トランプVSハーバード、執拗攻撃の理由と影響 金策に悩む教授たち

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ボストン=青山直篤
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 「連邦機関の通知により、あなたの研究事業は終了しました」

 ハーバード大の公衆衛生大学院で環境疫学を教えるマーク・ワイスコフ教授(59)は5月、そんなメールを受け取った。

 米国立衛生研究所(NIH)からの助成金打ち切りを通告する大学からの連絡。何の理由の説明もなく、添付のエクセルファイルに「終了する」事業が列挙されていた。十数人を擁する研究室をどう運営していくか。「毎日その方策ばかり考えている」

 トランプ政権が3月末、ハーバード大に対し「複数年で87億ドル(約1兆2500億円)」の助成金を見直す方針を示してからも、さほど心配はしていなかった。取り組んできたのは、有害金属による健康への影響といった息の長い研究。政権が問題視する人種やジェンダーの「多様性・公平性・包摂性(DEI)」とも、閣僚が否定的な目を向けるワクチンとも関係ない。

ハーバード大学をはじめとするエリート大学は世界の頭脳を引きつけ、米国の覇権を支える存在ともみられてきました。トランプ大統領は今、露骨な国家権力を使い、その基盤を打ち崩そうとしています。何が起きているのでしょうか。背景には何があるのでしょうか。

 しかし4月中旬、政権が「反…

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この記事を書いた人
青山直篤
ニューヨーク支局長
専門・関心分野
米国、国際政治・経済、日米関係、近代史
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    三牧聖子
    (同志社大学大学院教授=米国政治外交)
    2025年6月6日13時28分 投稿
    【視点】

    科学や批判的知性そのものへの敵意を剥き出しにしたトランプ政権の大学攻撃は、「MAGAマオイズム(毛沢東主義)」と言い表されるようになっている。トランプ2.0のアメリカは、毛沢東時代の中国にいよいよ似通っていないか、という懸念がこめられた言葉

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