第三部 四章?

第227話 大晦日

──Q.クリスマスが終わるとどうなる? A.年末に突入する。


「……おはようございます」

「もう三時過ぎてるけど……。まあ、おはよう?」


 むう。苦笑されてしまったか。確かに朝と呼ぶには遅すぎる時間だが、寝起きの挨拶は基本的に『おはよう』以外に考えられない民であるからして。

 VTuber……というより、時間に融通の利く個人事業主特有のユルさってことで、そのあたりは見逃していただけると。


「で、天目先輩は何故俺のところに? なんかすっごいナチュラルにいましたけど」

「い、いやー? ほら、今日は私もオフだし。山主君もそうでしょ? だからなんとなくこっち来て、コネッコ君と遊ぼうかなぁって。……駄目だった?」

「いえ、全然。俺の代わりに構ってくれるなら、普通に助かります」

「んにゃぁ」


 ああ、どうりでコネッコ君がリビングに来てるわけだ。この子、最近やんちゃ度が爆上がりしてきたから、あんま使ってない部屋を専用部屋に改造して隔離してんだよね。

 いろいろおもちゃとか置いて、俺が構えない時はそこで寛いでもらってるのだ。……もちろん、構える時は普通に部屋から出しているが。

 ただやっぱり、まだまだ甘えたい盛りなようで。部屋に一匹だけだと、まあまあ不機嫌になりがちでなぁ。だから構える人が増えるのは本当に助かるのだ。

 ある意味、予想外の副次効果であった。三人の部屋を転移ポータルで繋いだのが、こんな形で俺にメリットをもたらしてくれるとは思わなかったわ。


「ちなみに、山主君は今日予定とかあるの? やっぱり、年末だから部屋でのんびり?」

「そっすねー。とりあえず、まず飯食って、六時前までコネッコ君と遊んで。それから雷火さんの配信を見ます」

「……あー、ハナビちゃんの。そっか。年末ドリームって抽選日今日だもんね」

「やっぱネタ振りした手前、リアルタイムで見届けなきゃですしねー」


 クリスマスコラボの際に、雷火さんの手に渡ったプレゼント。年末ドリーム、バラ十万と二千円分。ネタ枠として用意したものだが、雷火さんはご丁寧に抽選日当日に枠を立ててくれたのだ。

 人によってはクソ忙しい十二月三十一日。そうでなくても、一年の締めくくりとしてのんびり過ごす人も多いだろうこの日に、わざわざ配信をしてくれるというのだから……ねぇ?

 やはり元凶として、しっかり最初から最後まで見届けなければ失礼というものだろう。……なお、場合によってはコメント欄に出現して茶々を入れたりする模様。


「そっかー。じゃあ、私もハナビちゃんの配信、一緒に見て良いかな?」

「もちろん。んじゃ、テレビの方で見ましょうか。さすがにパソコンやスマホだとアレですし」

「うん」

「じゃあ、そういう感じで。俺はちゃちゃっとカップ麺でも作ってるんで、天目先輩はコネッコ君のことお願いします」

「はーい」

「んにゃう」


 えーと、ストックは何あったかなぁ……? 袋麺作るほどの気力はないしなー。


「んー……これでいっかぁ」


 カレー麺にしよ。そんでチーズ増し増し。あとは冷食のたこ焼きでも付けるかね。


「あー、そういや今日って、ウタちゃんさんはこっち来るんですかねぇ?」

「んー、どうだろ? ライブラ全体での年越しLIVEだからねぇ。カウントダウンは向こうでやるだろうし、来るにしても深夜じゃないかなぁ」

「やっぱそんな感じですかねぇ」


 場合によっては、二次会みたいな配信するかもだしなぁ。来る可能性は……いや、俺が起きてたら来そうではあるな。そういうイメージがある。


「てか、ライブラってやっぱ凄いですよねぇ。こんな何処もかしこもイベントやってるような日に、LIVE用の3Dスタジオを押さえてるんですから。やっぱ事務所としてのパワーが違うというか」

「だよねぇ。最近は3Dのスタジオとか押さえるのも苦労するって、うちのスタッフさんたちもボヤいてたのに」

「ホントホント」


 俺も詳しくは知らんのだけど、本当に大変らしいね。黎明期と違って、いまはVTuberの数は膨大。それに比例するように技術も発展したことで、個人勢も独自に3DLIVEを行える時代になっている。

 が、急成長する業界に反して、VTuberに対応しているスタジオの数はまったく追いついていないそうな。少なくとも、ある程度パワーのある事務所が納得できるクオリティを提供できるスタジオは、極めて少ないという。

 特に都内はそれが顕著で、高性能なモーションキャプチャーなどの設備を求めて、VTuber事務所、ゲーム開発企業などが日々熾烈な争奪戦をしているそうな。


「……ああいうのって、大体いくらぐらいするんですかね?」

「スタジオとかの使用料? ……さすがに正確な数字は分からないけど、結論高いとは聞くよね。それこそライブラの人たちがやるような本格LIVEとかなら、四桁万円は普通に飛んでくっていうし」

「いえ、そっちではなく。機材とかそういうのの値段です」

「……何で?」

「それ用のスタジオを作っちゃえば、スタッフさんたちもいろいろ楽できるかなぁって」

「おおぅ……」


 なんすかその反応。


「いやだって、料理や音楽スタジオに加えて、3Dスタジオまで個人所有しようとしてるんだもん……」

「マジで料理スタジオで実感したんですけど、こういうの自前で用意できるとガチ最強なんすよ」

「……音楽スタジオは?」

「思いっきり腐らせてます」

「もったいない……」


 歌枠すら片手の指以下で足りるような俺が、あんなの持ってたところで持て余すに決まってたんだ。


「まあ、あっちに関しては身内で使い回す感じでいいかなって。なんなら、デンジラス専属スタジオとして格安で貸し出しましょうかね。……ちょっと税金関係が面倒くさくなりそうですけど」

「そうなの?」

「いえ、ぶっちゃけそのあたりは専門家にガン投げしてるんで、手間もクソもないんですけど。ほら、副収入とかの申告って面倒なイメージあるじゃないですか」

「まあ、確かにね」


 あと正直、俺の口座レベルになると諸々の管理がマジでダルそうというか。ぶっちゃけ、何人体制になってるのかも知らんからな俺。

 偉い人経由で信頼できる人間斡旋してもらって、あとはよきにはからえって感じで投げてるし。俺とやり取りしてる人にかなりの裁量持たせてるから、多分自己判断で追加の人員とか雇ってんじゃねぇかなって。


「そんなわけで、余計なアレコレを発生させないよう、その手の契約とかはしなかったんですけど……音楽スタジオに関しては、予想以上に腐らせましたからねぇ」


 放置するのはもったいないし、あの手の設備は使わないとどんどん劣化していくイメージもある。だったら、使いたい人が気兼ねなく使えるよう、諸々の形式を整えるべきではないかと。……いまの会話で思いました。


「ただ3Dスタジオに関しては、音楽スタジオほど腐らせることもないでしょうし。やっぱ買いですかねぇ」

「いやいやいや! そんなスーパーで買い物するみたいなノリで決めて良いものじゃないからね? そもそも、機材とか用意しても扱える人がいないと……」

「それこそ人を雇えば解決でしょ」


 フリーランスでそういうの専門にしてる人もいるでしょうし。別に毎日使うわけじゃないんだから、繋がり作ってその都度招集する感じで契約すればいけるのでは。


「ま、詳しくは専門家に話を聞いてから──っと。タイマー鳴ったか」


 さーて。昼だ昼だ。ササッと食べて、天目先輩と一緒にコネッコ君を構うべ。












ーーー

あとがき


新章突入。それはそれとして遅れました。失敬。

あとコメントでちょくちょく言われてましたが、さすがに二次会までやるとアレだったのでね。……まあ、続きは書籍版書き下ろしに期待してくださいな。ここまで続くか分からんけど。

二次会の表紙が気になる人は買ってくれとしか。


あ、今日もまたコミカライズの追っかけ更新があるので。カドコミやニコニコ漫画をチェックやで。

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