トランプ政権VSハーバード大学 現場で感じた危機感…取材を拒否する留学生多数
アメリカ・マサチューセッツ州のボストン近郊にある、ハーバード大学。ノーベル賞受賞者を多数輩出してきた名門で、誰もが一度はその名を耳にしたことがあるだろう。そして最近は、時の政権との対立で話題となっている。初めはトランプ政権とハーバード大学との間の問題にすぎなかったが、先月から事態は一変。外国人留学生たちが危機的状況に立たされている。実際に大学で取材をすると、留学生からは切迫した空気を感じた。
トランプ政権とハーバード大学の対立が本格的に始まったのは、4月。トランプ政権は、反ユダヤ主義への対応の不足や多様性重視のプログラムを導入している大学に対して、政策の変更を要求し、「応じなければ助成金を凍結する」と警告していた。これに対し、ハーバード大学は要求を拒否。トランプ政権は免税資格の取り消しを示唆するなど圧力を強めたものの、大学は一連の措置を連邦地裁に提訴した。
すると5月、新たな方針が示された。トランプ政権は、ハーバード大学での外国人留学生の受け入れ措置を停止すると発表した。この措置により、ハーバード大学は外国人留学生の受け入れができなくなり、在学中の学生は転校するか、在留資格を失うことになると述べた。この通知に、再び大学は政権を提訴し、連邦地裁は停止措置の差し止めを命じた。しかし、差し止めは訴訟中の一時的なもので、日本人を含む留学生の間に困惑が広がった。大学が卒業式を開催する約1週間前の出来事だった。
■大学前で抗議デモ、留学生は発言控える
ハーバード大学は、どんな様子なのか。取材班は卒業式の2日前に大学を訪ねた。というのも、留学生受け入れ停止措置に抗議するデモが開かれる情報を入手したからだ。
デモには在学生や教職員のほか、ハーバード大学のOBも参加していた。しかし、代表して発言する学生のほとんどはアメリカ国籍の学生で、当事者である留学生の姿が、ほとんど見られなかった。取材すると、多くの留学生は強制送還を恐れ、公の場で話すことに危機感を抱いているのだという。そのため、声を上げられない学生の声を、アメリカ国籍の学生が代弁する形でデモを行ったのだ。集会後、デモに参加していた留学生と思われる人々は、カメラを避けるように足早に去っていった。