月2.5億円の役員報酬は「高すぎ?」 味噌会社の訴え、最高裁が退ける 原告は"さじ加減課税"に異議
関西を拠点とする味噌会社のグループ企業が国(国税当局)から受けた約3億8500万円の課税処分の取り消しをもとめた裁判で、最高裁はこのほど上告を退ける決定を出した。 【動画】フリー女性アナと経営者の二刀流 原告の1人に支払った月2億5000万円の役員報酬について、国税が「高すぎる」とした判断が認められたかたちだ。 しかし、国税が役員報酬が過大か否かを線引きすることや、税務調査への姿勢などへの批判の声も根強い。原告に話を聞いた。(ジャーナリスト・富岡悠希)
●最高裁が「判例」を出すことを期待していたが・・・
原告は、京都市にある「京醍醐味噌」。中国で模造品が出るほどの高い知名度を誇る「松井味噌」(兵庫県明石市)のグループ企業だ。 国税当局は2018年、京醍醐味噌の税務調査を実施。2013年〜2016年の4年間、代表である松井健一さんと実弟に支払われた役員報酬21億5100万円のうち、約18億3956円分を「不相当に高額」と指摘した。 その結果、約3億8500万円の課税処分を受けたため、松井さんらは処分取り消しを求めて東京地裁に提訴したが、2023年3月に棄却となった。東京高裁への控訴は実らず、最高裁も2024年12月に却下とした。 取材に応じた松井さんは、最高裁が審理をせず「門前払い」をしたことへの悔しさをあらわにした。 「完全勝訴はないことはわかっていましたが、役員報酬に関する新たな判例を最高裁が出すと期待していました。それだけに残念です。今のままだと、国税のさじ加減で、経営者の報酬に上限をかけられることが続いてしまいます」
●「自分たちはダントツの成果を上げている」という自負
松井さんが特に疑問を呈するのが、国税当局が役員報酬を「地域限定倍半基準」で決めている点だ。 この基準では、まず、その企業の所在で、比較する企業の地域を限定する。その中から同業種のうち、売上の2倍〜半分となる「倍半基準」で企業を選定。最後に、それらの企業の役員報酬の平均値を取りまとめる。 裁判開始時に国税当局が示してきた「適正給与支給額」では、2016年の場合、松井さんが844万円で、弟は実働4カ月のみだとして281万となっている。 松井さんはこれに反論する。 「当時、松井味噌グループは金融資産だけでも200億円を持っており、しかも全社無借金経営でした。会社の稼ぎ手は、私と弟だけ。2人で300~400億円を儲けないと、税金を支払ったあとでは残せない金額です。こうした実績と比べると、私の900万円にも満たない金額は低すぎます」 松井さんの自信の背景には、成功物語がある。 松井味噌の3代目社長(松井味噌グループ16代目)として、1990年代から中国・大連に進出。日本より大幅に安い大豆や米、塩などを使い味噌関連製品を作り、1980年代に約2億円だった年商を2017年には200億円まで成長させた。最近では、中国内でウイスキービジネスにも進出している。 さらに松井さんは、味噌屋の「完全なる不況業種」ぶりも付け加えた。かつて130あった兵庫県の味噌屋の数は現在11軒までに減少しているとし、「他の誰もが食えなくなっている中、自分たちはダントツの成果を上げている」と自負した。