「有難う御座います」はNG
統一表記が気になる職業病
今やLINEは簡単な連絡ツールとして友達間だけでなく、ビジネスシーンでも当たり前のように使用されています。そのやりとりのなかで、個人的にけっこう嫌なのが「統一表記問題」です。
編集の仕事を20年やっていると、文字の統一表記が気になってしまうのです。雑誌でも書籍でも、必ず統一表記が存在します。一冊の本のなかで、例えば「俺」「オレ」とか「一人」「1人」「ひとり」みたいに、同じ言葉なのに毎回違う表記だとなんか気持ち悪いですよね。日常生活のなかでもこの感覚が染みついていて、自分の統一表記では絶対にNGの文字が入った文面が送られてくるのが嫌なのです。
具体的に完全NGなのは「有難う御座います」。そこは絶対に平仮名で「ありがとうございます」でしょう…と思ってしまいます。感謝されてるのに嫌がらせを受けた気分。他にも完全NGはあります。「兎に角」「沢山」は気持ちが悪い。「今日は(こんにちは)」は、「きょうは」ってなんだ?と考えてしまいますからね。普通の人は無意識で変換しているだけだと思いますが、手書きするときに絶対に漢字で書かないだろうという文字は、LINEやメールであっても平仮名であってほしいのです。
漢字を使うか平仮名を使うかは、どちらを使っても間違っているわけではないし、悪でないので個人的な問題で職業病です。だから私と個人的にやりとりがある方が気分を悪くしたらすみません。
ちなみに佐久間的統一表記をもう少し説明しておくと、使い分けの難しい「時」「とき」は、「○○のとき」と使う場合は平仮名です。「時には」と使う場合は漢字と使い分けています。「行う」は基本的に「おこなう」と平仮名表記にしています。これは「おこなった」と書くときに漢字を使うと「行った(いった)」と誤読しやすくなる恐れがあるからです。体の部位は「ヒジ」「ヒザ」はカタカナですが、「肩」「首」「腰」などは漢字。これは週プロ時代の統一表記に基づくものです。
もともと週プロには統一表記が「おこなう」と「闘う」くらいしかなく、記者それぞれの自由でした。人によって書き方がバラバラで、ターザン編集長時代はそれが個性だったと思います。ただ、私はこれが気持ち悪くて、編集長になったときに統一表記をつくりました。「つくる」は「作る」「創る」「造る」と漢字の使い分けが難しいので平仮名にしています。
漢字か平仮名かは、間違いではないのでまだいいのですが、漢字の使い方間違いは直したくなってしまいます。けっこう多くの人が無意識で間違っているのは「○○して欲しい」「○○して貰いたい」といった場合の「欲しい」「貰いたい」に漢字を使うこと。
自分のものにしたいという欲求の「欲しい」は形容詞なので、漢字でもオッケーです。一方、「○○してほしい」の場合は「○○してもらいたい」という意味の補助形容詞なので、平仮名表記が正解です。「貰う」も同様に、何かをいただく場合、「プレゼントを貰う」などは漢字でよいのですが、「○○してもらいたい」と使う場合は、補助動詞なので平仮名になります。迷ったら平仮名にしておけば間違いはありません。
「今日は。昨日は沢山ご馳走して貰って有難う御座いました」みたいなメッセージがきたら赤字だらけでゲンナリしてしまいます。細かくて申し訳ないです。職業病なので許してください。ここで使った「ください」も漢字の「下さい」ではなく平仮名表記です。
最後にもう一つ、記者時代にすごく嫌だったのが選手のコメントで「足もとすくってやるからな!」というやつです。正しくは「足をすくう」で「足もとをすくう」は間違いです。ただ、調査では日本人の8割はこれを知らず、「足もとをすくう」だと思っていることが明らかになっています。意味は通じるので気にしなければよいのでしょうが、間違いは嫌なので記者時代は選手のコメントを直して掲載していました(映像では出てしまいますが…)。
というわけで、今回はちょっと役立つ日本語の話でした。最後まで読んでいただいて有難う御座いました。
…やっぱり気持ち悪い。
おわり。


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