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博士課程の失敗記を30個集めて、教訓を抽出した

わたくしごとですが、今夏から博士課程での研究生活が始まります。不安ももちろんありますが、推薦書を書いてくださった先生からの「しっかりと研究に取り組んでいけば、自ずと道は開けてくることでしょう」という言葉に勇気をもらい、同時にワクワクしています。

ところで、研究者の世界を遠くにみるとき、輝かしい成功物語が自然と目に入ってくるものです。画期的で独創的な発見、トップジャーナルへの掲載といったストーリーは私たちの道を照らしています。でも、ふと立ち止まって思うのです。研究室で日々向き合う現実は、もっと地味で、試行錯誤の連続なのではないか、と。うまくいかない実験、予期せぬデータ、指導教員とのすれ違い。数えきれないほどの小さな失敗こそが、研究生活のリアルであるはずです。

そもそも成功への道筋は人それぞれで、誰かの成功体験をそのまま自分のものにするのは難しい。しかし一方で、「ここでつまずいた」「こんな落とし穴があった」という失敗談には、普遍的な教訓が隠されているのではないでしょうか? キラキラした成功よりも語られることの少ない失敗にこそ、学ぶべき知恵があるように思えてなりません。

というわけで、本格的な研究に踏み出す前に、私はどうしてもこれをやっておきたいと思いました。博士課程での研究という営みを行ってきた方々の悩みや失敗談を集め、その貴重な経験から学びを抽出することです。この記事では私が集めた博士課程での研究にまつわる30のリアルな体験談と、そこから見える教訓を、皆さんと共有したいと思い、筆を取った次第です。


抽出できた教訓のまとめ

以下は30個の体験記を読んで、まとめていったものに頻出した教訓を自分なりに文章で書いたものになります。参考文献は末尾に添付しています。

◾️ 心身の健康維持

博士課程の経験談から最も頻繁に語られるテーマは、まず「心身の健康維持と自己管理の徹底」です。

研究生活では、何よりも心身の健康を最優先に置き、過度な労働や不健全な慣習に流されることなく、持続可能な生活習慣を確立することが不可欠であると繰り返し強調されています。

またわたしの心に強く残ったのは、多くの学生が経験する「能力や研究の価値」を著しく疑う困難な時期、いわゆる「The Valley of Shit」の存在を認識し、それは一時的な現象であると理解した上で、機械的にでも研究活動を継続することが乗り越える鍵となるという体験談です (28)。博士号取得は、必ずしもトップレベルの研究成果を常に求められるものではなく、まずは学位授与の条件を満たすことを現実的な目標とし、研究サイクルを回して練度を高めることといった割り切りも時には必要とも言われています (7)。

その他

  • 精神的に困難な状況に陥った場合には、休学や環境を変える(例:引っ越し)といった能動的な対処が、状況改善や研究活動の再開に繋がる可能性がある (7)。

  • 博士論文や口頭試問に対する認識を、「完璧でなければならない壮大な論文」や「戦い」から、「合格すれば良い大きなレポート」「自身の研究について語る機会」へと転換することで、心理的負担を軽減 (27)。

  • 研究以外の活動への偏重も注意が必要ですが、趣味や学外の人間関係も精神的な安定を支える重要な要素となる (5)。

◾️ 指導教員との関係構築

次に頻出するのは「指導教員との建設的な関係構築と、それが困難な場合の代替サポートの模索」です。指導教員との定期的かつ積極的なコミュニケーションは、研究の方向性を確認し、進捗の遅れを防ぐために不可欠であり、完全に定期的であることが重要だとされています。進捗が芳しくない場合でも積極的に報告することで、指導教員との関係を維持すべきであると推奨されています (9)。

しかし、指導教員からの十分な指導やフィードバックが得られないと感じる場合は、学生自身が積極的に他の研究者や支援者を探し、対話や議論の機会を確保する必要があるという指摘もあります (16)。指導教員とのトラブルは研究の障害となるため、早期に大学の支援制度を利用し、指導体制の見直しを求めるべきであるという教訓や (22)、先輩研究者(D1の人がD3を頼る)を頼ることで精神的安定が可能になったという経験談も共有されています (18)。

これは余談なのですが、以下のブログに指導教員との関係について書かれた良さそうな本をみつけたので、それも読んでみたいと思っています。

学生の心構えとして、指導教員から良いアドバイスをもらうための方法や、指導教員を学生である自分に合わせて教育する必要性について論じています。

紹介されている本 -
博士号のとり方[第6版]

◾️ 現実的な研究計画

続いて「現実的な研究計画と、状況に応じた柔軟な進捗管理、そして失敗からの学び」が挙げられます。進捗が著しく悪い場合、テーマ変更は修了のための有効な戦略となり得るものの、学位取得を優先したテーマ変更が研究への興味喪失という新たな葛藤を生む可能性も認識しておく必要があります (1)。また実験仮説は小規模な実験によるデータで裏付けた上で、本格的な検証計画へと進めるべきであり、これを怠ると時間とリソースを浪費し、研究が停滞する失敗が述べられています (4)。

また印象的な言葉として理想的でなくとも早期に論文として成果をまとめることは重要であり、「誰かの劣化版でもいいから、早めに1つ目の結果を出すべきだった」という言葉が記されていました (5)。こういったマインドを上記の指導教員の項とあわせて考える、つまり指導教員との期待値のすり合わせを行うことも重要だと考えられます。

その他

  • 主要な研究テーマの進捗が停滞するリスクに備え、博士課程においては、短期的に成果を出しやすい副次的なテーマを並行して持つことも、学位取得やキャリア継続のための戦略として有効 (3)。

  • うまくいかない実験や予期せぬデータ、いわゆる「失敗」と見えるものの中にこそ、その原因を深く究明することで新たな知見が生まれ、ネガティブな結果にも学術的価値を見出す視点が重要 (30)。

  • 確立された実験手技であっても、自身の研究対象や環境に合わせて最適化し、その妥当性を自ら検証する作業は不可欠 (4)。

  • 先行研究において求められる課題や手薄な領域に取り組むことが、研究推進において有効 (2)。

◾️ 孤立を防ぐために

そして「孤立を防ぎ、周囲の人的サポートやネットワークを積極的に活用すること」も、多くの体験談のなかで重要だと語られています。

学術的な側面においても困難に直面した際には、孤立せず周囲に助けを求めることが重要であり (5)、早期の相談が状況を好転させた可能性を示唆する体験談もあります (6)。博士課程の学生が抱える問題や困難は、個人的なものと捉えがちですが、実際には多くの学生が同様の経験をしており、その経験をシェアすることの重要性が指摘されています (14)。

特に印象に残ったこととしては、具体的な研究テーマに関する悩みを直接共有できる機会が少ない場合、孤独を感じやすい状況が生まれ得ることを認識するというのは、見落としがちだが重要だなと思いました (7)。

◾️ お金とキャリアプラン

最後に「経済的基盤の確保と、将来を見据えたキャリアプランニングの重要性」も、研究に集中できる環境を作る上でやはり見過ごせないようです。

博士課程進学に伴う経済的負担は、研究活動や精神的安定に影響を及ぼすため、利用可能な支援制度の事前調査と資金計画が不可欠であると強調されています (12)。

また、博士課程進学時には、計画通りに進まなかった場合に備え、具体的な代替キャリアパスや進路変更の計画をあらかじめ準備しておくことが、実際に困難に直面した際に将来を考える精神的余裕がない可能性を考慮すると、リスク管理の観点から重要であると推奨されています (6)。博士課程で培われる能力は論文業績に限らず多岐にわたるため、それらを客観的に把握し、言語化する努力が自己肯定感とキャリア形成に繋がるとされています (8)。

学会参加をキャリアに活きる関係構築に活かせず後悔する声もあり、能動的なコミュニティ形成の重要性も示されています (29)。


〜抽出できた教訓まとめおわり〜


体験談を読み解き、そこから教訓を抽出するという作業は大きな学びとなりました。

これらの教訓は、単なる「失敗しないためのリスト」ではなく、様々な困難に直面しながらも、研究と真摯に向き合ってきた先輩たちの血の通った声そのものだと感じています。目的は教訓を得ることでしたが、そのなかには胸を打つメッセージもたくさんあり、見返したい記事ばかりです。

きっと私自身もうまくいかない実験に苦しんだり、あるいは指導教員とのコミュニケーションに悩んだり、時には自信を失いそうになったりすることもあるのだと思います。そんな時今回集めた記事のなかの言葉が取るべき行動の指針を示してくれるとともに、心を軽くしてくれるような気がしています。そして、この記事がこれから同じように博士課程という道に足を踏み入れる皆さんにとっても、それぞれの困難な局面で何かしらの気づきや、次の一歩を踏み出すためのヒントになればこれほど嬉しいことはありません。


以下、参考文献

1. 博士課程を終えた雑感想

・研究の進捗が著しく悪い場合、テーマ変更は修了のための有効な戦略となり得るが、学位取得を優先したテーマ変更は、研究への興味喪失という新たな葛藤を生む可能性がある。
・度重なる失敗や焦燥感は研究の質に悪影響を及ぼすため、早期の自覚と対策が求められる。→失敗が重なり心が乾き、研究が雑になったことを自覚し、最終的にその状態では研究継続が困難になったと記述している。

2. 研究失敗記

古典的テクストの面白い箇所発見のみを理由とした解釈研究の開始は、長期的展望の欠如に繋がり得る。筆者はJ・S・ミルの研究で論文は書けたが、継続可能なテーマを見出せず、研究テーマの再設定を余儀なくされたと記述している。簡単に言って仕舞えば研究計画の重要性。
・独自性ある主張の提示を至上命題とするのではなく、先行研究において求められる課題や手薄な領域に取り組むことが、研究推進において有効である。先行研究が扱っている本質的な問題(ことがら)について、あなた自身の考察や貢献を展開するということ。基本的だが、重要で、忘れがちなことなので胸に刻んでおく必要がある。

3. 「研究失敗記」感想

・主要な研究テーマの進捗が停滞するリスクに備え、博士課程においては、短期的に成果を出しやすい副次的なテーマを並行して持つことも、学位取得やキャリア継続のための戦略として有効である。
・独創性の高い研究テーマは、その新規性ゆえに学術コミュニティからの即時的な評価や共感を得にくい場合があることを認識し、その価値を客観的に検証し伝え続ける粘り強さが求められる。と、同時にそういうものだ(短期的には)と考える必要もあるだろう。一個目のテーマとも類似し、人々の理解が育ってきた分野にも足を置いておくことがキャリア形成・モチベーション維持という観点では重要という気がする。

4. 半年を犠牲にして、研究でやっちゃいけないことが分かったという話

・仮説は小規模な実験によるデータで裏付けた上で、本格的な検証計画へと進めるべきである。仮説を裏付けるデータを取らずに大規模実験に進んだ結果、時間とリソースを浪費し、研究が停滞した失敗が述べられている。
・大規模実験は、その遂行が他の研究活動を圧迫しないよう、リソース配分を慎重に計画する必要がある。一度に大規模な実験を行うことで実験スペースが占有され、他の実験が進められなくなるという悪循環に陥った事例が報告されている。
・確立された実験手技であっても、自身の研究対象や環境に合わせて最適化し、その妥当性を自ら検証する作業は不可欠である。自身の系での検証を怠った結果、基本的な実験段階(RNA抽出)で問題が多発したことが記されている。

5. 博士課程の失敗体験談

初期目標として、理想的でなくとも早期に論文として成果をまとめることは重要。「誰かの劣化版でもいいから、早めに1つ目の結果を出すべきだった」という金言が書かれていた。
研究以外の活動に偏りすぎると、本質的な成果が伴わなくなるため注意が必要。
困難に直面した際は、孤立せず周囲に学術的な助けを求めることが重要。趣味や学外の人間関係も、精神的な安定を支える要素となる。

6. アメリカ大学院博士課程⑨ 最終回 〜博士課程進学は失敗だったのか〜

・筆者は博士課程を辞める際に友人に相談しなかったことを後悔しており、早期の相談が状況を好転させた可能性を示唆している。
・博士課程進学時には、計画通りに進まなかった場合に備え、具体的な代替キャリアパスや進路変更の計画をあらかじめ準備しておくことが推奨される。筆者は実際に困難に直面した際には将来を考える精神的余裕がない可能性を指摘し、事前に「解像度高めで計画が立てられるとかなり良い」と述べている。これはリスク管理の観点から重要である。

7. 博士課程で得られたもの・失ったもの

・研究テーマ遂行に必要な既存スキルに加え、新たなスキルを主体的に習得し続ける必要がある。筆者はハードウェア開発のために電子工作や3Dモデリングを自主的に学んだ経験を述べており、博士課程における継続的な自己学習の必要性を示している。
・具体的な研究テーマに関する悩みを直接共有できる機会が少ない場合、(研究上の)孤独を感じやすい状況が生まれ得ることを認識しておくべきである。自発的なコミュニティ形成の重要性。
・博士論文として複数の研究成果をまとめる際には、各研究テーマ間の一貫性や全体としてのストーリー構築が重要。筆者は3本の論文のテーマに一貫性が薄く、博士論文としてまとめるのに苦労した経験を語っている。
・博士課程で精神的に困難な状況に陥った場合、休学や環境を変える(例:引っ越し)といった能動的な対処が、状況改善や研究活動の再開に繋がる可能性がある。
・博士号取得は、必ずしもトップレベルの研究成果を常に求められるものではなく、まずは学位授与の条件を満たすことを現実的な目標とし、研究サイクルを回して練度を高めることが重要である。「トップカンファレンスに通らなくてもいい、学位を授与されるための条件を満たせばいい」と述べらrている。

8. 博士課程のラスト1年で自信をなくしている

・後輩指導でなく、自身の研究時間と精神的リソースを優先的に確保すべきである。
・博士課程で培われる能力は論文業績に限らず多岐にわたるため、それらを客観的に把握し、言語化する努力が自己肯定感とキャリア形成に繋がる。筆者は当初「何もない」と感じているが、修士課程からの広範な学習や実験スキルを振り返っており、自身の持つ多様な能力を認識することが重要である。
・研究の進捗速度や成果は、テーマの難易度や個人の状況によって大きく変動するため、短期的な結果や他者との比較のみで自己の価値を判断すべきではない。→テーマが困難なのは確かに期限付きだと辛い。一方でテーマの困難性や「逃げ道」について指導教員と事前に話し合っており、このような対話が研究遂行上の不安を軽減していると考えられる。

9. 凡人による社会人博士課程生存戦略

・「生存率の8割くらいは入学前戦略によって決まる」→論文読み、研究のやり方の勉強、教科書読み、ゼミ参加、論文のドラフトの執筆
・著者は「毎日小さくてもいいから進捗を出す」ことを在学中の戦略として挙げ、再始動のエネルギー消費を避けるためにも継続が肝要であると述べている。
・指導教員との定期的かつ積極的なコミュニケーションは、研究の方向性を確認し、進捗の遅れを防ぐために不可欠である。完全に定期的であることが重要。
・定期的なミーティングを進捗の〆切として活用し、進捗が芳しくない場合でも積極的に報告することで、指導教員との関係を維持すべきであると著者は推奨している。
・研究仲間との定期的な進捗報告や情報交換は、孤独感を軽減し、研究遂行のモチベーション維持に貢献する。
・指導教員との相性や指導方針は博士課程の研究生活に大きな影響を与えるため、可能であれば入学前に指導教員の人となりや研究室の環境を理解しておくことが望ましい。

10. 【山内研メンバーの一日】博士課程専用ライフスタイル

・短期的な成果のみを追求するスタイルは、長期的な深まりを阻害する可能性。時間的制約から関連性の高い文献に偏る「突貫工事スタイル」の限界を示唆。
・博士課程では、固定的なスケジュールではなく、変動的な予定に対応できる柔軟な研究計画と生活習慣の確立が求められる。
・「研究日確保スタイル」が、勉強会や面会といった不定期かつ優先度の高い予定によって容易に崩壊した経験は、硬直的な計画の非現実性を示している。→「一日の単位を変える」「平日と週末の概念を捨てる」「しんどいなと思ったら週末扱いにする」「午前中にカフェでアンプラグドな環境を作り研究に集中」

11. 博士課程を中退した私が「大学院に進学して無駄だった」と後悔していること3選

・研究活動においては自身の心身の健康を最優先に置き、過度な労働や不健全な慣習に流されず、持続可能な生活習慣を確立することが不可欠である。
筆者が「休みなく研究したあの日々」を後悔し、体調不良で中退した経験は、健康を犠牲にした研究活動が最終的に破綻を招くことを示している。
・研究室における理不尽な要求やアカデミック・ハラスメントに対しては、自己防衛のために我慢することなく、外部への相談や環境からの離脱も含む断固たる対応を検討すべきである。

12. 博士課程3年間の総括

・主著論文の少ない助教を頼った結果、研究指導で苦労した経験から、論文数が教員の技術と知識を判断する材料になると述べている。著者は、信頼できるラボスタッフや共同研究者の存在が救いであったと述べており、人的サポート体制の重要性を示唆している。
・博士課程進学に伴う経済的負担は、研究活動や精神的安定に影響を及ぼすため、利用可能な支援制度の事前調査と資金計画が不可欠である。

13. 博士課程(PhD)の失敗は成功の原動力

・博士論文の執筆は、従来の課題とは異なり、自ら問いを設定し長期間にわたり孤独に探求する過程であり、アイディアの行き詰まりや執筆の停滞といった具体的な失敗体験を語っている。
・研究や論文執筆が行き詰まった際には、基本に立ち返り、達成可能な小さな課題を設定して取り組むことが、スランプを克服する有効な手段となり得る。「5段落で論について概説する」といった具体的な小課題をこなし、書く力を取り戻したと述べている。
教訓:博士課程における日々の研究活動は、短期的な成果が見えにくい失敗の連続のように感じられても、思考の整理や課題発見に繋がり、長期的な成功への布石となる。

14. なぜPhDを辞めるの?

・筆者は、自身の分析と過去の研究を比較し、指導者の問題やモチベーションの喪失などが普遍的な退学理由であることを示している。
・博士課程の学生が抱える問題や困難は、個人的なものと捉えがちだが、実際には多くの学生が同様の経験をしている。博士課程を辞めるという決断やその過程で抱える葛藤は、当事者にとって語り難いものであり、社会的な孤立を招きやすい。→シェアの重要性。

15. 博士課程進学は成功か失敗か?後悔しないために考えるべきこと

・博士課程進学の動機がスキル獲得や自己の限界への挑戦といった個人的欲求(自利)に偏っている場合、研究者としての長期的な目標や社会貢献(利他)の視点が欠如し、将来のキャリア選択において迷いや疑問が生じる可能性がある。

16. Worst Nightmare Scenario: Failing Your PhD (and How Not To)

・指導教員からの十分な指導やフィードバックが得られない場合、学生は積極的に他の研究者や支援者を探し、対話や議論の機会を確保する必要がある。
・博士論文の最終的な質は、指導教員からのフィードバックを真摯に受け止め、建設的な議論を通じて自身の研究を深めていく学生自身の主体的な取り組みにかかっている。
・学生と指導教員の双方が研究に対して怠慢であったり、関心が薄かったりする場合、外部審査員によって論文が不合格となるリスクが高まる。「If you skip this, because you are lazy, fed up or out of time or money, and you have supervisors who are also lazy and busy, and don’t care so much, you may end up in a situation where the external examiner gives the thumbs down.」

17. 私の考える博士課程の闇 ~私が覗いた深淵と、先輩の嵌った沼~

・著者は「社会人の友人と、まだ学生の自分」という状況に触れ、一般企業に就職した友人との疎遠や、楽しむことへの罪悪感を吐露している。
・博士課程における最大の悩みは研究の停滞であり、それは卒業や就職といった将来の問題に直結し、学生自身の能力不足への疑念や自己攻撃へと繋がりやすい。著者は「研究が進まない→卒業できない→オーバードクター→学費がかさむ、就職できないetc.」という負の連鎖を提示し、「私はもともと研究者になんてなれる実力はなかったのではないか」と自問した経験を語っている。
・「先生との関係がすべてを握る」と強調し、先輩の事例を挙げて、信頼関係の欠如が「自分の業績のためだけにあの人は投稿を遅らせているのではないか」という疑念や、「先生も苦しめばいい」という破滅的な思考に繋がる危険性を示している。
・博士課程の学生は、経済的困窮、社会的孤立、研究のプレッシャー、自己能力への疑念、そして指導教員との関係性といった複数の要因が複雑に絡み合い、精神的に極めて不安定な状況に陥りやすい。
自身の経験として「何をしても涙が止まらない状態になって、カウンセリングルームに駆け込みました」と告白し、その時の心理状態を「すでにちょっとおかしい」と振り返っている。

18. 博士課程に進んだことを死ぬほど後悔して、吹っ切れた話

・経済的支援や進路に関する情報は、指導教員や他者の経験談のみに頼らず、自身で公式情報源を確認し、多角的に評価する必要がある。教授の言葉を鵜呑みにし経済支援の申請に失敗した経験から、情報の自己検証の重要性を強調している。
・筆者は指導教員との関係が悪化した後、先輩研究者を頼ることで精神的安定と研究の継続が可能になったと述べている。
・自身の能力と限界を認識し、独自のペースで研究に取り組むことが重要である。「自分のペースでやろう」と意識を変えることで精神的な安定を取り戻した経験を語っている。
・早期に研究への不適性を感じつつも具体的な行動に移さず後悔しており、進路に関する自己評価と再計画の重要性を示している。→不適正ながら研究をドライブしていく方法の模索が大切。下記にもつながる。
・精神的困難に直面した際には、環境調整(人間関係、タスク管理)、思考の転換、外部の知見(読書など)の活用が、状況改善の一助となり得る。

19. Academic Challenges: How to Overcome PhD Problems and Academic Failure

「まず、私たちはすべてにおいて優秀になることはできません。」という金言。
・専門分野を変更して博士課程に進む場合、基本的な知識の不足が面接での課題となり得るため、事前学習や関連経験の提示が有効である。面接で基礎知識(DNAの正式名称)を問われ答えられなかった経験から、新分野挑戦時の基礎固めの必要性を示唆している。
・筆者は文献手法の再現に失敗後、別の手法で成果を上げた経験から、状況に応じた適応性と代替計画(プランB)の準備が重要であると指摘している。
・学外の機器利用における制約や、学内の新規導入機器が利用できなかった経験を通じ、アクセスが容易な機器を中心とした研究計画の重要性を強調している。
・論文投稿におけるリジェクトは研究プロセスの一部であり、個人的な失敗と捉えず、目標達成のための挑戦と捉え、粘り強く投稿を続けることが重要である。論文リジェクト経験を「失敗」ではなく「野心的な目標設定の証」と捉え直す。
・装置に関する入念な事前検証とリスク管理の必要性を指摘している。
・博士課程における研究テーマや論文タイトルなど、自身のキャリアに影響する重要な決定事項に対しては、他者の意見を尊重しつつも、最終的には自身の考えを明確に主張することが後悔を避けるために必要である。
・研究上の困難は個人的な失敗ではなく克服すべき課題と捉え、早期に指導教員と共有し、計画的に対処することで、より大きな問題への発展を防ぐことができる。
・博士課程での学術的課題を軽減するには、関連文献の徹底的な理解、計画に基づいた賢明な努力、そして適度な自己肯定感の維持が不可欠である。

20. What I learned from failing my PhD

https://thecritic.co.uk/what-i-learned-from-failing-my-phd/

「どうして私たちはこんなに愚かだったのでしょう。自分が十分に優れているかどうかばかり気にして、時間を無駄にしていたのでしょう」
・博士課程開始時に抱く過度な自己卑下や完璧主義は、研究遂行能力を著しく低下させるため、現実的な自己評価と段階的な目標設定が不可欠である。
筆者は「自分は十分賢くないのではないか」という不安から研究に着手できず、結果として不十分な論文提出に至った経験を語っており、初期の心理的障壁の克服が重要であることを示している。
・「ドイツ文学と文化の全て、あるいは文学と文化全般について全て読まなければならないのか」という強迫観念に圧倒され、研究活動が停滞した経験を述べており、研究範囲の現実的な設定の失敗が原因の一つであったことを示している。
・筆者は不安から逃避するために時間を浪費し、本質的でない作業に没頭した結果、論文の質が低下したと自己分析しており、自己管理の失敗が博士課程の成否に直結することを示している。
・他者の権威や難解な学術的表現に萎縮し、自身の理解や意見を不当に低く評価することは、知的な探求を妨げるため、批判的思考を持ち、自らの思考を尊重する姿勢が重要である。
・博士号取得という結果のみを追求するのではなく、その過程で自身が何を真に探求し、何を表現したいのかという本質的な問いに向き合うことが、学位の個人的な意味と真の価値を見出す上で不可欠である。

21. How to Fail a PhD

・自身の専門知識やスキルが研究課題に対して不足している場合、それは研究遂行における深刻な障害となり得るため、進学前に客観的な自己評価と必要な準備を行うべきである。文学理論やアラビア語能力の不足が「手に負えない」感覚を生み、研究を妨げたと述べている。
・研究方法論は研究全体の骨子を成すため、初期段階で確立し、それに沿って研究を進めなければ、後々大きな矛盾や手戻りを生じさせる。
・筆者は指導教員への遠慮や個人的感情から問題を共有できず、また指導教員の関与も不十分であったことが、研究の障害となったとしている。
・経済的な不安定は研究への集中を著しく妨げるため、博士課程期間中の安定した生活基盤を確保する計画を事前に構築する必要がある。
・博士論文執筆には具体的なマイルストーンと現実的なスケジュール管理が不可欠。筆者は具体的な執筆計画を立てず、漠然とした目標設定に終始したことが、論文完成を妨げた一因であると内省している。
・不完全さを許容し、まずは書き進めて推敲を重ねる実践的な姿勢が求められる。

22. Best lesson learned: I failed my PhD

・指導教員との深刻な不和は研究の障害となるため、早期に大学の支援制度を利用し、指導体制の見直しを求めるべきである。筆者は不適切な指導教員により研究が停滞したが、副指導教員の助力と大学側の対応で指導教員が交代し、研究を再開できたことから、問題の早期解決と適切な支援要請の重要性が示される。
・筆者は修士課程への移行後、優れた修士論文を完成させ、別の博士課程に合格することで自信を回復しており、失敗が次へのステップとなり得ることを示している。
・筆者は「博士課程での失敗は人生の失敗ではない」と捉え、経験を糧に新たなキャリアを歩み始めており、失敗の再定義と前向きな転換の可能性を示している。
・主指導教員との関係が機能不全に陥った場合、副指導教員が研究推進の鍵となり得るため、積極的に連携し、支援を仰ぐべきである。筆者の事例では、主指導教員との問題発生後、副指導教員が実質的な指導を行い、研究の継続を支えた。

23. PhDiaries: A reminder for when you think you are a failure

・筆者はデータ収集の複雑さに言及し、自身の実績を振り返る必要性を強調しており、これはデータ収集段階での自己評価に有効である。
・博士課程における付随的な活動は全てをこなす必要はなく、自身の健康や状況を優先し、他者と比較して自己を卑下すべきではない。
・博士課程研究の非構造性や個人の特性により、計画通りに進捗しないことは当然であり、過度な自己批判を避けるべきである。
「君は最善を尽くしているということを知ってほしい」「これからどんな決断をし、どんな道を歩もうとも、君は決して失敗者ではない。」

24. I followed the steps to PhD failure and came out with a doctorate

・一般的に「失敗の法則」とされる行動が、必ずしも博士課程の失敗に直結するわけではない。筆者は同じ大学に留まり、資金なしで博士課程を始め、途中でテーマを変更したが博士号を取得しており、これは既存の通説に囚われず自身の状況に合わせて判断することの重要性を示す。
・博士課程の遂行において、資金調達の方法は研究の自由度やキャリア形成に影響を与える可能性がある。
・筆者は自己資金で研究を進めたことで好奇心に基づくテーマ変更が可能となり、また学業と並行した就労経験がCVに役立ったと述べており、これは資金計画とキャリアパスを統合的に考えることの有効性を示唆する。
・博士課程の成功には、個々の研究者が自身の思考を探求できる環境(スペース、リソース、励まし)が不可欠である。

25. PhD crisis: what value can be extracted from failure?

・筆者は「本質的な文献の不在」を確認し、年末に新たな文献レビューを開始する必要性を認識しており、これは行き詰まりを打開するための具体的な行動指針となる。
・筆者は「失敗からどのような価値を引き出せるか」と自問し、何度も方向転換を経験しながらも研究を継続しようとしており、これは試行錯誤を前向きに捉える姿勢の重要性を示している。
・筆者は自身の実践に研究を組み込むことを目指し、VLEやデジタルリテラシーといった具体的なテーマに辿り着いており、これは実践と研究の往還が新たな視点をもたらす可能性を示唆する。

26. It Happened to Me: How I Failed My PhD and How to Pass Yours 

・「野心的すぎる」テーマ設定と不明確な研究焦点が失敗要因であったと述べており、これは計画段階での現実的な目標設定と研究過程での焦点維持の重要性を示唆する。
・研究初期の順調さに慢心せず、実験の失敗や進捗の停滞といった問題の兆候を早期に認識し、必要であれば研究計画や目標を柔軟に見直すことが不可欠である。
・筆者は指導教員との関係悪化と助けを求めなかったことが失敗を深刻化させたと分析。指導関係の積極的な構築と維持、そして自己開示の重要性。
・博士論文は論文の長さ、言語的質、参考文献リスト、フォーマットが審査官によって重視されると指摘しており、これは論文執筆における多角的な品質管理の必要性を示している。

27. PhD Unplugged:挑戦、挫折、そして反省のありのままの旅

・文献レビューは、完璧を求めすぎたり、既存研究の膨大さに圧倒されたりすると、深刻な停滞を引き起こす可能性がある。文献レビューで何年も停滞した経験を詳細に語り、その心理的プレッシャーを記述している。研究手法の理解、特に研究哲学のような抽象的な概念は、多くの博士課程学生にとって大きな困難となり得る。
・博士課程における遅延の多くは、恐怖心やインポスター症候群に起因する先延ばしによって引き起こされるため、早期にこれと向き合い、課題に少しずつでも取り組むことが重要である。「So if you are reading this and you have been doing the same, stop, stop it now, you can do it, you can, I promise and if the chapter you are working on now isn't really, well working, move on, do a few paragraphs of a part you can do, or the bit you enjoy the most, the words all add up, the paragraphs turn into pages, and pages into chapters. 」
・博士論文や口頭試問に対する認識を、「完璧でなければならない壮大な論文」や「戦い」から、「合格すれば良い大きなレポート」「自身の研究について語る機会」へと転換することで、心理的負担を軽減し、前向きに取り組むことができる。著者は、論文を「"only" a big dissertation」と捉え直し、Vivaを「just talk about my work」と再定義したことが、プレッシャーを軽減し、最終的な成功に繋がったと語っている。
・口頭試問においては、審査員と議論するのではなく、彼らのフィードバックを建設的に受け止め、対話を通じて自身の研究を深める姿勢が重要である。

28. The Valley of Shit

・博士課程の研究中に、自己の能力や研究の価値を著しく疑う困難な時期(「The Valley of Shit」)を経験するのは一般的であり、これは一時的な現象であると認識すべきである。「The Valley of Shit」はあくまで「通り過ぎる」ものだと述べており、これは博士課程における精神的な落ち込みに対する心構えとして重要。
・自信喪失の時期には、研究の意義を疑っても、執筆や実験などの具体的な研究活動を機械的に継続することが、その困難を乗り越えるための唯一の実践的な方法である。筆者は「ただ歩き続けること」、すなわち研究活動を続けることだけがアドバイスだと強調しており、これはモチベーションが低下した際の行動指針となる。
・困難な時期における自己評価や研究プロジェクトの価値判断は、客観性を欠いている可能性が高いため、過度に深刻に受け止める必要はない。
・「仲間の旅行者を見つけて愚痴をこぼす」ことの効用を認めつつも、「この種の『トラブルトーク』にふけりすぎないように注意する」と警告している。共感と自己憐憫のバランスの重要性。

29. Three Regrets from My PhD—What I’d Do Differently

・著者は量を優先し手を広げすぎたことを「spread myself too thin」と後悔しており、深い探求の重要性を示唆している。この指針は、研究の方向性を定める初期段階や、複数の研究機会に直面した際の取捨選択において重要である。
・ニッチを早期に定めなかったことで就職活動が困難になったと述べており、早期のニッチ特定が効果的なキャリア形成に不可欠であることを示している。
・著者は学会参加を関係構築に活かせず「find my academic tribe much earlier」べきだったと後悔している。

30. How I turned seemingly ‘failed’ experiments into a successful Ph.D.

https://www.science.org/content/article/how-i-turned-seemingly-failed-experiments-into-a-successful-phd

・著者は10ヶ月間実験が成功せず自己を疑ったが、最終的にプロトコルの変更で成果を得ており、失敗の原因究明が新たな知見に繋がった。実験結果が出ない際に多角的な視点から原因を探ることの重要性を示している。
・同僚の提案によるプロトコルの劇的な変更を受け入れた結果、実験が成功し始めた。孤立せずに周囲の知見を活用することの重要性を博士課程のあらゆる局面で示唆する。
・元のプロトコルが機能しなかった理由の解明を新たな研究目的とし、その成果を学会発表や論文出版に繋げた。ネガティブな結果にも学術的価値を見出す視点の重要性を説いている。
・指導教員は査読者からの要求を、結果がユニークで予期せぬものであった証と肯定的に捉え、追加実験によって論文の質が大幅に向上した。査読プロセスを研究深化の機会として建設的に活用する姿勢の重要性。



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🇨🇿博士課程1年(今夏より)←放浪←1年のフルタイム労働←とある地方大
博士課程の失敗記を30個集めて、教訓を抽出した|実用性
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