Vol.538「皇統問題:読売新聞提言のあと一歩の惜しい点」
(2025.5.21)
【今週のお知らせ】
※「ゴーマニズム宣言」…5月15日の読売新聞朝刊は、歴史的紙面となるかもしれない。何しろ読売は、時には「自民党の広報紙」と揶揄されることもある新聞だ。実際、過去には皇統関係の記事で政府・自民党の方針をあたかも既定路線のように記事にしたこともある。その読売が、自民党が強引に推し進めようとしている策を完全に否定し、それと全く異なる提言をしたのだから、これは一大事件である。間違いなくこれは読売新聞社を挙げての社論であり、自民党がどう反発しようと、阿ることはないと腹をくくっていることは間違いない。一方で、細かく読めば間違っている箇所があるのだが、それは全体から見れば小さいことなので、この流れに水を差すこともないだろうと、具体的に指摘するのは控えておいた。だが「ライジング」の読者なら、それで「水を差された」と思う人もいないだろうから、今回の読売記事で疑問に感じたことなどを、ここで書いておきたい。
※泉美木蘭の「トンデモ見聞録」…読売新聞が発表した皇位継承に関する提言は、たちまち大反響を巻き起こしたが、なかでも特に激しく反応して、もはや困惑の極みに達しているのが、産経新聞である。その様子を記録しておく。そして何故、産経新聞がこれほどまでに激しい反応を示しているのか、理由を探っていくと見えてきた現実とは??
※よしりんが読者からの質問に直接回答「Q&Aコーナー」…SNS上にいる「チン騎士」をどう思う?中居正広氏が反論したことをどう見ている?国民民主党が公認した候補者である足立康史や須藤元気についてはどう思う?AKB・坂道出身女優で一番の成功者は誰?沖縄県のひめゆりの塔をめぐる西田昌司議員の発言、およびそれを擁護した参政党の神谷宗幣代表をどう思う?山尾しおり氏はどうして立憲民主党ではなく国民民主党から出馬するの?…等々、よしりんの回答や如何に!?
1. ゴーマニズム宣言・第567回「読売新聞提言のあと一歩の惜しい点」
5月15日の読売新聞朝刊は、歴史的紙面となるかもしれない。これは永久保存版だ。
何しろ読売は、時には「自民党の広報紙」と揶揄されることもある新聞だ。実際、過去には皇統関係の記事で政府・自民党の方針をあたかも既定路線のように記事にしたこともある。
その読売が、自民党が強引に推し進めようとしている策を完全に否定し、それと全く異なる提言をしたのだから、これは一大事件である。しかも1面トップ、3面の記事と社説、さらには14・15面に広告なしの見開き全面特集という、特別編成の紙面で出してきたのだ。
間違いなくこれは読売新聞社を挙げての社論であり、自民党がどう反発しようと、阿ることはないと腹をくくっていることは間違いない。
1面トップ記事のタイトルは「皇統の安定 現実策を」である。このタイトルだけでも、現在自民党が進めようとしている策が皇統の安定にとって「現実策」ではないと断じていることに他ならない。
そして読売が掲げた提言は、以下の4項目である。
皇統の存続を最優先に 安定的な皇位継承を先送りするな
象徴天皇制 維持すべき 国民の支持に沿った方策を
女性宮家の創設を 皇室支える皇族数が必要
夫・子も皇族に 与野党は合意形成に努めよ
これももちろん、現在自民党が「安定的な皇位継承を先送り」し、「国民の支持に沿った方策」ではないものをゴリ押ししようとしていることに対する痛烈な批判である。
1面記事では、「特に自民党は」と名指しして、自民党が男系男子継承にこだわっていることを指摘した上で、「皇統の存続を最優先に考えれば」女性宮家の創設が妥当であるとして、さらに「男系男子にこだわった結果、皇室を危うくさせてはならない」と書いている。
さらに1面には竹原興社会部長の記名解説で、「国家と国民統合の象徴を巡る危機に際し、今こそ責任を持って結論を出さなければならない」とある。国家の根幹にかかわる皇統問題について、国会に危機感も責任感も感じられないことに対する憤りが表れた文章である。
そして社説では、1面記事にも書かれている主張をさらに端的にまとめており、「男系男子にこだわれば、象徴天皇制の存続は危うくなる。女性天皇や、女系天皇の可能性を排除すべきではないだろう」とまで書いている。
しかもこの社説の最後の方では、「自民党は、」「自民党内では、」などと何度も自民党を名指しして、自民党が固執する案を徹底批判し、否定している。
まず「女性皇族は結婚後も皇族の身分を保持するが、夫と子は国民のまま」という案については、「配偶者などを皇族ではなく、一般国民とした場合、自由な意見表明や政治、宗教活動が可能になる。その結果、皇室が政治利用されたり、皇室の品位が損なわれたりする懸念が生じかねない」としている。
また「旧宮家系の男系男子を皇族にする」案については、「国民の理解が得られるのだろうか。憲法は天皇の地位について『国民の総意に基づく』と定めている」と、これも否定している。
さらに、「自民党内では、皇室に迎え入れた旧宮家の男系男子を、女性皇族の結婚相手としてはどうか、といった意見も出ている」とした上で、これについても「女性皇族の意思を尊重せず、結婚相手をあらかじめ制度的に限定するようなことになれば、人権上の問題が生じよう」と完全否定している。
ところで、こんな人権上の問題が生じるような意見を言っている「自民党内」の人間って、一体誰だろう? …と思ったら、この社説の隣の記事には、麻生太郎・自民党最高顧問が、野田佳彦・立憲民主党代表との非公式協議において、女性皇族が旧宮家系の男系男子と結婚した場合に限り、夫と子も皇族になれるという制度にすべきだと主張していることが書かれている。
この記事は客観的経緯の報道という書き方で、麻生を批判するような表現はしていない。一方、社説は人権侵害的な発言をしている自民党内の人物は誰かを明確にしていない。
そしてこの両方を通して読むと、誰が人権問題の生ずる意見を言っているのかが明らかになる。意図的にやったのかどうかはわからないが、これも実に面白い。
ともかく朝日や毎日ではなく、読売がここまではっきり明確に自民党を批判したというのは、相当に大きなことだろう。
だからわしもブログで「見事な提言」だと評価した。
一方で「細かく読めば間違っている箇所があるのだが」とも書いたが、それは全体から見れば小さいことなので、この流れに水を差すこともないだろうと、具体的に指摘するのは控えておいた。
だが「ライジング」の読者なら、それで「水を差された」と思う人もいないだろうから、今回の読売記事で疑問に感じたことなどを、ここで書いておきたい。
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購入者のコメント
53さらにつづきます。
私がこのテーマに関心があるのは、(またまた登場する)ひみつシリーズで、球根や挿し木で育てる植物のことが掲載されており、1世代目におしべとめしべでの組み合わせの種での品種改良が可能でも、二世代目には(あまりいいいいかたではないですが)見栄えの悪いようなものが誕生することもある、という内容が載っており、さらにいえば、メンデルの法則についても、別の本で載っていたのをよんだからです(さらにいうと、他間口百恵さんの「赤いシリーズ」などで、血液型の話などが語られていたからです。当時の子供にとって、この話題は身近でした)。
つまり、これは「組み合わせ」の問題なんだな、と(高校の授業で)理解した…というような次第です。長くなりそうなので(それに、図が要るので)説明は省きますが(多分、私の理解も初歩的なものなのでしょう)。
さらに言えば、生まれる子が男性か女性か、そして、結婚できるかは、運と本人の努力で、どれだけ己を磨けるかだから、だったら、確率の問題だけでもクリアすべきではないか、という意見があって、しかるべきでは、と思うのですが。
そろそろまとめます。
いいかげん、この話題で男系派と呼ばれる人たちが頑迷固陋になるのをやめて、さらに無関心な人は、家がなくなることとはどういうことか考えてみて欲しいと願います。
最後に…
公家の家柄でも養子だったり、後継者がいなかったりして、(比較していいのかどうか、ではありますが)農家と同じような問題があるようです。皇室も同じではないのでしょうか?殊に、国会召集の問題とか、門地の差別のこととか…。
元公家の多くも、家業と呼ばれる伝統藝能のようなものを代々つたているそうです(例えば、四条家の庖丁道、すなわち料理業など)。そういうものが絶えてしまうことは、はたからみても残念に思います。
こういう視点で皇室を語ってはいけないのでしょうか?
とりあえずは、「神功皇后論」、期待しています、卑弥呼との関係とか、先祖の新羅からの帰化人、天之日矛のこととかも…描かれればいいのですが。
こんなところです。それでは…次号を期待します。
宗教学者の島田裕巳氏は 、元明→元正の継承に関して、以下のように述べています。
「現代における女性天皇、女系天皇の問題に深くかかわってくるのが元明天皇から元正天皇への皇位の継承である。元明天皇は元正天皇の母親であり、母と娘のあいだで皇位の継承が行われた。ということは、女系で継承されたことになる。ただ、元明天皇は天智天皇の第4皇女で、天武天皇と持統天皇の子である草壁皇子の正妃だった。元正天皇はその間に生まれた皇女であり、父親も皇族であった。その点では、男系での継承であったとも言える。」
(https://president.jp/articles/-/87773?page=2)
やはり、学問的な観点からは、元明→元正の継承が男系か女系かは定義による、という言い方をせざるを得ないのだと思います。それとも、島田氏の上の一文もまた「支離滅裂な男系固執・素人の戯言」なのでしょうか。
<補足> 元明→元正の継承に関して、小林先生が挙げられた参考文献の中の仁藤敦史氏の著書では、次のように述べられています。
「元明天皇から元正天皇への譲位は、文武から聖武への直系継承を実現するためという「中継ぎ」論のフィルターをはずして考えるならば、天皇でない草壁皇子と婚姻した女帝からその実子(内親王)への譲位であり、広義の女系での継承と考えられる。」135頁
最期の「広義の女系での継承と考えられる」という言い方に注意してください。学者はふつう不用意に「広義の」という言葉は用いないはずです。おそらく、これは「狭義では男系の継承と言われてきたけれども」ということを含意しているように思われます。
また小林先生は「男系女子」という概念は明治以降のものと主張されますが、ご自身が参考文献に挙げられた水谷千秋氏の著書の38頁の古代の埋葬制のところを読めば、「男系女子」という考え方自体は5世紀頃から存在していたであろうことは理解されるはずです。この点については次の論文も参照のこと/阿部一「古代日本の歴代遷宮と家族・親族システム」25頁(ネット上で公開されています)。