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「ミスター・長嶋茂雄」を育んだ佐倉ものがたり(6)阪神の藤村富美男に憧れた

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 1936年2月20日、千葉県印旛郡臼井町(のち佐倉市に編入)で、長嶋茂雄は産声を上げた。長女・春枝、長男・武彦、次女・藤枝に次ぐ四番目の末っ子だった。

 長嶋は誕生日について聞かれると、決まってジョークを飛ばす。

「生後6日目に日本中を震撼させた二・二六事件が起きるんです。あの日は、たしか雪が降っていましたよ、はい(笑)」

 2600グラムと小さかった赤ん坊は、印旛沼のほとりですくすく育つ。南風が吹くと、沼の水が北へ北へと押しやられ、土が剥き出しになり、ウナギがのたうち回った。茂雄はウナギを手づかみし、バケツに放り込む。夕飯のご馳走になったのはいうまでもない。

 剥き出しになった砂地は、陽に照らされ、自然のグラウンドになり、子供たちは三角ベースに興じた。

 反対に強い北風が吹くと、母・ちよが叫ぶ。

「茂雄、きょうは白波だ。早く帰ってこんと、波にさらわれて死んじゃうぞ!」

 好きな三角ベースができなかった茂雄は7歳上の兄・武彦と家の前でキャッチボールを始める。

 小、中学校時代の同級生、小林光男が思い出す。

「武ちゃん(武彦)が投げる速い球を、茂雄ちゃんは緑色のグラブでバシッ、バシッと受け止めました」

 茂雄にとって緑色のグラブは、父・利からプレゼントされた宝物であった。

 武彦は地元の野球チーム「ハヤテ・クラブ」の1番・レフト。チームメートの斎藤栄一によると、俊足・強肩の外野手だった。

「武ちゃんは試合や練習にいつも茂雄ちゃんを連れてきていました。茂雄ちゃんも武ちゃんにくっついて離れませんでした。武ちゃんがいなければ、茂雄ちゃんは野球選手にならなかったでしょう。茂雄ちゃんは俊敏で、目が良かった。足腰も柔らかいので、どんなゴロにも対応し、内野手向きだと思いました」

 長嶋義倫が振り返る。

「小学校の高学年になると、茂雄ちゃんと一緒に後楽園の巨人対阪神戦をよく観に行きました。京成電車で船橋まで行き、総武線に乗り換えて水道橋で降りる。電車賃は合わせて3円。内野席の入場料は大人が15円で子供が7円。茂雄ちゃんは阪神の藤村富美男(三塁手。本塁打王3回。打点王5回)の大ファンでした」

 藤村の攻守にわたるアグレッシブなプレーが好きで、自分の部屋に写真をベタベタ貼り付けていたという。のちに「ミスタージャイアンツ」と呼ばれる長嶋が、阪神びいきで、「ミスタータイガース」と称された藤村の大ファンだったというから面白い。

松下茂典(ノンフィクションライター)

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