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「不正選挙は全国的に行われた…

韓国大統領選で勝利し、支持者に向けて両手を挙げる李在明新大統領=4日、ソウルでAP 拡大
韓国大統領選で勝利し、支持者に向けて両手を挙げる李在明新大統領=4日、ソウルでAP
韓国大統領選で1票を投じる尹錫悦前大統領=3日、ソウルでロイター 拡大
韓国大統領選で1票を投じる尹錫悦前大統領=3日、ソウルでロイター

 「不正選挙は全国的に行われた。投票用紙の紛失、二重投票……」。金大中(キムデジュン)元韓国大統領が回想録に記している。軍事独裁政権下の大統領選。善戦し、ソウルでは59%の票を得たが落選。公正なら100万票は勝っていたと振り返っている▲そんな時代が終わり、民主的選挙が始まって38年。突然の戒厳令で罷免された尹錫悦(ユンソンニョル)前大統領の後任を選ぶ大統領選のさなかに「不正選挙」を告発するドキュメンタリー映画が上映されたという▲尹氏を支持する保守系ユーチューバーらが関わる作品で選挙不正を疑う発言を繰り返してきた尹氏も姿を現した。不正を否定する選挙管理委員会は「根拠のない陰謀論」の広がりに「深い懸念」を表明した▲選挙は戒厳令を批判してきた最大野党の李在明(イジェミョン)氏が勝利し、新大統領に就任した。「陰謀論」の影響は限られていたのだろう。しかし、多くの犠牲の上に勝ち取った民主制度をトップすら信じられなくなったことは深刻だ▲負ければ選挙不正を叫び、勝てば全権を握ったように振る舞う先駆けがトランプ米大統領か。ネット上の大量の情報から耳に心地よい情報ばかりを信じる「ポスト真実」の時代。批判に耳を傾けない「自己中」政治家の横行と無縁ではあるまい▲「韓国のトランプ」と呼ばれたこともある新大統領はどうか。自ら刑事裁判を抱え、手続きを停止できる法改正を進める方針という。それでは分断の修復や国民統合は容易でない。世界的に民主主義が制度疲労を起こしているようでもある。

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