50歳未満で帯状疱疹が増加、なぜ? 合併症で顔面マヒにも

50歳以上や免疫不全のある大人は効果の高いワクチンを接種できる

2023.11.06
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彩色した水痘・帯状疱疹ウイルスの透過型電子顕微鏡画像。(MICROGRAPH BY JAMES CAVALLINI, SCIENCE PHOTO LIBRARY)
彩色した水痘・帯状疱疹ウイルスの透過型電子顕微鏡画像。(MICROGRAPH BY JAMES CAVALLINI, SCIENCE PHOTO LIBRARY)
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 ポップスターのジャスティン・ビーバーが2022年、29歳で水痘・帯状疱疹ウイルスが原因の疾患を発症し、合併症によって顔の一部がマヒしたため、海外ツアーを中止すると発表して話題になった。このウイルスによって引き起こされる帯状疱疹は、年を取ってからでないと発症しないと思われがちだが、実はどの年齢であってもかかるリスクはある。最近では、50歳未満で発症するケースが増えているという。

 米疾病対策センター(CDC)によると、1998年から2019年までの間に、全ての年齢で帯状疱疹が増えたが、特に30代と40代での増加が目立っている。帯状疱疹を発症すると、通常は顔や体の片側にだけ、痛みを伴う水ぶくれ(発疹)ができる。また、焼けるようなピリピリ感、頭痛、悪寒、胃のむかつき、疲労、倦怠感といった症状も現れる。

 2016年5月に学術誌「Clinical Infectious Diseases」に発表された、1945年から2007年までの米ミネソタ州のデータを集めた研究では、全体的に帯状疱疹が4倍以上に増えていたことが示された。なかでも、増加率が最も大きかった年齢層は50歳未満の成人だった(編注:2021年11月に医学誌「Journal of Dermatological Science」に発表された宮崎県皮膚科医会による1997~2020年の調査結果でも、帯状疱疹は増加傾向にあり、特に近年は20~49歳で発症率が著しく上昇している)。

 専門家を悩ませているのは、50歳以上向けのワクチンがあるにもかかわらず、帯状疱疹が着実に増加し続けていることだ。「しかも、小さな子どもを除いて全ての年齢層で増加しています」と、内科医で米バンダービルト大学医学センターの予防医学・感染症教授を務めるウィリアム・シャフナー氏は言う。「なぜ増えているのかがわからないのです」

水ぼうそうにかかった人は年齢を問わずリスクあり

 水痘・帯状疱疹ウイルスは、水痘(水ぼうそう)にかかった後も体内にとどまり、数年、時には数十年もの間、特定の神経の中で眠っている。これが再び活動を始めると、帯状疱疹になる。水ぼうそうを経験した人ならどの年齢であっても発症する可能性があるのはこのためだ。

「発疹を見たら、すぐに帯状疱疹だとわかります。ほかにこのような発疹が現れる疾患はありません」と話すのは、米ジョンズ・ホプキンス大学医学部の医学・感染症教授であるスチュアート・レイ氏だ。「発疹が出る前に痛みを訴える人もいますが、痛みだけで診断するのは難しいです」

 特徴的な発疹が消えた後でも、合併症が起こることはある。最も一般的な症状は、神経と皮膚のピリピリとした痛みだ。これは「帯状疱疹後神経痛」と呼ばれるもので、数カ月から数年続くことがある。ほかにも患部の皮膚に細菌性の感染症を起こしたり、目の周りに現れる「眼部帯状疱疹」では目が傷ついたり視力に影響が出たりする場合もある。

 帯状疱疹は、一般的には抗ウイルス薬で治療する。回復を早め、重症化を防ぐ効果があり、発疹が現れてから72時間以内に飲み始めることが望ましい。

「治療しないで治るのを待つという人もいますが、お勧めしません。有効な治療法がありますし、それによって症状がある期間を短くすることができますから。早めの治療が合併症のリスクを抑えるという研究結果もあります」とレイ氏は述べる。

増加の理由は?

 帯状疱疹がなぜ全体的に増加しているのか、また50歳未満での増加が目立つのはなぜなのかはよくわかっていないが、いくつかの仮説はある。

 水痘ワクチンの接種が始まる前は、ほとんどの人が幼少期に水ぼうそうにかかっていた。すると回復後に免疫がつき、再び水痘・帯状疱疹ウイルスにさらされたときに体はこれと戦えるようになる。ウイルスにさらされるたびに、免疫系は体を防御するよう念を押され、体内に眠るウイルスが目覚めないよう抑える機能が働き続ける。(参考記事:「「痛いところ」を治しても痛みが消えると限らないわけ」

次ページ:周りで水ぼうそうになる子どもが減ったから?

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