会見で謝罪する齊藤組合長ら=6月4日、福井県福井市の県農業会館

 JA福井県は6月4日、坂井営農経済センター園芸振興課の40代男性職員が、特定の運送業者と共謀し、青果物の架空の輸送運賃を計上する手口で同JAに水増し請求し、約1100万円の損害が発生したと発表した。本店園芸畜産課に所属していた2023年8月分から異動直後の今年4月分まで、職員が毎月約40万~50万円分の架空請求を指示。業者の運送手数料分を除いた大半を得ていたという。

 同JAによると、職員は同課に21~24年度に在籍し、農産物輸送の配車発注や請求書確認を1人で担当していた。23年8月から毎月、下請けの個人業者に架空請求を指示。下請け業者は元請け業者を通じて、実際に荷物を運んだ運賃に、実態のない運送分を加えてJAに請求。架空請求分は職員に現金で渡していた。業者は架空請求分の手数料を不当に得ていた。

 後任の担当者が今年4月分の請求書で、実際には同JAが運んだにもかかわらず、下請け業者が運んだとする架空の輸送明細を5月20日に発見。聞き取り調査を行い、職員が下請け業者と共謀した詐欺行為を認めた。

 職員は聞き取りに対し「旅行費用などの遊興費欲しさや多忙な業務に対する憂さ晴らしのためだった」などと動機を話しているという。同JAは4日付で懲戒解雇とし、刑事告訴を含め警察に対応を相談するとしている。職員は同日までに、被害の全額を弁済した。

 被害額には、元請けに渡った架空請求分の手数料も含まれるが、元請けは関与を否定しているという。ほかに被害がないかなど調査を進め、終了までは元請け業者とも取引を取りやめる。

 再発防止策として、配車発注と請求書の確認作業を2人体制とし、管理職による明細チェックも新たに行う。同JAでは4月にも春江支店職員の解約返戻金着服が明らかになったばかり。相次ぐ不祥事を受け、今月中にも弁護士などの第三者を交えた特別調査委員会を設置して、類似案件の調査を含め再発防止の取り組みを進める。

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 福井市の県農業会館で開かれた記者会見で齊藤雅幸組合長は「2カ月もたたないうちに再び不祥事が発生し、本当に重く受け止めている。原因究明と再発防止に全力で取り組む」と謝罪した。

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