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不登校サービスの宗教的側面

こんにちは。精神科医の津田と申します。
今日は、「不登校サービスの宗教的側面」についてお話ししたいと思います。

不登校に悩む保護者の方が、どうしても引き寄せられてしまう団体があります。
それは、民間の「不登校支援業者」です。

もちろん、中には誠実に支援を行っているところもあります。
しかし一部には、保護者の不安や罪悪感につけ込み、数十万円単位の費用を請求するような業者も存在しています。

特に私が問題だと感じるのは、それらの一部の業者が、まるで宗教団体のような構造を持っていることです。
今回は、この宗教的側面について、共通点を見ていきましょう。


「面談」という密室で、なぜ決断を迫られるのか

不登校業者の多くは、LINE相談や初回カウンセリングという形で、まず保護者を「面談」に誘います。
表向きは「話を聞くだけですから」という柔らかい表現がされますが、実態は異なります。

面談の場は、外部との接点を断ったクローズドな空間です。
ここで、業者側の話をじっくりと聞かされ、最終的には何らかの「決断」を求められることが多いのです。

この構造、どこかで見たことはないでしょうか。

宗教団体が信者を獲得する際にも、よく用いられる手法です。
オープンな説明会ではなく、個別の入信面談を設け、マンツーマンで価値観をすり替えていきます。

一対一でじっくり話されると、人はどうしても相手に引っ張られてしまいます。
特に、「あなたのお子さんには今、これが必要なんです」と言われると、冷静でいられる親はそう多くありません。


「言葉で口説く」ことの危うさ

次に特徴的なのが、彼らが「書面ではなく言葉」で説得してくる点です。

契約書やパンフレットでは語りきれない“心の温度”や“救われた体験”が、口頭で語られます。
過去に支援した家庭の話、自分自身の過去の苦労、そして「この子は変わります」といった未来の希望。

このような語りは、実は論理的な説明ではありません。
それでも人の心は動きます。むしろ、理屈を超えたところで人は動かされてしまうのです。

これは心理学で「情動的説得」と呼ばれます。
冷静な判断よりも、感情を揺さぶることで人を納得させようとする手法です。

宗教でも同じです。
経典よりも、目の前の人が「私はこれで救われた」と語ることの方が、人の心を強く打ちます。

だからこそ、「書いてあること」よりも「語られること」にこそ、警戒が必要なのです。
声の調子、間の取り方、親身な目線。それが感情を揺らし、思考を鈍らせてしまいます。


愛は、時に執着になります

業者の話には、必ずと言っていいほど「お子さんへの愛」が強調されます。
「お母さんの愛があれば、この子は変わります」
「今ここで決断するのが、本当の愛です」

一見すると感動的な言葉に見えます。
しかし私は、ここに大きな問題があると感じています。

愛というのは、本来は自由な感情です。
けれど不登校という状況において、愛が執着に変わることがあります。

「このままではこの子がダメになる」
「私が変えてあげなければ」
「なんとか学校に戻さなきゃ」

そう思うこと自体が悪いわけではありません。
ただ、そこに焦りや将来へのおそれがあるとき、愛は知らず知らずのうちに自分を決められた道に誘導してしまいます。

宗教でも同様です。
健康や安心を得るために信仰を求めるとき、その背景には「不安」があります。

その不安を解消してくれる「教え」や「導き手」が現れたとき、人は大きな代償を払ってでも、すがろうとしてしまいます。


なぜ、数十万円の支払いが「妥当」に感じてしまうのか

実際、私のところに相談に来る方の中にも、「すでに50万円支払ってしまいました」とおっしゃる方がいます。
一見すると高額に見えるこの金額が、なぜ支払われてしまうのか。

その理由の一つは、「希望を見せた上での価格提示」がなされているからです。

人は、「他に方法がない」と思い詰めているとき、提示された価格に対して冷静な判断ができなくなります。
特に、“子どもの将来がかかっている”という意識があると、金銭感覚は一時的に麻痺します。

さらに業者は、「このままでは引きこもりになりますよ」
「今、動かないと一生後悔します」といった“未来への恐れ”を巧みに利用してきます。

宗教における「来世」や「天罰」のように、不確かな未来を材料にした不安商法です。

これを、本人に代わって誰かが見抜くのは難しいかもしれません。
しかし、“高額である”という事実を、もう一度冷静に見直す必要があります。


「成果の見えにくさ」も、依存を生む

さらに、不登校支援におけるもう一つの特徴は、「成果が見えにくい」という点です。
これは、教育や心理支援に共通する課題でもあります。

たとえば、英会話教室なら「話せるようになったかどうか」が成果として判断できます。
しかし、不登校の改善は明確な基準がありません。

「子どもが少し話すようになった」
「外出の頻度が増えた」
「ゲーム時間が減った」

このような“変化”が成果として提示されることもありますが、すべては相対的で、かつ一時的です。
だからこそ、保護者の側も「今の支援をやめていいのかどうか」が判断しにくくなります。

これは宗教的な献金にも似た構造です。
「今月も喜捨をすれば、さらに加護があるはず」と信じてしまうと、自分の判断よりも“流れ”に乗り続けてしまいます。

結果として、「辞める理由」が見つからなくなり、ずるずると支払いを続けてしまう。
これは典型的な“心理的サンクコスト”の罠です。


なぜ「親としての努力」が無限に求められてしまうのか

支援業者がよく使うフレーズに、こんなものがあります。

「お母さんが変われば、子どもも変わります」
「ご家庭の環境が整えば、回復は早いです」
「ほとんどの不登校は親が解決できます」

一見、間違ってはいません。
家庭の影響は確かに大きい。これは心理学の研究からも分かっています。

しかしこの言葉が、親に対して「無限の努力」を要求する装置になってしまうと、とても危険です。

なぜなら、ゴールがないからです。

母親が頑張る。
少し改善が見える。
でもまだ足りないと言われる。

こうして「あなたがもっと変われば、もっと良くなります」という“無限階段”に乗ってしまうと、抜け出せなくなります。

宗教でもよくある構図です。
「今の祈りでは足りない」「もっと信じれば救われる」
そうした“信仰の深まり”が、むしろ苦しみを長引かせるのです。


「自分が悪い」と思ってしまう構造

ここまで見てきたように、不登校支援の一部業者には、宗教に似た構造が見られます。

特に共通しているのは、
「問題の原因はあなたにある」
「それを正すには、これしかない」
という“責任の帰属”のさせ方です。

この構造に巻き込まれると、親は自分を責め始めます。

「私が甘やかしたせいなのかもしれない」
「もっと早く対応していれば」
「こんなに嫌がられているのに、私の何がいけないのか」

責任感の強い親ほど、どんどん自分を追い込みます。

これは、子どものためではなく、親の心を操作する方法です。
“罪悪感”は、人を最もコントロールしやすい感情のひとつです。


では、どう考えればよいのか

ここで勘違いしてほしくないのは、「不登校サービスを全て否定する」ことが目的ではないということです。

支援が必要なケースは確かにあります。
しかし、「何かしてくれる存在」に過度な期待を抱くことが、かえって不安を強めることもあるのです。

私は、こう考えています。

親が“愛”の名のもとにすがろうとしてしまうとき、そこに執着がないかを確かめることが大切です。
子どもの行動や表情に一喜一憂してしまうと、支援の言葉にも振り回されやすくなります。

「今の自分の気持ちは、安心から来ているのか」
「それとも、恐れから来ているのか」

そう問い直すだけでも、見えてくるものは変わります。


まとめ:不安を助長する言葉には、気をつけてください

今回の記事では、不登校業者に見られる“宗教的構造”について考えてきました。

  • クローズドな面談での説得

  • 言葉による情動的な誘導

  • 子どもへの愛を“努力”や“決断”に変換する話法

  • 成果が曖昧で、辞め時が見えない支援体制

  • 親の責任感に付け込む構造

これらはすべて、「不安を抱えた人の心理」をベースにしています。
そして、宗教的な手法と驚くほど共通しています。

ですが、だからといって「関わるべきではない」と決めつける必要はありません。
大切なのは、「自分がどういう気持ちで判断しようとしているか」を、時々立ち止まって見直すことです。

どんな支援も、それが“依存”ではなく“選択”である限り、有効に働きます。
恐れや罪悪感からの決断は、判断を鈍らせます。逆に、冷静さと希望をもって選んだ行動は、心を軽くしてくれます。

面談したとしても、一晩以上回答を遅らせること。
価格と効果が比例しないことを念頭に置くこと。
サービス業者の外部からの評判を見ること。

これらを実践することで、一定の防衛に繋がります。
もし「ここは大丈夫なのか」と不安になった場合はご相談ください。


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