あの悪役“正体”はゆるかわキャラ? 「ミッション:インポッシブル」最新作 ポム・クレメンティエフ
「ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング」にパリス役で出演したポム・クレメンティエフ。前作「デッドレコニング」で、トム・クルーズ演じるイーサン・ハントを死の寸前まで追い詰め、冷徹なビラン(悪役)として強烈なインパクトを残した。しかし眼光鋭くクールなたたずまいは、映画の中だけ。聞けば「昼は人間の姿」だが、夜になると、日本でおなじみのゆるかわキャラに「“変身”するんです」。謎を秘めた(?)彼女の正体は。
「撮影は素晴らしい体験だった」
「デッドレコニング」でパリスは、イーサン・ハントの敵として登場し武器を向ける。一時は優位に立つものの、形勢は逆転。ところがハントは、座り込む彼女を見逃して場を立ち去り、命を助ける。そこから彼女の心境は変化し、今作ではどうやら、ハントと行動を共にするようだ。
クレメンティエフは「デッドレコニング」でシリーズ初登場。「撮影は、素晴らしい体験でした。(今作が公開され)世界の皆さんとそれを共有できるというのが、もう今は本当に、うれしくてしょうがない。自分が頑張ったかいがあったというか。ご褒美のようです」
2年前に来日中止 荷物もそのまま号泣……
喜ぶのには理由がある。実は2023年の夏にも来日する予定だった。「デッドレコニング」の日本公開に合わせた記者会見などが、東京都内で予定されていたが、全米の映画俳優組合がその直前、待遇の改善などを要求するストライキの決行を発表。映画に関わる仕事は全て中断するとして、来日は中止になった。
「『ああ、日本に行けないんだ』と思ったのを、今も覚えています。日本で着る衣装も全て準備してあった。荷物を詰め込んだスーツケースをそのままにして、ものすごく泣いていたんです」。ふふふっ、と笑ったのは、当時のモヤモヤがすっかり晴れたということか。
だからこそ「今作では、とにかく最初に日本へ行きたかった」。トムや共演陣、製作陣が同じ思いを抱いており、海外キャンペーンは5月上旬の日本が皮切りだったという(トムたちはその後、韓国やフランスのカンヌ国際映画祭などに姿を見せた)。日本に住む者としては、とてもうれしくなる。
アイ・ラブ・ジャパン 食べ物もアニメも
日本への思い入れがある理由の一つは、幼少の頃、京都に住んだ経験があるから。「アイ・ラブ・ジャパン。食べ物もファッションも、好きなものはたくさんあります」。笑顔で、日本の良さをこう話す。
「日本は、すごく美しいなと思うんです。今回、ある公園を訪れました。女の子がたこあげをしていて、それを20分ほどジッと見ていた。それだけで、幸せな気持ちになったんです」
「日本のアニメもよく見ていました。日本語の響きは、音楽のようにも聞こえる。買い物に出かけたんですが、日本はどこに行っても、全てが整っていて、秩序立っている感じがする。細かい部分へのこだわりが、すごいと思います」。もっとも買い物は、「整っている」というよりは、雑然とした雰囲気が人気の某有名ディスカウントチェーンを訪れたそうだ。
「ポムポムプリン」の生まれ変わり?
記者はペンを走らせる。そのノートを見ながら「1冊じゃ、書き切れないんじゃないですか。新しいノートが必要ですね」。はははっ、とまた笑ってみせる。不意を突かれたが、動じてはいられない。
何を買ったのでしょう? 「大好きな(日本の人気キャラクター)『ポムポムプリン』のグッズを買いました。お尻を向ける姿が、かわいいですよね」
「同じ名前(ポム)ですが、自分の化身、生まれ変わりじゃないかと思うことがあります。『バットマン』や『スーパーマン』が変身するのと同じで、私はポムポムと同一人物で、夜になるとポムポムに変身するんです」
そのポムポムが好きなことの一つに、誰かの靴をそっと隠すというのがある。映画のパリスは元々は悪役だが「柔らかい、面白いところがある。敵の靴を隠しておけば、相手は身動きが取れなくなる。パリスとポムポムでチームを組むと、気が合うかもしれないですね」。新たな“バディー”の誕生(?)である。
トムは仕事がしやすくて寛大で
インタビュー中ずっと、とにかくよく話し、よく笑う。「ポムポムプリン」の話が止まらない勢いだったが、映画の話も聞かせてほしいと軌道修正を試みた。俳優の“大先輩”トム・クルーズは、どんな人物に映っているのか。
「仕事がしやすいし、寛大だし。細部にこだわりをもって、そして何でも相談に乗ってくれる方です。冗談を言って笑わせて、相手の緊張をほぐそうとする。いつも優しいです」
「撮影の時はすごくシリアス。でも、カットがかかると、いつもの面白いトムに戻るんです」
世界に目を向けている
彼が「世界のスター」だと記者が強く感じ入ったのは、以下の話だ。
「トムは好奇心旺盛な人。自分の世界で生きているんじゃなくて、(実際の)『世界』に目を向けているんですよね。アメリカには『自分の国こそ中心』だと考える俳優もいますが、トムは新しい何かを発見することに強い興味を持っている。自分が携わる映画を、いろいろな人に見てもらうということに、すごく力を入れているんです」
いかがだろう。シリーズが世界的ヒットを続ける理由の一つが分かった気がした。
「ファイナル」、でも再来日を“宣言”
これまでのシリーズ通り、アクションシーン満載の今作。クレメンティエフは、撮影にどう臨んだのか。「すべてが大変でした」と前置きして、こう振り返った。
「カメラの動きや、自分の演じるパフォーマンス。条件がそろった時に初めて『魔法』が生まれるんですよね。あらゆることが同時進行で動く中で、全部が合致して、場面が完成する。特にアクションのシーンは、そうです」
その「魔法」を目の当たりにできる今作だが、題に「ファイナル」と銘打っている。シリーズの今後は? それは謎に包まれているが、クレメンティエフはこう語ってくれた。
「日本にまた戻ってきたいです」
この言葉、「ミッション」の続編があると信じていいのか。次に彼女が来日するのはこのシリーズなのか、はたまた違う作品に絡んでのものなのかは分からない。ただ、記者は一つ、決めていることがある。ノートを1冊でなく2冊は持っていって、彼女の仕事と、ポムポムプリンへの「変身譚(たん)」を記す。それが実現する日が、待ち遠しい。【屋代尚則】