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自治体システム標準化~コスト増の本質~

 いよいよ数年前から誰もが予想し予想通りの結果になりつつある自治体システム標準化のコスト増の問題。最近、共闘プラットフォームなる組織から衝撃的なnoteがリリースされた。

 これまで長い間この国の施策に汗水を流してきた事業者を自治体システムの知識が低いワーキングメンバーがあたかもコスト増は事業者の責任の如く失礼極まりない会議が行われ公開処刑に近い形の議事要旨が公開された。界隈にいる人ならどの事業者かは想像に難くないだろう。

 99%政治マターに踊らされた国の失敗である。無論これまでの自治体システムにおいて事業者側にもやるべきことがあったことは認める。しかし、今回の失敗は国の責任だ。これは曲げようもない事実。こちらは何度も軌道修正を呼び掛けたが応答することはなかった。いや、失敗が明らかになってから応答したものもある。時すでに遅し。処方箋は病気発覚後すぐに投薬するのがベストだ。お迎えまじかの患者に投与しても意味はないのである。

コストの増の最大の要因は無謀な期限

 コスト増の最大の要因は無謀な期限これに尽きる。

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https://www.soumu.go.jp/main_content/000817081.pdf

 この図を私は初版から見ている。幾度となく変わったが唯一変わらない点がある。それは2025年度(令和7年度)末のケツだ。国が決めるべき様々な仕様(業務仕様、文字、連携要件など)がことごとく遅れた。にも拘わらずケツだけは変わらなかった。いや、仮に国がちゃんと期限をまもったとでである。ようは、国はベンダーロックを嫌ったが、制度設計から奇しくも強力なベンダーロックをさせてしまったのだ。

①そんな要員どこにいる?

 基幹システムを刷新すると言うのは、小並感だが「ものすごく大変」なのだ。基幹システムは止めてはならない。自治体なら土日祝日が作業可能な日だろう。銀行では、GWなどにATMを止めるCMを見たことがあるだろう。それでも銀行は結構失敗している。それくらい大変なことなのだ。それを、自治体システムの市場全てがこの短期間に切り替えるなんて到底無理な話だ。それに対応できる要員なんてどの事業者にもいない。いるわけがない。自分のユーザーでさえできるか微妙なのに、他社ユーザーなんて面倒見れるわけがない。いくら金を積まれてもできないものはできないのだ。銀行を考えても信金除けば大手と地銀入れてもも100程度。自治体は1741だ。

②ベンダーロックこそコスト低減につながる!

 国は我々事業者に悪意を込めてベンダーロックと言って切り捨てる。ちょっと待ってほしい。裏金や賄賂を渡し随意契約で延々とやらせてもらっているならともかく、日々お客様である自治体のために昼夜たがわず努力し信頼を得、競争入札で勝ち取った結果ではないだろうか?綺麗事に聞こえたかもしれない。しかし、本質は安定した長期契約(業界的には5年単位が一般的か)の顧客がいて、要望対応と法改正対応できる従業員で細々と回している。だから、決して高くはない。これが、あまりにも流動的な業界であればそれに対応する人員を抱える必要があるため自ずとコスト増につながる。ベンダーロックの全部が良いとは言えないが、メリットも多い。良いベンダーロックだったと言う評価はできないか?

③完全な売り手市場へ

 ①②の通り、完全に売り手市場になってしまった。既存顧客でさえ、わがままを言うなら他へどうぞと脅せる。他がいないのが明らかだからだ。とは言え、弊社も各社もおそらく適正価格でお出ししていると思う。長きお付き合いの自治体。懐事情もよくわかっている。そして、地場ベンダーなら、おらが街を困らせてはなるまいと思うだろう。事業者として食べていけるラインの価格でお出ししているはずだ。

ガバクラが第2の要因

 ガバクラの恩恵を受けるのは、一部の大都市・汎用機利用自治体・大規模自前DC自治体くらいで一握りと推察している。

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https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/cadc83bd-9e0b-4c7c-883d-f09eeb314ecc/78a50e63/20240906_policies_local_governments_government-cloud-interim-report_outline_01.pdf

①データセンター(DC)の売り上げが外資CSPに奪われた

 いろいろな契約形態はあろうが、おそらくコスト効率の良かったパターンが、ASP+CSPだろう。アプリケーション利用料とデータセンター利用料の両方で利益がでればよい計算だ。ところが、ガバクラでCSP分の利益が奪われた。ASPだけで利益を得る必要がでる。間違っても、CSPの利益を上乗せするのではなく、CSP分の利益で割り引いていた部分のディスカウントが効かなくなった。よって、コスト増に見えるだけ。我々ASP事業者の利益分と、新たに外資CSP分の利益が必要となってしまった。コストが上がるのは火を見るよりも明らかだ。あとは、単純にガバクラまでの専用線費用が純増。例えば電力系のキャリアだとエリア内は安いが外に出ると高くなる。東京リージョンなので近郊自治体はまだ安いだろうが、それ以外の地域は高い専用線が必要となった。これはコスト純増

②○○運用管理補助者のオンパレードでコスト増

 これは純増に近い。これまで、ASP+CSP契約の中で組み込まれていたサービスがご丁寧にデジタル庁が「○○運用管理補助者」と多数の冠を付けてくれた。補助者の仕様作りを私は行ったが当然、ガバクラで増えたタスクもあるが多くはいままでサービスでやっていた内容だ。冠がある以上、値付けは必要なのでありがたく”適正価格”をいただく。私の中で積算した上限はCSP分の利益だった範囲内。これは、コスト増の要因だろう。

③ガバクラ(パブリッククラウド)は普通に高い

 単純な感想として言うほど安くはないしむしろ高い。無論ハードウェアなどグロスで比較する必要はあるが、普通に高い。インフラチームに計算してもらったが、EC2にDB突っ込むよりRDSの方が総じて高い。オンプレのスペックよりワンランク上のインスタンスタイプ(CPUとメモリの組み合わせメニュー)を選ばないと想定のスペックも出ない。高い専用線引いて、高めのスペック選べばそりゃ高い。※モダン化したら安くなるのかもしれないが
そんな暇もエビデンスもないので、その話はおしまいだ!

④そもそも自治体クラウドって知ってる?

 いろいろすったもんだしながら、枠組み作って自治体クラウドでコスト低減してきた今がある。それら全部無かったかの如くのこの政策は、素人が考えたとしか思えない。

国は事業者の原価に介入しても意味がない

 モダン化すればガバクラのリソースコストは下がるのかもしれない。しかし、標準化の全体に占めるコストの割合の一部でしかない。自治体にとってコストは全体としてどうかだ。

①価格はレガシー・モダン化ではなく市場競争で決まる

 バカの一つ覚えのモダン化。仮にモダン化して事業者側の運用コスト(原価)が減ったとしよう。原価が下がれば提供価格を下げるのか?答えはNOだ。市場は狭い。BtoBの中でもtoBは縮小することはあっても拡大することはない市場だ。PPM分析でいえば「金のなる木」「負け犬」なのだ。

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PPM分析

 価格競争の働きにくい市場なので、原価が下がれば価格を下げず利益を増やすだけ。事業者のメリットとしては、攻めたいところに価格競争しやすくなるメリットはある。ただ、本当にコストが下がればの話だ。よって、モダン化は余計なお世話なのだ。

②CI/CDは魅力的だが価格に影響はない

 弊社もデリバリーの効率化に課題はある。CI/CDは非常に魅力的であるのでぜひ導入していきたい。しかし、価格にはあまり影響しないだろう。そもそも、標準化はノンカスタマイズ。御用聞きなカスタマイズはやめなさいだ。今までよりデリバリーそのものが減るだろう。無論、テスト環境の構築などでも威力を発揮するだろうが、こちらも多少の原価減少には役立つが価格転嫁までにはいかない。

まとめ~価格低下は真のDXとシンプルな制度しかない~

 DXと言いながら、紙の継続、文字は他業界では使えない文字を爆誕。まずは本当にDX進めませんか?そして、マイクロサービス化してもつなぎ先が迷子になるような制度設計をシンプルにしませんか?今の価格は、そういう状況を体現しているだけという当たり前の前提に立って制度設計すべきです。


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自治体システム標準化~コスト増の本質~|標準化どうしましょう(自治体システム標準化にちょっと関わってる)
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