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2024.10.29
イベントレポート|世界メンタルヘルスデー・シンポジウム「AI×メンタルヘルス 活用最前線」
本シンポジウムは、一般社団法人AIメンタルヘルスケア協会(通称:AIMH)の発足を記念して、AIを活用したメンタルヘルスケアの最新動向をテーマに行われました。
AIMHは、AIを活用したメンタルヘルスケアの普及と発展を目指し、新たに設立された非営利団体です。
AI技術の発展に伴い、心理療法やカウンセリングにおける効率化や個別対応、予防的なサポートなど、AIを活用した新しいメンタルヘルスケアの取り組みが注目を集めています。そこで、今回のシンポジウムでは「AI×メンタルヘルス」に詳しい専門家や企業の代表者の方々に、最新のAI技術と応用可能性について解説していただきました。
本シンポジウムには、業界関係者やメンタルヘルスの専門家、一般参加者など、幅広いジャンルの方々が参加。参加者のみなさんとAIがもたらすメンタルヘルスケアの未来を学び、探る場となりました。

※全文の書き起こしではなく、トークを抜粋し編集しています。
オープニングの基調講演では、メンタルヘルス分野でのAI活用の全体像を、髙橋氏に共有していただきました。

心理士でもある髙橋氏は治療にあたり、線引きが曖昧な「疾患の治療」と「メンタルヘルスケア(健康増進)」を意識的に区別しているそうです。講演でも2つを区別した上で、AI活用の全体像を説明してくださいました。
疾患の治療では、治療にまつわる情報収集や診断の精度向上など、主に診断補助でAIが活用されています。その効果と安全性の研究が進んでおり、各社が事業に乗り出している状況です。
一方、メンタルヘルスケアでのAIの活用法は、主にセルフケアのサポートです。そのサービスも数多く展開されていますが、安全性に関する研究・議論はあまり進んでいません。「いかに安全性を保ちながら、今の流れをキープしていくかに関心がある」と髙橋氏は言います。
また、社会全体に目を向けると、今後はAI規制法が導入され、規制が厳しくなることで各企業が市場から撤退する恐れも。「規制導入と活用促進を両立させる難しさを感じている」などのお話もありました。
信州大学教育学部 准教授 髙橋史
中島心理相談所 所長 中島美鈴
徳島大学 大学院社会産業理工学研究部 准教授 山本哲也
AI技術とメンタルヘルスケアの最新動向について、髙橋氏、中島氏、山本氏にテーマ別に発表していただきました。
「AI活用『してはいけない』の最前線」のテーマで発表したのは、子どものメンタルヘルスを専門とする高橋氏。
AIが思春期の子どもの相談役になる一方、AIの誤作動が健康を害する可能性を指摘。ときには良かれと思ったAI導入が、社会の悪影響となることも。そうならないために、人間が介入できる仕組みをつくるだけでなく、「社会により良い結果をもたらすかどうか」を慎重に議論する必要がある、と言います。

ADHDを抱える成人向けのAIアプリについて発表したのは中島氏。
ADHDの治療には、心理的支援(とくに認知行動療法)も推奨されており、アプリの併用で療法に取り組みやすくなりました。ところが、その効果は持続しづらかったため、AIを活用したADHD支援アプリを開発することに。「生涯にわたって生活全般に困りごとが続くADHDのような障害にこそ、AIが果たす役割は大きい」と話します。

セッションの最後は、山本氏による「メンタルヘルスケアにおけるAIと3Dエージェントの新たな可能性」についての発表です。
バーチャルキャラクターが人間に癒しをもたらす存在になり得る今の時代。山本氏は、自然な応答を生成できる「生成AIを活用した3Dエージェント」の開発を行なっています。対話による悩みの軽減などに効果を期待できる一方、課題もあります。そのため、活用には留意や議論が必要だと訴えました。

本セッションの最後には、登壇者の3名が、
AIを活用したADHD支援アプリや3Dエージェントを使うことで、メンタルヘルスケアに気軽に取り組んでもらいやすい
3Dエージェントは、健康的な人の話し相手として役立つ可能性がある
バーチャルだからこそ話しやすいというメリットも。専門家に相談しづらい人を支援できるのは、デジタル技術を活用した支援の強み
など、それぞれの発表に対して意見を交わし合いました。

PharmaX株式会社 代表取締役 辻裕介
株式会社アトラエ Wevox事業部 AI責任者 越智涼
株式会社Awarefy 取締役CTO 池内孝啓
続いては、生成AIを活用したメンタルヘルスケアに取り組む企業によるセッションです。辻氏、越智氏、池内氏に、各社の取り組みを発表していただきました。
辻氏は起業後、かかりつけ医療ブランド「YOJO」を立ち上げました。
起業前の勤務医時代は、「医師が忙しくて、患者の話を十分に聞けない」という課題を感じていたそうです。医師が常にそばにいる安心感を覚えてもらえるよう、AIを活用した医療体験を提供しています。AIが薬剤師をサポートすることで、迅速かつ適切なアドバイスや継続的なフォローアップを実現。「将来的にはAIシフトを加速させるなどして、かかりつけの医療プラットフォームを構築したい」と先を見通します。

組織のエンゲージメント向上を支援するプラットフォーム「Wevox」で、AI責任者を務めるのは越智氏。
Wevoxは組織のパフォーマンスを高める4つのプロセス(たずねる・わかる・はなす・できる)をモデル化しています。「わかる」のプロセスでAIを活用し、データの解釈を支援しているそうです。AIがチームの状態を分析し、必要な行動を示します。このアプローチにより、エンゲージメントスコアの向上が見られた事例も。越智氏は、「AIを活用したシステムで、各組織が自らのエンゲージメントを高めるプロセスを支援したい」と話し、AIが自主的な改善を促進する手立てになることを伝えました。

Awarefyからは取締役CTOで、AIMHの協会理事も兼任する池内が登壇。
誰もが手軽にメンタルケアを受けられる、AIと心理学を組み合わせたスマートフォンアプリ、AIメンタルパートナー「アウェアファイ」を紹介しました。また、2023年から搭載した「アウェアファイAI」についての紹介も。AIチャットやAIコーチングなどAI技術を使った機能によって、個別最適化されたサポートが実現できることを解説しました。
加えて、今後もAI活用の課題が山積するなか、「AIをよりよく活用し、共存するにはどうすればいいかを、AIMHなどを通じてステークホルダーと探していきたい」と話します。

一般社団法人AIメンタルヘルスケア協会 代表理事 小川晋一郎

セッションの締めくくりとして、同日に発足した一般社団法人AIメンタルヘルスケア協会の活動について、小川が説明を行いました。
小川は、「AIとメンタルヘルスに関心を持つ人々が集まり、情報共有や議論を行なう場を提供したい」という思いから当協会を発足。事業者のみならず、アカデミアや心理系・法律系の専門家など多様なステークホルダーが参加し、幅広い視点からの議論を促進できる、当協会の特徴を説明しました。
活動の一環として、現在はメンタルヘルスに特化したAI活用のガイドライン作成に注力。経済産業省が作成したものをベースに、メンタルヘルスに特化したガイドライン作成を目指しており、「事業者が実際に活用できる形に落とし込みたい」と言います。加えて、作成したガイドラインは技術の進化に伴い、継続的な改定も予定していることを説明。関心のある企業や個人に、議論に参加することを呼びかけました。
また、AIに関する勉強会やコミュニティの場を設けることも予定。AIの情報が日々アップデートされるなか、効率的に知識を共有・議論することで、会員が最新のAIを活用しやすくなることが目的です。
今後、個人向けの参加も案内予定です。現在は、法人会員を募集中で、多くの企業と議論しながらガイドライン作成を目指していることを説明しました。

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AIメンタルヘルスヘルスケア協会では、今後もガイドライン策定を始め、AIのメンタルヘルスケア活用についての情報発信やセミナー、勉強会などを開催していく予定です。
今後のイベント情報は、公式ホームページ内で発信していきますので、ぜひチェックしてください。
※1:1992年、世界精神保健連盟は、メンタルヘルス問題に関する世間の意識を高め、偏見をなくし、正しい知識を普及することを目的として、10月10日を「世界メンタルヘルスデー」と定めました。その後、世界保健機関(WHO)も協賛し、正式な国際デー(国際記念日)とされています。
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