トランプ政権VSハーバード大学 現場で感じた危機感…取材を拒否する留学生多数
デモ翌日、取材班は再び大学へ。日本人の留学生を探すためだ。キャンパスへ向かって歩いていると、日本語での会話が聞こえ、とっさに声をかけた。今年、大学院を卒業する日本人の男女だった。早速、取材をお願いしてみると、「それは厳しいです」と即答された。匿名を条件に打診するも、「大変、心苦しいですが、報道に答えることで自分たちに今後どう影響するか分からないので、ご遠慮させてください」と丁重に断られた。
次に会ったのは、ロースクールを卒業する夫の式に同行しようとしていた日本人女性だった。旦那さんにお話を伺えないか尋ねたところ、「先ほど夫や友人グループと、取材に答えるのは怖いので断るようにしようと話していたんです。他のことであれば、ぜひ協力したいのですが、本当に申し訳ございません」と言われた。
正直、もう大学を離れる立場である卒業生さえも、ここまで危機感が強いとは思っていなかった。ただ、自分の発言・行動が、いつどのように不利に働くのか分からない今の状況で、リスクとなるようなことを避けたいと思うのは当然のことだろう。留学生の間に強い危機感が漂っているのを肌で感じた。
■資金凍結に直面する教授、留学生措置に「アメリカ科学の伝統に反する」
留学生の問題が深刻化する前、危機感の中心にいたのはハーバード大学の教授らだった。トランプ政権は、ハーバード大学が要請に従わなかったことで、次々と助成金の凍結を実行したためだ。サラ・フォーチュン教授は、結核に関する研究を行っているが、政権の決定により研究資金を凍結されてしまった一人だ。NNNの取材に、「私たちが治療を中止している間に、病原体が広がることは明白であり、死亡者数は増大するだろう」と警告した。
さらにフォーチュン教授は、留学生たちを取り巻く状況にも懸念を募らせていた。結核はアジアやアフリカ地域などで流行していることから、その土地から研究室へ学びに来る留学生も多い。フォーチュン教授は「特にアメリカの科学は、優秀な移民たちの恩恵を受けて発展してきた。アメリカの科学へ貢献したいという人材の門を閉ざすことは、これまでの伝統に反する行為だ」と語った。