツイート・リツイートが原告の名誉権を侵害し原告の著作権を侵害するサイトを「推奨」していると主張して訴えを提起した(乙8)。原告は令和3年8月27日に訴えの変更申立(乙9)を行い,請求原因のツイートを2つ追加するとともに,趣旨は不明であるが285個の被告ツイート・リツイート(原告と無関係なものばかりである。)を別紙に添付した。この事件は,令和4年1月18日に判決の言渡が予定されている。

一連の損害賠償請求事件の4つ目が本件訴訟である。

これら一連の訴訟は,被告から見れば,誤解を契機に突然訴訟を提起され,次々に請求原因を追加され,繰り返し別訴を提起され,その結果,いたずらに応訴負担だけを課されていると感じざるを得ないものである。

 

2 本件投稿26と同一投稿に関する原告による訴外都行志に対する損害賠償請求事件とこれが不当訴訟であることを理由とした反訴事件

一連の被告(高橋雄一郎)に対する損害賠償請求事件とは別に,原告は,複数の他の弁護士を相手に,名誉権侵害を主張して損害賠償請求訴訟を行っている。現時点で名誉権侵害を主張で原告の請求が認容された事件は1つも存在しない。さらに,12人の無関係な弁護士を相手に訴訟告知兼提訴予告通知(乙10)を行っている。

この訴訟告知の本訴事件(御庁令和3年(ワ)第1779号損害賠償請求事件)の被告は訴外都行志であり,同人は被告のツイート(本件訴訟における本件投稿26である)をリツイートしたところ,これが原告の名誉権を侵害するとして,原告は令和3年9月1日付けで訴えの追加的変更をした(乙11)。

この訴えの追加的変更に対する認否反論は同事件の2021年(令和3年)10月25日付け被告準備書面(3)(乙12)記載のとおりであるところ,争点は本件訴訟とほぼ同一である。本件投稿26が原告の名誉権を侵害するものではないことは明らかである。

訴外都行志は2021年(令和3年)10月25日付け反訴状(乙13)のとおり,原告による本件投稿26のリツイートにかかる訴えの追加的変更は不当訴訟であるとして原告に対して損害賠償請求訴訟を提起した。

 

3 原告の一連の損害賠償請求事件に関する原告の発言

訴外都行志の反訴状(乙13)の6~7頁に原告の過去の発言が列挙されている。

原告は,原告が多数の訴訟を提起していることについて以下のとおり述べている。

「気に入らない奴らに合法的に攻撃できる楽しさ」

「自然な報復感情をもってやり返すだけ」

「不快に感じてもらい,また法的手続きもできることをする」

「数打ってあたればそれで良いと思うんだよな」

「昔から敗訴しようが提訴は原則合法」

「2-3割くらいは勝てるかもなーって感じなら,試してみれば良いと思う。僕が今やってるやつも,そんな感じのやつがいくつもある。」(以上,乙13,6~7頁参照)

原告はこの一連の損害賠償請求事件を上記発言のような気持ちで行っているのである。被告は,なぜ原告から「気に入らない奴」だと思われたのか全く心当たりが無い。

 

4 「365」について原告が「炎上」を望んでいたこと及び本件訴訟の提起はそれ自体理解し難いこと

(1)「365」サービスの提供はすくなくとも法的にはグレーであること

原告が代表取締役を務める株式会社365(甲5の1)が提供する「365」サービスの提供が富くじ販売罪か賭博場開張罪にあたることは後述するが,すくなくとも,「365」のサービス提供は法的にはグレー(違法性がないとまでは断言できないこと。)であることは疑いが無い。

原告も「グレーゾーン解消制度」の利用を検討していた(訴状10頁6~23行)し,原告が出演する令和2年10月22日付けユーチューブ動画(乙14の1,その反訳書が乙14の2)で,「365は元々1年前から企画していて,で僕がせっかく弁護士の名前も出してやるんで、極力グレーな事がしたいなと思って。」(乙14の2,発言2)と述べていた。

 

(2)原告が「365」サービスの「炎上」を望んでいたこと

原告は,「365」サービスがインターネット上で「炎上」すること(騒ぎになり批判されること。)を望んでいた。この事実は,上記ユーチューブ動画で以下の発言をしていることからも理解される。

「グレーな事はいっぱい評価があって,新しいことは全部グレーなわけよ。 過去に前例がない事は全部グレーっていうわけ 。で,世の中人がそれに反論して、これ大丈夫なのかと ,わーと騒ぐわけよ。でも黒とグレーは全然違うんで。だから極力騒ぐ,騒いでくれば結局無料広告になるわけで,手間かけずに広告できるので,スタートアップとかベンチャーからするとありがたい話で。それをしようと思って,まあ最初は…,」(乙14の2,発言4)

「世の中の人がパッと見て賭博だとかわーーと騒ぐ。」(乙14の2,発言12)

「小資本で,まあね,数百万で作れるサービスで,僕の弁護士っていう名前でやって,もしかしてそれで炎上させてくれれば広まるかも知れない。まあ一発打ち上げ花火みたいなのができるのかなってのが僕の。」(乙14の2,発言43)

「ちなみにね,一応これは大騒ぎになる,大騒ぎかどうかはわかんないんだけど騒ぎになる事は予測済みで,それが広告になるっていうのが理解でもあるんで,僕がワタナベ(エンターテインメント)を辞めさせて下さいと言ったのも,これが1つの原因なの。」(乙14の2,発言83)

「この炎上というのは弁護士名義というのをいわば炎上広告に使ってやるサービスっていうのを思いついて,その時に一応ワタナベも巻き添えをくらって,だからその,批判されたら迷惑かけるなと思ったので辞めさせてくださいと言って辞めた。」(乙14の2,発言85)

以上のとおり,原告は「365」サービスの提供が賭博等の犯罪を構成するのではないかと「炎上」して広告になることを望んでいた。

にもかかわらず,原告は「原告が現に賭博罪を行っている人物である」と事実摘示をされたと主張し,原告の社会的評価が低下したとして本件訴訟を提起している。これは理解し難い。

 

 

第2 本件投稿20~29は原告の社会的評価を低下させず違法性も存在しないこと

 1 はじめに(判断基準)

福永第1訴訟にかかる東京地判令和3年10月25日(令和3年(ワ)第6059号損害賠償請求事件)(乙5)は,ツイッターのようなインターネットサイトへの投稿の違法性を判断する基準を以下のとおり明示している。

「(1)ツイッターのようなインターネットサイトヘの投稿の意味内容がどのようなものであるか,その意味内容が他人の社会的評価を低下させるものであるかどうかは,当該投稿についての一般の閲覧者の普通の注意と閲覧の仕方とを基準として判断すべきである。投稿の対象者の同定可能性の有無についても,この基準に従い判断するのが相当と解される。」

「(2)公共の利害に関する事項について自由に批判,論評を行うことは,もとより表現の自由の行使として尊重されるべきものであり,この批判等により対象者の社会的評価が低下することがあっても,人身攻撃に及ぶなど論評としての域を逸脱したものでない限り,名誉侵害の不法行為の違法性を欠くものというべきである。」(以上,乙5・4頁3~12行)

「何らのコメントも付けずに元のツイートをそのまま引用するリツイートは,前記判断基準によれば,原則として,リツイートの投稿者が元のツイートの内容に賛同の意思を表す表現行為と解するのが相当である。ただし,前後のツイートの投稿内容から投稿者が賛同以外の意図をもってリツイートしたことを読み取り得るなどの特段の事情が認められる場合はこの限りでない。」(以上,乙5・6頁14~19行)

この判断基準は妥当だと考えられるので,以下,この判断基準に沿って本件投稿20~39を検討する。

 

 2 本件投稿20について

本件投稿20は「福永第3訴訟では(1)「開示請求が飛んでくる魔法の言葉」のツイのRT、(2)オードリー氏の懲戒請求ツイx3のRT、(3)相談者の住所氏名丸出しで証拠提出し懲戒請求された事件へのコメントx2、(4)高橋は直送書面受け取ってないツイ、(5)違法なねこぴさんツールを推奨した、という違法を指摘されてます。」というものである(甲3の20)。

この投稿は,福永第3訴訟の対象となっている被告ツイートを淡々と紹介するものであり,当該投稿についての一般の閲覧者の普通の注意と閲覧の仕方とを基準として判断すれば,その意味内容が原告の社会的評価を低下させるものであるとは言い難い。

 

 3 本件投稿21について

本件投稿21は「【情報提供のお願い】原告は「魔法の言葉」の「賭博罪」は「原告が賭博罪を行う人物である」という事実摘示だと主張して、否認すれば足りるんですが、せっかくなので真実性立証をしたく、アプリ365がどういうものかをご存知の方、教えていただけますか。アプリのスクショとか。」というものである。

この投稿の前段の「原告は「魔法の言葉」の「賭博罪」は「原告が賭博罪を行う人物である」という事実摘示だと主張して」いるという部分は福永第3訴訟の訴状に記載された原告主張の概要であり,この投稿の後段の「せっかくなので真実性立証をしたく、アプリ365がどういうものかをご存知の方、教えていただけますか。アプリのスクショとか。」という部分は,被告が被告のフォロワーに対して「365」に関する情報提供を依頼するものである。いずれも,当該投稿についての一般の閲覧者の普通の注意と閲覧の仕方とを基準として判断すれば,その意味内容が他人の社会的評価を低下させるものであるとは言い難い。

よって,本件投稿21は原告の社会的評価を低下させるものではない。

 

 4 本件投稿22,23及び24について

本件投稿22(リツイート,甲3の22の1上段)の元ツイートは「i1ygUyAP」というアカウント( @OowtAp )によるツイートであり,「福永活也弁護士が代表で削除された365appのサイトhttps://365app.jp。調べたらサイトのhtmlソースがGitHubに置いてあるわ。」というツイートとともに「365よくある質問」と題する画像(甲5の4と同じである。)を含むものである。

本件投稿23(リツイート,甲3の23の1中段)の元ツイートも「i1ygUyAP」によるツイートであり,「長々と書いてあるが、本当に法的に問題が無いと確信しているならサイトを削除する必要は無いよね。365は法的に問題ないのですか?」というツイートとともに,「365は法的に問題ないのですか」と題する画像(乙15の1乃至3)を含むものである。

本件投稿24(リツイート)の元ツイートも「i1ygUyAP」によるツイートであり,「特商法表記と運営会社。」というツイートとともに,「特定商取引法に基づく表記」と題する画像(乙16の1)及び「運営会社」と題する画像(乙16の2)を含むものである。

本件投稿22~24の元ツイートは,いずれも,本件投稿21による被告の求めに応じて被告のフォロワーから教示を受けたツイートである。その内容は,いずれも,「365」のサイト(原告主張によれば開発途中のテストサイト)に掲載されていた情報(「365よくある質問」,「365は法的に問題ないのですか」,「特定商取引法に基づく表記」及び「運営会社」)を淡々と紹介するものである。

なお,投稿23のみ,「長々と書いてあるが、本当に法的に問題が無いと確信しているならサイトを削除する必要は無いよね。365は法的に問題ないのですか?」という論評が含まれているが,前述したとおり,「365」は法的には「グレー」(違法だとされる可能性がないわけではない)であった。そうであれば,「365は法的に問題ないのですか?」と適法性に疑問を呈する論評は正当である。

つまり,第2の1で述べた判断基準によれば,本件投稿22,23及び24のいずれの元ツイートも,一般の閲覧者の普通の注意と閲覧の仕方とを基準として判断すれば,その意味内容が他人の社会的評価を低下させるものであるとは言い難い。

仮に,本件投稿23が「365」の適法性に疑問を呈したことで原告の社会的評価が低下したとしても,第1の4で述べたとおりこれはまさに原告が望んだことであるし,第2の1で引用した基準によれば,「人身攻撃に及ぶなど論評としての域を逸脱したものでない」ことは明らかであり,「名誉侵害の不法行為の違法性を欠くものというべきである」。

 

 5 本件投稿25について

本件投稿25は「これでいけそう。ありがとうございました。」というものである(甲3の25)。

本件投稿25は,本件投稿21で被告が被告のフォロワーに対して「365」に関する情報提供を依頼し多数の情報が寄せられたことに対する感謝の意を表明しているだけである。

投稿24の元ツイート添付の「特定商取引法に基づく表示」にかかる画像(乙16の1)と「運営会社」にかかる画像(乙16の1)で原告が代表取締役を務める株式会社365で「365」サービスを提供していたことが判明したし,投稿23の元ツイート添付の「365は法的に問題ないのですか?」という画像(乙15の1及び2)で「365」サービスの法的問題が明らかになった。このように被告による福永第3訴訟訴の訟訟追行に必要な証拠が十分に集まったという意味で,被告は「これでいけそう」とツイートした。

本件投稿25は一般の閲覧者の普通の注意と閲覧の仕方とを基準として判断すれば,その意味内容が他人の社会的評価を低下させるものであるとは言い難い。

この点,原告は「これでいけそう」は「原告が賭博罪を行う人物である」という事実摘示は真実であることを改めて結論づけていると主張する(訴状6頁16~19行参照)が,「これでいけそう」という表現には「原告が賭博罪を行う人物である」という事実摘示は含まれていないので原告の主張は誤りである。

 

 6 本件投稿26について

(1)本件投稿26は原告または原告が代表取締役を務める株式会社365による「365」の説明文を正確にまとめたものであり原告の社会的評価を低下させるものではないこと

本件投稿26は「福永先生の会社の「365」は、まず参加者全員がそれぞれ100円を払い、ランダムに選ばれた一人に合計額の50%を分配し運営会社が50%をとるシステムのよう。運営会社が寄付をうけ、当選者に贈与するという別個独立した契約なので賭博罪に該当しないという主張らしいが・・・。」というものである。

この投稿は,原告が代表取締役を務める株式会社365による「365は法的に問題ないのですか?」という説明(乙15の1)の要約である。

乙15の1には以下の記載がある。

「まず、365は、毎日不特定多数の参加者から運営会社に対して100円ずつの寄付(贈与)を行うものであり・・・運営会社への贈与と、運営会社から参加者への贈与は、それぞれ別個独立した贈与契約が起きているだけと考えています。そのため、税務上も、運営会社が参加者から受け取る金銭の総額を受贈益として、また、運営会社が当選者に対して支払う金額については寄附金として処理した上で法人税を納付する予定です。そのため、参加者から集めた総額のうち、法人の実効税率30%程度について法人税として納税予定であり、さらに10%程度をランニングコスト、10%程度を利益と想定し、当面、還元率を50%と設定しています。」

このように,本件投稿26は,原告又は原告が代表取締役を務める株式会社365が作成しサイトに掲示していた「365」サービスの法的構成にかかる説明を正確に記述したものである。本件投稿26は一般の閲覧者の普通の注意と閲覧の仕方とを基準として判断すれば,その意味内容が他人の社会的評価を低下させるものであるとは言い難い。

 

(2)「賭博罪に該当しないという主張らしいが・・・。」という表現態様によっても原告主張の事実摘示は読みとれないし原告の社会的評価を低下させるものでもないこと

この点原告は「賭博罪に該当しないという主張らしいが・・・。」という表現態様からすれば「被告は原告の見解を不当だと考え,賭博罪に該当することを念押ししていると理解させる」と主張する(訴状6頁下5行~下3行)。

しかしながら,被告が乙15の1の説明に納得していないことと,賭博罪に該当すると断定することとは全く別である。

一般の閲覧者の普通の注意と閲覧の仕方とを基準として判断すれば,原告又は原告が代表取締役を務める株式会社365の法的見解に疑問を呈されたからといって原告の社会的評価が低下するとは考えがたい。

仮に,原告又は原告が代表取締役を務める株式会社365の法的見解に疑問を呈されたことで僅かながらでも原告の社会的評価が低下したとしても,第1の4で述べたとおり,これはまさに原告が望んだことである。つまり,原告はこの程度の批判は甘受すべきである。

 

(3)第2の1で引用した判断基準によれば違法性を欠くこと(予備的主張1)

本件投稿26は,「賭博罪に該当しないという主張らしいが・・・。」という疑問を呈するのみであり,第2の1で引用した基準によれば,「人身攻撃に及ぶなど論評としての域を逸脱したものでない」ことは明らかであり,「名誉侵害の不法行為の違法性を欠くものというべきである」。

 

(4)違法阻却事由が存在すること(予備的主張2)

仮に,本件投稿26が原告の主張どおり「被告は原告の見解を不当だと考え,賭博罪に該当することを念押ししていると理解させる」ものであるとしても,以下のとおり違法阻却事由が存在する。

 

ア 本件投稿26は公共性及び公益性があること

まず,弁護士である原告が運営する会社が提供し又は提供する予定であるシステムは刑罰法規に触れる違法なものであるか否かは社会の正当な関心事であるといえるから,公共性が認められる。これは,テストサイトであるかどうか(実際にサービスを提供したかどうか)にはかかわらない。

また,仮に違法なシステムであるとしたら,それに対する注意喚起を促す内容には公益性があるといえる。

 

イ 本件投稿26は重要部分が真実であること

本件投稿26は原告又は原告が代表取締役を務める株式会社365が作成しサイトに掲示していた「365」サービスの法的構成にかかる説明を正確に記述したものである。したがって,その内容は真実である。

「賭博罪に該当しないという主張らしいが・・・。」という疑問を呈する部分についてみても,「365」サービスは富くじの罪にあたる可能性が十分にある。

365が提供するサービスは,「毎日,不特定多数の参加者から運営会社に対して100円ずつ寄付(贈与)を受ける一方,毎日,1人を選抜して,運営会社から当該選抜者に対して,「寄付」(贈与)を行うもの」であると説明されている(乙15の1)。

富くじとは,あらかじめ番号札を発売して金銭その他の財物を集め,その後抽選その他の偶然的方法によって,購買者の間に不平等な利益を分配することをいうとされている(西田典之著・橋爪隆補訂「刑法各論」第7版(弘文堂・2018)429頁、乙17)。

「365」サービスは,金銭その他の財物を集め,その後抽選その他の偶然的方法によって当選者を決め,購買者の間に不平等な利益を分配しているのであるから,まさに富くじにあたり,富くじ罪(刑法187条1項)を構成する可能性が十分にあるものである。

この点について,原告は大判大3年11月17日録20輯2139頁を引用してその適法性を縷々述べる(訴状10頁下2行~12頁末行)が,「365」の説明文(乙15の1)でも記載されているとおり,上記大判は非常に古い判例であり,現在でも上記見解がどこまで維持されているか疑わしい上,富くじの意義について,「当事者の一方(発売者)が番号札を発売して予め金銭を集め,その後,抽選その他の方法に基き,他方の当事者(購買者)に不平等な金額を分配することをいうとする見解」(団藤など。乙18・203頁)など,行為として把握する見解もある。この見解によれば,「365」サービスが富くじの罪にあたる可能性が十分にある。

また,当選者を決定し,当選者に金銭を支払うために,参加者に何らかの識別情報を与える必要があり,これが実質的に電磁的記録によるくじ札と同視される可能性も十分あるから,くじ札を発売していると十分言いうるものである。

そもそも,賭博罪及び富くじの罪の処罰根拠について,判例は,「勤労その他正当な原因に因るのではなく,単なる偶然の事情に因り財物の獲得を儀倖せんと相争うがごときは,国民をして怠惰浪費の弊風を生ぜしめ,健康で文化的な社会の基礎を成す勤労の美風を害する」点に求めており(最大判昭和25年11月22日刑集4巻11号2380頁),「365」のシステムは,まさに「単なる偶然の事情に因り」財物を取得することに他ならない。

また,「365」が説明する「不特定多数の参加者から運営会社に対して100円ずつ寄付(贈与)を受ける一方,毎日,1人を選抜して,運営会社から当該選抜者に対して,「寄付」(贈与)を行うもの」については,参加者は,運営会社に対して,当選することを期待してお金を支払うのであって,当選とは無関係にお金を支払うものではないから,「寄付(贈与)」などと言うことは到底できない。このような主張により処罰を免れることができるのであれば,脱法行為が横行することになりかねず,勤労の美風を害することになる。

加えて,原告が代表取締役を務める株式会社365が「365」サービスを提供していないのは,やはり原告自身も当該サービスは違法性の疑いが拭えないと考えているからであろう。

したがって,「365」サービスが富くじ罪にあたる可能性は十分にあるといえる。

なお,本件投稿26では,賭博について触れられており,富くじについては触れられていないものの,賭博も富くじも,刑法典において同じ「風俗に対する罪」の中に規定されており,上記のとおり,処罰根拠も同じくするものであることに加え,「365」の説明文においても,賭博と富くじの該当性についてともに論じていることから,賭博か富くじかに大差はなく,あくまでも原告が代表取締役を務めている株式会社365が刑罰法規に触れる可能性がある違法なサービスを提供する予定であったかどうかが問題の核心である。

そして,「365」サービスは,上記のとおり,富くじの罪にあたる可能性が十分にあることから,本件投稿26の重要な部分は真実であるといえる。

したがって,「賭博罪に該当しないという主張らしいが・・・。」という疑問を呈する部分で原告の社会的評価を低下したと仮定しても,本件投稿26の違法性は阻却される。

 

 7 本件投稿27について

本件投稿27の元ツイートは「まりめっこ」( @mrmk0120 )による「365の参加画面のキャプチャ送ります。ちなみに365は一般的にいうスマホアプリではなく、ウェブ上でのみ動作するサービスでした。」というツイートである(甲3の27)。このツイートは,本件投稿21による被告の求めに応じて被告のフォロワーであった「まりめっこ」が行ったものである。

本件投稿27のいずれの元ツイートを一般の閲覧者の普通の注意と閲覧の仕方とを基準として判断すれば,その意味内容が他人の社会的評価を低下させるものであるとは言い難い。

 

 8 本件投稿28について

(1)本件投稿28の内容

本件投稿28は「こんなことしていながら,あのツイートのRTで「原告が賭博罪を行う人物である」と社会的評価が低下して傷ついたとご主張されるんですか・・・。」というものである(甲3の28)。

「RT」とあるのはリツイートのことである。

「あのツイート」とは,令和3年7月12日付けの「この指止めないbot」アカウント( @konoyubitomenai )による「【開示請求が飛んでくる魔法の言葉】・・(中略)・・・福永活也「ガムテープ」「賭博罪」「パパ活也」・・・」というツイート(以下「この指止めないbotツイート」という。)(甲3の4)である。

被告はこの指止めないbotツイートをリツイートしたところ,令和3年7月15日,このリツイートが原告の名誉権侵害であるとして,原告は被告を相手に訴えを提起した。これが福永第3訴訟(御庁令和3年(ワ)第18455号損害賠償請求事件)である(乙8)。

この指止めないbotツイートは原告(福永活也)について「ガムテープ」,「賭博罪」,「パパ活也」という表現を用いて言及すると,名誉感情侵害や名誉権侵害を理由に発信者情報開示請求がなされる,と読める(それ以外には読めない。)。原告も「原告「福永活也」に関して,列挙した言葉を発すると開示請求,すなわち発信者情報開示請求を受けるとの意味に理解できる」と述べている(乙8・3頁下2行~4頁1行)。

しかしながら,原告は,上記訴状中で,この解釈を超えて理解に苦しむ主張を展開した。

原告は,この指止めないbotツイートにおける「賭博罪」は「原告が賭博罪を犯す人物であるとの解釈をさせる具体的事実の摘示であるといえる。・・・原告が,・・・賭博罪という犯罪を行う人物であるとの評価をもたらすものであり,原告の社会的評価を低下させ,原告の名誉権を侵害する」と主張した(乙8・4頁6~11行)。

しかしながら,この指止めないbotツイートを繰り返しいくら読んでも,原告が賭博罪を犯すという趣旨には理解できない。

本件投稿28の「あのツイートのRTで「原告が賭博罪を行う人物である」と社会的評価が低下して傷ついたとご主張されるんですか・・・。」は,乙8における原告の主張に言及したものである。

本件投稿28冒頭の「こんなことしていながら」の「こんなこと」とは「365は法的に問題ないのですか?」という説明文(乙15の1~3,その要約が本件投稿26である。)を,後に削除されたとはいえ,いったんは公開したことを意味している。「365」は結局のところサービス提供までには至っていないが,原告等は「365」サービスを提供するためのシステム開発に着手し,それが賭博罪に該当しないことをわざわざ説明する説明文まで作成して公開した。原告は,こんなことをしていながら,「原告が賭博罪を行う人物である」と言われて社会的評価が低下して傷ついたと福永第3訴訟で主張した。被告は原告によるこのような一貫性の無い態度について批判的に言及したのである。

 

(2)本件投稿28に「原告が賭博罪を行う人物である」とか「原告が現に賭博罪を行っている」という事実摘示は含まれていないこと

本件投稿28に具体的な事実摘示が明確に含まれているとは言い難い。

せいぜい,本件投稿23と併せて読んだ上で,①「365は法的に問題ないのですか?」という説明文(乙15の1~3,その要約が本件投稿26である。)を原告が代表取締役を務める株式会社365が公開したという事実摘示(「こんなことをしていながら」)と,本件投稿20及び21と併せて読んだ上で,②福永第3訴訟において,原告は,この指止めないbotツイートにおける「賭博罪」という表現をもって「原告が賭博罪を行う人物である」という事実摘示を含むという主張をした(それで慰謝料を請求している。)という事実摘示をかろうじて読み込むことができるにすぎない。

当然のことながら,原告が主張するような「原告が賭博罪を行う人物であることは真実であると重ねて公言するもの」(訴状7頁6~7行)でないことは疑いがない。

さらに,原告は本件投稿28について「原告が現に賭博罪を行っているとの表現になっている」(訴状7頁8~9行),「サービスを実際に行っているという事実摘示が認められる」(訴状8頁8行),と主張するが,本件投稿から原告が実際に賭博罪を行っているとは到底読めない。そもそも「365」サービスが提供されなかったことは周知の事実である(乙14の2,発言45,55参照)し,本当に「365」が提供されたら大問題になっていたはずであるし,本件投稿22(リツイート,甲3の22の1上段)でも「福永活也弁護士が代表で削除された365appのサイト・・・。」とあり「削除された」ことが明示されているし,本件投稿23(リツイート,甲3の23の1中段)でも「・・・サイトを削除する必要は無いよね。・・・」とあり「サイトを削除」したことが明示されている。本件投稿28に接した者が「原告が現に賭博罪を行っている」「サービスを実際に行っている」と理解する可能性はゼロである。

 

(3)本件投稿28は原告の社会的評価を低下させるものでもないこと

本件投稿28に含まれる事実摘示は,せいぜい,①「365は法的に問題ないのですか?」という説明文(乙15の1~3,その要約が本件投稿26である。)を原告が代表取締役を務める株式会社365が公開したということと,②福永第3訴訟において,原告は,この指止めないbotツイートにおける「賭博罪」という表現をもって「原告が賭博罪を行う人物である」という事実摘示を含むという主張をした(それで慰謝料を請求している。)ということだけである。

そして,一般の閲覧者の普通の注意と閲覧の仕方とを基準として判断すれば,説明文の内容には疑問は残るものの,①の事実摘示で原告の社会的評価が低下するはずはないし,訴訟で当事者がどのような主張をしたかによって当事者の社会的評価が低下することはありえないから②の事実摘示で原告の社会的評価が低下するとは考えがたい。

仮に,以上の①②の各事実摘示又は原告主張の事実摘示(「原告が賭博罪を行う人物である」が含まれているとしても)を前提にして原告の社会的評価が低下したとしても,第1の4で述べたとおり,これはまさに原告が望んだことである。つまり,原告はこの程度の批判に伴う社会的評価の低下は甘受すべきである。

 

(4)第2の1で引用した判断基準によれば違法性を欠くこと(予備的主張1)

本件投稿28は,「こんなことしていながら,あのツイートのRTで「原告が賭博罪を行う人物である」と社会的評価が低下して傷ついたとご主張されるんですか・・・。」という疑問を呈するのみであり,第2の1で引用した基準によれば,「人身攻撃に及ぶなど論評としての域を逸脱したものでない」ことは明らかであり,「名誉侵害の不法行為の違法性を欠くものというべきである」。

 

(5)違法阻却事由が存在すること(予備的主張2)

仮に,本件投稿26が原告の主張どおり「原告が賭博罪を行う人物である」という事実摘示を含むものであるとしても,以下のとおり違法阻却事由が存在する。

 

ア 本件投稿28は公共性及び公益性があること

第2の6(4)アで述べたとおりである。

 

イ 本件投稿28は重要部分が真実であること

本件投稿28を「原告が賭博罪を行う人物である」という事実摘示であると理解するとしても,第2の6(4)イで述べたとおり「365」サービスは富くじの罪にあたる可能性が十分にあり,本件投稿28の重要な部分は真実であるといえる。

したがって,原告の解釈を前提にしても,本件投稿28の違法性は阻却される。

 

 9 本件投稿29について

本件投稿29の元ツイートは「まりめっこ」( @mrmk0120 )による「福永弁護士先生が365を「DMM億万長者」と同じスキームだとして説明するシーン。5:44~ 9:45~ 16:10~」という説明とともに,動画(乙14の1,その反訳書が乙14の2である。)へのリンクが含まれるツイートである(甲3の29)。この元ツイートも,本件投稿21による被告の求めに応じて被告のフォロワーであった「まりめっこ」が行ったものである。

第2の1で述べた判断基準により,本件投稿27のいずれの元ツイートを一般の閲覧者の普通の注意と閲覧の仕方とを基準として判断すれば,その意味内容が他人の社会的評価を低下させるものであるとは言い難い。

 

 10 本件投稿20~29を一体として見た場合について

原告は,「本件投稿20ないし29を一体として解釈,評価すると,被告は,様々な情報収集をした上,さらにこれらを紹介しつつ,改めて「原告が現に賭博罪を行っている人物である」との具体的な事実摘示を行っている認められる」(訴状7頁10~13)と主張している。

しかしながら,本件投稿20ないし29はそれぞれが独立したツイートであり,独立してリツイートされうる投稿なので一体として解釈されることはない。各ツイートは独立して解釈,評価の対象になるにすぎない。

いずれのツイートにも「原告が現に賭博罪を行っている人物である」との具体的な事実摘示は含まれていないことから,仮に一体として解釈,評価するとしても,どこにも含まれていない事実摘示が突然湧いて出るものではない。ゼロはいくら足してもゼロのままである。

原告は「予備的主張」と称して,「システムを用いたサービスを実際に行っている」という事実摘示があると主張する(訴状7頁下7行~8頁10行)が,このような事実摘示が存在しないことは第2の8(2)で述べたとおりである。

以上