『ガンダム』ビグロ改造した超巨大モビルアーマー「ビグ・ラング」 異形デザインが生まれた背景
『MS IGLOO』シリーズ屈指の強烈デザイン
ガンダムファンのなかでもコアな人気を誇る「ビグ・ラング」をご存じでしょうか。 およそ20年前の2004年から2006年、当時はまだまだ珍しかったフル3DCGで制作されたガンダム作品『機動戦士ガンダム MS IGLOO』に登場する「モビルアーマー(MA)」です。 【画像】超カッコいい! こちらがビグロを改造した異形MA「ビグ・ラング」のビジュアルです 『MS IGLOO』は、第1期『1年戦争秘録』『黙示録0079』がそれぞれ3話ずつ、第2期『MS IGLOO2 重力戦線』が同じく3話という2期仕立てで、全9本の完全3DCG作品です。 いまではアニメーションに3DCGが使われているのも当たり前になりましたし、このコラムをご覧になっている多くは、そもそもどれが3DCGかなんて気にもしていらっしゃらない世代の方たちでしょう。 しかし、日本のアニメーションの世界で3DCGが使われるようになった歴史は、それほど長いものではありません。 『MS IGLOO』は、サンライズ(現・バンダイナムコフィルムワークス)社内に設立された3DCG専門部署が制作した『機動戦士ガンダム』の「宇宙世紀」を舞台にした物語です。 元は、当時、千葉県の松戸にあった「バンダイミュージアム」のイベントホールでの特別上映用に企画制作されたものでした。 このホールで上映された第1期の最初のシリーズである『一年戦争秘録』3本の評判は上々、これを受けて第2シリーズの『黙示録0079』からはOVA用として制作されました。 第1期のラストに登場する「ビグ・ラング」は、1979年の『機動戦士ガンダム』のMA「ビグロ」の下部に大きなユニットを取り付けたもので、元々ガンダムよりはるかに大きなビグロが頭部のように見えるという、実はとても巨大なもの。 作品内では、「オッゴ」というモビルポッドの母艦のような役割も持つ「戦闘支援型モビルアーマー」として描かれますが、実は作品が特別上映用だったため、プラモ化の予定はなく、とにかく映像として凄いもの、インパクトあるものをという監督の意図だったそうです。(なにせ『機動戦士ガンダム0083』のデンドロビウムを生み出した人ですから) また、『MS IGLOO』は、ガンダム側の敵に当たる「ジオン公国」側の兵器の試験運用という、とてもコアな視点から描かれた作品で、登場するメカは、どれも試験用の量産前、もしくは不採用品という、ちょっと凝った設定でした。 その開発経緯には、実際の戦争での兵器の開発史なども参考にされており、その立案のリアルさがガンダムファン、特にモビルスーツや戦記物などに興味を持つ人たちに人気となりました。 実は本作の監督とプロデューサーは、元々が「設定制作」という、作品内に登場するメカや世界などの「理屈」をつくる役割を担っていた人たちです。 たとえ架空世界の存在であっても、その成り立ちや運用などにはきちんとした順序や思想があるということをしっかりと考えなくてはいけない。そんな心配りが本作をより魅力的にしているとも言えるでしょう。 物語の最後、本来なら戦闘には出るはずのない主人公「オリヴァー・マイ」という技術試験隊の若き士官が、仲間を守るために自ら楯となり、このビグ・ラングを駆って敵の前に出て行くシーンは感動的で、声を当てていた声優さんたちも思わず涙していたと、現場に立ち会ったプロデューサーから聞いています。 新たなシリーズが続くガンダム。そんななかで、ファン以外にはあまり知名度のない『MS IGLOO』ですが、ビグ・ラングをはじめ、ガンダム世界の歴史をしっかりと踏まえたうえで、フル3DCGでの表現を意識して創られた本作のメカ群には、他作品にはない魅力があふれていると私は思います。 【著者プロフィール】 風間洋(河原よしえ) 1975年よりアニメ制作会社サンライズ(現・バンダイナムコフィルムワークス)の『勇者ライディーン』(東北新社)制作スタジオに学生バイトで所属。卒業後、正規スタッフとして『無敵超人ザンボット3』等の設定助手、『最強ロボ ダイオージャ』『戦闘メカ ザブングル』『聖戦士ダンバイン』『巨神ゴーグ』等の文芸設定制作、『重戦機エルガイム』では「河原よしえ」名で脚本参加。『機甲戦記ドラグナー』『魔神英雄伝ワタル』『鎧伝 サムライトルーパー』等々の企画開発等に携わる。1989年より著述家として独立。同社作品のノベライズ、オリジナル小説、脚本、ムック関係やコラム等も手掛けている。 2017年から、認定NPO法人・アニメ、特撮アーカイブ機構『ATAC』研究員として、アニメーションのアーカイブ活動にも参加中。
風間洋(河原よしえ)