子どもに残す遺書
今日は「子どもに残す遺書」について、その意味と法的手続きについて書いていきます。
悲観的で重たく聞こえるかもしれません。
でも遺書を書くという行為は、親としてとても大切な気づきがたくさん詰まっていました。
きっかけは、私自身が病気になったことです。
そのとき、「自分に何かあったら、子どもに何を伝えておきたいだろう」と思いました。
そして色々と調べながら遺書を書き始めました。
その中で、思ってもみなかったほど多くの感情や気づきがありました。
「子どもに遺書を書く」ことへの違和感
「子どもに遺書を書くなんて、縁起でもない」
そう思われる方も多いと思います。実際、私も最初はそうでした。
日本では「遺書」という言葉が、どうしても「死ぬ前の最後の言葉」という印象と結びついています。
だからこそ、日常からは遠ざけられがちです。
しかしながら、「遺書を書く」という行為には、実際にはもっと穏やかで意味深い側面があります。
一言で言えば、それは「自分の中の子どもへの気持ちを言葉にする」効果です。
よくあるアドバイス:「日々を大切に」「感謝を伝えよう」
育児の情報サイトや本などでは、「日々を大切にしましょう」とか「感謝の気持ちはきちんと伝えましょう」といった言葉をよく見かけます。
たしかにその通りです。大切なことに間違いはありません。
でも、現実には難しい。
子どもが癇癪を起こしたり、言うことを聞かなかったり。
朝は時間がなくて怒鳴ってしまい、夜は疲れて会話もままならない。
そういう毎日の中で、「感謝を伝えよう」なんて言われても、正直ハードルが高いと感じる人も多いのではないでしょうか。
私自身、子どもに優しい言葉をかけるどころか、むしろイライラしてきつく当たってしまうことのほうが多かったです。
「遺書」を書いて見えたこと
親としての想いを自覚する
そんな私が、遺書を書いてみて驚いたのは、「言葉にしようとすると、気持ちが出てくる」ということでした。
たとえば、「ごめんね、怒ってばかりで。でも、本当はあなたのことが大好きなんだよ」
この一文を書くだけで、涙が止まりませんでした。
普段は「言わなくても伝わってるだろう」と思っていた気持ちが、実はまったく言葉にできていなかったことに気づきました。
それは、私自身が自分の「親としての愛情」に目を向けずに、表面的な感情で子どもに接していたという証拠でもありました。
遺書は「死」の準備ではなく、「今を生きる親の確認作業」
こう書くと、「じゃあ、遺書って結局気持ちを伝えるためのもの?」と思われるかもしれません。
でもそれだけではありません。
私はその中で、子どもに「どんな未来を送ってほしいか」も書きました。
そして気づいたのです。
私が本当に願っていたのは、「いい学校に入ること」でも「安定した職業に就くこと」でもありませんでした。
それよりも、「自分で選んだ人生を、後悔しないように歩んでくれたら、それだけで十分だ」と、自然と思えていました。
書きながら、「ああ、自分はこんなふうに子どもの未来を考えていたんだな」と気づく瞬間が何度もありました。
「書く」という行為が、思考と感情を整理する
心理学の世界でも、「ジャーナリング」や「エクスプレッシブ・ライティング(感情表出の書き出し)」という方法が注目されています。
これは、心の中にあるもやもやを紙に書き出すことで、心が落ち着き、気づきを得やすくなるという手法です。
つまり、遺書を書くという行為は、親自身の思考と感情の整理に役立つということです。
しかもそれは、自分のためだけでなく、子どもへの思いを伝えるという目的を持っているから、より真剣になれるのだと思います。
実際、私も何度も書いては直し、文章に詰まっては泣きました。
でも、それがとても意味のある時間だったと、今では思えます。
書きながら見えてきた、子どもとの関係
書いていくうちに気づいたのは、私はずっと「正しい育児」をしようとしていたということでした。
「怒らないようにしなきゃ」
「ちゃんと褒めなきゃ」
「勉強させなきゃ」
でもそれって、どこかで「失敗したくない」「親として間違えたくない」という自分の不安を隠すためだったのかもしれません。
子どもに遺書を書くという行為を通して、私はようやく「子どもを育てることは、なにかの条件を満たすことじゃないんだ」と思えるようになりました。
親としての反省もたくさんあります。
でも、それもすべて含めて、今の私。
それでもなお、子どもへの思いは確かにある。
そう確認できたことが、一番の収穫でした。
遺書と遺言の違い:感情の記録と法的効力
まず基本的な整理として、「遺書」と「遺言」の違いをはっきりさせておきます。
一般的に「遺書」というと、個人的な気持ちや思いを綴った手紙のようなものを指します。
一方で、「遺言」は、財産の分け方や後見人の指定など、法律的な効力を持つ文書です。
私の場合は、感情的な部分(子どもへのメッセージ)は手紙にして、加えて、正式な遺言書を法的手続きを踏んで作成・保管しました。
参考までに、その具体的な流れをご紹介します。
「自筆証書遺言」+「法務局での保管」
遺言書の形式は主に3つありますが、私は次の理由から「自筆証書遺言」を選びました。
自分のペースで書ける
コストが比較的安い
自筆の良さ(気持ちを込めやすい)を活かせる
ただし、通常の自筆証書遺言は、形式ミスで無効になるリスクが高いという欠点があります。
そこで、私は2020年から始まった法務局での保管制度を利用しました。
これは、法務局(国の機関)に遺言書を預けることで、紛失や改ざんを防ぎ、形式不備のチェックもしてもらえる制度です。
この手続きをすることで、自筆証書遺言でもかなり安心して残せるようになりました。
実際の手順(自筆証書遺言+保管制度)
1. 遺言の内容を考える
まずは何を書くか、事前に整理しました。
主な項目としては、以下のようなものです:
相続財産の分配(例:預貯金、不動産など)
もしもの時の後見人の指定(未成年の子どもがいる場合)
伝えておきたい家族への希望(※この部分は法的効力はないけれど記載可能)
ここで注意したのは、「感情的なメッセージ」と「法的に必要な指示」を混同しないことです。
伝えたい気持ちは別の手紙にまとめ、本体の遺言には冷静に事務的な内容を記載しました。
2. 全文を手書き(またはPC+署名)
自筆証書遺言は、全文を自分で手書きする必要がありました。
ただし、2020年の法改正により、「財産目録」部分はパソコンで作成してもOKになりました(要署名・押印)。
私は、遺言の本文は手書きで、財産一覧だけはパソコンで打ち出して添付しました。
形式に合うように、法務省の公式サイトや市販の遺言ガイドブックを参考にしました。
3. 法務局での保管を予約・申請
次に、法務局の遺言書保管所(対応する登記所)に保管を申請しました。
事前にインターネットで予約し、当日は以下のものを持参しました:
作成した遺言書(封筒に入れずに)
本人確認書類(運転免許証など)
保管申請書(法務省のWebサイトで事前に作成)
手数料(1通につき3,900円)
申請時には、法務局の担当者が内容のチェックは行わず、形式だけを確認します。
つまり、法的に有効な体裁になっているかどうかだけを見て、内容そのものには立ち入りません。
申請が受理されると、正式に保管され、証明書(保管通知)を受け取ることができます。
家族にはどう伝えたのか
遺言書を作ったあと、私は夫と実家の母には保管場所を伝えました。
また、子どもが将来読めるように、「手紙としての遺書」も同封し、別の場所に保管しました。
ここで大事なのは、「遺言書の存在を信頼できる人に知らせておくこと」です。
法務局に保管しても、誰にも知られていなければ、いざという時に発見されない可能性もあるからです。
なぜ今、遺書を書くのか
「でも、うちはまだ若いし、元気だし、遺書なんて必要ない」と思われる方もいるかもしれません。
たしかに、私もそうでした。
けれど実際には、いつ何が起きるかは分かりません。
そして何より、「何かあってから」では、書けないんです。
気力がないかもしれないし、時間がないかもしれない。
だからこそ、元気なうちに、自分の気持ちを残しておくというのは、とても意味のあることだと感じました。
遺書を書くことで、今が大切に思えるようになる
ここまで読んでくださった方に、無理に「あなたも今すぐ遺書を書いてください」とは言いません。
ただ、ひとつの方法として、「子どもへの思いを言葉にする時間」を持つことは、本当におすすめできます。
それは親としての自分を見つめ直す機会であり、同時に、子どもとの関係性を再確認するきっかけにもなります。
何より、「今日も一緒にいられることがありがたい」と思えるようになるのです。
まとめ
子どもに遺書を書くというのは、決して「死」を前提とした暗い作業ではありません。
むしろ、親である自分の思いを「生きているうちに伝える」ための、とても前向きな作業です。
よく、「ちゃんと伝えたかったのに、伝えられなかった」という後悔を耳にします。
でもそれは、今のうちにできることでもあります。
もしあなたが、日々の育児に疲れていたり、子どもに対する自分の気持ちがわからなくなっていたりするなら、
一度、静かな時間をとって、自分の言葉で子どもに手紙を書いてみてください。


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