賢人(笑)が知識で馬鹿を馬鹿にし、馬鹿はGrokで賢人(笑)を馬鹿にする。
最近、X(旧Twitter)を眺めていると本当にくだらない光景を目にする機会が増えました。
「@Grok ファクトチェック」というリプライの横行です。
誰かのポストに対し、したり顔で「Grokはこう言っていますが?」とAI様のお告げをぶら下げる、アレです。
Xを利用してみたことがない人は近いうちに目にすることかと思います。
一見、情報の正確性を期すための最新テクノロジー活用術かのように見えますが、お粗末な茶番劇以上でも以下でもない行為かなぁと思います。
具体的に何が行われているかというとまあ単純な話です。
誰かが意見や情報をポストする。
すると、すかさず別の誰かが「@Grok ファクトチェック」とメンションをつけてリプライ。
Grokがそれっぽい文章を生成し、あたかもそれが「ファクト」であるかのようにポストされる。ただそれだけです。
例えば、専門家が長年の経験に基づいて見解を述べても、「Grok先生によると違うみたいですよ?」と、どこから拾ってきたかも定かでない情報がぶつけられる。
反論や議論ならまだしも、やっていることとしては小学生の時とかに行っていた「だって●●ちゃんがそう言ってたもん!」というレベルの話でしかないのかなぁと思います。
そもそも、Grokが言っていることは「ファクト」でも何でもありません。
これは生成AIはそれっぽい文章を作り出すことは得意ですが、その内容が事実である保証はどこにもありません。むしろ、もっともらしい嘘、いわゆる「ハルシネーション」を平気で出力することは、散々指摘されてきたはずです。
最近は情報ソースのリンクを提示してくれることも増えてきましたが、それでも、少なくとも現時点では「それっぽい情報」としてとらえたほうが良い場合が多いです。
「生成AIは嘘をつく!」とあれほど騒いでいた舌の根も乾かぬうちに、今度はそのAIを使って「ファクトチェック」とはなかなか面白いですね。
そんな実に滑稽な光景が、いまX上で繰り広げられているわけです。
以前からChatGPTなどを駆使して、似たようなマウント合戦を繰り広げていた人々はいました。しかし、GrokがX上で(あるいは、そう見える形で)手軽に呼び出せるようになったことで、この茶番劇は一気に加速したようです。
わざわざ外部のAIサービスで文章を生成し、コピペして……なんて面倒な手間はもう不要。「@Grok」と唱えさえすれば、AI様がありがたいお言葉(=それっぽい文章)を授けてくれます。
難しいことを考えずに、まるで虎の威を借る狐のように、AI様のお言葉を借りて相手を黙らせる。そんな"お手軽マウント"が可能になったわけです。
UI/UXの改善が、人間の思考停止をここまで加速させるとは、個人的にはいい学びになりました。
この「Grokファクトチェック」ごっこはを思考のアウトソーシングと思っている人もいるかもしれないですが、単に思考停止と言っても過言ではないと思っています。
Grokが生成した文章が本当に正しいのか、元のポストの内容とどう関連するのか、そこに自分の意志も思考もなく、ただ、反論に使えそうな「それっぽい文章」が手に入ればそれでいい。
自分の頭で情報を吟味し、論理を組み立て、言葉を紡ぐ。そんな面倒なプロセスはAIに丸投げです。
【知能労働がAIに奪われる】なんて高尚な話の前に、自ら知能を使うことを放棄している人たちがこれほどいます。
現在進行形で見ることができて面白いなぁと思ったりしています。
また、結局のところ、この現象の根底にあるのは、昔からインターネットにはびこる低レベルなマウント合戦以上でも以下でもないことが多いです。
一方は、小難しい知識をひけらかし「こんなことも知らないのか?」と相手を見下す。
もう一方は、自分で考えることを放棄し「Grok様はこう言ってるぞ!」とAIを盾にする。
やっていることは、「こんなこともしらねーの?」「はぁ!?俺の兄貴はこういってるんだけど!」と小学校の校庭で聞こえてくる子供の喧嘩です。
ただ、場所が小学校の校庭からちょっとハイテクになっただけ。
建設的な議論など生まれるはずもなく、互いが相手を言い負かすことだけを目的とした、実にくだらない時間の浪費です。
AIという新たな道具を手に入れてもやってることは小学生と大して変わらないというのも眺めていて面白いなぁと思います。
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